
◇日本インカレ(9月17~19日/埼玉・熊谷スポーツ公園)2日目
第90回日本インカレ2日目に行われた女子三段跳で、学生日本一を手にしたのは内山咲良(東大)だった。
5月の関東インカレで、東大女子初のタイトルを獲得した内山。東大医学部医学科、最終学年。その時は「最後となる日本インカレで13mを跳んで勝てるように準備していきます」と語っていた。それから4ヵ月。その言葉は現実のものとなる。
内山は1回目から13m02(+1.0)。2年前に2位になった際に跳んだ13m00のベストを2cm更新した。その後は記録を伸ばすことはできなかったが、最後までトップを守りきって優勝。関東インカレに続き、東大女子初の日本インカレ・タイトルをつかみ取った。
「すごく強い選手ばかりだったので、まだ勝った実感がありません」と内山。1回目から13mを跳び、「それを実現するために7、8月練習してきました」。6月の日本選手権でも13mを跳ぶことを目標にしてきたが12m51で8位と悔しさを味わった。「変えないといけない」と、残り少ない時間ながら、「技術をイチから見直して、ホップで踏み切り脚が下がってしまうところを上から持ってこられるように」と技術を徹底的に磨いたという。1回目は「すごく進んだという感覚がありました」と手応え十分の跳躍だった。
神奈川県川崎市出身で、筑波大附中に進学してから陸上部に入ったのは「やや足が速かったから」。走幅跳を専門とし、筑波大附高3年時にはインターハイにも出場。東大理三に入学し、医学部医学科として陸上を続けたが、当初はインカレの参加標準記録にも届かなかった。大学3年で三段跳に出場した時に伸びしろを感じて三段跳に取り組み始めると、4年時に初めてインカレに出場できるようになった。
端からは『文武両道』と言われても、自身では「文と武は別物だと思っていて、私は陸上を優先した生活をしてきたと思っています。単位はしっかり取ってきましたが、それは当たり前のこと。文を極めたとは言えません」と言う。それだけ、陸上競技に情熱を注いできた。
特にここ数ヵ月は、号泣したという日本選手権の悔しさを晴らすために全力投球。筋肉量など身体を分析し、技術改良を重ねて日本インカレに臨んだ。内山曰く、学業と両立するためのコツは「優先順位を考えて、勉強をする日、陸上だけをする日と分ける」ことだという。
6年間の陸上生活は「山あり、谷ありでした。何度も壁にぶち当たって」。そのたびに「練習して乗り越えてきた6年間でした」。その過程で「いろいろな人に支えてもらってありがたかったです」と言い、「東大はグラウンドもあるし恵まれていた環境でした」と感謝の言葉を並べる。
来年2月には医師国家試験を控え、合格後は2年間の研修医を経験して医師となることを目指す。「目の前の困っている人を助けたいという思いがあるので救急科や、スポーツの経験を生かして産婦人科医を目指していきたい」と考えている。
「私は負けず嫌い。数字でわかるのが陸上の魅力でした。陸上はどんな結果になるかわからない。それに対して計画を立てて積み重ねていく。今後の人生にもそういうことはあると思います。粘り強さが生かせれば」
5月。「よほどのことがなければ引退するつもりです」と話していた。しかし、「来年の日本選手権にも出場できるので、もう一度あの舞台でチャレンジしたいという思いがあります」と、再び日本最高峰の舞台で13mを跳びたいという思いも増している。東大生としてではなく、「負けず嫌いのアスリート」の表情だった。
「自分に陸上の才能があるとは思っていません。でも、才能がないとあきらめる前に、やれることはすごくたくさんあります。最初からすごかったわけではない私が、ここまで来られたのは、何か他の人の道しるべになったかな」
学生陸上界に数々の足跡を残した内山。東大生ということで取り上げられることに戸惑いがあったが、学生アスリートとして最後の大舞台で「日本一の三段跳選手」として堂々と表彰台の真ん中に立った姿は、多くの人に感動を与えただろう。
◇男子400mは東京理科大ルーキーの友田がV
女子三段跳を制したのが東大生なら、男子400mのタイトルを手にしたのは東京理科大の1年生だった。昨年の全国高校大会400m王者の友田真隆(川越東高出身)。それ以降、3月いっぱいまでは「まったく陸上を続ける気はありませんでした」とリセットした。潜在能力に注目を集める存在で、当然、いくつかの有力大学からスカウトはあったが、「薬学部に入りたい」という目標を叶えて東京理科大へ。しかし、新生活を始めて「やることがない」と陸上部を見学。最初はエンジョイでと思っていたが、自分で考える練習がフィットし、夏を超えてからは自己新を連発するなど一気に飛躍を遂げ、今大会も46秒35の自己ベストで優勝を飾った。
「勉強と陸上、両方やりたいと思う人に何か伝えられれば。将来は日の丸を背負いたいです」
身長187cmの大型スプリンターは早生まれのため来年もU20資格を保持。不滅と言われる山口有希のU20日本記録45秒18が破られる日がいよいよ来るかもしれない。
◇日本インカレ(9月17~19日/埼玉・熊谷スポーツ公園)2日目
第90回日本インカレ2日目に行われた女子三段跳で、学生日本一を手にしたのは内山咲良(東大)だった。
5月の関東インカレで、東大女子初のタイトルを獲得した内山。東大医学部医学科、最終学年。その時は「最後となる日本インカレで13mを跳んで勝てるように準備していきます」と語っていた。それから4ヵ月。その言葉は現実のものとなる。
内山は1回目から13m02(+1.0)。2年前に2位になった際に跳んだ13m00のベストを2cm更新した。その後は記録を伸ばすことはできなかったが、最後までトップを守りきって優勝。関東インカレに続き、東大女子初の日本インカレ・タイトルをつかみ取った。
「すごく強い選手ばかりだったので、まだ勝った実感がありません」と内山。1回目から13mを跳び、「それを実現するために7、8月練習してきました」。6月の日本選手権でも13mを跳ぶことを目標にしてきたが12m51で8位と悔しさを味わった。「変えないといけない」と、残り少ない時間ながら、「技術をイチから見直して、ホップで踏み切り脚が下がってしまうところを上から持ってこられるように」と技術を徹底的に磨いたという。1回目は「すごく進んだという感覚がありました」と手応え十分の跳躍だった。
神奈川県川崎市出身で、筑波大附中に進学してから陸上部に入ったのは「やや足が速かったから」。走幅跳を専門とし、筑波大附高3年時にはインターハイにも出場。東大理三に入学し、医学部医学科として陸上を続けたが、当初はインカレの参加標準記録にも届かなかった。大学3年で三段跳に出場した時に伸びしろを感じて三段跳に取り組み始めると、4年時に初めてインカレに出場できるようになった。
端からは『文武両道』と言われても、自身では「文と武は別物だと思っていて、私は陸上を優先した生活をしてきたと思っています。単位はしっかり取ってきましたが、それは当たり前のこと。文を極めたとは言えません」と言う。それだけ、陸上競技に情熱を注いできた。
特にここ数ヵ月は、号泣したという日本選手権の悔しさを晴らすために全力投球。筋肉量など身体を分析し、技術改良を重ねて日本インカレに臨んだ。内山曰く、学業と両立するためのコツは「優先順位を考えて、勉強をする日、陸上だけをする日と分ける」ことだという。
6年間の陸上生活は「山あり、谷ありでした。何度も壁にぶち当たって」。そのたびに「練習して乗り越えてきた6年間でした」。その過程で「いろいろな人に支えてもらってありがたかったです」と言い、「東大はグラウンドもあるし恵まれていた環境でした」と感謝の言葉を並べる。
来年2月には医師国家試験を控え、合格後は2年間の研修医を経験して医師となることを目指す。「目の前の困っている人を助けたいという思いがあるので救急科や、スポーツの経験を生かして産婦人科医を目指していきたい」と考えている。
「私は負けず嫌い。数字でわかるのが陸上の魅力でした。陸上はどんな結果になるかわからない。それに対して計画を立てて積み重ねていく。今後の人生にもそういうことはあると思います。粘り強さが生かせれば」
5月。「よほどのことがなければ引退するつもりです」と話していた。しかし、「来年の日本選手権にも出場できるので、もう一度あの舞台でチャレンジしたいという思いがあります」と、再び日本最高峰の舞台で13mを跳びたいという思いも増している。東大生としてではなく、「負けず嫌いのアスリート」の表情だった。
「自分に陸上の才能があるとは思っていません。でも、才能がないとあきらめる前に、やれることはすごくたくさんあります。最初からすごかったわけではない私が、ここまで来られたのは、何か他の人の道しるべになったかな」
学生陸上界に数々の足跡を残した内山。東大生ということで取り上げられることに戸惑いがあったが、学生アスリートとして最後の大舞台で「日本一の三段跳選手」として堂々と表彰台の真ん中に立った姿は、多くの人に感動を与えただろう。
◇男子400mは東京理科大ルーキーの友田がV
女子三段跳を制したのが東大生なら、男子400mのタイトルを手にしたのは東京理科大の1年生だった。昨年の全国高校大会400m王者の友田真隆(川越東高出身)。それ以降、3月いっぱいまでは「まったく陸上を続ける気はありませんでした」とリセットした。潜在能力に注目を集める存在で、当然、いくつかの有力大学からスカウトはあったが、「薬学部に入りたい」という目標を叶えて東京理科大へ。しかし、新生活を始めて「やることがない」と陸上部を見学。最初はエンジョイでと思っていたが、自分で考える練習がフィットし、夏を超えてからは自己新を連発するなど一気に飛躍を遂げ、今大会も46秒35の自己ベストで優勝を飾った。
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