2024.07.24
FOCUS! 高校生INTERVIEW
工藤実幸乃 Kudo Miyuno
筑豊高3福岡
いよいよ、7月28日から福岡インターハイ(8月1日までの5日間/東平尾公園博多の森陸上競技場)が行われます。そこで、注目の高校アスリートをフォーカスするこのコーナーでは、地元優勝を目指す女子ハンマー投の工藤実幸乃選手(筑豊高3福岡)にご登場いただきました。今季は高校ランキングトップの記録を立て続けにマークし、さらに7月14日には高校歴代6位の56m36をスロー。高校日本一へ着々と準備を進めています。
部活動見学でハンマー投にビビッと来た
――7月14日の福岡県国スポ選考会(学年別選手権)で自己ベストを更新する56m36をマークしました。
工藤 雨が降ったことでサークルが滑りやすく、よく足が回りました。勢いがついたお陰で、振り切った瞬間にハンマーがグンッと伸びました。初めての感覚でした。
――この日は56m台を2本。念願の55mを大きく超えただけでなく、複数本残したことも自信になりましたか。
工藤 投げた直後は55m中盤くらいだと思ったので、記録をコールされたときは、「あれ?聞き間違いかな」と思ったほど。まさか56mまで伸びていると思いませんでした。インターハイと同じ博多の森陸上競技場で投げられたことは自信になりましたが、雨で滑りが良かったので、本番が晴れだった場合は同じようにはいかないだろうと思っています。
――冷静な受け止めですね。今季は福岡県大会、北九州大会、U20日本選手権と安定して54m台を投げています。
工藤 今季が始まる前に、先生方と「一発を投げるよりも、アベレージを上げていこう」と確認しました。実際、そのとおりになっているのは、先生方が練習メニューをうまく組んでくれたお陰だと思います。
――なぜ、アベレージを上げることを今季のテーマにしたのですか。
工藤 アベレージを上げながら、高い記録に挑戦していったほうが自信になるし、根拠のあるものになりますよね。大きいのを1本投げただけだと、次も投げないといけないとか、投げられるのかなという不安が大きくなるので、自信を築くためのアベレージなのかなと思っています。
――自信は深まりましたか。
工藤 やっぱり自信はつきました。52、53mは普通に出せるので、楽に振っていこうという気持ちでサークルに入れています。
――天候や気温に左右されない強さも感じます。
工藤 暑い日はよく身体が動くし、体温が高いほうなので、冬も割とすぐに身体は動きます。暑さ、寒さよりも、気にしているのは天候ですね。ハンマー投と円盤投は2足のシューズからコンディションを見て選んでいます。私は足を回すことができるので、滑りやすい条件はむしろプラスです。
――インターハイ出場は3年連続(1、2年は砲丸投で出場)になります。
工藤 昨年(砲丸投で出場)は不安で、前日から取り乱していましたが、今年は今出せる力を出すだけなので、やるしかない、という気持ちです。結果よりも自分自身が納得できる試合ができるかどうかだと思うので、落ち着いています。今までの2年間とは、少し違う気持ちです。
――3年生のインターハイを地元で経験できる。これも稀有な巡り合わせです。
工藤 中学の時に、私が高校3年生の年にインターハイが福岡で開催されることを知っていました。それを知ったとき、おこがましいかもしれないけど、「このインターハイは私のためにあるんじゃないか」と思いました。「ここで優勝を絶対するんだ」。そう決めて筑豊高校に入ったので試合が楽しみです。
――筑豊高校なら、その目標が叶えられると思ったのはなぜでしょうか。
工藤 中学3年(北九州・石峯中)のとき、一時期ですが、陸上を続けるか迷った時期がありました。その時期に、中学の先生を通じて(筑豊高)現・顧問の佐々木幹雄先生に砲丸投を教えてもらう機会があり、「あっ、おもしろい」と感じて、(筑豊高の)オープンスクールに参加することにしました。その時の部活動見学で、ハンマー投を初めて生で見て、ビビッときました。私はここで、この種目をやるんだと感じたんです。親には、家に帰ってすぐに「私、筑豊に行くわ」と伝えました。
――やったことのないハンマー投を見て、大きなインスパイアーを受けたんですね。まさに運命的な出合い!
工藤 よくドラマで、光が射してきて風が吹くみたいなシーンがありますよね。まさにそんな感じで、運命ってこういうことなのかなという感じがしました。
――ご自宅から直方市の高校まで少し離れていますね。
工藤 電車だと乗り継いで2時間近くかかります。親に送迎してもらうこともあるので、周りに支えられているおかげで、競技を続けられていると感じます。
部活動見学でハンマー投にビビッと来た
――7月14日の福岡県国スポ選考会(学年別選手権)で自己ベストを更新する56m36をマークしました。 工藤 雨が降ったことでサークルが滑りやすく、よく足が回りました。勢いがついたお陰で、振り切った瞬間にハンマーがグンッと伸びました。初めての感覚でした。 ――この日は56m台を2本。念願の55mを大きく超えただけでなく、複数本残したことも自信になりましたか。 工藤 投げた直後は55m中盤くらいだと思ったので、記録をコールされたときは、「あれ?聞き間違いかな」と思ったほど。まさか56mまで伸びていると思いませんでした。インターハイと同じ博多の森陸上競技場で投げられたことは自信になりましたが、雨で滑りが良かったので、本番が晴れだった場合は同じようにはいかないだろうと思っています。 ――冷静な受け止めですね。今季は福岡県大会、北九州大会、U20日本選手権と安定して54m台を投げています。 工藤 今季が始まる前に、先生方と「一発を投げるよりも、アベレージを上げていこう」と確認しました。実際、そのとおりになっているのは、先生方が練習メニューをうまく組んでくれたお陰だと思います。 ――なぜ、アベレージを上げることを今季のテーマにしたのですか。 工藤 アベレージを上げながら、高い記録に挑戦していったほうが自信になるし、根拠のあるものになりますよね。大きいのを1本投げただけだと、次も投げないといけないとか、投げられるのかなという不安が大きくなるので、自信を築くためのアベレージなのかなと思っています。 ――自信は深まりましたか。 工藤 やっぱり自信はつきました。52、53mは普通に出せるので、楽に振っていこうという気持ちでサークルに入れています。 ――天候や気温に左右されない強さも感じます。 工藤 暑い日はよく身体が動くし、体温が高いほうなので、冬も割とすぐに身体は動きます。暑さ、寒さよりも、気にしているのは天候ですね。ハンマー投と円盤投は2足のシューズからコンディションを見て選んでいます。私は足を回すことができるので、滑りやすい条件はむしろプラスです。 ――インターハイ出場は3年連続(1、2年は砲丸投で出場)になります。 工藤 昨年(砲丸投で出場)は不安で、前日から取り乱していましたが、今年は今出せる力を出すだけなので、やるしかない、という気持ちです。結果よりも自分自身が納得できる試合ができるかどうかだと思うので、落ち着いています。今までの2年間とは、少し違う気持ちです。 ――3年生のインターハイを地元で経験できる。これも稀有な巡り合わせです。 工藤 中学の時に、私が高校3年生の年にインターハイが福岡で開催されることを知っていました。それを知ったとき、おこがましいかもしれないけど、「このインターハイは私のためにあるんじゃないか」と思いました。「ここで優勝を絶対するんだ」。そう決めて筑豊高校に入ったので試合が楽しみです。 ――筑豊高校なら、その目標が叶えられると思ったのはなぜでしょうか。 工藤 中学3年(北九州・石峯中)のとき、一時期ですが、陸上を続けるか迷った時期がありました。その時期に、中学の先生を通じて(筑豊高)現・顧問の佐々木幹雄先生に砲丸投を教えてもらう機会があり、「あっ、おもしろい」と感じて、(筑豊高の)オープンスクールに参加することにしました。その時の部活動見学で、ハンマー投を初めて生で見て、ビビッときました。私はここで、この種目をやるんだと感じたんです。親には、家に帰ってすぐに「私、筑豊に行くわ」と伝えました。 ――やったことのないハンマー投を見て、大きなインスパイアーを受けたんですね。まさに運命的な出合い! 工藤 よくドラマで、光が射してきて風が吹くみたいなシーンがありますよね。まさにそんな感じで、運命ってこういうことなのかなという感じがしました。 ――ご自宅から直方市の高校まで少し離れていますね。 工藤 電車だと乗り継いで2時間近くかかります。親に送迎してもらうこともあるので、周りに支えられているおかげで、競技を続けられていると感じます。1年生の時は悔し涙を流す日々
――記録だけ見れば、高校入学後は順調に伸びていましたが、実際はいかがでしたか。 工藤 初めてハンマーを持った時は、何を理由にこんなに重いものを投げようと思ったんだろうと思うほど、見た目ほど簡単じゃなかったです。段々と慣れてきた矢先の冬に、ヘルニアが再発して入院して手術。周りは練習しているのに私だけできない悔しさ、取り残されているという不安や焦りに寂しさもあって、入院中は家族に電話しては泣いていました。その時期は辛かったですね。 ――そこからどうやって立ち直ったんですか。 工藤 姉が「そうだね」と静かに話を聞いてくれたのが大きかったですね。2ヵ月ほど投げられなかったのですが、久々に練習に合流できた時は、不安以上に、ここからまたみんなと一緒に練習できる喜びが勝っていました。 ――頑張り始めたところで、2年生のインターハイ福岡県大会ハンマー投は3回ファウル。記録なしに終わりました。 工藤 また落とされた感じがあって辛かったですが、落ちるとこまで落ちたから、これからは上に上がるしかないと思いました。今思えばこの経験があったから、ここでつぶれるわけにはいかないと思って頑張ってこられたと思います。それがU18大会の優勝にもつながりました。ターニングポイントの1年でしたね。 ――1、2年時はどこを重点的に強化してきましたか。 工藤 入学当初は本当に身体を動かせなくて、練習していても、私が一番遅いということがたびたびありました。一人ひとりに合ったメニューを用意してもらえたので練習自体はやれましたが、ついていけないことが悔しくて、涙を流すことも多くて……。私が泣くたびに先生たちが話をしてくれて、それを繰り返しながら、メンタルを鍛えてもらったのが大きかったと思います。 ――今年は心の安定と同時に、技術的な進化も感じます。 工藤 先生から「予備スウィングを3回から2回に減らしたほうが良いのでは」というアドバイスを受けて、やってみたら記録がグンと伸びました。また、九州共立大の競技会に行った時に、(同大学の)疋田晃久監督や学生に、回転の時にハンマーより顔が先に行っているから、目線がずれないように意識したほうが良いとアドバイスをもらい、そこも意識するようになりました。良くも悪くも、私は1回転目の入りがブレないので、入りの目線が投てきに大きく影響するんです。 ――以前、技術や記録を持っていても、インターハイで勝つことは簡単ではないとおっしゃっていました。勝つために必要なことは何だと思いますか。 工藤 自分本位の投げではなく、冷静さを保つこと。そして、そういう時にこそ、今まで支えてもらった人のことを一つひとつ思い出しながら投げることが大事だと思っています。 ――インターハイにはどなたが応援に来てくれますか。 工藤 筑豊高校の陸上部員は全員来てくれますし、卒業した先輩や先生、クラスの友達や家族も来てくれます。福岡じゃなかったら、こんなに大勢は来られないと思うので、応援を味方につけたいです。 [caption id="attachment_141882" align="alignnone" width="800"]
工藤実幸乃 PROFILE
◎くどう・みゆの/2006年4月5日生まれ。福岡県出身。石峯中―筑豊高。姉、兄の影響で陸上を始め、中学時代は砲丸投がメイン。3年時の21年には茨城全中、U16大会の両方に出場している。高校入学後、1年時のインターハイ路線は砲丸投でインターハイに出場した。その直後からハンマー投でも試合に出ており、秋はU18大会に参戦している。2年時の昨年度はハンマー投こそ福岡県大会で記録なしに終わったが、砲丸投では2年連続のインターハイへ。U18大会ではハンマー投で優勝している。今季は4月以降、ハンマー投では高校生相手に負けなしで、6月下旬のU20日本選手権では高校生最上位の2位。その後、高校歴代6位の56m36をマークした。主な自己ベストはハンマー投56m36(24年)、砲丸投12m25(22年)、円盤投36m38(24年) [caption id="attachment_141883" align="alignnone" width="800"]
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