◇第61回実業団・学生対抗(7月17日/神奈川・レモンガススタジアム平塚)
秩父宮賜杯第61回実業団・学生対抗は7月17日、神奈川県平塚市のレモンガススタジアム平塚で開催された。第60回の節目を迎えるはずだった昨年は、コロナ禍の影響で中止に。2年ぶりに行われた伝統の大会は、東京五輪代表4人が2週間後の陸上競技開幕を前に最後の実戦の場として出場するなど、梅雨明けの真っ青な夏空から夕暮れへと向かう時間帯で各種目に熱戦が展開された。
女子メドレーリレーで日本最高記録が誕生。1走(100m)にこの日の100mを11秒63(+0.6)で制した名倉千晃(NTN)、2走(200m)、3走(300m)、4走(400m)は同じく400mで3位の小林茉由(J.VIC)、53秒20の大会新で優勝した青山聖佳(大阪成蹊AC)、53秒23の自己新で2位だった松本奈菜子(東邦銀行)が務め、2分05秒59をマーク。2012年のこの大会で実業団が樹立した記録(2分05秒81)を9年ぶりに更新した。青山は2種目制覇で女子MVPにも選出された。
2~4走は、東京五輪出場を目指した4×400mリレーナショナルチームの主軸として、何度もタイムアタックを敢行。日本選手権でも初日の競技開始前と、最終日の全競技終了後に1本ずつ行い、2本目に日本歴代7位の3分30秒81をマーク。その間には個人の400mでも小林、松本、青山の順で1~3位を占めている。目いっぱいのチャレンジをしながらも、五輪への扉を開くことはできず、「心身ともにいっぱいいっぱいになった」と松本は振り返る。
小林も含め、五輪に出られなかった失意から完全に抜け出せたわけではない。それでも松本自身は自己新をマークし、青山も今季自己2番目の好タイム。「自分たちの力が足りなかった」ことを自覚し、それぞれの成長を目指して一歩を踏み出した。
「今までできなかった『高い目標を設定する』ということができた。これをいいバネにしたい」(松本)
「来年は世界選手権とアジア大会がある。その舞台に立てるように、まずは自己新、それから51秒台を出して日本記録を更新したい」(青山)
女子ロングスプリント陣が、再び世界を目指して走り始めた。
東京五輪代表組では、男子やり投の小南拓人(染めQ)がただ1人優勝。6投目に78m83を放ち、逆転で制した。男子4×100mリレー代表のデーデー・ブルーノ(東海大)は100mに出場したが、前日まで標高の高い山梨・富士北麓でのリレー合宿に参加していたこともあって精彩を欠き、10秒28(+1.4)で2位。女子100mハードルの木村文子(エディオン)は、準決勝敗退だった日本選手権からは復調の兆しを見せ、13秒35(+1.1)で2位だった。男子棒高跳の江島雅紀(富士通)も1週間前の練習中にポールを折るアクシデントに見舞われたが、実戦での踏み切りを確認すべく出場し、4位ながら5m30をクリアしてホッとした表情を見せた。同じく棒高跳の山本聖途(トヨタ自動車)は棄権した。
同110mハードルは藤井亮汰(三重県スポーツ協会)が日本歴代9位の13秒41(+0.3)で制し、男子MVPに輝く。2位の横地大雅(法大)も学生歴代3位タイの13秒45とハイレベル。日本選手権予選で日本歴代5位の13秒37をマークしながらも、決勝でフライングをして失格となった石川周平(富士通)は3位だった。男子100mでは東田旺洋(栃木スポ協)が自己タイの10秒18で快勝した。
このほか女子フィールドで好記録が相次ぎ、砲丸投では日本選手権2年連続2位の大野史佳(埼玉大)が日本歴代8位だった自己記録を5cm更新、歴代7位に浮上する16m09をプット。三段跳では髙島真織子(福岡大)が6回目に学生歴代6位の13m19(+0.8)をマークして逆転優勝を飾った。ハンマー投は小舘充華(染めQ)が今季ベストの61m04で制した。
総合では実業団が235.5点で、163.5点の学生に圧勝。男子総合、女子総合ともに実業団が制し、2018年以来の完全Vを果たした。
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