2026.06.29
大学時代の経験で「選択肢が増えた」
高校時代は1500m、3000m、5000mで高校新記録を打ち立て、駒大に進学した佐藤。トラックでは1年時の22年にはU20世界選手権5000m、2年時の翌23年のアジア大会5000mにそれぞれ出場した。
24年1月にはショートトラック5000m(1周200m)で13分09秒45をマークしている。この記録はショートトラックでは日本最高で、屋外を含めても大迫傑が2015年に出した日本記録(13分08秒40)に次ぐ歴代2位。また、10000mでも23年11月に27分28秒50の自己ベストで走っている。
駅伝でも活躍。出雲駅伝では1年時の2区で区間新と圧巻の学生駅伝デビューを飾ると2年時も2区で区間賞。全日本大学駅伝では1年時は2区で区間2位ながら従来の区間記録を更新。2年時は区間賞&区間新の快走を見せた。
箱根駅伝は、1年時こそ胃腸炎で走ることはなかったが、2年~4年時まで3年連続出場。3年時は恥骨の疲労骨折が長引き、約10ヵ月ぶりの復帰レースの中で7区区間新。4年時は大会1ヵ月前に左大腿骨の疲労骨折が判明したものの、10区を区間新で打ち立てた。「自分でもよく走ったなと思います」と振り返る
大八木総監督には、「5000mや10000mが適性距離」と言われて、本人もその自覚はあるが、大学駅伝を経験し、「自分の選択肢が増えました。短い距離無理かなと思っていましたが、案外ハーフぐらいまでの距離まで走れることがわかったのは良かったです」。
2032年ブリスベン五輪までトラックで
当面は中距離を軸にしつつ、来年は5000m出場も考えているという。来年の北京世界選手権の参加標準記録は1500m3分30秒00、5000m12分50秒00。東京世界選手権の参加標準記録(1500m3分33秒00、5000m13分01秒00)よりもタイムは上がり、現在の日本記録との差は大きく広がった。
現在の佐藤の実力にとっても、まだまだその差は大きい。しかし、前向きに挑戦していく。「大学時代は、5000m12分台や1500m3分33秒は意識できなかった」そうだが、現在のチームに入り「一緒に練習していくと、『このぐらいの練習ができれば、このぐらいタイムで上がってきそう』と考えられるのでありがたいです」。
そして、2年後のロサンゼルス五輪では「1500mと5000mの2種目で出たい」という目標を立てている。「北京世界選手権と同じぐらいの参加標準記録になるかもしれないが、そのぐらいを突破できるようにしたい」と意気込む。
2032年ブリスベン五輪までトラックレースを中心で行くという。その上で「将来はマラソンを走ってみたい」と佐藤。「陸上の長距離をやっているからには、ゆくゆくはマラソンをやってみたいと誰もが思うんじゃないでしょうか。今はトラックをやっていますが、年齢を重ねるといずれはスピードが衰えてくると思いますし、長い距離に挑戦したいです」と、ランナーとしての最終域まで思いを巡らせている。
今後はプリフォンテーン・クラシック(7月3日、4日/米・ユージン)の2マイルに出場する予定。佐藤は「通過の3000mも公認されるので、日本記録を更新したいです」と意気込む。3000mの日本記録は5月中旬に森凪也(Honda)が出した7分38秒98。世界という大きな舞台を目指して、佐藤の挑戦はまだ始まったばかりだ。
文/井上敦

ロサンゼルス五輪への過程を示した佐藤
北京選手権まで1500mに「フォーカス」
今季の佐藤はここまで1500mをメインとしている。高校3年時の2021年に出した3分37秒18の高校記録が自己ベストだが、大学では1年時の22年日本インカレ(7位/3分47秒61)が最後。4シーズンぶりに〝センゴ〟に参戦した。 4月の金栗記念では3分43秒19で12位にとどまったが、その後渡米すると、5月上旬にはポートランドで3分40秒10、同下旬にはロサンゼルスで3分39秒59をマークした。 「プロとなって、来年の北京世界選手権まで1500mにフォーカスしたいと思っています。理由としてはシンプルで、1500mを再び走ってみたかったというのがありました」。 さらに、先を見据えた考えもあるための選択でもある。「5000mや10000mといった距離を延ばすに当たって、1500mのスピード持久力は絶対に強化しないといけないとずっと思っていました」。世界大会で多くのメダリスト、入賞者を育てたSwoosh TCのマイク・スミス・コーチとも話し合い、「1500mを数年メインでやっていきたいとう自分の考えをすごい理解してくれました」と佐藤の意向を汲みながら、今季の方針を決めた。 6月の日本選手権(6月12日~14日/愛知・パロマ瑞穂スタジアム)も1500mのみに出場。予選2組に登場した佐藤は400m(58秒)の通過こそ4、5番手だったが、700m(残り2周)でトップに立つ。800mは1分57秒で通過し、1200mは2分56秒と、ハイペースで押し切ろうとするが、最後の直線で次々と後方からかわされ7着。3分38秒30というセカンドベストにもかかわらず、決勝出場条件である組6着に届かなかった。 「3分30秒台だったら決勝に残ると思っていたら、ラストに集団で抜かれるかたちになってので……。まさかの予選敗退で自分に甘さがすごくありましたし、反省しないといけないと思いました」。 レース前に思い描いていたのは、予選を通過して、「決勝は3分36秒~37秒を出せれば」。時差によるコンディション調整に加え、佐藤の特徴で「レースを1本走れば、次の日(決勝)は調子が上がる」と考えていただけに、予選で終わったことは「不甲斐ない」思いが残った。 加えて、日本の男子1500mのレベルが少しずつ上がっていたことも体感。佐藤が高校記録を出した5年前、3分30秒台を出していた日本人選手は8人。今年は6月時点で国外拠点の選手を含め、15人を数える。「日本の中距離そのもののレベルが上がっていると反省しました」と振り返った。 そんな佐藤は、1500mを再び取り組んだ理由にスピード強化だけでなく、「おもしろい」とも言っている。 「戦略を立てる難しさがあって、それをしっかり考えないと後半に失速してしまいますが、その面もおもしろく感じます。1周60秒を切るスピード感覚で走ったり、ラストのキック(スパート)を磨いたり、競り合いも楽しい。フィジカルとフィジカルのぶつかり合いもそうですね。瞬発力とスピードを磨くというのが、今後にもつながるのですごく楽しみでもあります」 [caption id="attachment_211285" align="alignnone" width="800"]
ナイキ・ペガサス42を手に取る佐藤[/caption]
「苦しさを乗り越えたとき、絶対成長できる」
駒大在学中から時期をみて米国で練習し、試合にも出場していた佐藤。そして、駒大・大八木弘明総監督によるGgoatが立ち上がると、米国・ボルダーやアルバカーキなどに行くことが増え、「プロのチームで活動したい」という思いは強くなった。日本には実業団という多くの中長距離選手にとっては競技に打ち込む安定した環境がある。しかし、佐藤は、あえて違う道を選択。米国行きを「選ぶことは勇気が要りました」。 駒大・大八木弘明総監督からは「大変なことばっかりだと思うけど、自分が選んだ道だからしっかりやりとおして、しっかり頑張って」とエールを送られた。 実は、両親からは佐藤が小学生3、4年生頃に走り始めた頃から「海外に行ってほしい」と言われていたそうだ。「日本というスケールに収まらず、オリンピックなど世界大会でアフリカ系の選手と勝負してほしい」。特に陸上経験者の父親には、そんな願いがあったという。 その中でSwoosh TCで練習することを決めた。Swoosh TCは単なるクラブというよりもランナー、コーチなどによるネットワークを生かし、ユタ州、オレゴン州、アリゾナ州などで活動している。 佐藤はアリゾナ州の標高約2100mにあるフラッグスタッフを拠点にしている。スミス・コーチのもと、その環境やトレーニングを含め、佐藤は「自分にとって合っている」と語る。 さらに、Swoosh TCを選んだ理由に「スパイクもシューズ」を挙げる。トレーニングのポイント練習では「ストリークフライ2」を履いている。「軽くて、ちょっと硬めの反発があってスピードが出しやすい」と佐藤。さまざまな練習に応じてシューズを替えているが、「脚の不調が減っている感じ」と言う。日本選手権でのスパイクは「ビクトリーエリート」を履いた。 トレーニングについては「日本では力を出し切るトレーニングが多く、米国でも出し切る時は出し切りますが、結構余裕を持ちつつ、でも回数が日本と比べたらとても多い内容です」と佐藤。日本でのトレーニングは高強度で走ったあと、レストの時間を長めに確保するが、米国では日本よりも余裕を持ったぺースで、そのポイント練習の頻度を増やしている。「日本と違っておもしろい」と話す。 また、ジョグについても「質の高いゾーンでのボリュームが多い」と佐藤。特にLT値(Lactate Threshold/乳酸性作業閾値※乳酸が溜まり身体にたまり始めるタイミング)を意識したトレーニングで、「中高強度」のペースで質の高さ、練習量を増やしている。 また、科学的な取り組みも入れており、例えば、ワークアウト等の途中で乳酸値を測定。その内容次第でその後のペースを変えたりする。佐藤によると、強度の高いワークアウトは週5回。月曜に2回、木曜に2回、土曜に1回だそうだ。1日2回のトレーニングはヤコブ・インゲブリグトセン(ノルウェー)らも行っている「二重閾値走」のような内容という。 トレーニングだけでなく、言葉の壁や、練習後の食事作りなど、これから慣れる必要なものは多い。「苦しさもありますけど、それを乗り越えた時は絶対成長できるとわかっているので、頑張ろうという気持ちです」と前向きな姿勢で乗り越えようとしている。また、「自分は結構1人が好きなので」と寂しさは感じないという。日曜はオフだが、「走らなくてもバイクを漕いだりします。ちょっと動いたほうが、血液循環が良くなったり、疲労が取れると思うので」と、次のトレーニングへの準備に備えている。大学時代の経験で「選択肢が増えた」
高校時代は1500m、3000m、5000mで高校新記録を打ち立て、駒大に進学した佐藤。トラックでは1年時の22年にはU20世界選手権5000m、2年時の翌23年のアジア大会5000mにそれぞれ出場した。 24年1月にはショートトラック5000m(1周200m)で13分09秒45をマークしている。この記録はショートトラックでは日本最高で、屋外を含めても大迫傑が2015年に出した日本記録(13分08秒40)に次ぐ歴代2位。また、10000mでも23年11月に27分28秒50の自己ベストで走っている。 駅伝でも活躍。出雲駅伝では1年時の2区で区間新と圧巻の学生駅伝デビューを飾ると2年時も2区で区間賞。全日本大学駅伝では1年時は2区で区間2位ながら従来の区間記録を更新。2年時は区間賞&区間新の快走を見せた。 箱根駅伝は、1年時こそ胃腸炎で走ることはなかったが、2年~4年時まで3年連続出場。3年時は恥骨の疲労骨折が長引き、約10ヵ月ぶりの復帰レースの中で7区区間新。4年時は大会1ヵ月前に左大腿骨の疲労骨折が判明したものの、10区を区間新で打ち立てた。「自分でもよく走ったなと思います」と振り返る 大八木総監督には、「5000mや10000mが適性距離」と言われて、本人もその自覚はあるが、大学駅伝を経験し、「自分の選択肢が増えました。短い距離無理かなと思っていましたが、案外ハーフぐらいまでの距離まで走れることがわかったのは良かったです」。2032年ブリスベン五輪までトラックで
当面は中距離を軸にしつつ、来年は5000m出場も考えているという。来年の北京世界選手権の参加標準記録は1500m3分30秒00、5000m12分50秒00。東京世界選手権の参加標準記録(1500m3分33秒00、5000m13分01秒00)よりもタイムは上がり、現在の日本記録との差は大きく広がった。 現在の佐藤の実力にとっても、まだまだその差は大きい。しかし、前向きに挑戦していく。「大学時代は、5000m12分台や1500m3分33秒は意識できなかった」そうだが、現在のチームに入り「一緒に練習していくと、『このぐらいの練習ができれば、このぐらいタイムで上がってきそう』と考えられるのでありがたいです」。 そして、2年後のロサンゼルス五輪では「1500mと5000mの2種目で出たい」という目標を立てている。「北京世界選手権と同じぐらいの参加標準記録になるかもしれないが、そのぐらいを突破できるようにしたい」と意気込む。 2032年ブリスベン五輪までトラックレースを中心で行くという。その上で「将来はマラソンを走ってみたい」と佐藤。「陸上の長距離をやっているからには、ゆくゆくはマラソンをやってみたいと誰もが思うんじゃないでしょうか。今はトラックをやっていますが、年齢を重ねるといずれはスピードが衰えてくると思いますし、長い距離に挑戦したいです」と、ランナーとしての最終域まで思いを巡らせている。 今後はプリフォンテーン・クラシック(7月3日、4日/米・ユージン)の2マイルに出場する予定。佐藤は「通過の3000mも公認されるので、日本記録を更新したいです」と意気込む。3000mの日本記録は5月中旬に森凪也(Honda)が出した7分38秒98。世界という大きな舞台を目指して、佐藤の挑戦はまだ始まったばかりだ。 文/井上敦 [caption id="attachment_211280" align="alignnone" width="800"]
ロサンゼルス五輪への過程を示した佐藤[/caption] RECOMMENDED おすすめの記事
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