2023.10.09
シカゴマラソンが10月8日、米国の当地で行われ、女子はシファン・ハッサン(オランダ)が2時間13分44秒の世界歴代2位で優勝を飾った。
これまでトラックで輝かしい成績を残してきたハッサンが、マラソンでも歴史に残る偉業を達成した。
今大会にはハッサンと19年ドーハ世界選手権金メダリストで2時間14分18秒の世界歴代3位の記録を持つルース・チェプンゲティチ(ケニア)が参戦。戦前から両者の激しい争いが予想されたが、序盤からそのとおりのレース展開となる。
男子のペースメーカーがレースを引っ張るなか、10kmを31分05秒のハイペースで通過。9月のベルリンでティギスト・アセファ(エチオピア)が出したばかりの世界記録(2時間11分53秒)を上回るペースで突き進む。
レースが動いたのは20km手前。苦しい表情を見せたハッサンが遅れ、中間点ではチェプンゲティチが6秒ほどのリードを奪い、このまま差が広がるかに見えた。
しかし、この後リズムを取り戻したハッサンに対して、ピッチが鈍ったチェプンゲティチがスローダウン。25km過ぎに単独首位に立ったハッサンは、その後もペースの落ち込みを最小限に抑え、史上2人目の2時間14分切りを達成した。一方のチェプンゲティチは2時間15分37秒の2位でフィニッシュした。
ドーハ世界選手権で1500m、10000mの2冠に輝き、21年の東京五輪では5000m、10000mの2種目で金メダルを獲得するなど、トラックの女王の名にふさわしい活躍をしてきたハッサン。30歳を迎えた今年、4月のロンドンでマラソンに初挑戦し、途中2度立ち止まりながら2時間18分33秒と鮮烈なマラソンデビュー戦を優勝で飾った。
驚くべきは、その後再びトラックに挑戦し、8月のブダペスト世界選手権には1500m、5000m、10000mに出場。10000mこそ優勝争いを演じながら、フィニッシュ直前に転倒して11位と敗れたが、5000mでは銀メダル、1500mでは銅メダルを獲得している。
そして、世界選手権からわずか6週間で挑戦したシカゴでの快走。「最後の5kmは苦しかった。もう二度と経験したくない」とフィニッシュ後はさすがに倒れ込んだが、1500mからマラソンまで“マルチランナー”という表現では収まりきらない実力を示した。
いまだ底知れぬ才能を持つハッサン。急速な高速化が進む女子マラソン界は彼女を中心に回っていくだろう。
女子マラソン世界歴代10傑
2.11.53 T.アセファ(エチオピア) 2023.9.24 ベルリン 2.13.47 S.ハッサン(オランダ) 2023.10.8 シカゴ 2.14.04 B.コスゲイ(ケニア) 2019.10.13 シカゴ 2.14.18 R.チェプンゲティチ(ケニア)2022.10.9 シカゴ 2.14.58 A.B.ベリソ(エチオピア) 2022.12.4 バレンシア 2.15:25 P.ラドクリフ(英国) 2003.4.13 ロンドン 2.16:28 R.ワンジル(ケニア) 2023.3. 5 東京 2.16.49 L.ギディ(エチオピア) 2022.12.4 バレンシア 2.16.56 T.ゲメチュ(エチオピア 2023.3.8 東京 2.17.01 M.J.ケイタニー(ケニア) 2017.4.23ハッサンのシカゴマラソンでのペース
5km15.43 10km31.05(15.22) 15km46.37(15.32) 20km1.02.16(15.39) 25km1.18.06(15.50) 30km1.34.00(15.54) 35km1.50.17(16.17) 40km2.06.36(16.19) フィニッシュ2.13.44(7.08)RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
2025.10.16
サニブラウンが東レを訪問「走り抜くことができたのはみなさんのお陰」
-
2025.10.15
-
2025.10.15
-
2025.10.15
-
2025.10.13
-
2025.10.13
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2023.04.01
-
2022.12.20
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.10.16
中学、高校のトップが出場!IH優勝・石原南菜、後藤大樹や中学記録保持者・今村好花、大森蒼以らに注目/U18・16大会
10月17日から19日の3日間、U18・U16陸上大会が三重県伊勢市の三重交通Gスポーツの杜伊勢陸上競技場で開催される。 U18大会は2025年12月31日時点の16歳、17歳が対象で高校3年生の早生まれと高校2年生、1 […]
2025.10.16
サニブラウンが東レを訪問「走り抜くことができたのはみなさんのお陰」
男子短距離で東京世界選手権代表のサニブラウン・アブデル・ハキームが10月16日、所属先である東レの東京本社を訪問した。 サニブラウンは今シーズンを終えての報告のために訪れると、役員への挨拶のあとは各フロアを周って挨拶。「 […]
2025.10.16
BROOKSのランニングシューズ「Adrenaline GTS」 誕生25周年を記念し、特別デザインの限定カラーが登場!
米国ランニングシューズブランド「BROOKS(ブルックス)」は、ロングセラーモデル「Adrenaline GTS(アドレナリンジーティーエス)」の誕生25周年を記念し、特別デザインの限定カラーを公式オンラインショップにて […]
2025.10.15
19年ドーハ世界陸上代表・井本佳伸が現役引退「たくさんの出会い幸せ」今後は指導者の道へ
男子短距離で活躍し、19年ドーハ世界選手権リレー代表(補欠)の井本佳伸(東京ガスエコモ)が現役生活に区切りをつけることを自身のSNSで発表した。 井本は京都・東輝中時代に全中で100m5位、200m4位。名門・洛南高へ進 […]
2025.10.15
100m宮本大輔が引退「最後まで走り切れた」元中学記録保持者「早熟なんて気にしなくていい」
穏やかな笑顔で静かに、地元・山口でスパイクを脱いだ。 男子100mの元中学記録保持者・宮本大輔(山口フィナンシャルグループ)が現役生活にピリオドを打った。9月の全日本実業団対抗は、地元・山口。「夏くらいには一旦、区切りを […]
Latest Issue
最新号

2025年11月号 (10月14日発売)
東京世界選手権 総特集
箱根駅伝予選会&全日本大学駅伝展望