2024.10.30
チームを勢いづける存在として自覚は十分
大学1年時は関東インカレ1500mに出場したものの、その後はケガに悩まされた。2年生になると練習をこなせるようになり、出雲駅伝では2区(区間8位)を経験。11月には10000mで28分53秒14をマークしたものの、上尾ハーフで1時間5分23秒にとどまる。箱根は1区にエントリーされたものの、当日変更で外された。
次こそは、という思いは坪田監督も同じだ。「せっかくあるスピードを生かせる駅伝をしてくれないと、チームとして一つ高いところに上がっていけない」。冬のロードシーズンは精力的にレースをこなし、2月の丸亀ハーフでは1時間3分34秒の自己新を出す。
トラックシーズンに入り、東京六大学対抗こそ14分00秒67で3位とまずまずのスタートを切ったものの、関東インカレ1部5000mは故障の影響もあり34位。7月のホクレンディスタンスチャレンジは回避し、夏の合宿に集中した。
区間賞を目標にした出雲駅伝1区(8.0km)は区間9位。想定外のスローペースで入ったが、3km過ぎに1km2分40秒台に上がる。再び3分を超えるペースに落ち着くも、残り1.5kmでアイビーリーグ選抜のキーラン・トゥンティベイト(ハーバード大)がスパート。「最初のペースアップで脚に重さが出てしまい、2度目のスパートには対応しきれませんでした」と力負けを認める。
ただ、「改善点は見つけられたので、箱根に向けて無駄ではなかったと思います」。11月の部内選考レース、そして本戦をきっちり走る準備はできている。
箱根は1~3区を意識する。「走りたい区間はもちろん1区ですが、武田(和馬)さんが6区に行くならば2区という気持ちを持たないといけません。ただ、3区も自分の走りを生かせる場所だとも思う」。チームを勢いづける存在として自覚は十分だ。
高校時代、「法大に行きたい」という大島の思いを聞き、坪田監督は記録会に足を運んだ。大島は「選手を長い目で見てくれる監督です。すぐ結果を出させようとするのではなく、3年目、4年目で開花させるように指導されていることがやっと分かってきました。
選手一人ひとりを思い、ものすごく熱い」。坂東や、パリ五輪に出場した青木涼真(Honda)のように、大島も将来の競技者像を描ける点で「いい環境でやれているな」と勇気づけられている。
4年生たちとは息抜きに一緒に銭湯やサウナに行くほど仲がいい。
「自分が4年生か、というくらいチームに思い入れがあります。ここまで陸上を続けることができたことも先輩たちの存在が大きい。出雲が総合9位に終わり、すごくしょんぼりした顔しか見ていないので、箱根で総合5位を取って最後みんなで笑って終われたらうれしいです」
箱根総合5位と、4年生たちの笑顔の行方――。それは大島の走りに懸かっている。
◎おおしま・ふみや/2003年7月19日生まれ、千葉県我孫子市出身。我孫子久寺家中→専大松戸高→法大。自己記録5000m13分35秒33、10000m28分53秒14、ハーフマラソン1時間3分34秒。
文/荒井寛太
法大の大島史也[/caption]
学生長距離Close-upインタビュー
大島史也 Oshima Fumiya 法大3年
「月陸Online」限定で大学長距離選手のインタビューをお届けする「学生長距離Close-upインタビュー」。44回目は、法大の大島史也(3年)をピックアップする。
9月の記録会で5000mの法大記録となる13分35秒33をマーク。箱根駅伝で総合5位を目指すチームの主軸へと躍進した。
10月14日の出雲駅伝では1区で9位。来年1月の箱根駅伝に向けて、現在の状態や意気込みなどを聞いた。
「自分から前に出て」法大記録
法大に新たなスピードランナーが誕生した。9月28日に行われた絆記録会5000mで、大島史也(3年)が13分35秒33をマーク。西池和人(元コニカミノルタ)が保持していた大学記録を11年ぶりに2秒60更新した。 ターゲットは“13分30秒切り”だった。吉田祐也(GMOインターネットグループ)が引っ張る展開に食らいつき、残り1200m過ぎでロングスパート。青学大の黒田朝日(3年)ら主力たちを振り切り1着でフィニッシュした。「自分から前に出て勝ちきれたことも一つの収穫になりました」と大島は手応えを感じている。 ブレイクの予感は夏合宿からあった。坪田智夫駅伝監督は「体もグッと変わり、距離を踏む練習も淡々と余裕を持ってやっています。どこかで記録を狙わせたい」と語っていた。スピード練習では誰にも前を譲らない。今回の走りで監督の期待に応えた大島は、箱根駅伝で「坪田史上最強」となる総合5位を目指す今季のチームのキーマンに浮上した。 千葉県我孫子市出身。市立久寺家中では友人に誘われサッカー部に入部し、長身だったことからゴールキーパーを務めていた。走り始めたのは特設駅伝部への誘いがきっかけ。陸上部の顧問の先生が大島の走りでの素質を見出し、戦後間もない昭和23年(1948)に始まり、今年で76回目を迎えた「東葛駅伝」(東葛飾地方中学校駅伝競走大会)に、中2の秋にサッカー部所属のまま出場している。 10区間、先輩や後輩とタスキをつなぐ楽しさを感じた大島はそのまま陸上部へ転部。素質は次第に開花し、中3の11月に行われた都道府県対抗駅伝代表選手選考会の3000mで9分07秒00をマークした。 強豪の専大松戸高へ進むと、3年時には1500mと5000mでインターハイに出場。1500m3分48秒28、5000mでは13分50秒04(当時の千葉県高校日本人最高)をマークする。 飛躍のきっかけは、高2で直撃したコロナ禍だった。2020年、全国的に学校は休校を余儀なくされた。部活動も集まってできなくなり、インターハイも史上初の中止に。そうした逆境をチャンスと捉えた。「みんながやらない中で練習ができたら強くなれる」 両親が自宅から車で1時間ほどかかる佐倉市のクロスカントリーコースへ連れて行ってくれた。自宅近くにある1周20kmほどの手賀沼や、トラックでも1人でポイント練習を重ねた。 ランニングフォームについても、それまでは脚が流れ気味だったが、改善のために動きづくりを取り入れた。178cmと長身で腰高なフォームに、スピード感あふれる足さばきは、この時の動きづくりやクロカンでの練習の賜物だという。 インターハイに出たことで、「自分も箱根駅伝を目指せる」と思い始めた。その時にイメージしたのは、中学生の時に初めて家族で現地観戦した際に法大の2区を走っていた坂東悠汰(現・富士通)だ。大島以上に長身ということが印象に。専大松戸高からは松永伶(現・JR東日本)らが進学していたこともあり、憧れの“オレンジエクスプレス”に加わった。チームを勢いづける存在として自覚は十分
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出雲駅伝で1区9位だった大島史也[/caption]
大学1年時は関東インカレ1500mに出場したものの、その後はケガに悩まされた。2年生になると練習をこなせるようになり、出雲駅伝では2区(区間8位)を経験。11月には10000mで28分53秒14をマークしたものの、上尾ハーフで1時間5分23秒にとどまる。箱根は1区にエントリーされたものの、当日変更で外された。
次こそは、という思いは坪田監督も同じだ。「せっかくあるスピードを生かせる駅伝をしてくれないと、チームとして一つ高いところに上がっていけない」。冬のロードシーズンは精力的にレースをこなし、2月の丸亀ハーフでは1時間3分34秒の自己新を出す。
トラックシーズンに入り、東京六大学対抗こそ14分00秒67で3位とまずまずのスタートを切ったものの、関東インカレ1部5000mは故障の影響もあり34位。7月のホクレンディスタンスチャレンジは回避し、夏の合宿に集中した。
区間賞を目標にした出雲駅伝1区(8.0km)は区間9位。想定外のスローペースで入ったが、3km過ぎに1km2分40秒台に上がる。再び3分を超えるペースに落ち着くも、残り1.5kmでアイビーリーグ選抜のキーラン・トゥンティベイト(ハーバード大)がスパート。「最初のペースアップで脚に重さが出てしまい、2度目のスパートには対応しきれませんでした」と力負けを認める。
ただ、「改善点は見つけられたので、箱根に向けて無駄ではなかったと思います」。11月の部内選考レース、そして本戦をきっちり走る準備はできている。
箱根は1~3区を意識する。「走りたい区間はもちろん1区ですが、武田(和馬)さんが6区に行くならば2区という気持ちを持たないといけません。ただ、3区も自分の走りを生かせる場所だとも思う」。チームを勢いづける存在として自覚は十分だ。
高校時代、「法大に行きたい」という大島の思いを聞き、坪田監督は記録会に足を運んだ。大島は「選手を長い目で見てくれる監督です。すぐ結果を出させようとするのではなく、3年目、4年目で開花させるように指導されていることがやっと分かってきました。
選手一人ひとりを思い、ものすごく熱い」。坂東や、パリ五輪に出場した青木涼真(Honda)のように、大島も将来の競技者像を描ける点で「いい環境でやれているな」と勇気づけられている。
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