2023.04.26
いよいよ始まった2023年のトラックシーズン。夏に控えるブダペスト世界選手権、そして来年のパリ五輪に向けて重要な1年となる。今年も陸上界を盛り上げそうな選手たちのインタビューをお届け!
オレゴンで感じた「あの場所で戦いたい」という思い
女子短距離が、少しずつではあるが再び世界の扉を開こうとしている。その中心にいるのが兒玉芽生(ミズノ)だ。昨年9月の全日本実業団対抗選手権・女子100mで日本歴代2位となる11秒24をマーク。これは日本記録(11秒21)を持つ福島千里に次いで2人目の11秒2台だった。
世界の舞台に立ってきた日本女子短距離のエースはスパイクを脱ぐと時を同じくして台頭してきた兒玉。「私はまだまだ。福島さんのように圧倒的な力があるわけではないので」と、その現在地を冷静に見ている。
小学生時代から各カテゴリーで全国タイトルを取り続けてきた。福岡大では200mの前日本記録保持者である信岡沙希重コーチの指導でさらに能力が開花。昨年、大学卒業してミズノに所属となってからも大学を拠点に世界を目指している。
「11秒2台を出したインパクトはあると思いますが、春先からうまく走れなかったところもあります。その中でどう整理して向き合って、立て直していくか。ただ勝つだけではなく、どういう選手になりたいかをすごく考えました。記録の面でも2年ぶりに自己ベストを更新できましたし、精神面も含めて、競技者として一歩前進できたシーズンだったと思います」
21年の東京五輪に続いて、オレゴン世界選手権準でも4×100mリレーの主軸として出場。3走を務めて43秒33の日本記録更新に貢献した。これには「大きな一歩でした」と振り返る。
ただ、それでも決勝には届かない現実も突きつけられた。「バトンの技術は確実に上がっています。ただ、やはり個々の力を上げていって個人として世界大会に出場できるようにならないといけません」。
リレーが終わった後、ともに戦った君嶋愛梨紗(土木管理総合)らと「決勝はアップから試合までみんなで見て、ここはこうしようとか、やっぱりあの場所で戦いたいね」と話し合ったという。
2023年は「世界との差を少しずつ埋めていく」がテーマ。そのための冬季を積んできた。「少し脚に痛みが出る時期もあり、昨シーズンが終わった時に思い描いた順調なものとは言えませんが、その中でもやれることに向き合ってきたので、充実した練習をできました」。
オレゴンで感じた「あの場所で戦いたい」という思い
女子短距離が、少しずつではあるが再び世界の扉を開こうとしている。その中心にいるのが兒玉芽生(ミズノ)だ。昨年9月の全日本実業団対抗選手権・女子100mで日本歴代2位となる11秒24をマーク。これは日本記録(11秒21)を持つ福島千里に次いで2人目の11秒2台だった。 世界の舞台に立ってきた日本女子短距離のエースはスパイクを脱ぐと時を同じくして台頭してきた兒玉。「私はまだまだ。福島さんのように圧倒的な力があるわけではないので」と、その現在地を冷静に見ている。 小学生時代から各カテゴリーで全国タイトルを取り続けてきた。福岡大では200mの前日本記録保持者である信岡沙希重コーチの指導でさらに能力が開花。昨年、大学卒業してミズノに所属となってからも大学を拠点に世界を目指している。 「11秒2台を出したインパクトはあると思いますが、春先からうまく走れなかったところもあります。その中でどう整理して向き合って、立て直していくか。ただ勝つだけではなく、どういう選手になりたいかをすごく考えました。記録の面でも2年ぶりに自己ベストを更新できましたし、精神面も含めて、競技者として一歩前進できたシーズンだったと思います」 21年の東京五輪に続いて、オレゴン世界選手権準でも4×100mリレーの主軸として出場。3走を務めて43秒33の日本記録更新に貢献した。これには「大きな一歩でした」と振り返る。 ただ、それでも決勝には届かない現実も突きつけられた。「バトンの技術は確実に上がっています。ただ、やはり個々の力を上げていって個人として世界大会に出場できるようにならないといけません」。 リレーが終わった後、ともに戦った君嶋愛梨紗(土木管理総合)らと「決勝はアップから試合までみんなで見て、ここはこうしようとか、やっぱりあの場所で戦いたいね」と話し合ったという。 2023年は「世界との差を少しずつ埋めていく」がテーマ。そのための冬季を積んできた。「少し脚に痛みが出る時期もあり、昨シーズンが終わった時に思い描いた順調なものとは言えませんが、その中でもやれることに向き合ってきたので、充実した練習をできました」。今季は11秒2台をそろえられるように
目指していたのは特徴であるストライドを生かしつつ「ピッチを上げて」いき、「トップスピードを高める」走り。そのためには「接地を変える」ことと、「加速局面にどうつなげていくか」が大切になる。 「11秒2が出た全日本実業団対抗では低い姿勢で地面をキャッチできて力を伝えられました。ただ、シーズン全体としては上体が浮いてしまって力がうまく伝えられないこともありました」 スタートしてから低い重心で「いかにピッチも上げつつ大きな力を出していくか」。ドリルを中心に強化し、「少し角度を変えるなど、窮屈な姿勢の中でどう動かすかを意識して取り組んできました」。できること、できないことはもちろんある。「日々、変化があるのがすごく楽しいです」と充実感に溢れていた。 今シーズン初戦は4月29日の織田記念。100mでの出場を予定している。「昨年は実業団の後に11秒2台をそろえられなかったのが課題だったので、今年は11秒1台を出すためにも、トップスピードを高めていって11秒2台をそろえる安定感を出していきたいです」。 ブダペスト世界選手権の参加標準記録は100m11秒08、200m22秒60、パリ五輪はさらに高く11秒07、22秒57。もちろん目指しつつも「甘くはない」。ワールドランキングでの出場を見据えて「グランプリの連戦でしっかり(ポイントを)取りに行きたい」と言う。 まずは、福島千里がアジア大会2冠を取っているように、今季控えるアジア選手権とアジア大会は世界への登竜門として「外せない」と考える。 小学生で日本一、ケガで戦線離脱、飛躍とともに感じた世界の壁の高さ。成功と挫折を繰り返しながら、兒玉は一歩ずつ成長してきた。 「どうしたいか、どうすべきかを考えていきます」。大きな記録を狙うのではなく、少しずつ前へ、0.01秒でも速く。それが世界の扉を開くための近道になる。 [caption id="attachment_99863" align="alignnone" width="800"]
2022年9月の全日本実業団対抗100m予選で11秒24を出した兒玉芽生[/caption]
こだま・めい/1999年6月8日生まれ。大分県出身。臼杵西中→大分雄城台高→福岡大→ミズノ。自己ベストは100m11秒24(日本歴代2位)、200m23秒41(日本歴代7位)
文/向永拓史 RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
2025.11.08
甲南学園陸上競技部創部100周年式典を開催!中尾恭吾主将「次の100年へつなげたい」
2025.11.08
5000m競歩で山田大智が高校新! 従来の記録を10秒近く更新する19分20秒59
-
2025.11.07
-
2025.11.07
2025.11.02
青学大が苦戦の中で3位確保!作戦不発も「力がないチームではない」/全日本大学駅伝
-
2025.11.02
-
2025.11.02
-
2025.11.03
2025.10.18
【大会結果】第102回箱根駅伝予選会/個人成績(2025年10月18日)
2025.11.02
青学大が苦戦の中で3位確保!作戦不発も「力がないチームではない」/全日本大学駅伝
-
2025.10.18
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2023.04.01
-
2022.12.20
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.11.08
甲南学園陸上競技部創部100周年式典を開催!中尾恭吾主将「次の100年へつなげたい」
甲南学園陸上競技部創部100周年記念式典、および記念祝賀会が11月8日、神戸市内のホテルで開催された。 甲南大学、甲南高校・中学校を運営する甲南学園の歴史は1911年の幼稚園創立からスタート。翌年に小学校、1919年に中 […]
2025.11.08
女子5000mで山田桃愛が15分33秒70の自己新 3000mで高3・栃尾佳穂9分11秒48/京都陸協記録会
11月8日、京都市の東寺ハウジングフィールド西京極で第6回京都陸協記録会が行われ、女子5000mでは山田桃愛(しまむら)が15分33秒70の自己新で全体トップとなった。 山田は埼玉県出身の24歳。小学生時代に発症した骨髄 […]
2025.11.08
5000m競歩で山田大智が高校新! 従来の記録を10秒近く更新する19分20秒59
11月8日、兵庫県尼崎市の尼崎市記念公園陸上競技場で第6回尼崎中長距離記録会が行われ、男子5000m競歩で山田大智(西脇工高3兵庫)が19分20秒59の日本高校新記録を樹立した。従来の高校記録は住所大翔(飾磨工高/現・富 […]
2025.11.08
中部・北陸実業団駅伝の区間エントリー発表! 最長4区はトヨタ紡織・西澤侑真、トヨタ自動車・湯浅仁が出場
11月8日、中部実業団連盟と北陸実業団連盟は、ニューイヤー駅伝の予選を兼ねた第65回中部・第55回北陸実業団対抗駅伝(11月9日)の区間エントリーを発表した。 中部では、昨年大会新記録で優勝を果たしたトヨタ紡織が4区(1 […]
2025.11.08
中電工は1区・相葉直紀、6区・北村惇生 中国電力は池田勘汰を6区に起用/中国実業団対抗駅伝
中国実業団連盟は11月8日、第64回中国実業団対抗駅伝(11月9日)の区間エントリーを発表した。 前回大会で3年ぶりの優勝を果たした中電工は、優勝の立役者となった北村惇生を2年連続でエース区間の6区(19km)に登録した […]
Latest Issue
最新号
2025年11月号 (10月14日発売)
東京世界選手権 総特集
箱根駅伝予選会&全日本大学駅伝展望