HOME 国内

2024.02.25

“初代山の神”今井正人 大歓声ラストランに「こんなに幸せなことはない」今後は「一緒に考え、悩み、悔しがれる」指導者に/日本選手権クロカン
“初代山の神”今井正人 大歓声ラストランに「こんなに幸せなことはない」今後は「一緒に考え、悩み、悔しがれる」指導者に/日本選手権クロカン

現役ラストランとなった今井正人(トヨタ自動車九州)(24年日本選手権クロカン)

◇第107回日本選手権クロスカントリー(2月25日/福岡・海の中道海浜公園)

世界クロスカントリー選手権(3月30日/セルビア・ベオグラード)の代表選考会を兼ねた第107回日本選手権クロスカントリーが行われ、男子(10km)は山口智規(早大)が29分16秒で優勝した。最後は早大の先輩である井川龍人(旭化成)との壮絶なデッドヒートを同タイムながら制した。

そのトップ争いからは遅れたが、大歓声を浴びながら今井正人(トヨタ自動車九州)が最後の直線に帰ってきた。両手を広げ、万感の表情でフィニッシュ。そして、くるりとフィニッシュ地点に向き直り、「みなさんへの感謝の気持ち」を込めて深々と一礼した。

31分19秒で44位と「名残惜しくてだいぶ長く走ってしまいましたが」と苦笑いをしつつ、少し言葉を詰まらせながら「みなさんの声援が途切れることなく背中を押してくれた。これだけの応援の中で走れたので、こんなに幸せなことはありません」と振り返った。

福島・小高町(現・南相馬市)出身の39歳。華やかな結果と、苦しい道のりと紆余曲折ありながら、この日のように多くのファンから声援を受け続けたランナーだった。

小学生の頃から野球少年だったが、小・中学時代では野球部に所属しながら駅伝で活躍し、都道府県対抗男子駅伝にも出場した。

広告の下にコンテンツが続きます

原町高に進学して本格的に陸上部へ。2年時には世界ユース選手権3000mに出場すると、都道府県対抗駅伝を5区区間新と快走を見せた。3年時のインターハイ5000mでは日本人2番手の5位と華々しい成績を残す。

順大に進学後、箱根駅伝では1年時に2区を務めて区間10位。2年目からは3年連続で5区を務めて区間賞を獲得し、3年時に往路優勝、主将を務めた4年目は総合優勝に貢献した。3年連続で金栗杯を獲得し、実況アナウンサーから“山の神”と称され、その後、箱根5区で快走する選手の称号ともなっている。

卒業後は目標だったマラソンに挑戦し、2015年の東京マラソンで日本人トップを飾り同年の北京世界選手権代表に選出された。大会直前に髄膜炎と診断され無念の欠場。2019年、23年には五輪代表選考会マラソングランドチャピオンシップ(MGC)に出場している。マラソンの自己記録は2時間7分39秒(15年東京)。

2月21日にこの大会を現役ラストレースにすることを発表してから、「たくさんの人からメッセージや連絡をもらい、本当に最後なんだなと実感してきた」と言う。

ラストレースを終え、「山あり谷ありの、谷のほうが多かったけど、そのたびに成長させてもらいまいたし、たくさんのことを経験させてもらった。充実した24年間だったなと思います」。そう振り返り、最後は涙をこらえきれなかった。

今後は、指導者の道を歩む予定。「指導とか、伝えるというよりは、しっかり寄り添いながら、伴走者として一緒に考えて一緒に悩んで、一緒に悔しがれる存在になれればと思っています」と新たな一歩への思いを語った。

◇第107回日本選手権クロスカントリー(2月25日/福岡・海の中道海浜公園) 世界クロスカントリー選手権(3月30日/セルビア・ベオグラード)の代表選考会を兼ねた第107回日本選手権クロスカントリーが行われ、男子(10km)は山口智規(早大)が29分16秒で優勝した。最後は早大の先輩である井川龍人(旭化成)との壮絶なデッドヒートを同タイムながら制した。 そのトップ争いからは遅れたが、大歓声を浴びながら今井正人(トヨタ自動車九州)が最後の直線に帰ってきた。両手を広げ、万感の表情でフィニッシュ。そして、くるりとフィニッシュ地点に向き直り、「みなさんへの感謝の気持ち」を込めて深々と一礼した。 31分19秒で44位と「名残惜しくてだいぶ長く走ってしまいましたが」と苦笑いをしつつ、少し言葉を詰まらせながら「みなさんの声援が途切れることなく背中を押してくれた。これだけの応援の中で走れたので、こんなに幸せなことはありません」と振り返った。 福島・小高町(現・南相馬市)出身の39歳。華やかな結果と、苦しい道のりと紆余曲折ありながら、この日のように多くのファンから声援を受け続けたランナーだった。 小学生の頃から野球少年だったが、小・中学時代では野球部に所属しながら駅伝で活躍し、都道府県対抗男子駅伝にも出場した。 原町高に進学して本格的に陸上部へ。2年時には世界ユース選手権3000mに出場すると、都道府県対抗駅伝を5区区間新と快走を見せた。3年時のインターハイ5000mでは日本人2番手の5位と華々しい成績を残す。 順大に進学後、箱根駅伝では1年時に2区を務めて区間10位。2年目からは3年連続で5区を務めて区間賞を獲得し、3年時に往路優勝、主将を務めた4年目は総合優勝に貢献した。3年連続で金栗杯を獲得し、実況アナウンサーから“山の神”と称され、その後、箱根5区で快走する選手の称号ともなっている。 卒業後は目標だったマラソンに挑戦し、2015年の東京マラソンで日本人トップを飾り同年の北京世界選手権代表に選出された。大会直前に髄膜炎と診断され無念の欠場。2019年、23年には五輪代表選考会マラソングランドチャピオンシップ(MGC)に出場している。マラソンの自己記録は2時間7分39秒(15年東京)。 2月21日にこの大会を現役ラストレースにすることを発表してから、「たくさんの人からメッセージや連絡をもらい、本当に最後なんだなと実感してきた」と言う。 ラストレースを終え、「山あり谷ありの、谷のほうが多かったけど、そのたびに成長させてもらいまいたし、たくさんのことを経験させてもらった。充実した24年間だったなと思います」。そう振り返り、最後は涙をこらえきれなかった。 今後は、指導者の道を歩む予定。「指導とか、伝えるというよりは、しっかり寄り添いながら、伴走者として一緒に考えて一緒に悩んで、一緒に悔しがれる存在になれればと思っています」と新たな一歩への思いを語った。

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.07.11

七種競技・熱田心 連覇へ「プレッシャーを力に変えたい」日本記録へ挑戦/日本選手権混成

◇第109回日本選手権・混成競技(7月12、13日/岐阜・岐阜メモリアルセンター長良川競技場) 東京世界選手権の代表選考会を兼ねた日本選手権・混成競技を前日に控え、有力選手が会見に出席した。 女子七種競技で前回初優勝を飾 […]

NEWS 十種競技・奥田啓祐「まとめる練習してきた」3年ぶりVと自己新狙う/日本選手権混成

2025.07.11

十種競技・奥田啓祐「まとめる練習してきた」3年ぶりVと自己新狙う/日本選手権混成

◇第109回日本選手権・混成競技(7月12、13日/岐阜・岐阜メモリアルセンター長良川競技場) 東京世界選手権の代表選考会を兼ねた日本選手権・混成競技を前日に控え、有力選手が会見に出席した。 男子十種競技で3年ぶり優勝を […]

NEWS セメニャが勝訴 スイス最高裁に対し1370万円の支払い命令 欧州人権裁判所が権利侵害認定

2025.07.11

セメニャが勝訴 スイス最高裁に対し1370万円の支払い命令 欧州人権裁判所が権利侵害認定

女子800mで五輪、世界選手権を制したキャスター・セメニャ氏(南アフリカ)が起こしていた係争をめぐり、欧州人権裁判所(ECHR)はスイス連邦最高裁判所に対し、69,000ポンド(約1370万円)の支払いを命じる判決を下し […]

NEWS 【女子200m】村田愛衣紗(ナンバーワンクラブ・中2)24秒79=中2歴代7位タイ

2025.07.11

【女子200m】村田愛衣紗(ナンバーワンクラブ・中2)24秒79=中2歴代7位タイ

鹿児島県中学通信が6月28日、県立鴨池陸上競技場で行われ、女子共通200m予選で村田愛衣紗(ナンバーワンクラブ)が中2歴代7位タイの24秒79(+1.5)をマークした。 村田は小学生から県内のクラブチーム、ナンバーワンク […]

NEWS 十種競技アジア銅の奥田啓祐が3大会Vなるか 七種競技は熱田心が連覇狙う/日本選手権混成

2025.07.11

十種競技アジア銅の奥田啓祐が3大会Vなるか 七種競技は熱田心が連覇狙う/日本選手権混成

◇第109回日本選手権混成競技(7月12、13日/岐阜・岐阜メモリアルセンター長良川競技場) 男子十種競技と女子七種競技のナンバーワンを決める日本選手権・混成競技が今週末に開催される。会場は前回同様・岐阜。走・跳・投の総 […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年7月号 (6月13日発売)

2025年7月号 (6月13日発売)

詳報!アジア選手権
日本インカレ
IH都府県大会

page top