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2025.08.03

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「今日は9秒台を出さないといけない」 9秒99の桐生祥秀 19年以来の世界大会100m出場へ/富士北麓ワールドトライアル
「今日は9秒台を出さないといけない」 9秒99の桐生祥秀 19年以来の世界大会100m出場へ/富士北麓ワールドトライアル

富士北麓ワールドトライアルで9秒99をマークした桐生祥秀

◇富士北麓ワールドトライアル2025(8月3日/山梨・富士北麓公園「富士山の名水スタジアム」)

富士北麓ワールドトライアルが行われ、男子100m予選2組で桐生祥秀(日本生命)が自身2度目の9秒台となる9秒99(+1.3)をマークした。東京世界選手権の参加標準記録(10秒00)突破を果たし、代表入りに大きく前進した。

スタートから顔を上げると、一気に加速。そのスピードを最後まで落とさずにフィニッシュラインを駆け抜けると、会場がドンと沸く。速報タイマーに表示された記録は「9.99」。桐生は雄叫びを挙げると、「風は?」と振り返る。「どこに風(風速表示)があるのわからなかった」そうだが、アナウンスで「追い風1.5m」と聞くと、「ホッとしました」と心境を吐露し、こう続ける。

「今日は9秒台を出さないといけないと思っていた。8年ぶりに出せて良かったです」

2017年に日本人初の9秒台(9秒98)の偉業を成し遂げてから、さらに言えば京都・洛南高3年だった2013年に10秒01を出してから、桐生は常に、日本のスプリントを牽引する存在だった。

だが、その歩みは順風なものではなかった。ケガ、病気、重圧の中で、苦しむことも多く、「全然速くない時もありました」。だが、「これも陸上」と捉え、2022年秋の休養を挟みつつ、走り続けてきた。

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そんな経験の積み重ねが、この走りに集約されている。2019年頃から悩まされたアキレス腱の痛みから解放され、今季は持ち味であるバネを作るためのジャンプ系のトレーニングを久しぶりに取り入れることができた。

それが、スタートで無理に力を使うことなく、持ち味の二次加速につなげるレースパターンを作ることにつながっている。さらに、それは後半のスピード維持にも直結。「前半で前に出られれば、後半は負けない」という自信をつかむまでに至った。

ピーキングも春から試合を重ねて作り上げる計画を立て、その過程で日本選手権を5年ぶりに制覇。そこから一気に調子を上げ、日本選手権後の欧州遠征では、1時間の間に10秒0台を2本そろえている。

「タイムが出なかった8年は、自分自身にとって大事なことだった」と桐生。それを、「記録」で証明して見せた。

日本選手権優勝で標準突破。東京世界選手権代表入りに、大きく近づいた。世界大会の個人種目出場となれば、2019年のドーハ世界選手権以来となる。

「まずは予選を余裕を持って通過することが大切。そのうえで、準決勝で勝負したい」

この8年で男子100mの記録水準が一気に上がったことは、桐生自身が一番わかっている。「今日の9秒台は『標準突破』という意識しかない」。桐生の目はすでに、世界へと向いている。

◇富士北麓ワールドトライアル2025(8月3日/山梨・富士北麓公園「富士山の名水スタジアム」) 富士北麓ワールドトライアルが行われ、男子100m予選2組で桐生祥秀(日本生命)が自身2度目の9秒台となる9秒99(+1.3)をマークした。東京世界選手権の参加標準記録(10秒00)突破を果たし、代表入りに大きく前進した。 スタートから顔を上げると、一気に加速。そのスピードを最後まで落とさずにフィニッシュラインを駆け抜けると、会場がドンと沸く。速報タイマーに表示された記録は「9.99」。桐生は雄叫びを挙げると、「風は?」と振り返る。「どこに風(風速表示)があるのわからなかった」そうだが、アナウンスで「追い風1.5m」と聞くと、「ホッとしました」と心境を吐露し、こう続ける。 「今日は9秒台を出さないといけないと思っていた。8年ぶりに出せて良かったです」 2017年に日本人初の9秒台(9秒98)の偉業を成し遂げてから、さらに言えば京都・洛南高3年だった2013年に10秒01を出してから、桐生は常に、日本のスプリントを牽引する存在だった。 だが、その歩みは順風なものではなかった。ケガ、病気、重圧の中で、苦しむことも多く、「全然速くない時もありました」。だが、「これも陸上」と捉え、2022年秋の休養を挟みつつ、走り続けてきた。 そんな経験の積み重ねが、この走りに集約されている。2019年頃から悩まされたアキレス腱の痛みから解放され、今季は持ち味であるバネを作るためのジャンプ系のトレーニングを久しぶりに取り入れることができた。 それが、スタートで無理に力を使うことなく、持ち味の二次加速につなげるレースパターンを作ることにつながっている。さらに、それは後半のスピード維持にも直結。「前半で前に出られれば、後半は負けない」という自信をつかむまでに至った。 ピーキングも春から試合を重ねて作り上げる計画を立て、その過程で日本選手権を5年ぶりに制覇。そこから一気に調子を上げ、日本選手権後の欧州遠征では、1時間の間に10秒0台を2本そろえている。 「タイムが出なかった8年は、自分自身にとって大事なことだった」と桐生。それを、「記録」で証明して見せた。 日本選手権優勝で標準突破。東京世界選手権代表入りに、大きく近づいた。世界大会の個人種目出場となれば、2019年のドーハ世界選手権以来となる。 「まずは予選を余裕を持って通過することが大切。そのうえで、準決勝で勝負したい」 この8年で男子100mの記録水準が一気に上がったことは、桐生自身が一番わかっている。「今日の9秒台は『標準突破』という意識しかない」。桐生の目はすでに、世界へと向いている。

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