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2025.12.28

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箱根駅伝Stories/人一倍練習をこなして成長した駒大・伊藤蒼唯 夏場のケガを乗り越え「身体で感覚を思い出せた」

ケガを乗り越え伊勢路でブレイク

1年時の箱根駅伝での区間賞以降、駅伝でも個人レースでも安定した成績は残せてきたが、「1位」を取り切れていなかった。呼応するように、チームも学生駅伝が4大会連続の2位。「勝ち切る」というテーマを成就したことは、伊藤個人にとっても、チームにとっても、重要なレースになった。

また、春に5000mの自己記録を13分39秒72、13分32秒88と2度にわたって更新している。これはショートトラックの日本記録を持つ佐藤圭汰に次ぐチーム2番目となる。ただ、その直後に仙骨のケガ。日本選手権5000mへの初出場を目前に、快進撃は足踏みとなる。

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練習の場に居続けた伊藤に、珍しく発症した故障。「日本選手権に出場できないことになり、最初のほうはかなり気持ちが落ちていました。ただ、夏を超えたら駅伝が始まる。そこに向けて復帰しようとトレーニングをしてきました」と振り返る。

夏は治療、リハビリに取り組み、これまでにない時間を過ごした。9月から本格的な練習を再開し、出雲駅伝は7割の状態で4区2位だった。

出雲をステップに、状態を上げた全日本大学駅伝は5区・区間新。優勝を決定づける走りを見せ、大会MVPにも輝いている。

故障前よりも、一回り強くなった伊藤の姿があった。「故障期間は長かったですが、故障前の練習の感覚を身体で思い出すことができました。故障中は走りのバランスをうまく取れるような身体作りに取り組みました。復帰後、バランスが整っている感覚を実感しています」と話す。

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優れた選手は、ケガの停滞をプラスに転換することができる。

最後の箱根駅伝は3度目の6区か、平地の重要区間か。伊藤がいる区間は、チームを浮上させる力を持つ。

伊勢路では5区でゲームチェンジャーとしての役割を果たした

文/奥村 崇

[caption id="attachment_194415" align="alignnone" width="800"] 11月の全日本大学駅伝で大会MVPに輝いた駒大・伊藤蒼唯[/caption] 新春の風物詩・第102回箱根駅伝に挑む選手やチームを取り上げる「箱根駅伝Stories」。学生三大駅伝最終決戦に向かうそれぞれの歩みや思いを紹介する。

トップ選手が集まる駒大で代名詞が

駒大・伊藤蒼唯(4年)の代名詞は「練習」。トップ選手が集まる駒大の中でも、人一倍練習してきた。 名を知られていなかった1年時、11月にいきなり10000m28分28秒15を出してメンバー入り。現在では1年生でも珍しくないタイムだが、名選手ぞろいの当時の駒大でも4番目にあたり、佐藤圭汰、山川拓馬らに先んじる同期1番乗りの28分台だった。 いきなりの6区区間賞、それもチームただ一人の区間賞につながっていくのだが、その背景はやはり「練習」だ。伊藤は1年時から駒大の重厚なトレーニングをこなし切った。 3年時になると、1学年上の篠原倖太朗(現・富士通)の隣を定位置にする。多くのポイント練習を2人で行った。個人のジョグでも隣をついて回り、走りながらいろんな話も聞いた。 篠原はチームを強くしたい思いから一歩降り、伊藤はその向上心とこれまでの練習で培った土台を使って少し上ったところに、2人の練習の場があった。篠原が驚異的なハーフマラソン学生記録を樹立していく過程を、共に走ったのである。 今季の伊藤を語るポイントは2つある。一つは、ワールドユニバーシティゲームズ代表がかかった日本学生個人選手権内での代表選考レース10000mでの1着フィニッシュだ。そして、もう一つは、その後のケガだ。 4月のレースはタイム差以上に圧勝の内容だった。「周りの様子をうかがって、終始余裕を持ってレースを展開できました」。レース内の余裕は、篠原との交流を経てスピードの上限値が上がっていたことによる。

ケガを乗り越え伊勢路でブレイク

1年時の箱根駅伝での区間賞以降、駅伝でも個人レースでも安定した成績は残せてきたが、「1位」を取り切れていなかった。呼応するように、チームも学生駅伝が4大会連続の2位。「勝ち切る」というテーマを成就したことは、伊藤個人にとっても、チームにとっても、重要なレースになった。 また、春に5000mの自己記録を13分39秒72、13分32秒88と2度にわたって更新している。これはショートトラックの日本記録を持つ佐藤圭汰に次ぐチーム2番目となる。ただ、その直後に仙骨のケガ。日本選手権5000mへの初出場を目前に、快進撃は足踏みとなる。 練習の場に居続けた伊藤に、珍しく発症した故障。「日本選手権に出場できないことになり、最初のほうはかなり気持ちが落ちていました。ただ、夏を超えたら駅伝が始まる。そこに向けて復帰しようとトレーニングをしてきました」と振り返る。 夏は治療、リハビリに取り組み、これまでにない時間を過ごした。9月から本格的な練習を再開し、出雲駅伝は7割の状態で4区2位だった。 出雲をステップに、状態を上げた全日本大学駅伝は5区・区間新。優勝を決定づける走りを見せ、大会MVPにも輝いている。 故障前よりも、一回り強くなった伊藤の姿があった。「故障期間は長かったですが、故障前の練習の感覚を身体で思い出すことができました。故障中は走りのバランスをうまく取れるような身体作りに取り組みました。復帰後、バランスが整っている感覚を実感しています」と話す。 優れた選手は、ケガの停滞をプラスに転換することができる。 最後の箱根駅伝は3度目の6区か、平地の重要区間か。伊藤がいる区間は、チームを浮上させる力を持つ。 [caption id="attachment_194415" align="alignnone" width="800"] 伊勢路では5区でゲームチェンジャーとしての役割を果たした[/caption] 文/奥村 崇

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