2023.12.21
新春の風物詩・箱根駅伝の100回大会に挑む出場全23校の選手やチームを取り上げる「箱根駅伝Stories」。それぞれが歩んできた1年間の足跡をたどった。
國學院大初の27分台ランナーに
2区で6人抜きの快走を演じた前回の箱根駅伝後、國學院大の平林清澄(3年)は悪夢に襲われた。
「日常生活に支障が出始めて、おかしいなと思ったんです」
1月中旬、仙骨の疲労骨折が判明した。
予定していたマラソン挑戦を延期。「もう一度、ユニバ(ワールドユニバーシティゲームズ)代表を狙おう」と3月の日本学生ハーフマラソンに強行出場したが、9位(1時間3分02秒)に終わり、再び仙骨を疲労骨折した。
前年の日本学生ハーフは優勝。一度は手にしたワールドユニバーシティゲームズ日本代表はコロナ禍による大会延期により幻になっただけに、「精神的にきつかった部分はありますけど、仕方ないのかな」と前を見つめた。
次は7月のホクレン・ディスタンスチャレンジを目指した。
そして第3戦網走大会の10000m。「27分台は狙っていましたし、出るかなという感覚はありました」という平林は、27分55秒15の國學院大記録を樹立した。
夏合宿の疲労から9月上旬に体調を崩したが、出雲駅伝は6区で区間4位と奮闘。チーム目標の「表彰台(3位以内)」に届かなかったが、青学大を抜いて4位でフィニッシュした。
「チーム状況も良くありませんでした。アンカーとして表彰台(3位以内)を決めなければいけなかったのですが、出雲の経験が全日本に生かせたんじゃないかなと思います」
その全日本は3年連続となる7区に出走。3位の中大と6秒差の4位でタスキを受け取ると、中大・湯浅仁(4年)とともに約250m先を走っていた青学大の背中に迫っていった。
最後は湯浅に先着を許したが、中継所で43秒差あった青学大に8秒差まで急接近。駒大・鈴木芽吹(4年)らを抑えて、区間賞も獲得した。
「順位とタイム差を意識していました。青学大を必死に追いかけたので、区間賞は副産物という感じです。芽吹さんに勝てたのは自分の中でも評価してもいいのかな。それでも悔しい区間賞ですかね。青学大に届かなかったことと、中大に先着されたのは不満が残ります」

23年全日本大学駅伝では7区区間賞を獲得。中大の湯浅仁と激しく競り合った
自信をつけた3年生エース。箱根駅伝は2区の候補に挙がる。1年時は9区を区間2位と快走して、5人抜き。前回は2区を担い、「すごく緊張しました」という。
それでも12位でタスキを受け取ると、「もっと前へ」の気持ちで、6位まで順位を押し上げた。1時間7分32秒の区間7位。3年生以下では区間賞を獲得した中大・吉居大和に次ぐ2位だった。
「自分でも良い走りができたと思います」と平林。今回も2区に起用されることになれば、どんなターゲットで臨むのか。
「どの区間を任されても駒大の選手に勝たないといけないなと思っています。2区は芽吹さんになると思いますが、簡単には勝たせてらえるわけではありません。コンディションやレース展開にもよりますが、1時間6分台は頭に入れて走りたいですね」
来季も見据えて優勝争いを!
平林は両親の影響で小学1年生から市民大会に参加してきた。中学に陸上部はなく、バドミントン部に所属しながら、陸上の大会にも出場。進学した美方高では、20数名いた部員の中で持ちタイムは下から2番目だった。
しかし、そこから這い上がっていく。2年時は北信越地区代表で全国高校駅伝に出場。1区で区間22位という成績を残した。3年時は県大会で敦賀気比高に敗れたが、高校時代は5000mで14分03秒41をマークした。
高校2年時の10月、出雲駅伝で國學院大の土方英和(現・旭化成)が駒大を逆転して、初優勝を飾ったシーンをテレビで観て、心が揺さぶられたという。
今季は平林と山本歩夢の3年生コンビが副将として、伊地知をサポートしてきたが、國學院大が箱根駅伝で初栄冠を飾る日は遠くないかもしれない。
「3年生が副将をするのは、来季を見据えてという部分もあると思います。昨季から“打倒・駒大”を目標にやっていますが、僕らが最上級生を迎える第101回大会では絶対に勝ちたい。その前年となる今大会から優勝を狙って取り組み、次回につなげていきたい」
平林は今冬、マラソンにも挑戦予定。駒大を王者の座から引きずり降ろして、〝新時代〟に向けて突っ走るつもりだ。

写真/チーム提供
ひらばやし・きよと/2002年12月4日生まれ。福井県越前市出身。福井・武生五中→美方高。5000m13分55秒30、10000m27分55秒15、ハーフ1時間1分50秒
文/酒井政人
國學院大初の27分台ランナーに
2区で6人抜きの快走を演じた前回の箱根駅伝後、國學院大の平林清澄(3年)は悪夢に襲われた。 「日常生活に支障が出始めて、おかしいなと思ったんです」 1月中旬、仙骨の疲労骨折が判明した。 予定していたマラソン挑戦を延期。「もう一度、ユニバ(ワールドユニバーシティゲームズ)代表を狙おう」と3月の日本学生ハーフマラソンに強行出場したが、9位(1時間3分02秒)に終わり、再び仙骨を疲労骨折した。 前年の日本学生ハーフは優勝。一度は手にしたワールドユニバーシティゲームズ日本代表はコロナ禍による大会延期により幻になっただけに、「精神的にきつかった部分はありますけど、仕方ないのかな」と前を見つめた。 次は7月のホクレン・ディスタンスチャレンジを目指した。 そして第3戦網走大会の10000m。「27分台は狙っていましたし、出るかなという感覚はありました」という平林は、27分55秒15の國學院大記録を樹立した。 夏合宿の疲労から9月上旬に体調を崩したが、出雲駅伝は6区で区間4位と奮闘。チーム目標の「表彰台(3位以内)」に届かなかったが、青学大を抜いて4位でフィニッシュした。 「チーム状況も良くありませんでした。アンカーとして表彰台(3位以内)を決めなければいけなかったのですが、出雲の経験が全日本に生かせたんじゃないかなと思います」 その全日本は3年連続となる7区に出走。3位の中大と6秒差の4位でタスキを受け取ると、中大・湯浅仁(4年)とともに約250m先を走っていた青学大の背中に迫っていった。 最後は湯浅に先着を許したが、中継所で43秒差あった青学大に8秒差まで急接近。駒大・鈴木芽吹(4年)らを抑えて、区間賞も獲得した。 「順位とタイム差を意識していました。青学大を必死に追いかけたので、区間賞は副産物という感じです。芽吹さんに勝てたのは自分の中でも評価してもいいのかな。それでも悔しい区間賞ですかね。青学大に届かなかったことと、中大に先着されたのは不満が残ります」 [caption id="attachment_123811" align="alignnone" width="800"]
来季も見据えて優勝争いを!
平林は両親の影響で小学1年生から市民大会に参加してきた。中学に陸上部はなく、バドミントン部に所属しながら、陸上の大会にも出場。進学した美方高では、20数名いた部員の中で持ちタイムは下から2番目だった。 しかし、そこから這い上がっていく。2年時は北信越地区代表で全国高校駅伝に出場。1区で区間22位という成績を残した。3年時は県大会で敦賀気比高に敗れたが、高校時代は5000mで14分03秒41をマークした。 高校2年時の10月、出雲駅伝で國學院大の土方英和(現・旭化成)が駒大を逆転して、初優勝を飾ったシーンをテレビで観て、心が揺さぶられたという。 今季は平林と山本歩夢の3年生コンビが副将として、伊地知をサポートしてきたが、國學院大が箱根駅伝で初栄冠を飾る日は遠くないかもしれない。 「3年生が副将をするのは、来季を見据えてという部分もあると思います。昨季から“打倒・駒大”を目標にやっていますが、僕らが最上級生を迎える第101回大会では絶対に勝ちたい。その前年となる今大会から優勝を狙って取り組み、次回につなげていきたい」 平林は今冬、マラソンにも挑戦予定。駒大を王者の座から引きずり降ろして、〝新時代〟に向けて突っ走るつもりだ。 [caption id="attachment_123812" align="alignnone" width="800"]
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