2023.12.26
新春の風物詩・箱根駅伝の100回大会に挑む出場全23校の選手やチームを取り上げる「箱根駅伝Stories」。それぞれが歩んできた1年間の足跡をたどった。
トラックで力走も再びケガから復活へ
2020年。当時1年生だった彼らが4年生で迎える100回大会は、どんな大会となるのだろうか。三浦龍司(順大)、吉居大和(中大)、石原翔太郎(東海大)。“最強世代”が迎える最後の箱根路の物語――。
「箱根に間に合うか間に合わないか、ギリギリの状態です」
11月半ば、東海大の石原翔太郎(4年)は苦しい胸の内を明かした。夏合宿は順調にこなしてきていたが、終盤に右足足底の中足骨辺りを故障。およそ2ヵ月半、懸命にリハビリを続けていた。
「両角(速)監督とは、『無理をしない程度に復帰を目指そう』と話しています。将来も競技を続けていくので、箱根本戦に間に合えばいい、と」
クールなイメージだが、競技への思いは熱い。ただし時折、屈託のない笑顔も見せる。
「故障して精神的にきついと思われがちですが、自分は結構切り替えられるタイプです。なるべく深刻に考えないようにしています。それより、チームの仲間が一丸となって今年は戦っているので、自分もケガを治すことに専念して早く復帰できるよう努力しています」
そして、12月。ついに石原が本格練習を再開する。
〝Don’t worry,He’s running!〟
西出仁明ヘッドコーチはSNSでそう投稿した。ついにエースが戻ってきた。両角監督は石原を復路で起用する可能性を示唆。石原も「任された区間は絶対に区間賞を取りたい」と意欲を示す。
今季前半、最終学年を迎えた石原は積極的にレースに参加した。2月の日本選手権クロスカントリー競走(10km)では、優勝した塩尻和也(富士通)や2位の三浦龍司(順大)に食らいつき8位に入る。
4月は金栗記念5000mでは13分37秒28をマーク。日本学生個人選手権5000mでは13分59秒67で2位となり、ワールドユニバーシティゲームズ(WUG)出場権を獲得した。
関東インカレでは1部5000mで三浦龍司に続き2位。東海大の対校戦総合3位に貢献すると、全日本大学駅伝関東地区選考会10000mでは最終4組を走り、「無理せず」28分37秒33で日本人2位、チームは3位で通過した。
8月に中国・成都で開かれたWUGでは、5000mに出場し4位。惜しくもメダルを逃した。ラスト1周からのスパート合戦で世界のスピードを体感。「海外の選手と戦えるのはなかなかできない経験でした。もっとスピードを磨かないといけないなと思いました」。それでも、石原の復活は他大学へ強烈な印象を与えた。
「生で見ると『やっぱり強いな』と感じた」(城西大・山本唯翔)
「普段の練習や生活態度から意識の高さを感じた」(法大・松永伶)
東海大のチームメートのみならず、他校のエースたちが刺激を受けた。
トラックで力走も再びケガから復活へ
2020年。当時1年生だった彼らが4年生で迎える100回大会は、どんな大会となるのだろうか。三浦龍司(順大)、吉居大和(中大)、石原翔太郎(東海大)。“最強世代”が迎える最後の箱根路の物語――。 「箱根に間に合うか間に合わないか、ギリギリの状態です」 11月半ば、東海大の石原翔太郎(4年)は苦しい胸の内を明かした。夏合宿は順調にこなしてきていたが、終盤に右足足底の中足骨辺りを故障。およそ2ヵ月半、懸命にリハビリを続けていた。 「両角(速)監督とは、『無理をしない程度に復帰を目指そう』と話しています。将来も競技を続けていくので、箱根本戦に間に合えばいい、と」 クールなイメージだが、競技への思いは熱い。ただし時折、屈託のない笑顔も見せる。 「故障して精神的にきついと思われがちですが、自分は結構切り替えられるタイプです。なるべく深刻に考えないようにしています。それより、チームの仲間が一丸となって今年は戦っているので、自分もケガを治すことに専念して早く復帰できるよう努力しています」 そして、12月。ついに石原が本格練習を再開する。 〝Don’t worry,He’s running!〟 西出仁明ヘッドコーチはSNSでそう投稿した。ついにエースが戻ってきた。両角監督は石原を復路で起用する可能性を示唆。石原も「任された区間は絶対に区間賞を取りたい」と意欲を示す。 今季前半、最終学年を迎えた石原は積極的にレースに参加した。2月の日本選手権クロスカントリー競走(10km)では、優勝した塩尻和也(富士通)や2位の三浦龍司(順大)に食らいつき8位に入る。 4月は金栗記念5000mでは13分37秒28をマーク。日本学生個人選手権5000mでは13分59秒67で2位となり、ワールドユニバーシティゲームズ(WUG)出場権を獲得した。 関東インカレでは1部5000mで三浦龍司に続き2位。東海大の対校戦総合3位に貢献すると、全日本大学駅伝関東地区選考会10000mでは最終4組を走り、「無理せず」28分37秒33で日本人2位、チームは3位で通過した。 8月に中国・成都で開かれたWUGでは、5000mに出場し4位。惜しくもメダルを逃した。ラスト1周からのスパート合戦で世界のスピードを体感。「海外の選手と戦えるのはなかなかできない経験でした。もっとスピードを磨かないといけないなと思いました」。それでも、石原の復活は他大学へ強烈な印象を与えた。 「生で見ると『やっぱり強いな』と感じた」(城西大・山本唯翔) 「普段の練習や生活態度から意識の高さを感じた」(法大・松永伶) 東海大のチームメートのみならず、他校のエースたちが刺激を受けた。最強世代の一人として世界へ
倉敷高出身で、2018年の全国高校駅伝Vメンバー。その直後の2019年正月の箱根駅伝で東海大が初優勝。胸躍らせて入学した。全日本や箱根での区間賞はもちろん、トラックでも存在感を放ってきた。 故障による長期離脱も経験したが、「箱根やトラックでの経験を積んだ大学4年間は、将来マラソンに取り組むためのステップになると思う」。三浦、吉居大和(中大)ら、“黄金世代”の同学年においても、石原は多くのインパクトを与えてきた。 両角監督も石原の将来についてこう語る。「もちろん五輪を目指すような選手になっていってほしい。ただ、いろいろな部分でまだまだ未開拓なところもある。彼自身が『強くなるにはどうすればいいか』ということをしっかり考えてやっていけば、おもしろい選手になると思う」。 [caption id="attachment_105894" align="alignnone" width="800"]
|
|
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
2025.04.30
【連載】上田誠仁コラム雲外蒼天/第56回「昭和100年とスポーツ用具の進化」
-
2025.04.30
-
2025.04.30
-
2025.04.30
-
2025.04.30
-
2025.04.30
2025.04.29
100mH田中佑美が予選トップ通過も決勝棄権「故障ではない」昨年の結婚も明かす/織田記念
-
2025.04.28
-
2025.04.26
2025.04.12
3位の吉居大和は涙「想像していなかったくらい悔しい」/日本選手権10000m
-
2025.04.01
-
2025.04.12
-
2025.04.12
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2022.12.20
-
2023.04.01
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.04.30
【連載】上田誠仁コラム雲外蒼天/第56回「昭和100年とスポーツ用具の進化」
山梨学大の上田誠仁顧問の月陸Online特別連載コラム。これまでの経験や感じたこと、想いなど、心のままに綴っていただきます! 第56回「昭和100年とスポーツ用具の進化」 昨年は記念大会となる第100回箱根駅伝が開催され […]
2025.04.30
【高校生FOCUS】男子競歩・山田大智(西脇工高)インターハイで昨夏の雪辱誓う 高校記録更新にも挑戦
FOCUS! 高校生INTERVIEW 山田大智 Yamada Daichi 西脇工高3兵庫 2025年シーズンが本格的に始まり、高校陸上界では記録会、競技会が次々と開かれています。その中で好記録も生まれており、男子50 […]
2025.04.30
5.3静岡国際、パリ五輪代表の坂井隆一郎、200m世界陸上標準突破の水久保漱至らが欠場
5月3日に行われる静岡国際のエントリーリストが更新され、現時点で欠場届を提出した選手が判明した。 男子100mはパリ五輪代表の坂井隆一郎(大阪ガス)が欠場。坂井は4月13日の出雲陸上で脚を痛め、29日の織田記念の出場も見 […]
2025.04.30
26年ブダペスト開催の「世界陸上アルティメット選手権」やり投・北口榛花が出場権獲得
世界陸連(WA)は4月29日、2026年に新設する「世界陸上アルティメット選手権」の大会500日前を受け、昨年のパリ五輪の金メダリストに出場資格を与えることを発表した。女子やり投で金メダルを獲得した北口榛花(JAL)も含 […]
Latest Issue
最新号

2025年4月号 (3月14日発売)
東京世界選手権シーズン開幕特集
Re:Tokyo25―東京世界陸上への道―
北口榛花(JAL)
三浦龍司(SUBARU)
赤松諒一×真野友博
豊田 兼(トヨタ自動車)×高野大樹コーチ
Revenge
泉谷駿介(住友電工)