HOME 国内

2023.06.05

田中希実5000mも貫禄勝ちで1500mと2冠 ラスト1周60秒の圧巻スパートで世界へ手応え/日本選手権
田中希実5000mも貫禄勝ちで1500mと2冠 ラスト1周60秒の圧巻スパートで世界へ手応え/日本選手権

23年日本選手権5000mを制した田中希実

第107回日本選手権(6月1日~4日/大阪・ヤンマースタジアム長居)4日目

ブダペスト世界選手権の代表選考会を兼ねた第107回日本選手権の最終日に女子5000mが行われ、田中希実(New Balance)が前回女王の貫禄を見せ、この種目で3回目の優勝を果たした。

前回3種目に出場(1500mと5000mは優勝、800mは2位)した田中。今大会は「世界に出ていける種目で自分の力を確かめたいと思いました」と、1500mと5000mの2種目に絞って出場した。すでに2日目の女子1500mは圧勝で4連覇を成し遂げており、最終日の5000mには2年連続の2冠を懸けて臨んだ。

広告の下にコンテンツが続きます

序盤は渡邊菜々美(パナソニック)が先頭に立ち、田中は2~3番手でレースを進める。入りの1000mを3分02秒、2000mを6分09秒で通過すると、さらにペースは落ちて、3000m通過は9分21秒と、世界選手権の参加標準記録(14分57秒00)を狙うペースからは大きく後れを取った。

当初、田中は「本当はもっと(力を)溜めて、ラストにドーンといきたかった」と、残り550mを切ってから一気に仕掛けるプランを立てていたという。しかし、「想定よりも遅く、参加標準を狙うにはかなり厳しいペースだった」ために、プランを変更した。

「勝機が見えているのに、前に出ないのは『ずるい』と思った。ロングスパートでしっかり強さを見せたかった」。3000mを前に先頭に立つと、ペースアップし後続を引き離しにかかった。

「これまでは、早めに仕掛けた時に(ロングスパートが)自分の首を締めることも多かったので、付いてこられるんじゃないかとビクビクしながら走っていました」とレース後に本音を明かした。

だが、「今日は自信を持ってペースを上げることができた。すぐに(後続の)気配が消えたので、今までの自分とは違う力がついたっていう手応えを得ることができました」と振り返るように、3000m以降の田中の走りは圧倒的だった。

3000mから4000mの1000mを再び3分2秒まで戻すと、日本記録保持者の廣中璃梨佳(日本郵政グループ)らが振り落とされ、先頭集団は5人に絞られた。

田中はペースを緩めることなく、残り2周は独走態勢に入る。フィニッシュまでの1000mは2分47秒でカバー。最後の1周(400m)はなんと60秒と、800mのレース時と同じようなスピードを披露した。

「当初のプランとは違ったが、常に自分と対話しながら走れました。ラスト1周を60秒で回れたのはかなり自信になります。ラスト2000mのペースで、最初から最後まで押していけるのが世界。最後までしっかり戦えるように近づけていきたいと思います」

前半のスローペースもあって記録こそ15分10秒63にとどまったが、終盤は、世界で戦うための進化した走りだったと言えるだろう。

「まだ探り探りではあるが、自分の力に自信を持てた大会になりました。より上を目指して、世界のトップ争いができるところを目指していきたい」

今大会で得た自信は大きく、さらなる向上心を抱く。

世界選手権の日本代表に即内定とはならなかったものの、ワールドランキングでの出場は十分に近い位置にいる。今後はケニアでトレーニングを積んで、アジア選手権や世界選手権に備えるという。

文/福本ケイヤ

第107回日本選手権(6月1日~4日/大阪・ヤンマースタジアム長居)4日目 ブダペスト世界選手権の代表選考会を兼ねた第107回日本選手権の最終日に女子5000mが行われ、田中希実(New Balance)が前回女王の貫禄を見せ、この種目で3回目の優勝を果たした。 前回3種目に出場(1500mと5000mは優勝、800mは2位)した田中。今大会は「世界に出ていける種目で自分の力を確かめたいと思いました」と、1500mと5000mの2種目に絞って出場した。すでに2日目の女子1500mは圧勝で4連覇を成し遂げており、最終日の5000mには2年連続の2冠を懸けて臨んだ。 序盤は渡邊菜々美(パナソニック)が先頭に立ち、田中は2~3番手でレースを進める。入りの1000mを3分02秒、2000mを6分09秒で通過すると、さらにペースは落ちて、3000m通過は9分21秒と、世界選手権の参加標準記録(14分57秒00)を狙うペースからは大きく後れを取った。 当初、田中は「本当はもっと(力を)溜めて、ラストにドーンといきたかった」と、残り550mを切ってから一気に仕掛けるプランを立てていたという。しかし、「想定よりも遅く、参加標準を狙うにはかなり厳しいペースだった」ために、プランを変更した。 「勝機が見えているのに、前に出ないのは『ずるい』と思った。ロングスパートでしっかり強さを見せたかった」。3000mを前に先頭に立つと、ペースアップし後続を引き離しにかかった。 「これまでは、早めに仕掛けた時に(ロングスパートが)自分の首を締めることも多かったので、付いてこられるんじゃないかとビクビクしながら走っていました」とレース後に本音を明かした。 だが、「今日は自信を持ってペースを上げることができた。すぐに(後続の)気配が消えたので、今までの自分とは違う力がついたっていう手応えを得ることができました」と振り返るように、3000m以降の田中の走りは圧倒的だった。 3000mから4000mの1000mを再び3分2秒まで戻すと、日本記録保持者の廣中璃梨佳(日本郵政グループ)らが振り落とされ、先頭集団は5人に絞られた。 田中はペースを緩めることなく、残り2周は独走態勢に入る。フィニッシュまでの1000mは2分47秒でカバー。最後の1周(400m)はなんと60秒と、800mのレース時と同じようなスピードを披露した。 「当初のプランとは違ったが、常に自分と対話しながら走れました。ラスト1周を60秒で回れたのはかなり自信になります。ラスト2000mのペースで、最初から最後まで押していけるのが世界。最後までしっかり戦えるように近づけていきたいと思います」 前半のスローペースもあって記録こそ15分10秒63にとどまったが、終盤は、世界で戦うための進化した走りだったと言えるだろう。 「まだ探り探りではあるが、自分の力に自信を持てた大会になりました。より上を目指して、世界のトップ争いができるところを目指していきたい」 今大会で得た自信は大きく、さらなる向上心を抱く。 世界選手権の日本代表に即内定とはならなかったものの、ワールドランキングでの出場は十分に近い位置にいる。今後はケニアでトレーニングを積んで、アジア選手権や世界選手権に備えるという。 文/福本ケイヤ

【動画】女子5000mで圧巻スパートを決めて連覇した田中希実

次ページ:

ページ: 1 2

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.11.13

男子20km競歩は張俊、女子20km競歩は楊家玉が連覇 中国全国運動会が開幕

中国の総合スポーツ競技会の第15回全国運動会が広州市を中心に11月9日から開幕している。陸上競技は12日の20km競歩を皮切りに、15日からマラソンを含め、トラック&フィールド種目がスタートする。 同大会は日本の国民スポ […]

NEWS 全中3000mVの出田隆之助擁する中京が県大会連覇 熊本・松橋、栃木・三島など名門校も全国へ/中学駅伝

2025.11.13

全中3000mVの出田隆之助擁する中京が県大会連覇 熊本・松橋、栃木・三島など名門校も全国へ/中学駅伝

12月14日に行われる第33回全国中学校駅伝への出場権を懸けた都道府県大会が佳境を迎えている。11月5日から10日までに、21都府県で代表校が決定した。 関東では5都県で代表が決定。埼玉男子は男衾が1区から主導権を握り、 […]

NEWS やり投・北口榛花  世界一奪還へ向け始動「山を登ったり、ローラースケートをしたり…」右肘も順調に回復

2025.11.13

やり投・北口榛花 世界一奪還へ向け始動「山を登ったり、ローラースケートをしたり…」右肘も順調に回復

一般社団法人 服部真二 文化・スポーツ財団は11月13日、都内で「第8回服部真二賞」の受賞式を開き、女子やり投の北口榛花(JAL)が受賞し、200万円と江戸切子とクオーツ時計を組み合わせたオリジナルトロフィーが贈呈された […]

NEWS やり投・北口榛花に服部真二賞 陸上では初「チャレンジしてみようという気持ちを届けられたら」

2025.11.13

やり投・北口榛花に服部真二賞 陸上では初「チャレンジしてみようという気持ちを届けられたら」

一般社団法人 服部真二 文化・スポーツ財団は11月13日、都内で「第8回服部真二賞」の受賞式を開き、女子やり投の北口榛花(JAL)が受賞した。 同賞は「音楽やスポーツなどの分野において、発展、改革に挑むリーダー、世界に向 […]

NEWS 福岡国際マラソン 招待選手は22年世界陸上代表の西山雄介 日本歴代7位の細谷恭平 同10位の菊地駿弥ら

2025.11.13

福岡国際マラソン 招待選手は22年世界陸上代表の西山雄介 日本歴代7位の細谷恭平 同10位の菊地駿弥ら

日本陸連は11月13日、福岡国際マラソン2025(12月7日/平和台陸上競技場発着)のエントリー選手を発表した。 大会は2028年ロサンゼルス五輪代表につながるマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)シリーズ2025 […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年12月号 (11月14日発売)

2025年12月号 (11月14日発売)

EKIDEN REVIEW
全日本大学駅伝
箱根駅伝予選会
高校駅伝&実業団駅伝予選

Follow-up Tokyo 2025

page top