2024.10.14
第46回シカゴマラソンは10月13日に米国の当地で行われ、女子のルース・チェプンゲティチ(ケニア)が従来の世界記録を2分近く縮める2時間9分56秒で優勝。女子マラソンとしては史上初めてサブテン(2時間10分切り)の快挙となった。
大会前のインタビューでは「シカゴで3度目の優勝と、昨年シファン・ハッサン(オランダ)が出した大会記録(2時間13分44秒)を目指します」と話していたチェプンゲティチ。だが、号砲とともに、胸の内に秘めていた目標を狙うペースでシカゴの街を駆け抜ける。
最初の5kmが15分00秒。オーバーペースが心配されたが、10kmも30分14秒で通過。大会記録ではなく、昨年のベルリンでティギスト・アセファ(エチオピア)が樹立した世界記録(2時間11分53秒)の更新を目指しているのは誰の目にも明らかだった。
3月の東京を2時間15分05秒で制したアセファ・ケベデ(エチオピア)もチェプンゲティチに食らいついたが、それも15kmまで。以降は、ペースメーカーのサポートを受けながら歩を進め、中間点はハーフマラソンの歴代5位に相当する1時間4分16秒で到達する。その後は、徐々にペースを落としながらも「常に世界記録を念頭に走っていた」と、大きく崩れることなくフィニッシュ。関係者からケニア国旗を手渡されると、観客席に向かって再び走り出し、笑顔で祝福を受ける余裕も見せた。
マラソンは23歳だった17年のイスタンブールがデビュー戦。19年のドーハ世界選手権で金メダルを獲得した。21年東京五輪、22年オレゴン世界選手権はいずれも途中棄権と不安定さも残すものの、22年シカゴでは2時間14分18秒の世界歴代2位(当時)で優勝を果たすなど、女子マラソンの有力ランナーの1人として存在感を示してきた。
歴史的な快挙を達成したチェプンゲティチはレース後のインタビューで「自分を誇りに思うし、世界記録を出せたことを神に感謝している」と答え、「世界記録をケニアに取り戻すことができたのは、嬉しくて言葉にできない」と喜びを語る。また、「この世界記録をケルビン・キプトゥムに捧げます。彼が生きていれば、シカゴでもう一度世界記録を出したでしょうから」と語り、前回のシカゴで男子マラソンの世界記録(2時間00分35秒)を樹立しながら、今年2月に24歳の若さで亡くなったケルビン・キプトゥムさんを悼んだ。
女子マラソンの世界記録は、2001年に高橋尚子が2時間19分46秒と史上初めて2時間20分切りを達成。その1週間後にキャサリン・デレバ(ケニア)が2時間18分47秒と塗り替え、さらにポーラ・ラドクリフ(英国)が03年に2時間15分25秒まで引き上げていた。以降は記録更新が途絶えていたものの、19年にブリジット・コスゲイ(ケニア)が16年ぶり世界新となる2時間14分04秒を打ち立てると、22年以降は2時間14分~17分台の記録が続出し、高速化が進んでいる。
トラックの女王からマラソンの女王となったパリ五輪金メダリストのハッサンなど、トラックのスピードを武器にマラソンに参戦する選手も増えつつある。2時間10分という壁が打ち砕かれ、女子マラソンが新たな時代に突入する。
【動画】フィニッシュ後、国旗を手に観客席に駆け出したチェプンゲティチ
Ruth Chepngetich, you are the Women’s World Record Holder! pic.twitter.com/bkwlfamrvN
— Chicago Marathon (@ChiMarathon) October 13, 2024
女子マラソン世界記録変遷(1990年以降)
2.21.06 I.クリスチャンセン(ノルウェー) 1985. 4.21 ロンドン 2.20.47 T.ロルーペ(ケニア) 1998. 4.19 ロッテルダム 2.20.43 T.ロルーペ(ケニア) 1999. 9.26 ベルリン 2.19.46 高橋尚子(日本) 2001. 9.30 ベルリン 2.18.47 C.デレバ(ケニア) 2001.10. 7 シカゴ 2.17.18 P.ラドクリフ(英国) 2002.10.13 シカゴ 2.15.25 P.ラドクリフ(英国) 2003. 4.13 ロンドン 2.14.04 B.コスゲイ(ケニア) 2019.10.13 シカゴ 2.11.53 T.アセファ(エチオピア) 2023. 9.24 ベルリン 2.09.56 R.チェプンゲティチ(ケニア)2024.10.13 シカゴRECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
2025.11.10
関西が1増4枠! 東海が1減 関東は最大枠で変わらず 来年の全日本大学駅伝地区出場枠決定
-
2025.11.10
-
2025.11.10
-
2025.11.10
2025.10.18
【大会結果】第102回箱根駅伝予選会/個人成績(2025年10月18日)
2025.11.02
青学大が苦戦の中で3位確保!作戦不発も「力がないチームではない」/全日本大学駅伝
-
2025.10.18
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2023.04.01
-
2022.12.20
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.11.10
関西が1増4枠! 東海が1減 関東は最大枠で変わらず 来年の全日本大学駅伝地区出場枠決定
日本学連は11月10日、11月2日に行われた第57回全日本大学駅伝の結果を受けて、来年予定する第58回大会の各地区学連の出場枠を発表した。 8つの地区学連にはそれぞれ1つの基本枠が与えられ、残りは大会の成績により、シード […]
2025.11.10
國學院大・青木瑠郁、駒大・帰山侑大、早大・間瀬田純平らが登録 有力選手多数エントリー/上尾ハーフ
11月10日、上尾シティハーフマラソンの主催者は16日に開催される第38回大会の出場選手を発表した。 同大会は、箱根駅伝に向けての重要なレースとして実施されており、過去には大迫傑が早大時代に1時間1分47秒のジュニア日本 […]
2025.11.10
来年の全日本大学女子駅伝の出場枠が決定!今年の結果から関東9枠、関西5枠に タイム選考枠は2校
日本学生陸上競技連合は、来年の第44回全日本大学女子駅伝の各地区学連出場枠について発表した。 同大会の出場枠は今年10月の第43回大会で上位8位までに入った学校に対して、シード権を付与。次に、9位から17位に入ったチーム […]
2025.11.10
ニューイヤー駅伝 シード制と統一予選会導入へ! 実業団駅伝の活性化目指し2027年から実施
11月10日、一般社団法人日本実業団陸上競技連合は、全日本実業団対抗駅伝(ニューイヤー駅伝)において、2027年の第71回大会からのシード制導入、および最短で2027年秋から統一予選会の実施を決定したと発表した。 連合で […]
2025.11.10
日本テレビ菅谷大介アナウンサーが死去 53歳 箱根駅伝のスタート、フィニッシュ実況も担当
日本テレビは11月10日、菅谷大介アナウンサーが8日に亡くなったことを発表した。53歳。 菅谷アナは千葉県出身。1997年に入社し、ニュースやバラエティ番組に出演。スポーツ中継にも携わり、2002年からは箱根駅伝でも実況 […]
Latest Issue
最新号
2025年11月号 (10月14日発売)
東京世界選手権 総特集
箱根駅伝予選会&全日本大学駅伝展望