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2025.12.20

箱根駅伝Stories/最後のエース区間へ意欲を燃やす神奈川大・宮本陽叶 あこがれのOBに「やっと記録で追いつけた」

大後部長の言葉に気づき

初めての箱根路となった2年時は4区で低体温症となり区間21位。「20kmという距離への対応がなかなかうまくいきませんでした」。好不調の波も多い4年間でもあった。

そして、最終学年のトラックシーズンは不調に陥る。「特に練習ができなかったわけでもなく、10000mで記録も狙っていました。けど、心に身体が追いついてきていないというか……」。6月の教育実習後の研究授業を見に来ていた大後栄治部長が、そんな宮本に気づき声をかけたという。

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「健吾の記録を抜いて、少しホッとしているだろう?」

宮本はその言葉にハッとした。「自分はそんなつもりではなかったのですが、大後先生には何か見抜かれていた感じがしましたね」。苦しんでいた宮本は心のモヤモヤが吹き飛んだ。チームは箱根予選会を控え、自分がもたもたしている場合ではない――。宮本が立ち直るきっかけとなった。

10月の箱根駅伝予選会で、チームは後半の追い上げで7位通過。出走12人のうち、フリー走行は宮本のみで、残りのメンバーを主将の酒井健成(4年)と副将の塩田大空(4年)が引っ張った。前回は暑さとプレッシャーから16km付近で途中棄権の悪夢を見た宮本だったが、今年は無事チーム1番手(個人34位)で帰ってきた。

「本来はもっと前でレースをして各校のエースたちと勝負すべきでした。けれど、今年はプレッシャーを感じず、『後ろの仲間に支えられているな』と感じながら走ることができました」と振り返る。

4年生となって生まれた、心の余裕と仲間への信頼。走力アップと同時に精神面でも落ち着きが見られ、3年連続となる本戦出場への原動力となった。

中野剛駅伝監督は宮本について、「持ち味は何と言ってもロード。2区を走ってもらうのは宮本しかいません」。主将の酒井も「アップダウンにも強いです。少し考え込みやすいタイプですが、最後の箱根は好きなように走ってほしいと思います」と期待する。

最後は完全燃焼して終わることをチームみんなが願っている。

ロードでの強さが光る宮本陽叶

文/荒井寛太

[caption id="attachment_193756" align="alignnone" width="800"] エースとして2区で勝負を誓う神奈川大・宮本陽叶[/caption] 新春の風物詩・第102回箱根駅伝に挑む選手やチームを取り上げる「箱根駅伝Stories」。学生三大駅伝最終決戦に向かうそれぞれの歩みや思いを紹介する。

エース区間で苦戦も悲観せず

神奈川大のエース・宮本陽叶(4年)が最後の箱根路も2区を走る見込みだ。大学OBで前マラソン日本記録保持者の鈴木健吾が持つ大学区間最高記録「1時間7分17秒」をターゲットに、順調な調整を続けている。 前回は1時間8分29秒で区間17位。1区で出遅れ、宮本はタスキが渡ってから終始最後方を単独走となる。創価大の吉田響(現・サンベルクス)や青学大の黒田朝日(現4年)が日本人最高記録を更新する1時間5分台をマークするなど、史上最高レベルの“花の2区”でもあった。 そんな状況でも、宮本は自分の結果にはそれほど悲観はしなかった。「前は誰も見えないし、近くに競い合う相手もいませんでした。単独走であのタイムで走り切れたことはむしろ自信になったんです」 箱根路で得た手応えが、2月の日本学生ハーフで結果として表れる。鈴木の持つ大学記録を破る1時間1分09秒をマークした。「あこがれの選手にやっと記録では追いつけました」。将来、マラソンで活躍するために神奈川大を選んだ。今度こそ、エース区間で突っ込んで競り合って粘りたい――。最後の2区へと意欲を燃やす。 京都・泉川中時代から全国の舞台で戦ってきた。中1からジュニア五輪に出場し、中3の全中では1500mと3000mの2種目で出場。全国都道府県男子駅伝にも京都府代表として6区(3km)区間2位と才能の片鱗を見せていた。 洛南高に進むと、同期の佐藤圭汰(駒大)、溜池一太(中大)、弓削征慶(山梨学大)や、後輩の柴田大地(中大3)、岡田開成(中大2)らと切磋琢磨した。自ら望んだ強豪校で激しい部内競争でもまれつつ、3年時の都大路4区で広島・世羅高と岡山・倉敷高と激しい先頭争いを演じての区間賞。世羅高には敗れたものの、2時間1分59秒の日本人チーム最高記録(当時)を打ち立てた。 神奈川大入学後は、1年時の全日本大学駅伝選考会1組で2位に入り、競技生活は好スタートを切ったかに見えた。しかし、その年はチームが箱根駅伝予選会を突破できず、悔しさを味わうことになる。

大後部長の言葉に気づき

初めての箱根路となった2年時は4区で低体温症となり区間21位。「20kmという距離への対応がなかなかうまくいきませんでした」。好不調の波も多い4年間でもあった。 そして、最終学年のトラックシーズンは不調に陥る。「特に練習ができなかったわけでもなく、10000mで記録も狙っていました。けど、心に身体が追いついてきていないというか……」。6月の教育実習後の研究授業を見に来ていた大後栄治部長が、そんな宮本に気づき声をかけたという。 「健吾の記録を抜いて、少しホッとしているだろう?」 宮本はその言葉にハッとした。「自分はそんなつもりではなかったのですが、大後先生には何か見抜かれていた感じがしましたね」。苦しんでいた宮本は心のモヤモヤが吹き飛んだ。チームは箱根予選会を控え、自分がもたもたしている場合ではない――。宮本が立ち直るきっかけとなった。 10月の箱根駅伝予選会で、チームは後半の追い上げで7位通過。出走12人のうち、フリー走行は宮本のみで、残りのメンバーを主将の酒井健成(4年)と副将の塩田大空(4年)が引っ張った。前回は暑さとプレッシャーから16km付近で途中棄権の悪夢を見た宮本だったが、今年は無事チーム1番手(個人34位)で帰ってきた。 「本来はもっと前でレースをして各校のエースたちと勝負すべきでした。けれど、今年はプレッシャーを感じず、『後ろの仲間に支えられているな』と感じながら走ることができました」と振り返る。 4年生となって生まれた、心の余裕と仲間への信頼。走力アップと同時に精神面でも落ち着きが見られ、3年連続となる本戦出場への原動力となった。 中野剛駅伝監督は宮本について、「持ち味は何と言ってもロード。2区を走ってもらうのは宮本しかいません」。主将の酒井も「アップダウンにも強いです。少し考え込みやすいタイプですが、最後の箱根は好きなように走ってほしいと思います」と期待する。 最後は完全燃焼して終わることをチームみんなが願っている。 [caption id="attachment_193757" align="alignnone" width="800"] ロードでの強さが光る宮本陽叶[/caption] 文/荒井寛太

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