2023.12.22
新春の風物詩・箱根駅伝の100回大会に挑む出場全23校の選手やチームを取り上げる「箱根駅伝Stories」。それぞれが歩んできた1年間の足跡をたどった。
“ダブル吉田”で切磋琢磨
これまで目立った実績やタイムを残しているわけではない。
しかし、今季は関東インカレ2部のハーフマラソンで3位を占め、出雲と全日本の2つの駅伝ではアンカーとして安定感のある走りを見せた。ロードで堅実な働きができる吉田凌(3年)は、創価大を象徴する選手と言っていい。
今年の2月から3月にかけて、吉田の競技人生に大きな影響を及ぼした2つの出来事があった。
1つは、2月上旬から約1ヵ月間、当時4年生だったエースの葛西潤(現・旭化成)と敢行したケニア合宿だ。
1年時に出場した箱根駅伝を2年時は走ることができず、悔しい思いを抱えていた。そんな時期に葛西から「一緒に行こう」と誘われ、「興味を持っていたし、自分を変える良い機会にもなる」とチャレンジを決めた。
標高約2400mの高地にあるケニアでは、朝練習がメインだった。およそ18~23kmを最初はゆっくりと入り、後半はビルドアップのようにスピード的にも上がっていく。場所も日本とは違い、不整地で足場が悪い中でケニア人選手と走った。
心肺機能や体幹などが鍛えられただけでなく、「日本とは違う環境だったことで、精神的にも鍛えられたと感じています」と大きな成長を実感できた。
さらに、ケニア人選手は「楽しそうに練習していて、フィジカル的にも強い」という印象を受けたという。遠い異国への武者修行で学ぶべき点は多く、それが5000m自己ベスト更新(13分51秒66)や関東インカレでの好成績につながった。
大きな刺激となったもう1つは、東海大からの編入で春からチームに加わった吉田響(3年)の存在である。
「良い仲間でありながら、良いライバル。自分の陸上人生を変えるような人」と感じている。特に夏合宿でその思いを強くした。
「一緒に練習していく中で、距離に対する考えの違いに驚かされました。どんなにきつくても距離を踏んできた響を見て、自分も負けずにがんばろうという気持ちにさせてくれました」
走行距離のチーム目標は月間900kmだったが、2人で切磋琢磨しながら、目標を大きく上回る1050kmを走破。体調不良などもあって月間900kmに達しなかった2年時の夏と比べても、目覚ましい成長を遂げ、「大きな収穫だった」と胸を張る。
“2人の吉田”は私生活でも仲が良く、一緒に食事や治療に行くことも多いという。吉田響は、「転入して最初に声を掛けてくれた同期だった」という吉田凌を「安定感があって、大事なところで自分の役割を果たせる選手。鋭い意見でみんなをまとめてくれるので、チームに欠かせない存在です」と一目置いている。
“ダブル吉田”で切磋琢磨
これまで目立った実績やタイムを残しているわけではない。 しかし、今季は関東インカレ2部のハーフマラソンで3位を占め、出雲と全日本の2つの駅伝ではアンカーとして安定感のある走りを見せた。ロードで堅実な働きができる吉田凌(3年)は、創価大を象徴する選手と言っていい。 今年の2月から3月にかけて、吉田の競技人生に大きな影響を及ぼした2つの出来事があった。 1つは、2月上旬から約1ヵ月間、当時4年生だったエースの葛西潤(現・旭化成)と敢行したケニア合宿だ。 1年時に出場した箱根駅伝を2年時は走ることができず、悔しい思いを抱えていた。そんな時期に葛西から「一緒に行こう」と誘われ、「興味を持っていたし、自分を変える良い機会にもなる」とチャレンジを決めた。 標高約2400mの高地にあるケニアでは、朝練習がメインだった。およそ18~23kmを最初はゆっくりと入り、後半はビルドアップのようにスピード的にも上がっていく。場所も日本とは違い、不整地で足場が悪い中でケニア人選手と走った。 心肺機能や体幹などが鍛えられただけでなく、「日本とは違う環境だったことで、精神的にも鍛えられたと感じています」と大きな成長を実感できた。 さらに、ケニア人選手は「楽しそうに練習していて、フィジカル的にも強い」という印象を受けたという。遠い異国への武者修行で学ぶべき点は多く、それが5000m自己ベスト更新(13分51秒66)や関東インカレでの好成績につながった。 大きな刺激となったもう1つは、東海大からの編入で春からチームに加わった吉田響(3年)の存在である。 「良い仲間でありながら、良いライバル。自分の陸上人生を変えるような人」と感じている。特に夏合宿でその思いを強くした。 「一緒に練習していく中で、距離に対する考えの違いに驚かされました。どんなにきつくても距離を踏んできた響を見て、自分も負けずにがんばろうという気持ちにさせてくれました」 走行距離のチーム目標は月間900kmだったが、2人で切磋琢磨しながら、目標を大きく上回る1050kmを走破。体調不良などもあって月間900kmに達しなかった2年時の夏と比べても、目覚ましい成長を遂げ、「大きな収穫だった」と胸を張る。 “2人の吉田”は私生活でも仲が良く、一緒に食事や治療に行くことも多いという。吉田響は、「転入して最初に声を掛けてくれた同期だった」という吉田凌を「安定感があって、大事なところで自分の役割を果たせる選手。鋭い意見でみんなをまとめてくれるので、チームに欠かせない存在です」と一目置いている。2度目の箱根路は「9区か10区で勝負したい」
吉田は小学5年生の頃、山上りの5区で活躍する柏原竜二(東洋大)を見て、箱根駅伝にあこがれを持った。 中学には陸上競技部がなかったが、野球部に所属しながらも、「箱根駅伝で戦いたい」という思いがブレることはなかった。 高校は福島の名門・学法石川に進み、3年時に全国高校駅伝に出場(4区区間10位)。「入学当初は苦しんだ部分もありましたが、徐々に自分の成長も感じられて、大学で箱根を目指せるような実力がついてきた手応えを感じていました」と3年間を振り返る。 1学年上に従兄の吉田悠良がいたことや、「箱根を目指していく上で環境も良い」という理由で創価大に進学。強い先輩たちにもまれながらレベルアップを遂げていった。 1年目の箱根駅伝では、ただ一人ルーキーで出走メンバーに選ばれ、8区を区間8位。堂々の箱根デビューだった。「ずっと抱いてきた目標を叶えられた達成感を得られましたし、チームの代表として走ることの責任感もありました。初めての長い距離だったので、きつさもありましたが、その当時の実力は発揮できたと思います」と振り返る。 ただ、1つの目標をクリアすれば、次の新たな目標が見えてくる。吉田も「この順位では満足できない。もっと力をつけて来年以降に再チャレンジしたい」とさらなる飛躍を誓った。 2年目の学生駅伝は、全日本だけの出場にとどまり、箱根路を走ることができなかった。しかし、その悔しさを糧に、吉田はケニア合宿や夏合宿を経て、たくましさを身につけた。 「自信を持って迎えられた」と話す3年目の駅伝シーズンでは、出雲も全日本もそれぞれ最長区間のアンカーを任された。 出雲では吉田響から2位でタスキを受け、しっかりとその位置をキープしてチーム最高順位となる2位でフィニッシュ。9位で走り出すことになった全日本でも3つ順位を上げてシード落ちの危機を脱する力走を見せた。 「どちらの駅伝も落ち着いてレースを進められたと感じています。出雲は前半区間から良い流れでつないでもらい、大きな自信につながりましたし、全日本は流れが悪い中であっても、シード権を確保するという最低限の目標を達成できました。途中からは1つでも順位を上げるという気持ちに切り替え、最終的には3つ順位を上げられたのは良かったです」 間近に迫った箱根では、吉田は「9区か10区で勝負したい」と考えている。 「チームが総合3位以上を目標にしている以上、復路の順位も重要になってきます。単独走でも自分の走りをするのが役目。粘りの走りで区間賞争いをして、チームに貢献したいです」 大切な仲間とともに挑む自身2年ぶりとなる箱根路で、吉田は大きく成長した姿を披露するつもりだ。 [caption id="attachment_124097" align="alignnone" width="1431"]
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