2023.12.27
2024年に箱根駅伝は第100回大会を迎える。記念すべき100回に向けて、これまでの歴史を改めて振り返る『Playback箱根駅伝』を企画。第1回大会から第99回大会まで、大会の様子を刻んでいく。(所属などは当時のもの)
第83回(2007年/平成19年)
1区・佐藤悠基が13年ぶり区間新 日大が15年ぶり好成績の2位
10月の予選会では前回出場校がすべて通過を果たし、前年12位だった大東大が節目の40年連続出場、シード校の順大も50年連続出場を決めた。
強さを増した前回優勝校の亜細亜大、前回8区途中まで首位をひた走った順大、全日本王者の駒大、出雲連覇の東海大、出雲と全日本で2位に食い込んだ日大の5校が優勝候補に挙げられた83回大会。前回までオープン参加だった関東学連選抜がこの年より正式参加となり、総合10位以内に入ると、翌年の予選会からの出場枠が1校増えることになった。
レースは東海大・佐藤悠基(2年)の大逃げで幕が開けた。佐藤はただ一人ついてきた東洋大の大西智也(2年)を2km付近で突き放すと、5kmを14分06秒で通過。この時点で大西とは30秒以上、3位集団とは2分以上の大差がつく異例の展開となった。佐藤はそのままハイペースを維持し、途中で脚にけいれんが起こるアクシデントがありながらも、トップでタスキリレー。打ち立てた区間タイムは1時間1分06秒と、1994年に渡辺康幸(早大)が樹立した“不滅の区間記録”を7秒上回る走りだった。
佐藤から遅れること4分01秒。区間2位で中継所に飛び込んできたのは終始独走となった東洋大の大西。そこから11秒差で城西大の高橋優太(1年)、さらに6秒差で専大の長谷川淳(4年)、そして11秒離れて日体大の森賢太(1年)と続いた。
東海大は2区、3区、4区と首位をキープ。その間、後方では大きく順位が変動した。2区では早大の竹澤健介(2年)が区間賞の走りで9位から3位までジャンプアップ。前回区間賞のメクボ・ジョブ・モグス(山梨学大2年)は区間記録を大幅に上回るハイペースで11位から一時2位まで躍り出たが、20km過ぎに失速し、6位で中継。区間順位も6位にとどまった。
3区では早大の藤森憲秀(4年)が東洋大を抜き去って2位へ浮上。日大は箱根デビューとなったギタウ・ダニエル(1年)が4人を抜いて4位まで上がり、中大の上野裕一郎(3年)は区間賞の走りで17位から順位を9つ上げた。
6年ぶりの優勝を狙う順大は1区で14位と出遅れたものの、2区で12位、3区で9位と徐々に上げ、4区では当時の5000m高校記録保持者・佐藤秀和(2年)が区間トップの走りで4人を抜き去り5位まで躍り出た。4区終了時の順位は東海大、東洋大、早大、順大と続き、順大は絶好の位置で“山の神”今井正人(4年)へとタスキが渡った。
2年連続で区間賞を獲得している今井は、今大会でも力を発揮。2秒後方でスタートした日体大・北村聡(3年)と併走しながら8.3kmで3位に浮上すると、以降は北村を突き放して10km手前で2位に躍り出た。中継所では4分09秒の差があった東海大の背中もどんどん近づいていき、16kmでついに逆転。その勢いはさらに加速し、コース変更のあった前年に自身が打ち立てた区間記録を25秒更新する爆走で往路優勝のテープを切った。往路2位は1分42秒差で東海大、3位以降は東海大、早大、日大と続き、前回優勝校の亜細亜大は13位で連覇の望みが潰えた。
順大は6区でも首位をキープしたものの、この時点で2位の東海大、末吉翔(4年)の区間賞で3位に上がった日大、4位の日体大までは3分以内。前回大会では8区でまさかのブレーキがあっただけに、予断を許さない状況が続いた。
しかし、この大会の順大はここからが強かった。7区の井野洋(3年)、8区の板倉具視(4年)がそれぞれ区間4位と好走すると、9区の長門俊介(4年)がとどめの区間賞。10区の松瀬元太(4年)は史上初の「1時間9分切り」となる1時間8分59秒で23.1km(のちに再計測で23.0kmに)を走りきり、6年ぶり11度目の総合優勝を決めた。区間賞4つ、往路と復路を両方制する“完全優勝”だった。
2位争いは日大、東海大、日体大による熾烈な争いとなり、アンカー勝負で抜け出した日大が1992年(2位)以来の好成績となる準優勝。3位・東海大、4位・日体大と続き、東洋大が38年ぶりのトップ5に食い込んだ。
シード権争いも激戦となり、8区終了時点で12位だった中大が9区、10区の追い上げで8位となり、23年連続でシード権を確保。9位に専大が入り、1秒差で前回覇者の亜細亜大が10位に滑り込んだ。8区終了時で8位につけていた城西大は終盤に順位を落として2年連続の“次点”に泣いた。
大会全体として、のちに世界へ羽ばたくことになる選手が多かったのも特徴のひとつ。スターがそろう見応えのある大会だった。
【のちに五輪・世界選手権の代表になった83回大会出場選手】
今井正人(順大4) 15年北京世界選手権マラソン
佐藤悠基(東海大2) 12年ロンドン五輪5000m・10000mなど
竹澤健介(早大2) 08年北京五輪5000m・10000mなど
宇賀地強(駒大1) 13年モスクワ世界選手権10000m
上野裕一郎(中大3) 09年ベルリン世界選手権5000m
山本 亮(中大4) 12年ロンドン五輪マラソン
北島寿典(東洋大4) 16年リオ五輪マラソン
佐々木悟(大東大3) 16年リオ五輪マラソン
川内優輝(関東学連選抜/学習院大2) 11年テグ世界選手権マラソンなど
参考文献:箱根駅伝90回記念誌(関東学生連盟)
第83回(2007年/平成19年) 1区・佐藤悠基が13年ぶり区間新 日大が15年ぶり好成績の2位
10月の予選会では前回出場校がすべて通過を果たし、前年12位だった大東大が節目の40年連続出場、シード校の順大も50年連続出場を決めた。 強さを増した前回優勝校の亜細亜大、前回8区途中まで首位をひた走った順大、全日本王者の駒大、出雲連覇の東海大、出雲と全日本で2位に食い込んだ日大の5校が優勝候補に挙げられた83回大会。前回までオープン参加だった関東学連選抜がこの年より正式参加となり、総合10位以内に入ると、翌年の予選会からの出場枠が1校増えることになった。 レースは東海大・佐藤悠基(2年)の大逃げで幕が開けた。佐藤はただ一人ついてきた東洋大の大西智也(2年)を2km付近で突き放すと、5kmを14分06秒で通過。この時点で大西とは30秒以上、3位集団とは2分以上の大差がつく異例の展開となった。佐藤はそのままハイペースを維持し、途中で脚にけいれんが起こるアクシデントがありながらも、トップでタスキリレー。打ち立てた区間タイムは1時間1分06秒と、1994年に渡辺康幸(早大)が樹立した“不滅の区間記録”を7秒上回る走りだった。 佐藤から遅れること4分01秒。区間2位で中継所に飛び込んできたのは終始独走となった東洋大の大西。そこから11秒差で城西大の高橋優太(1年)、さらに6秒差で専大の長谷川淳(4年)、そして11秒離れて日体大の森賢太(1年)と続いた。 東海大は2区、3区、4区と首位をキープ。その間、後方では大きく順位が変動した。2区では早大の竹澤健介(2年)が区間賞の走りで9位から3位までジャンプアップ。前回区間賞のメクボ・ジョブ・モグス(山梨学大2年)は区間記録を大幅に上回るハイペースで11位から一時2位まで躍り出たが、20km過ぎに失速し、6位で中継。区間順位も6位にとどまった。 3区では早大の藤森憲秀(4年)が東洋大を抜き去って2位へ浮上。日大は箱根デビューとなったギタウ・ダニエル(1年)が4人を抜いて4位まで上がり、中大の上野裕一郎(3年)は区間賞の走りで17位から順位を9つ上げた。 6年ぶりの優勝を狙う順大は1区で14位と出遅れたものの、2区で12位、3区で9位と徐々に上げ、4区では当時の5000m高校記録保持者・佐藤秀和(2年)が区間トップの走りで4人を抜き去り5位まで躍り出た。4区終了時の順位は東海大、東洋大、早大、順大と続き、順大は絶好の位置で“山の神”今井正人(4年)へとタスキが渡った。 2年連続で区間賞を獲得している今井は、今大会でも力を発揮。2秒後方でスタートした日体大・北村聡(3年)と併走しながら8.3kmで3位に浮上すると、以降は北村を突き放して10km手前で2位に躍り出た。中継所では4分09秒の差があった東海大の背中もどんどん近づいていき、16kmでついに逆転。その勢いはさらに加速し、コース変更のあった前年に自身が打ち立てた区間記録を25秒更新する爆走で往路優勝のテープを切った。往路2位は1分42秒差で東海大、3位以降は東海大、早大、日大と続き、前回優勝校の亜細亜大は13位で連覇の望みが潰えた。 順大は6区でも首位をキープしたものの、この時点で2位の東海大、末吉翔(4年)の区間賞で3位に上がった日大、4位の日体大までは3分以内。前回大会では8区でまさかのブレーキがあっただけに、予断を許さない状況が続いた。 しかし、この大会の順大はここからが強かった。7区の井野洋(3年)、8区の板倉具視(4年)がそれぞれ区間4位と好走すると、9区の長門俊介(4年)がとどめの区間賞。10区の松瀬元太(4年)は史上初の「1時間9分切り」となる1時間8分59秒で23.1km(のちに再計測で23.0kmに)を走りきり、6年ぶり11度目の総合優勝を決めた。区間賞4つ、往路と復路を両方制する“完全優勝”だった。 2位争いは日大、東海大、日体大による熾烈な争いとなり、アンカー勝負で抜け出した日大が1992年(2位)以来の好成績となる準優勝。3位・東海大、4位・日体大と続き、東洋大が38年ぶりのトップ5に食い込んだ。 シード権争いも激戦となり、8区終了時点で12位だった中大が9区、10区の追い上げで8位となり、23年連続でシード権を確保。9位に専大が入り、1秒差で前回覇者の亜細亜大が10位に滑り込んだ。8区終了時で8位につけていた城西大は終盤に順位を落として2年連続の“次点”に泣いた。 大会全体として、のちに世界へ羽ばたくことになる選手が多かったのも特徴のひとつ。スターがそろう見応えのある大会だった。 【のちに五輪・世界選手権の代表になった83回大会出場選手】 今井正人(順大4) 15年北京世界選手権マラソン 佐藤悠基(東海大2) 12年ロンドン五輪5000m・10000mなど 竹澤健介(早大2) 08年北京五輪5000m・10000mなど 宇賀地強(駒大1) 13年モスクワ世界選手権10000m 上野裕一郎(中大3) 09年ベルリン世界選手権5000m 山本 亮(中大4) 12年ロンドン五輪マラソン 北島寿典(東洋大4) 16年リオ五輪マラソン 佐々木悟(大東大3) 16年リオ五輪マラソン 川内優輝(関東学連選抜/学習院大2) 11年テグ世界選手権マラソンなど 参考文献:箱根駅伝90回記念誌(関東学生連盟)第83回箱根駅伝総合成績をチェック
●総合成績 1位 順大 11時間05分29秒 2位 日大 11時間11分42秒 3位 東海大 11時間12分07秒 4位 日体大 11時間16分44秒 5位 東洋大 11時間16分59秒 6位 早大 11時間17分29秒 7位 駒大 11時間18分09秒 8位 中大 11時間18分41秒 9位 専大 11時間18分42秒 10位 亜細亜大11時間19分14秒 11位 城西大 11時間20分50秒 12位 山梨学大11時間21分27秒 13位 中央学大11時間21分30秒 14位 大東大 11時間25分30秒 15位 法大 11時間27分46秒 16位 明大 11時間27分57秒 17位 神奈川大11時間33分20秒 18位 國學院大11時間34分09秒 19位 国士大 11時間36分30秒 20位 関東学連選抜11時間41分53秒 ●区間賞 1区 佐藤悠基(東海大) 1時間01分06秒 2区 竹澤健介(早大) 1時間07分46秒 3区 上野裕一郎(中大) 1時間02分50秒 4区 佐藤秀和(順大) 55分30秒 5区 今井正人(順大) 1時間18分05秒 6区 末吉翔(日大) 59分29秒 7区 鷲見知彦(日体大) 1時間04分38秒 8区 北島寿典(東洋大) 1時間06分28秒 9区 長門俊介(順大) 1時間10分06秒 10区 松瀬元太(順大) 1時間08分59秒
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