2021.09.20
◇日本インカレ(9月17~19日/埼玉・熊谷スポーツ公園)3日目
第90回日本インカレ3日目に行われた女子800mの決勝に、2018年のインターハイチャンピオンの姿があった。山口真実は福岡・北九州市立高の3年時にインターハイ、国体を制すなど大活躍。国内では珍しい長身の中距離ランナーで、スピードもスタミナも備え、全国高校駅伝にも出場した(5区19位)。高校卒業後はパナソニックへ。実業団ランナーとして一歩を踏み出した。
ところが、ここ2年間はなかなか結果が出せなかった。「800mと1500mをやりつつ、長距離もできればと思っていたのですが、高校時代と違ってなかなか両立するのは難しかったです」。トップランナーが集う実業団の駅伝を戦うためには、中距離だけの練習では不十分。その結果、持ち味だったスピードは影を潜めていた。「もう一度大学に入って中距離の練習がしたい」。地元に戻り、九州共立大に入学した。
入学してすぐに出たトライアルでは2分20秒かかった。中距離が専門の山口恭平コーチの元でイチから作り直すと、6月の日本学生個人選手権で2分10秒21をマークして優勝。ホクレン・ディスタンスチャレンジ千歳大会では4年ぶりの自己新となる2分05秒71と飛躍した。
迎えた日本インカレでは塩見綾乃(立命大)、山口光(順大)に次ぎ2分07秒55で3位。久しぶりの大舞台で楽しそうに走る姿が印象的だった。
「中距離ブロックは女子が私一人なので男子と一緒に練習しています。明るい雰囲気で、みんなが陸上を楽しんでいます」。高校、実業団と女子駅伝の強豪チームに所属していただけに、九州共立大の雰囲気や男子と一緒に走ることが新鮮だったようだ。今年の結果は、「自分の力というよりは環境のお陰」と言う。
もちろん、実業団を経験したからこそ感じた部分も大きい。「陸上が仕事としてみんなが覚悟を持っていましたし、練習以外の時間に何をするかで結果が変わってくるのが実業団。受け身ではなく自律しないと強くなれないということを学びました」。新たなチャレンジをパナソニック関係者など「今もすごく応援してくださっています」と感謝している。
大学ではスポーツ学部に在籍し、「メンタル面やバイオメカニクスなどの視点を競技に生かしていきたいです」と山口。初インカレの結果には「悔しいですが、ここからがスタートです」。目指すのは「中距離で日本のトップになる」。再スタートを切った元インターハイ女王。その挑戦はまだ始まったばかりだ。
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