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2026.01.29

最後の箱根路/帝京大・島田晃希「そこまでビビらずに走れた」 殊勲の走りで大逆転シード獲得につなげる

3区区間5位で逆転シードへの反撃の狼煙を上げた帝京大・島田晃希

第102回箱根駅伝で力走した選手たちがいる。優勝を手にしたり、区間賞に輝いたりした選手以外にもそれぞれの思いを胸に、タスキをつないだ。最終学年として迎えた選手たちの“最後”の奮闘を紹介する。

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2区を終えて最下位に沈む

第102回箱根駅伝の2区を終えた時点で、帝京大は最下位に沈み、苦しいレースを強いられていた。

「集団で来ていたら集団の中でレースを進めて、後半に前に出ようと考えていました。追う展開だった場合は、最初は落ち着いて入って、残り10kmで上げようと思っていましたが、自分も想定していない順位だったので……」。3区・島田晃希(4年)にとっても、最下位でタスキを受けるのはまさかの展開だった。

島田が戸塚中継所を出発したのは、先頭の城西大から遅れること8分59秒。1つ前の19位を走る立教大とも1分38秒差がついていた。2区であと1分01秒遅かったら、早くも繰り上げスタートという状況だった。

「最初は、前が車(運営管理車)も何も見えなかったので、とりあえず前が見えるところまで行こうと思って、最初から突っ込みました」。前も見えない中で単独走になったものの、島田が動じることはなかった。

島田は12月29日の区間エントリーでは補員に登録されていた。1週間前の12月26日に富津・千葉で実施した実戦形式の10kmタイムトライアルでは28分40秒で走っており、調子は良かった。

中野孝行監督の中では1区に島田を起用するプランもあったが、原悠太(3年)も好調で、10kmTTを28分47秒で走破。「島田は万全でした。島田が1区ならめちゃくちゃ安心感があるんだけど、1区はそんなに差がつかないと思ったので、島田を1区に起用するのはもったいないと考えました。島田は3区のほうが起用方法としては良いのかな」と考えていた。

そう考えた中野監督は、原を1区に起用し、島田を3区に回す。本来であれば、3区は上位に進出するための“攻め”の区間であり、自信をもって島田を配していた。ところが思わぬ出遅れを喫してしまう。

「もう半分開き直りで、『かなりやられてくるから、自分のレースをすればいいぞ』『チームよりも自分の区間賞を目指したほうがいいんじゃないか』などといった話をしたと思います」。中野監督は電話でそんな声かけをした。

すると、島田は「時計を見ないで走るので、1kmと3km(の通過タイム)だけ教えてください」と応えたという。

「それはいつも教えていることです。ということは、時計を忘れたのかと思ったのですが、意外と島田は冷静でした」と中野監督は振り返る。前を走る立教大のユニフォームはなかなか見えてこなかったが、島田は懸命に前を追った。

[caption id="attachment_127554" align="alignnone" width="800"] 3区区間5位で逆転シードへの反撃の狼煙を上げた帝京大・島田晃希[/caption]第102回箱根駅伝で力走した選手たちがいる。優勝を手にしたり、区間賞に輝いたりした選手以外にもそれぞれの思いを胸に、タスキをつないだ。最終学年として迎えた選手たちの“最後”の奮闘を紹介する。

2区を終えて最下位に沈む

第102回箱根駅伝の2区を終えた時点で、帝京大は最下位に沈み、苦しいレースを強いられていた。「集団で来ていたら集団の中でレースを進めて、後半に前に出ようと考えていました。追う展開だった場合は、最初は落ち着いて入って、残り10kmで上げようと思っていましたが、自分も想定していない順位だったので……」。3区・島田晃希(4年)にとっても、最下位でタスキを受けるのはまさかの展開だった。島田が戸塚中継所を出発したのは、先頭の城西大から遅れること8分59秒。1つ前の19位を走る立教大とも1分38秒差がついていた。2区であと1分01秒遅かったら、早くも繰り上げスタートという状況だった。「最初は、前が車(運営管理車)も何も見えなかったので、とりあえず前が見えるところまで行こうと思って、最初から突っ込みました」。前も見えない中で単独走になったものの、島田が動じることはなかった。島田は12月29日の区間エントリーでは補員に登録されていた。1週間前の12月26日に富津・千葉で実施した実戦形式の10kmタイムトライアルでは28分40秒で走っており、調子は良かった。中野孝行監督の中では1区に島田を起用するプランもあったが、原悠太(3年)も好調で、10kmTTを28分47秒で走破。「島田は万全でした。島田が1区ならめちゃくちゃ安心感があるんだけど、1区はそんなに差がつかないと思ったので、島田を1区に起用するのはもったいないと考えました。島田は3区のほうが起用方法としては良いのかな」と考えていた。そう考えた中野監督は、原を1区に起用し、島田を3区に回す。本来であれば、3区は上位に進出するための“攻め”の区間であり、自信をもって島田を配していた。ところが思わぬ出遅れを喫してしまう。「もう半分開き直りで、『かなりやられてくるから、自分のレースをすればいいぞ』『チームよりも自分の区間賞を目指したほうがいいんじゃないか』などといった話をしたと思います」。中野監督は電話でそんな声かけをした。すると、島田は「時計を見ないで走るので、1kmと3km(の通過タイム)だけ教えてください」と応えたという。「それはいつも教えていることです。ということは、時計を忘れたのかと思ったのですが、意外と島田は冷静でした」と中野監督は振り返る。前を走る立教大のユニフォームはなかなか見えてこなかったが、島田は懸命に前を追った。

「島田が殊勲」と中野監督

「丸亀で(ハイペースのレースを)経験していたので、そこまでビビらずに走れたと思います」昨年2月に香川丸亀国際ハーフマラソンと併催された日本学生ハーフマラソン選手権で、1時間0分56秒の帝京大記録を打ち立てている。その経験があったからこそ、思い切ってレースを進めることができた。力走する島田の姿は、指揮官をも勇気づけた。「繰り上げを覚悟していましたし、2区を終えた時点では、目標の修正を考える余裕もなかったです。でも、島田の走りを見て、シード権は取れるという気持ちが大きくなりました。なぜかそんな根拠のない自信がありました」とうなずく。結局、島田は順位を上げることはできなかった。それでも、区間5位の快走。戸塚で1分38秒あった立教大との差を、平塚では26秒まで縮めた。これぞ“世界一諦めの悪いチーム”を自称するチームの真骨頂。2区を終えた時点で10位に7分07秒差とシード権獲得は絶望的な状況だったが、3区の島田が反撃の狼煙を上げると、4区以降の走者も区間ひとケタ順位で続く。順位変動を示す折れ線グラフは右肩上がり。そして、最終区でとうとうシード権圏内に浮上し、9位で大手町にフィニッシュした。「タスキを受け取った時には、自分が暴走したらもう終わりだなと思いましたが、たぶんみんなも同じ気持ちだったと思います。そんなプレッシャーがかかるなか、本当にみんなよく走ったと思います」。レースを終えた島田は、こんな言葉でチームメイトを称えていた。そのポテンシャルの高さを認める中野監督は、これまで島田をなかなか誉めることはなかった。だが、今回ばかりは「島田が殊勲」と、その走りを高く評価している。「8区の松井(一、2年)や9区の尾崎(仁哉、4年)、10区の鎗田(大輝、4区)が注目されましたけど、たまたま逆転したのが鎗田なだけであって、島田から始まっています。順位を上げていないし目立ってもいないんですけど、島田が抵抗してくれたから、この順位がある」中野監督から島田へ向けた最大の賛辞だ。数字だけでは判断できないかもしれないが、それほど貢献度は大きかった。[caption id="attachment_127554" align="alignnone" width="800"] 一つ前を行く立教大との差を1分以上縮めた島田[/caption]島田晃希(しまだ・てるき:帝京大)/2004年1月25日生まれ。三重県津市出身。三重・高田高卒。自己ベストは5000m13分56秒34、10000m28分31秒58、ハーフ1時間0分56秒。文/和田悟志

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