HOME 特集

2020.12.07

【長距離】高校生5000m13分台が史上最多22人!高速化の波が止まらない
【長距離】高校生5000m13分台が史上最多22人!高速化の波が止まらない


 日本選手権・長距離で日本記録が複数誕生するなど、長距離界の「高速化」が止まらない。それは高校生たちも例外ではない。

 高校男子5000mで「一流の証」と言われる13分台ランナーが、今シーズンはなんと22人にも上る(留学生を除く)。これは、これまで最も多かった2010年の12人を大きく超える史上最多。ちなみにその2010年は、村山謙太(宮城・明成高、現・旭化成)が13分49秒45でトップ、マラソン五輪代表の中村匠吾(三重・上野工高※伊賀白鳳高、現・富士通)が13分50秒38と続く。13分台がふたケタなのは10年12人、15年10人、16年10人、19年11人で、今季がいかに「異常事態」かがわかる。

 その世代を牽引するのが石田洸介(群馬・東農大二高3年)だ。石田は福岡・浅川中時代、1500m(3分49秒72)、3000m(8分17秒84)、5000m(14分32秒44)の中学歴代最高記録をすべて塗り替えた同世代のスーパースター。昨年も2年生ながらランキングトップの13分51秒91をマークしていたが、今年はさらに飛躍を遂げ、7月に13分36秒89と佐藤秀和(仙台育英高)が持っていた13分39秒87の高校記録を16年ぶりに塗り替えた。それだけにはとどまらず、9月には13分34秒74にまで更新。大迫傑(Nike)主宰の「Sugar Elite short Camp」にも高校生として唯一参加するなど、競技力、実績、精神力、いずれも備えたトップランナーとして君臨している。

 石田には後れを取ったものの、長野・佐久長聖の伊藤大志(3年)も昨年までの高校記録を上回る13分36秒57をマーク。鶴川正也(熊本・九州学院高3年)が高校歴代6位の13分45秒28、鹿児島の両雄、徳丸寛太(鹿児島実高3年/13分48秒59)と野村昭夢(鹿児島城西高3年/13分48秒83)など、個性派ランナーがそろっている。また、下級生のうちから13分台ランナーが続出していることも特筆すべきことだ。これだけタイムが短縮すると「好記録」の定義や概念も上書きしなくてはならないところまできた。

 高速化の要因の一つはシューズ。これはシニアと同様に、厚底や高速スパイクを使用していることが影響している(※トラックでは12月以降、規定外の厚底シューズは使用不可)。ただ、現場では実際にレースだけでなくシューズの進化に伴って「普段の練習の質が上がった」という声も多い。これは全日本大学駅伝を制した駒大の大八木弘明監督もインタビューで同様に話していた。

 また、今季はコロナ禍によりレース数が激減。それによる良い・悪いの効果が実際にどれほどかは分析が必要だが、選手の負担軽減、いわゆる「バネ(脚)溜め」、そして自粛期間を経たことで「試合に出たい」「走りたい」という強い気持ちを持つなど、いくつか影響していると言えるだろう。

 そんな史上最速世代が今後、どんな進路を歩み成長していくのか。楽しみは尽きないが、まずはこのランナーたちが多く集まる「全国高校駅伝」(12月20日)に大きな注目が集まる。都大路は7区間42.195kmで実施。5000mの平均タイム(※エントリー候補選手7人をもとに本誌集計)では、佐久長聖高が14分00秒、広島・世羅高が14分01秒(※留学生1名)と、とてつもないレベルに到達した。高校最高記録は、留学生含めたものは2015年に世羅が出した2時間1分18秒、日本人のみでは大迫らを擁した2008年の佐久長聖による2時間2分18秒で、今年はこれら先輩たちを上回る勢いを見せる両校。激戦は必至だ。

広告の下にコンテンツが続きます

■今季5000m高校生13分台ランナー
〔12.6時点〕★=都大路出場校
13.34.74 石田 洸介(東農大二3群馬) 9.27★
13.36.57 伊藤 大志(佐久長聖3長野) 11.15★
※13.36.89  石田洸介 7.18
13.45.28 鶴川 正也(九州学院3熊本) 11.29★
13.48.59 徳丸 寛太(鹿児島実3鹿児島)10.11★
13.48.83 野村 昭夢(鹿児島城西3鹿児島) 11.29
13.48.89 山本 歩夢(自由ケ丘3福岡) 11.28
13.49.81 山口 智規(学法石川2福島) 11.29★
13.50.27 吉岡 大翔(佐久長聖1長野) 11.15★
13.50.31 佐藤 榛紀(四日市工3三重) 11.29★
※13.51.77  山口智規 11.15
13.53.36 佐藤 圭汰(洛南2京都) 11.29★
13.53.77 越  陽汰(佐久長聖3長野) 9.27★
13.54.88 尾崎 健斗(浜松商3静岡) 11.15★
※13.55.59  野村昭夢 11.14
13.55.74 太田 蒼生(大牟田3福岡) 11.14★
※13.56.31  山本歩夢 10.17
13.57.16 森下 翔太(世羅2広島) 10.17★
13.57.88 塩出 翔太(世羅2広島) 10.17★
13.58.00 白井 勇佑(仙台育英3宮城) 9.26★
13.58.77 若林 宏樹(洛南3京都) 9.27★
13.58.80 中原 優人(智辯カレッジ3奈良) 11.28★
13.58.86 甲斐 涼介(宮崎日大3宮崎) 11.14
13.59.05 佐藤 条二(市船橋3千葉) 11.29
13.59.31 緒方澪那斗(市船橋2千葉) 12.6
13.59.32 新谷紘ノ介(世羅3広島) 10.17★
※複数回13分台も掲載
●留学生13分台
13.22.40 A.マイナ(興國2大阪) 7. 8
13.33.40 E.キプチルチル(倉敷1岡山) 9.12★
13.38.14 K.ムワンギ(世羅2広島) 10.17★
13.42.50 Kパトリック(札幌山の手2北海道) 11.15★
13.52.13 J.ムイガイ(青森山田1青森) 11.29★
13.54.99 K.ビクター(福岡一3福岡) 11.28
13.55.41 B.ムテチ(仙台育英1宮城) 9.26★
13.59.41 D.キサイサ(大分東明3大分) 7.14★

■男子5000m高校歴代10傑 ★=2020年
13.34.74 石田 洸介(東農大二3群馬) 2020. 9.27★
13.36.57 伊藤 大志(佐久長聖3長野) 2020.11.15★
13.39.87 佐藤 秀和(仙台育英3宮城) 2004.10.27
13.44.91 土橋 啓太(大牟田3福岡)  2002.10.23
13.45.23 佐藤 悠基(佐久長聖3長野) 2004. 8. 5
13.45.28 鶴川 正也(九州学院3熊本) 2020.11.29★
13.45.86 北村  聡(西脇工2兵庫)  2002.10.23
13.47.22 中谷 雄飛(佐久長聖3長野) 2017.10.21
13.47.8  佐藤 清治(佐久長聖3長野) 1999.11. 6
13.48.06 上野裕一郎(佐久長聖3長野) 2003. 5.24
13.48.13 遠藤 日向(学法石川3福島) 2016. 4. 2

 日本選手権・長距離で日本記録が複数誕生するなど、長距離界の「高速化」が止まらない。それは高校生たちも例外ではない。  高校男子5000mで「一流の証」と言われる13分台ランナーが、今シーズンはなんと22人にも上る(留学生を除く)。これは、これまで最も多かった2010年の12人を大きく超える史上最多。ちなみにその2010年は、村山謙太(宮城・明成高、現・旭化成)が13分49秒45でトップ、マラソン五輪代表の中村匠吾(三重・上野工高※伊賀白鳳高、現・富士通)が13分50秒38と続く。13分台がふたケタなのは10年12人、15年10人、16年10人、19年11人で、今季がいかに「異常事態」かがわかる。  その世代を牽引するのが石田洸介(群馬・東農大二高3年)だ。石田は福岡・浅川中時代、1500m(3分49秒72)、3000m(8分17秒84)、5000m(14分32秒44)の中学歴代最高記録をすべて塗り替えた同世代のスーパースター。昨年も2年生ながらランキングトップの13分51秒91をマークしていたが、今年はさらに飛躍を遂げ、7月に13分36秒89と佐藤秀和(仙台育英高)が持っていた13分39秒87の高校記録を16年ぶりに塗り替えた。それだけにはとどまらず、9月には13分34秒74にまで更新。大迫傑(Nike)主宰の「Sugar Elite short Camp」にも高校生として唯一参加するなど、競技力、実績、精神力、いずれも備えたトップランナーとして君臨している。  石田には後れを取ったものの、長野・佐久長聖の伊藤大志(3年)も昨年までの高校記録を上回る13分36秒57をマーク。鶴川正也(熊本・九州学院高3年)が高校歴代6位の13分45秒28、鹿児島の両雄、徳丸寛太(鹿児島実高3年/13分48秒59)と野村昭夢(鹿児島城西高3年/13分48秒83)など、個性派ランナーがそろっている。また、下級生のうちから13分台ランナーが続出していることも特筆すべきことだ。これだけタイムが短縮すると「好記録」の定義や概念も上書きしなくてはならないところまできた。  高速化の要因の一つはシューズ。これはシニアと同様に、厚底や高速スパイクを使用していることが影響している(※トラックでは12月以降、規定外の厚底シューズは使用不可)。ただ、現場では実際にレースだけでなくシューズの進化に伴って「普段の練習の質が上がった」という声も多い。これは全日本大学駅伝を制した駒大の大八木弘明監督もインタビューで同様に話していた。  また、今季はコロナ禍によりレース数が激減。それによる良い・悪いの効果が実際にどれほどかは分析が必要だが、選手の負担軽減、いわゆる「バネ(脚)溜め」、そして自粛期間を経たことで「試合に出たい」「走りたい」という強い気持ちを持つなど、いくつか影響していると言えるだろう。  そんな史上最速世代が今後、どんな進路を歩み成長していくのか。楽しみは尽きないが、まずはこのランナーたちが多く集まる「全国高校駅伝」(12月20日)に大きな注目が集まる。都大路は7区間42.195kmで実施。5000mの平均タイム(※エントリー候補選手7人をもとに本誌集計)では、佐久長聖高が14分00秒、広島・世羅高が14分01秒(※留学生1名)と、とてつもないレベルに到達した。高校最高記録は、留学生含めたものは2015年に世羅が出した2時間1分18秒、日本人のみでは大迫らを擁した2008年の佐久長聖による2時間2分18秒で、今年はこれら先輩たちを上回る勢いを見せる両校。激戦は必至だ。 ■今季5000m高校生13分台ランナー 〔12.6時点〕★=都大路出場校 13.34.74 石田 洸介(東農大二3群馬) 9.27★ 13.36.57 伊藤 大志(佐久長聖3長野) 11.15★ ※13.36.89  石田洸介 7.18 13.45.28 鶴川 正也(九州学院3熊本) 11.29★ 13.48.59 徳丸 寛太(鹿児島実3鹿児島)10.11★ 13.48.83 野村 昭夢(鹿児島城西3鹿児島) 11.29 13.48.89 山本 歩夢(自由ケ丘3福岡) 11.28 13.49.81 山口 智規(学法石川2福島) 11.29★ 13.50.27 吉岡 大翔(佐久長聖1長野) 11.15★ 13.50.31 佐藤 榛紀(四日市工3三重) 11.29★ ※13.51.77  山口智規 11.15 13.53.36 佐藤 圭汰(洛南2京都) 11.29★ 13.53.77 越  陽汰(佐久長聖3長野) 9.27★ 13.54.88 尾崎 健斗(浜松商3静岡) 11.15★ ※13.55.59  野村昭夢 11.14 13.55.74 太田 蒼生(大牟田3福岡) 11.14★ ※13.56.31  山本歩夢 10.17 13.57.16 森下 翔太(世羅2広島) 10.17★ 13.57.88 塩出 翔太(世羅2広島) 10.17★ 13.58.00 白井 勇佑(仙台育英3宮城) 9.26★ 13.58.77 若林 宏樹(洛南3京都) 9.27★ 13.58.80 中原 優人(智辯カレッジ3奈良) 11.28★ 13.58.86 甲斐 涼介(宮崎日大3宮崎) 11.14 13.59.05 佐藤 条二(市船橋3千葉) 11.29 13.59.31 緒方澪那斗(市船橋2千葉) 12.6 13.59.32 新谷紘ノ介(世羅3広島) 10.17★ ※複数回13分台も掲載 ●留学生13分台 13.22.40 A.マイナ(興國2大阪) 7. 8 13.33.40 E.キプチルチル(倉敷1岡山) 9.12★ 13.38.14 K.ムワンギ(世羅2広島) 10.17★ 13.42.50 Kパトリック(札幌山の手2北海道) 11.15★ 13.52.13 J.ムイガイ(青森山田1青森) 11.29★ 13.54.99 K.ビクター(福岡一3福岡) 11.28 13.55.41 B.ムテチ(仙台育英1宮城) 9.26★ 13.59.41 D.キサイサ(大分東明3大分) 7.14★ ■男子5000m高校歴代10傑 ★=2020年 13.34.74 石田 洸介(東農大二3群馬) 2020. 9.27★ 13.36.57 伊藤 大志(佐久長聖3長野) 2020.11.15★ 13.39.87 佐藤 秀和(仙台育英3宮城) 2004.10.27 13.44.91 土橋 啓太(大牟田3福岡)  2002.10.23 13.45.23 佐藤 悠基(佐久長聖3長野) 2004. 8. 5 13.45.28 鶴川 正也(九州学院3熊本) 2020.11.29★ 13.45.86 北村  聡(西脇工2兵庫)  2002.10.23 13.47.22 中谷 雄飛(佐久長聖3長野) 2017.10.21 13.47.8  佐藤 清治(佐久長聖3長野) 1999.11. 6 13.48.06 上野裕一郎(佐久長聖3長野) 2003. 5.24 13.48.13 遠藤 日向(学法石川3福島) 2016. 4. 2

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2024.12.11

やり投・北口榛花2025年は「みんなで一緒にもう一度最高の感動を味わいたい!」タニタ健康大賞受賞でコンディション作りも明かす

健康総合企業の株式会社タニタが12月11日、日本人の健康づくりに貢献した個人・団体を顕彰する「タニタ健康大賞」を発表し、女子やり投のパリ五輪金メダリスト・北口榛花(JAL)が選ばれ、同日に贈賞式に出席した。 「競技中でも […]

NEWS 26年愛知アジア大会マラソン代表選考方針を発表!MGCシリーズ25-26覇者が内定

2024.12.11

26年愛知アジア大会マラソン代表選考方針を発表!MGCシリーズ25-26覇者が内定

日本陸連は12月11日、2026年に開催される愛知アジア大会のマラソン代表選考方針を発表した。 「国際競技会に通用する『勝負強さ』と『スピード』を有するとともに本大会において最大限に持てる力を発揮できる競技者を選出し、メ […]

NEWS 27年北京世界陸上マラソン代表選考方針が発表!MGCファストパス突破者、MGCシリーズ26-27覇者が内定

2024.12.11

27年北京世界陸上マラソン代表選考方針が発表!MGCファストパス突破者、MGCシリーズ26-27覇者が内定

日本陸連は12月11日、2027年北京世界選手権のマラソン代表選考方針を発表し、編成方針は「2027年度最重要国際競技会と位置づけ、メダル獲得および入賞を目指す競技者で選手団を編成する」とした。 そのうえで、代表内定基準 […]

NEWS 「速い選手」「強い選手」「勢いのある選手」の選考を!ロス五輪に向けマラソン代表選考方針示す

2024.12.11

「速い選手」「強い選手」「勢いのある選手」の選考を!ロス五輪に向けマラソン代表選考方針示す

日本陸連は12月11日、2028年ロサンゼルス五輪のマラソン代表選考の選考方針を明らかにした。 選考競技会としては、2021年東京、24年パリ五輪に向けてと同様に、代表選考レース「マラソングランドチャンピオンシップ(MG […]

NEWS ニューイヤー駅伝のエントリー発表! トヨタ自動車は太田智樹、西山雄介 Hondaはパリ代表・小山直城、青木涼真ら 東日本VのGMOは吉田祐也が登録

2024.12.11

ニューイヤー駅伝のエントリー発表! トヨタ自動車は太田智樹、西山雄介 Hondaはパリ代表・小山直城、青木涼真ら 東日本VのGMOは吉田祐也が登録

12月11日、日本実業団陸上競技連合は第69回全日本実業団対抗駅伝(ニューイヤー駅伝/2025年1月1日)のエントリー選手を発表した。 前回4回目の優勝を飾ったトヨタ自動車はパリ五輪10000m代表の太田智樹や福岡国際マ […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2024年12月号 (11月14日発売)

2024年12月号 (11月14日発売)

全日本大学駅伝
第101回箱根駅伝予選会
高校駅伝都道府県大会ハイライト
全日本35㎞競歩高畠大会
佐賀国民スポーツ大会

page top