2025.12.27
第102回東京箱根間往復大学駅伝は2026年1月2日に往路、3日に復路の全10区間217.1kmで行われる。
今回も前回10位までのシード10校と予選会を通過した10校、オープン参加の関東学生連合チームを加えた計21チームが参加。総合3連覇を狙う青学大、2年ぶりに全日本大学駅伝を制した駒大、出雲駅伝V2の國學院大、全日本2位の中大、出雲2位の早大を中心に混戦模様となっている。
いよいよフィナーレを迎える今季の学生駅伝で、大手町で最後に笑うのはどの大学か!? 月陸Online独自の最新データ(12月26日判明分)と全チームへの取材情報も踏まえて、優勝争いから全チームの戦いの行方を占う。
ここまでの駅伝シーズンを総括
まずは今季の駅伝シーズンを振り返る。各校夏合宿の疲労も見られた10月の出雲駅伝では、國學院大が2連覇を達成。3区・野中恒亨(3年)が留学生と渡り合って区間2位と好走し、4区・辻原輝(同)が区間新記録の走りで逆転した。前田康弘監督が「重さの残った状態」と明かしつつも、穴のない走りで強さを示した。
2区で駅伝主将の山口智規(4年)が学生三大駅伝初の区間賞に輝いた早大が2位に続き、全区間を区間5位以内でつないだ創価大が過去最高の3位に食い込んだ。一方で、駒大が5位、青学大は7位、中大は10位。いずれも中盤までに流れを失っている。
11月の全日本大学駅伝では5区に主軸の伊藤蒼唯(4年)を配した駒大が、狙い通り5区で逆転。7区・佐藤圭汰、8区・山川拓馬の4年生リレーで悠々と逃げ切った。出雲で苦戦した中大も先頭争いを繰り広げ、アンカー・溜池一太(4年)が1人を抜いて2位でフィニッシュ。7区・黒田朝日(4年)が区間新をマークした青学大が3位、2連覇を狙った國學院大が4位、早大が5位だった。
両駅伝で特筆すべき点は、上位3校の顔触れが入れ替わったことだ。今季の学生駅伝が文字通り“混戦”だということを示しており、夏合宿の疲労が抜けた全日本の結果がより箱根駅伝に近い結果を示していると見ていいだろう。
その後は各種競技会で好記録が連発。11月の八王子ロングディスタンスでは國學院大・野中が10000mで今季日本人学生最高となる27分36秒64をマークすると、中大・岡田開成(2年)は27分37秒06。同日のMARCH対抗戦では青学大が黒田の27分37秒62を筆頭に、計5人が27分台を叩き出している。
上尾シティハーフでは國學院大・青木瑠郁(4年)が1時間0分45秒で優勝すると、ルーキー・野田顕臣がU20日本最高となる1時間1分29秒で走破。出雲駅伝で振るわなかった駒大・桑田駿介(2年)が1時間0分48秒で2位に入るなど復調の気配を見せた。
最新データから見る勢力図とは
次に月陸Online独自の最新データ(12月26日判明分)から今回の勢力図を探りたい。表1は全チームエントリー上位10人の5000m、10000m、ハーフマラソンの平均タイムをまとめたものだ。中大が5000mと10000m部門でトップに立ち、10000mの平均は驚異の27分55秒98。青学大が両部門ともに2位につけ、10000m平均では27分台に迫る28分01秒07となっている。
ハーフマラソン部門では國學院大が1時間1分20秒で1位。駒大、帝京大までが平均で1時間1分台に突入し、中大が4位、早大が5位と続いている。そして、各部門の順位を合算して総合力評価としたのが、表2。スピードに勝る中大がトップにつけ、ハーフで順位を上げた國學院大が2位、
第102回東京箱根間往復大学駅伝は2026年1月2日に往路、3日に復路の全10区間217.1kmで行われる。
今回も前回10位までのシード10校と予選会を通過した10校、オープン参加の関東学生連合チームを加えた計21チームが参加。総合3連覇を狙う青学大、2年ぶりに全日本大学駅伝を制した駒大、出雲駅伝V2の國學院大、全日本2位の中大、出雲2位の早大を中心に混戦模様となっている。
いよいよフィナーレを迎える今季の学生駅伝で、大手町で最後に笑うのはどの大学か!? 月陸Online独自の最新データ(12月26日判明分)と全チームへの取材情報も踏まえて、優勝争いから全チームの戦いの行方を占う。
ここまでの駅伝シーズンを総括
まずは今季の駅伝シーズンを振り返る。各校夏合宿の疲労も見られた10月の出雲駅伝では、國學院大が2連覇を達成。3区・野中恒亨(3年)が留学生と渡り合って区間2位と好走し、4区・辻原輝(同)が区間新記録の走りで逆転した。前田康弘監督が「重さの残った状態」と明かしつつも、穴のない走りで強さを示した。
2区で駅伝主将の山口智規(4年)が学生三大駅伝初の区間賞に輝いた早大が2位に続き、全区間を区間5位以内でつないだ創価大が過去最高の3位に食い込んだ。一方で、駒大が5位、青学大は7位、中大は10位。いずれも中盤までに流れを失っている。
11月の全日本大学駅伝では5区に主軸の伊藤蒼唯(4年)を配した駒大が、狙い通り5区で逆転。7区・佐藤圭汰、8区・山川拓馬の4年生リレーで悠々と逃げ切った。出雲で苦戦した中大も先頭争いを繰り広げ、アンカー・溜池一太(4年)が1人を抜いて2位でフィニッシュ。7区・黒田朝日(4年)が区間新をマークした青学大が3位、2連覇を狙った國學院大が4位、早大が5位だった。
両駅伝で特筆すべき点は、上位3校の顔触れが入れ替わったことだ。今季の学生駅伝が文字通り“混戦”だということを示しており、夏合宿の疲労が抜けた全日本の結果がより箱根駅伝に近い結果を示していると見ていいだろう。
その後は各種競技会で好記録が連発。11月の八王子ロングディスタンスでは國學院大・野中が10000mで今季日本人学生最高となる27分36秒64をマークすると、中大・岡田開成(2年)は27分37秒06。同日のMARCH対抗戦では青学大が黒田の27分37秒62を筆頭に、計5人が27分台を叩き出している。
上尾シティハーフでは國學院大・青木瑠郁(4年)が1時間0分45秒で優勝すると、ルーキー・野田顕臣がU20日本最高となる1時間1分29秒で走破。出雲駅伝で振るわなかった駒大・桑田駿介(2年)が1時間0分48秒で2位に入るなど復調の気配を見せた。
最新データから見る勢力図とは
次に月陸Online独自の最新データ(12月26日判明分)から今回の勢力図を探りたい。表1は全チームエントリー上位10人の5000m、10000m、ハーフマラソンの平均タイムをまとめたものだ。中大が5000mと10000m部門でトップに立ち、10000mの平均は驚異の27分55秒98。青学大が両部門ともに2位につけ、10000m平均では27分台に迫る28分01秒07となっている。
[caption id="attachment_186674" align="alignnone" width="800"]
■表1 エントリー選手上位10人の5000m、10000m、ハーフマラソンの平均タイム[/caption]
ハーフマラソン部門では國學院大が1時間1分20秒で1位。駒大、帝京大までが平均で1時間1分台に突入し、中大が4位、早大が5位と続いている。そして、各部門の順位を合算して総合力評価としたのが、表2。スピードに勝る中大がトップにつけ、ハーフで順位を上げた國學院大が2位、
青学大と駒大が同点で並び、創価大、帝京大と続いている。早大は10000mの出場機会が乏しく、平均タイムでは最下位となっていることが響いて9位にとどまった。 [caption id="attachment_186674" align="alignnone" width="800"]
■表2 総合力評価[/caption]
さらにエントリー選手を独自の基準でランク分けし、戦力分布としてまとめたのが表3だ。ランクづけで選手層の面では中大が14人、青学大が13人で争い、國學院大が11人、駒大が10人、創価大が9人で続く。エース格の選手を示すSランクでは中大が3人、青学大、駒大、國學院大、早大が2人となっている。
[caption id="attachment_186674" align="alignnone" width="800"]
■表3 各チームの戦力[/caption]
これらのデータでは、中大、國學院大、青学大、駒大がやや抜けており、これまでの駅伝成績からも優勝候補として位置づけられる。さらに10000mのタイムが足かせとなっている早大も出雲駅伝2位の実績や強化の戦略、山区間の実績などから早大も加え、“5強”として捉える。
5強の現在地
“5強”の中でも直近11年で8度の優勝と、チームとして箱根路での経験値を最も蓄えているのが青学大だ。前回Vメンバーから6人が卒業し、戦力ダウンがささやかれた中で、出雲では7位。全日本でもやや出遅れながらも6区・飯田翔大(2年)の区間賞、7区・黒田朝日(4年)の区間新の快走で巻き返し、3位でフィニッシュした。
[caption id="attachment_186674" align="alignnone" width="800"]
3連覇を狙う青学大。宇田川瞬矢(左)と塩出翔太といった4年生も力がある(写真は全日本大学駅伝)[/caption]
上り調子に加えて、“黒田頼み”から脱却しつつある。11月のMARCH対抗戦10000mでは黒田に続いて、折田壮太(2年)、宇田川瞬矢(4年)、飯田、佐藤愛斗(2年)が27分台をマーク。平均タイムこそ中大に劣るが、それでも28分01秒07とハイレベルだ。原晋監督は「過去のチームと同等、それ以上の力があることを証明できたと思います」と強調している。
一方で、12月の会見で指揮官が不安要素に挙げたのが「経験者が少ないところ」だ。連続区間新となった5、6区はともに卒業し、下級生を起用しそう。前回8区区間賞の塩出翔太(4年)と10区区間賞の小河原陽琉(2年)は信頼も厚い。カギとなるのは強力な2年生世代だろう。
青学大を除く5強のうち直近10年で総合優勝を経験しているのが駒大だ。復路優勝を達成した前回経験者9人が残る点も、大きな強みだ。特に主将の山川拓馬、佐藤圭汰、伊藤蒼唯、帰山侑大の4年生4本柱が強力。山川は2度経験した5区かエース区間の2区、伊藤は前回区間2位の6区か平地区間、佐藤はその状態次第で競り合いの往路か、淡々と走れる復路での起用を考えるだろう。
ただ、山区間については山川、伊藤を起用すると、藤田敦史監督は「そのままでは成長がないです」とも話す。夏場には坂口雄哉(2年)が山川と同じ練習をこなしており、上り適性も十分。山川、伊藤が平地に回れれば、大きな武器になる。
前回経験者の村上響、安原海晴、小山翔也といった3年生や谷中晴(2年)は、2年ぶりの全日本優勝を経験するなど力強さを増している。加えて、出雲で3区区間9位と苦戦を強いられ、全日本は出走メンバーから外れた桑田駿介(2年)が上尾ハーフで序盤から先頭を引っ張り続けて2位。勝ちきれなかった悔しさはあったものの、箱根駅伝に向けては明るい材料だ。
優勝経験からも青学大と駒大の2校がややリードを奪っているが、総合力に厚みが増している國學院大も力がある。ハーフでいずれも1時間0分台を持つ主将の上原琉翔、青木瑠郁(ともに4年)、野中恒亨、辻原輝(ともに3年)の4人と、マラソンで2時間8分台を持つ高山豪起(4年)の5本柱がチームを牽引する。
出雲、全日本とともに留学生と渡り合った野中が、11月に10000mで27分36秒64をマーク。一躍エース候補へと成長を遂げ、自身も山区間以外はどこでも走る意向だ。前田康弘監督も往路から5本柱を投入し、レースの主導権を握りに行くだろう。特に野中は攻撃に転ずる区間での起用が濃厚だ。
12月の合同会見で、前田監督が「山をしっかり育成できたかが検証される」と言及したように、初の総合優勝に向けて最大の壁は山区間。上原や高山といった経験者もいるが、下級生を抜擢しそう。山で上位戦線に踏みとどまれれば、ハーフ上位平均トップのデータが示すとおり、復路でも手堅い継走で逃げ切りを図れる。
中大はデータ面で圧倒的な戦力だ。上位10人の平均では5000m13分33秒09、10000mは驚異の27分55秒98。藤原正和駅伝監督が掲げてきた「27分台10人」には届かなかったものの、その充実ぶりは5強でも群を抜く。駅伝シーズンは出雲では10位と苦戦したものの、全日本では2位まで躍進。箱根に向けても上昇曲線を描く。
夏合宿では箱根駅伝を見据えて距離を踏み、他大学の指揮官も警戒を強めている。前回のように1区からの飛び出しは難しく、スピードを生かして他校と競り合いながらトップを奪いたい。主将の吉居駿恭と溜池一太の4年生のダブルエースを筆頭に、10000mチーム内トップの岡田開成(2年)や前回3区区間賞の本間颯(3年)も健在だ。
藤田大智、柴田大地(ともに3年)、佐藤大介(2年)も強力。往路に並べるだけでも他校にとっては脅威で、復路にも27分台ランナーを回せる。30年ぶりの総合優勝に向けて最大ポイントは、前回は4年生が担った山区間。5区は夏合宿の山上りトライアルで上位を入った折居幸成(4年)、6区は佐藤蓮(3年)が有力候補で、藤原監督も計算が立っている。
早大はデータ面ではやや劣るものの、5000mやハーフのタイムで比較すると5番目。駅伝主将の山口智規(4年)を筆頭に、ロードに強い工藤慎作(3年)、強力なルーキー・鈴木琉胤と佐々木哲がチームを活気づけてきた。前回往路3位のメンバーのうち4人が今回も登録されており、その配置がベースになりそうだ。
2区に回りそうな山口智は、2年前が区間4位、前回はハイペースで入って区間12位。出雲で学生三大駅伝初となる区間賞に輝くなど、その爆発力が往路の流れを決めるだろう。5区にはワールドユニバーシティゲームズのハーフマラソン金メダリスト・工藤が満を持して区間記録に挑戦。全日本8区でOB・渡辺康幸の区間日本人最高記録を更新している。
前回3区区間3位の山口竣平(2年)はケガで出遅れていたものの、ここに来て状態を上げてきている。花田勝彦駅伝監督が「往路で勝たないと優勝につながらないと思っています」と語るように、経験者が多数残る往路でのVは必須。選手層では他の4校と比べると薄さは否めず、往路でなるべくリードを奪っておきたいところだ。
5強に続く存在は
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上位を狙う創価大・野沢悠真、帝京大・楠岡由浩、順大・吉岡大翔[/caption]
「5強」はやや抜けているものの、混戦模様なだけに上位候補が崩れると、次の層が一気に順位を上げる可能性がある。データによる選手層と今季の成績から「5強崩し」の候補に挙がるのは出雲3位の創価大、全日本で5強に次ぐ6位に入った帝京大、主軸が強力な前回6位の城西大だ。
総合力評価では5番手で、文字通り“5強崩し”を果たしている創価大。今季は、飛び抜けたエースこそ不在だが、出雲で全員が区間5位以内で走り切ったように層は厚い。各選手とも自らがエースと呼ばれる存在になるべく、切磋琢磨している。
出雲出走の6人がチームの主軸だ。関東インカレ2部ハーフで2、3位の野沢悠真(4年)と山口翔輝(2年)は長い距離に適性がある。どちらかが経験のある5区を担うことになりそうで、5強を崩すためにも避けたいのは序盤での出遅れだ。
留学生のスティーブン・ムチーニ(3年)は八王子ロングディスタンスで10000m27分34秒32の自己新をマークするなど上向き。日本選手権5000mで決勝に進んだ小池莉希(3年)は次期エースとしての期待もかかる。榎木和貴監督は「区間5位以内でつなぎたい」と話しており、出雲のようなそつのない走りが理想だ。
帝京大は手堅くつなぐスタイルは健在だが、楠岡由浩(3年)が一気にブレイク。全日本の2区区間タイ記録で区間賞を獲得すると、11月には10000mで帝京大初の27分台となる27分52秒09をマークした。島田晃希(4年)もハーフで1時間0分56秒を持ち、浅川侑大(3年)や原悠太(同)は1時間1分台とハーフの平均は3位につけている。
2区は上り適正がある楠岡、島田のどちらかが入りそうで、5区は前々回経験者の尾崎仁哉(4年)がいるのが頼もしい。主将の柴戸遼太(4年)も少しずつ調子を上げている。6区にも前回区間4位の廣田陸(3年)が控えるなど復路には自信があるだけに、往路を上位で終えれば過去最高順位が見えてくる。中野孝行監督は「全区間で帝京大記録を破れると思っている」と、層の厚さに自信を示す。
城西大は総合力評価では10位タイにとどまっている。出雲は6位だったが、全日本では9位でシード権を落とした。しかし、その原因だった4年生世代が復調。エース・斎藤将也はケガでトラックは出遅れたが、全日本は最終区で区間5位。3人抜きでロードの強さを改めて示した。前回は直前の体調不良がありながら5区区間3位と力走しており、今回は区間賞候補に挙がる。
ヴィクター・キムタイは出雲3区で3年連続区間賞に輝くなど、今季も好調。前回9区区間賞の桜井優我や主将・山中達貴、鈴木健真といった主力たちも順調に復帰している。6区にも前回区間3位の小林竜輝(2年)がいるなど、箱根駅伝の主要区間で計算できる人材がそろう。櫛部静二監督も「往路を終えて、3番以内にいたい」と、主力を投入しそうだ。
シード争いをリードする4校
ここまですでに8校を挙げた。単純に計算すると、シードに入れるのは残り2校となる。シード争いをリードするのは、総合力評価で7位につける順大、10位タイの東洋大、予選会トップ通過の中央学大、2年連続のシードを狙う東京国際大だ。
前回はアンカーで4校によるシード権争いを展開し、わずか7秒差で次点だった順大。その「1秒」の大切さを日頃の練習から確認して結束を強めている。吉岡大翔(3年)がエース格に成長し、予選会ではチームトップの個人26位と好走。11月に10000mでも28分08秒02の自己新をマークした。
主将の石岡大侑(4年)や長距離区間に適性がある小林侑世(3年)、ルーキー・井上朋哉も予選会でチーム3番手と存在感を示している。全日本では後半区間で順位を上げて、3年ぶりにシード権獲得。本戦に向けて活気づいている。経験者を中心に選手層は厚く、往路をシード圏内で乗り切れば、視界は良好となる。
東洋大は継続中では最長の20年連続シード。今季は夏合宿の回数を1回増やすなど抜本的な改革に着手し、鉾根駅伝を見据えた強化を進めてきた。昨年度の学生三大駅伝未出走だった松井海斗(2年)が出雲1区11位。さらに前回経験者の迎暖人、宮崎優、内堀勇(いずれも2年)も力を伸ばしてきた。
山下りのスペシャリスト・西村真周(4年)は平地の走力もアップ。前回8区区間2位の主将・網本佳悟、前回2区の緒方澪那斗ら最上級生も存在感を示す。前回は最大の6人を当日変更しながらシードを続けた経験者が多く残り、酒井俊幸監督も手応えがありそうだ。
18年ぶりに予選会をトップ通過した中央学大は、前回トップ通過時は本戦で総合3位。そのサプライズの再現は難しいかもしれないが、得意とするハーフの平均タイムでは10番手とシード争いを牽引しそうだ。
主将でエースの近田陽路(4年)が、予選会でチームとしては2年連続となる日本人トップ。市川大世(3年)は主要区間を担えるまでに力を伸ばし、頼もしい存在となった。往路はこの2人を2、3区に並べそうで、やや出遅れがちな1区を乗り切れればシードが近づいてくる。
東京国際大は前回の往路は11位と出遅れたものの、アンカー勝負を制するなど復路で5位と追い上げている。その復路経験者の菅野裕二郎(4年)や大村良紀(同)が軸となる。前回2区で区間記録を打ち立てた大砲のリチャード・エティーリ(3年)も健在。今回はどんな走りを見せるだろうか。
10000m28分17秒70を持つ小柴裕士郎(2年)ら主力は往路での起用が見込まれ、6区は前回経験者の中山拓真(4年)が計算できる。前回は昨年11月に横溝三郎監督が逝去し、胸に喪章をつけて臨んだ選手たち。今回もその思いを継承し、2年連続のシードを死守したい。
シード争いをリードする4校
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強力なエースとなる立教大・馬場賢人、東海大・花岡寿哉、東農大・前田和摩[/caption]
ここまで12校が挙がったが、ここからはシード権への挑戦や、それぞれの目標に向かって戦う8校と関東学生連合チームを見ていく。
総合力評価で12位につけている日大は、平均タイムでは10000m5位、ハーフ8位と十分にシード争いを繰り広げる力を秘める。5000mが21位に停滞しているのは、新雅弘駅伝監督が10000mをベースに、強化を図っているためだ。
予選会個人2位のシャドラック・キップケメイ(3年)は安定感が高く、タフなコンディションにも適応できる。前回経験者8人が残るのも強みで、5、6区も経験者の4年生が控える。そこに予選会チーム日本人トップで3年時から主将を務める中澤星音(4年)が加わるなど、精神的支柱の存在も大きい。往路をうまく乗り切れれば、シード権が見えてくる。
2年ぶりの出場となる東海大も力のある4年生のダブルエースを軸に上位を見据える。今回も2年前と同様、スピードのある兵藤ジュダが1区、主将の花岡寿哉が2区に回りそうで、そこでロケットスタートを決めるのは必須だ。
2年前の経験者でもある鈴木天智(4年)も上尾ハーフで自己記録をマークするなど復調傾向。復路にはロホマン・シュモンと竹割真の4年生2人、南坂柚汰(3年)といった経験者がいるのも強み。前回は山区間で苦戦しただけに、対策がどこまで進んでいるか。
大東大は平均タイムこそあまり上げられず、平均タイムこそ高くないが、上位層の厚さは予選会校でもトップレベルに位置する。10000mでチーム内最速に入濵輝大(4年)、前回2区を担ったエース・棟方一楽(3年)、ハーフで1時間1分08秒を持つ大濱逞真(2年)の3本柱が強力だ。
狙ったレースで結果を残す一方で、やや安定感に欠けるレースが見られるのは課題。しかし、入濵以外出走経験がなかった4年生世代から4人がエントリーされている点は注目だ。昨季のチームは個々の力が高かったものの、空回り。真名子圭監督は今回の4年生が作ってきたチームには期待を寄せている。
選手層に自信があるのは日体大も同じ。11月に10000mで日体大記録を更新した平島龍斗、山崎丞、田島駿介の4年生が軸となる。前回も3人を往路に投入し、往路はシード圏内の10位で終えている。全日本でも最終区までシード争いを繰り広げた経験も大きい。
前回5区で大学最高記録を更新した主将の浦上和樹(4年)が残っているのも強み。総合力に自信があるだけに、主軸の4年生を並べる序盤を乗り切れば、持ち味の粘りの走りで8年ぶりのシード権獲得へ視界が開ける。
2年連続で予選会を3位で通過している山梨学大も楽しみな存在。予選会個人トップのブライアン・キピエゴ(3年)とジェームス・ムトゥク(4年)の安定感が高い。平八重充希(4年)と和田瑛登(3年)の往路経験者に加え、2年連続5区を走ってきた主将・弓削征慶(4年)の存在も頼もしい。
さらに前回は8区で1年生ながら区間3位と好走した阿部紘也(2年)が、予選会で個人10位に入るなど成長。今回は往路での起用が見込まれ、留学生と並べれば上位も見えてくる。1区を好位置でつなぎたいところだ。
立教大は予選会校の中でもSクラスの選手がいるチーム。そのエース・馬場賢人(4年)を欠いた予選会は、11位とわずか17秒差での冷や汗通過となった。ワールドユニバーシティゲームズ・ハーフで4位の馬場は11月に入って練習を再開しており、本戦に向けてどこまで状態を上げられているか注目だ。
駅伝主将として、チームを牽引している國安広人(4年)も1、2年時と2区を経験している実力者。原田颯大(3年)も予選会チーム個人トップと力を伸ばし、全日本6区8位と気を吐いた永井駿(4年)も成長しており、前回3分23秒届かなかったシード権に挑戦する。
強力なエースがいる点は、東農大も同じだ。10000mでU20日本記録の27分21秒52をマークしている前田和摩(3年)の復調とともに、2年ぶりに箱根路へ返り咲いた。前田は今季もレースは全日本選考会と予選会のみに絞ったが、チームのために走る姿勢は徹底している。
予選会を6位で通過したように、個人21位の栗本航希(3年)や同27位の原田洋輔(4年)、同30位の深掘優(同)らが成長。決して、前田頼みのチームではなくなっている。前田は万全でれば2区を走ることになりそうで、他校のエースとの競り合いも見ものだ。
神奈川大は前回経験者が全員残るのが最大の強み。エースの宮本陽叶(4年)と主将の酒井健成(同)が大黒柱。さらに中間層の底上げも進み、前回6区区間6位と好走した上田航大(2年)が予選会はチーム2番手でフィニッシュするなど1区候補に浮上した。
中野剛監督は3区までをセットとして考えており、そこまでにシード圏内で進めていたい考え。5区にも前回経験者の三原涼雅(3年)が健在だ。シード権を獲得すれば9年ぶりで、序盤から流れに乗ることが必須だ。
今回から選考方法が変更された関東学生連合チームは、総合力評価では8番目につけた。選考方法の変更により、各大学とも状態の良い選手を送り出すことができ、ハーフマラソン以外では平均タイムでも10番以内に入っている。
予選会で敗退校の選手の中で個人トップだった秋吉拓真(東大4)は、前回は8区で区間7位相当の力走を見せた。法大のエース・大島史也(4年)、ハーフで力のある上山詩樹(仙台3)や古橋希翁(駿河台大3)ら力のあるランナーがそろう。チーム内選考をポイント化するとした坪田智夫監督(法大駅伝監督)の区間配置も注目だ。
12月29日に区間エントリー10人と補員6人が発表。1月2日の往路、3日の復路スタートの1時間10分前(6時50分)にメンバー変更が認められる。往路、復路合わせて当日変更は6人までで、1日最大4人まで変更できる。
文/片井雅也※記事やデータの無断転載、複写を禁止します。
エントリー選手の自己ベスト30傑
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■表4 エントリー選手5000m30傑[/caption]
[caption id="attachment_186674" align="alignnone" width="800"]
■表5 エントリー選手10000m30傑[/caption]
[caption id="attachment_186674" align="alignnone" width="800"]
■表6 エントリー選手ハーフマラソン30傑[/caption] RECOMMENDED おすすめの記事
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【大会結果】第37回全国高校駅伝・女子(2025年12月21日)
2025.12.14
【大会結果】第33回全国中学校駅伝男子(2025年12月14日)
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2025.12.21
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◇2025富士山女子駅伝(12月30日/静岡・富士山本宮浅間大社前~富士総合運動公園陸上競技場:7区間43.4km) 大学女子2大タイトルの一つ、富士山女子駅伝が12月30日に行われる。優勝候補のチームをチェックしていく […]
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