HOME 学生長距離

2025.12.19

NEWS
箱根駅伝Stories/過去最高順位を見据える城西大 強力4年生軸に「アッと驚くような試合がしたい」

苦しい時期を乗り越えて

学生三大駅伝で、今季のように出雲と全日本の上位3校がすべて異なるのは、1989年に出雲が始まって以来初めてだ。「どこかの大学が抜きん出ていることはありません。強豪校に勝てる大きなチャンスだと考えています」。

理論派の櫛部監督はチーム力を過大評価や過小評価することは少なく、99回大会はシード権獲得(9位)、100回大会は3位(3位)、101回大会は7位(6位)と、事前のチーム目標との差がほぼない点は興味深い。

「我々は伝統校ではないので、選手勧誘には苦労している」と櫛部監督は語ることが多いものの、現4年生は史上最高とも言える選手が集まった。しかし、その世代が中学・高校生の頃は、94回大会7位こそありつつ、95回大会20位、96回大会不出場、97回16位といったように苦しい時期が続いていた。

広告の下にコンテンツが続きます

そのようななか、チームスタッフの先を見据えた指導もあり、2025年はその時期を過ごした卒業生が結果を残す場面が多かった。2月の大阪マラソンでは菊地駿弥(現・中国電力)が2時間6分06秒で7位、4月の日本選手権10000mでは鈴木勝彦(現・SUBARU)が27分52秒90で5位、7月の日本選手権5000mでは荻久保寛也(現・ひらまつ病院)が13分39秒45で4位に入賞している。

12月の福岡国際マラソンでは大石巧(現・スズキ)が2時間8分51秒で日本人3位となり、28年ロス五輪代表選考会となるマラソングランドチャンピオンシップ出場権獲得。11月のデフリンピック東京大会では青山拓朗(現・台東区教育委員会)がマラソンで7位入賞を果たした。

卒業生の活躍について「もううれしいの一言です」と、顔をほころばせる櫛部監督。特に荻久保、菊地に加え、大学4年時に5000m13分19秒96の日本人学生歴代2位(当時)をマークした砂岡琢磨(現・住友電工)は、学生たちとともに練習することも多いという。

「卒業生の姿を学生たちが見て、『自分も』という思いを持ってくれたらと思って指導しています。卒業生たちも刺激を受け、互いに成長しています」。櫛部監督はそう見つめる。

主将を務める山中達貴(4年)は兵庫・西脇工高時代に、全国高校駅伝2区(3㎞)で7分59秒の区間歴代2位タイ(当時)をマークしている。「全日本後は少し活気のない状況が続きましたが、故障で出走できなかった4年生の自分や桜井、鈴木健真が復帰しました。上位で戦える雰囲気を取り戻しつつあります」。部員一人ひとりの自律を求める山中は、箱根への手応えを話す。

前回9区区間賞の桜井優我ら4年生が復調している

櫛部監督は「他にも覚醒をしている選手が多数います」と強調。U20世界選手権3000m障害代表経験者の大沼良太郎と、ハーフマラソンで1時間2分台を持つ岩田真之といった4年生も存在感を示す。出雲と全日本で出走した小田伊織と柴田侑、前回本戦10区7位の中島巨翔の3年生、11月に10000m28分40秒94をマークした三宅駿(2年)らも期待される。

「今の4年生は、このわずかな期間でもチームが変わると証明してくれた学年です。3年生以下がそういう姿を見て、次の世代へつなげていく。そんなチームにしたい」。

そんな櫛部監督の冷静かつ情熱ある指導とともに、学生たちがまだ見ぬ景色を開拓していく。

文/荒井寛太

[caption id="attachment_123595" align="alignnone" width="800"] 過去最高順位となる3位以内を見据える城西大の選手たち[/caption] 新春の風物詩・第102回箱根駅伝に挑む選手やチームを取り上げる「箱根駅伝Stories」。学生三大駅伝最終決戦に向かうそれぞれの歩みや思いを紹介する。

主要区間の経験者残る

前回6位の城西大がチーム最高成績の3位以内を目標に挑む。創部25年目、出場20回目の節目となる今回。櫛部静二監督は「アッと驚くような試合がしたいです」と意気込む。 直近3大会の総合成績は9位、3位、6位。前回本戦経験者は7人で、2区のヴィクター・キムタイ(4年)、5区・斎藤将也(同)、6区・小林竜輝(2年)、9区・桜井優我(4年)と主要区間で好成績を残した選手が残るのが強みだ。 キムタイは5月に5000m13分11秒77の学生歴代3位をマーク。出雲駅伝3区ではパリ五輪、東京世界選手権代表のグラハム・ブランクス(米国・アイビーリーグ選抜、5000m12分48秒20、10000m26分57秒30)を抑える区間賞に輝いた。 前回は2区で1時間6分55秒(区間10位)だったが、櫛部監督は「2区を一度経験したら、学習してさらにパワーアップしてくる。彼の力にかけたいです」と再度の起用を明言する。 斎藤は5000m13分33秒39、10000m27分45秒12の自己ベストを持つ。1年時の激坂最速王決定戦で、2学年上の山本唯翔(現・SUBARU)に1分近くの差をつけ優勝。1、2年時は2区、3年時に満を持して5区に登場した。直前に風邪を引き、万全な状態でないにもかかわらず区間3位に入っている。 今季は故障の影響でトラックこそ振るわなかったものの、斎藤は「5区で1時間8分30秒をターゲットにしたいです」と意気込む。達成すれば区間新。全日本大学駅伝以降はレースに出ず箱根一本に集中しており、山上りの絶対的エースとして城西大の浮沈を握る。 [caption id="attachment_123595" align="alignnone" width="800"] 2度目の5区で快走を誓う斎藤将也[/caption] 小林は前回6区で58分06秒と1年生ながら区間歴代9位タイ。2年生となり10000mの自己記録も31秒更新。櫛部監督は「去年の走力で歴代9位なので、もっといけるはずです」と、2年連続の6区起用が有力だ。 2区、5区、6区の箱根路における主要区間で計算できる選手がそろっていることについて、指揮官は「『5強』とも言われる今大会ですが、その主要区間すべてに選手がそろっている大学はありません」。そのアドバンテージに自信を示した。

苦しい時期を乗り越えて

学生三大駅伝で、今季のように出雲と全日本の上位3校がすべて異なるのは、1989年に出雲が始まって以来初めてだ。「どこかの大学が抜きん出ていることはありません。強豪校に勝てる大きなチャンスだと考えています」。 理論派の櫛部監督はチーム力を過大評価や過小評価することは少なく、99回大会はシード権獲得(9位)、100回大会は3位(3位)、101回大会は7位(6位)と、事前のチーム目標との差がほぼない点は興味深い。 「我々は伝統校ではないので、選手勧誘には苦労している」と櫛部監督は語ることが多いものの、現4年生は史上最高とも言える選手が集まった。しかし、その世代が中学・高校生の頃は、94回大会7位こそありつつ、95回大会20位、96回大会不出場、97回16位といったように苦しい時期が続いていた。 そのようななか、チームスタッフの先を見据えた指導もあり、2025年はその時期を過ごした卒業生が結果を残す場面が多かった。2月の大阪マラソンでは菊地駿弥(現・中国電力)が2時間6分06秒で7位、4月の日本選手権10000mでは鈴木勝彦(現・SUBARU)が27分52秒90で5位、7月の日本選手権5000mでは荻久保寛也(現・ひらまつ病院)が13分39秒45で4位に入賞している。 12月の福岡国際マラソンでは大石巧(現・スズキ)が2時間8分51秒で日本人3位となり、28年ロス五輪代表選考会となるマラソングランドチャンピオンシップ出場権獲得。11月のデフリンピック東京大会では青山拓朗(現・台東区教育委員会)がマラソンで7位入賞を果たした。 卒業生の活躍について「もううれしいの一言です」と、顔をほころばせる櫛部監督。特に荻久保、菊地に加え、大学4年時に5000m13分19秒96の日本人学生歴代2位(当時)をマークした砂岡琢磨(現・住友電工)は、学生たちとともに練習することも多いという。 「卒業生の姿を学生たちが見て、『自分も』という思いを持ってくれたらと思って指導しています。卒業生たちも刺激を受け、互いに成長しています」。櫛部監督はそう見つめる。 主将を務める山中達貴(4年)は兵庫・西脇工高時代に、全国高校駅伝2区(3㎞)で7分59秒の区間歴代2位タイ(当時)をマークしている。「全日本後は少し活気のない状況が続きましたが、故障で出走できなかった4年生の自分や桜井、鈴木健真が復帰しました。上位で戦える雰囲気を取り戻しつつあります」。部員一人ひとりの自律を求める山中は、箱根への手応えを話す。 [caption id="attachment_123595" align="alignnone" width="800"] 前回9区区間賞の桜井優我ら4年生が復調している[/caption] 櫛部監督は「他にも覚醒をしている選手が多数います」と強調。U20世界選手権3000m障害代表経験者の大沼良太郎と、ハーフマラソンで1時間2分台を持つ岩田真之といった4年生も存在感を示す。出雲と全日本で出走した小田伊織と柴田侑、前回本戦10区7位の中島巨翔の3年生、11月に10000m28分40秒94をマークした三宅駿(2年)らも期待される。 「今の4年生は、このわずかな期間でもチームが変わると証明してくれた学年です。3年生以下がそういう姿を見て、次の世代へつなげていく。そんなチームにしたい」。 そんな櫛部監督の冷静かつ情熱ある指導とともに、学生たちがまだ見ぬ景色を開拓していく。 文/荒井寛太

次ページ:

ページ: 1 2

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.12.19

世界陸上銅の勝木隼人がエントリー 女子は前回Vの谷純花ら/元旦競歩

元旦競歩の主なエントリー選手 男子20km 勝木隼人(自衛隊体育学校) 萬壽春輝(自衛隊体育学校) 中島佑之(山梨学大) 赤澤晃成(山梨学大) 下池将多郎(順大) 長谷川智里(新庄地区陸協) 牧野海音和(セントポールクラ […]

NEWS 箱根駅伝Stories/東海大のスピードスター・兵藤ジュダ リベンジの1区で「やっぱり区間賞がほしい」

2025.12.19

箱根駅伝Stories/東海大のスピードスター・兵藤ジュダ リベンジの1区で「やっぱり区間賞がほしい」

「ダブルエース」として牽引 東海大では、2年時に学生三大駅伝デビュー。全日本では2区9位、箱根駅伝では1区5位と好走した。 「初めての箱根駅伝は独特の雰囲気で、こんなレースは他では味わえないと感じました。走ったことで、競 […]

NEWS 箱根駅伝Stories/前回の雪辱期する中央学大・市川大世 「区間5位以内を目指して積極的な走りを」

2025.12.19

箱根駅伝Stories/前回の雪辱期する中央学大・市川大世 「区間5位以内を目指して積極的な走りを」

前回の悔しさ糧に自己ベスト連発 チーム内で存在感を高めたのは、2年目の駅伝シーズンに入ってからだった。箱根予選会でチーム4番手を占めると、11月にはそれまで30分台だった10000mで自己記録を一気に28分51秒49まで […]

NEWS 箱根駅伝Stories/過去最高順位を見据える城西大 強力4年生軸に「アッと驚くような試合がしたい」

2025.12.19

箱根駅伝Stories/過去最高順位を見据える城西大 強力4年生軸に「アッと驚くような試合がしたい」

苦しい時期を乗り越えて 学生三大駅伝で、今季のように出雲と全日本の上位3校がすべて異なるのは、1989年に出雲が始まって以来初めてだ。「どこかの大学が抜きん出ていることはありません。強豪校に勝てる大きなチャンスだと考えて […]

NEWS 予選会と5000m平均はともに仙台育英トップ 2番手は学法石川 鳥取城北は安定感/全国高校駅伝・データ編男子

2025.12.19

予選会と5000m平均はともに仙台育英トップ 2番手は学法石川 鳥取城北は安定感/全国高校駅伝・データ編男子

男子予選タイム&5000m平均ランキングをチェック! ■予選タイムTOP20 仙台育英(宮城)  2.01.45 宮城① 学法石川(福島)  2.02.58 福島① 西脇工(兵庫)   2.03.25 兵庫① 鳥取城北( […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2026年1月号 (12月12日発売)

2026年1月号 (12月12日発売)

箱根駅伝観戦ガイド&全国高校駅伝総展望
大迫傑がマラソン日本新
箱根駅伝「5強」主将インタビュー
クイーンズ駅伝/福岡国際マラソン
〔新旧男子100m高校記録保持者〕桐生祥秀×清水空跳

page top