2026.01.15
日本のスポーツ界ではすでに浸透している酸素ルーム。高知競馬場の倉兼厩舎(くらかねきゅうしゃ)がこの冬、日本気圧バルク工業株式会社の高気圧酸素ルーム「O2Room®」を導入したことが話題になっている。競走馬用の常設としては国内初で、海外でもさほど例がないという。ジョッキーとして海外でも活躍した倉兼育康さん(50歳)は、調教師として馬に深い愛情を注いでいる。アスリートだけでなく、サラブレッドも酸素パワーで活躍する時代がやってきた。
波乱万丈の人生を歩む元騎手が厩舎運営
高知競馬場に厩舎を構える倉兼育康さんは波乱万丈の人生を送ってきた。1975年に大分県で生まれると、3歳のときに家族と南米のパラグアイに移住。少年時代は野球に打ち込み、リトルリーグの試合で来日したこともあるという。そのときに倉兼さんのことを気に入ってくれた高知県のコーチが仕事でパラグアイに出向くたびに声をかけてくれたことで、15歳のときに単身来日。高知県内の中学に入り、野球部に所属した。だが、小柄だった倉兼さんは中学時代の教頭先生の勧めで〝騎手〟になることを決意。日本の中学校で2年間学び、17歳で新たな挑戦を始めた。
栃木県の地方競馬教養センター(2年間)を卒業後、高知競馬場所属の騎手となり、1995年10月にデビュー。1997年の全日本新人王争覇戦で4位に食い込んだ。2003年以降は常に高知競馬のリーディングジョッキー5位以内の成績を収めるようになる。
しかし、高知競馬場が廃止問題に揺れたこともあり、倉兼さんは他の競馬場での騎乗を希望したが、勝利数が概ね1000勝以上という要件を満たすことができず、「期間限定騎乗騎手制度」を利用できなかった。「当時は現在ほど他の競馬場との交流が活発ではく、県外に乗りに行くことはほとんどできなかったんです」と倉兼さん。
そんなときに韓国・ソウル競馬が外国人騎手を募集する。倉兼さんは韓国に競馬場があることも知らなかったが、「日本人が誰も行っていなかったから」と新たなチャレンジを選んだのだ。
ソウル競馬で年間100勝、地方競馬で通算2000勝を突破
2007年7月、32歳で「期間限定騎乗制度」を利用して、ソウル競馬の騎乗を開始。当初は3ヵ月の予定が延長を重ねて、釜山慶南競馬でも騎乗した。2007年は282戦22勝、2008年は583戦44勝、2009年は191戦40勝という成績を挙げた。
2009年5月、2年ぶりに高知競馬での騎乗を再開する。2010年2月に7642戦目にして地方競馬通算1000勝を達成した。2014年10月、期間限定騎乗中の韓国でKRAカップクラシック優勝。この年、ソウル競馬で101勝を挙げ、外国人騎手として初めて年間100勝を突破してソウル競馬場最優秀騎手に輝いた。
2015年8月からの3ヵ月間は釜山慶南競馬で騎乗。9月半ばに韓国競馬では外国人騎手として初の通算300勝を達成した。2021年9月に13986戦目で地方通算2000勝を成し遂げた。
〝追い込みのイク〟が47歳で調教師に転身
高知競馬だけでなく韓国でも活躍した倉兼さん。「地方競馬は直線が短いので、先に行く馬が多いんですけど、僕は最後に追い込むことが多かったんです」と、かつては〝追い込みのイク〟と呼ばれるほど、バックストレッチでの鮮やかなまくりや直線での差しを得意にしていた。
一方で「技術のあるタイプではなかったので、2000勝したら調教師になると決めていたんです」と倉兼さん。2000勝すると、調教師の試験が一部免除されることもあり、新たなキャリアに挑む。2023年8月、第1回地方競馬の調教師試験に合格。約28年間のジョッキー人生にピリオドを打ち、8月より調教師に転身した。
そして、高知競馬場のなかにある厩舎で〝第二の人生〟がスタートした。競走馬は馬主からの委託されるかたちで、馬房数は1年目が10頭、2年目が15頭、3年目が20頭まで預かることができる。
3年目を迎えた現在は20頭のサラブレッドを調教。そのなかで倉兼さんは、「馬を無駄使いしない」ことを大切にしているという。それは騎手時代から変わらない。日頃から馬への深い愛情を注ぎ、心身両面のケアに強いこだわりを持っているのだ。
「高知競馬では月2回くらいレースに走らせるのがスタンダードだと思います。でも私は、状態が良くなければ無理して使いません。出馬は月に1回に減らしたり、ときには休養に充てるなど、馬の状態を見て決めています」
2023年11月下旬に高知競馬で管理馬のダンスショウが初出走すると、翌日はバリチュローが初勝利を飾る。2024年10月のゴールド争覇をバリチュローが勝利して、名古屋競馬で管理馬の重賞初制覇を果たした。
調教師として順調な滑り出しを見せたが、倉兼さんは「課題ばかりです」と決して満足はしていない。
「私も始めたばかりですし、スタッフ4名もあまり経験がありません。試行錯誤を繰り返しながらやっています。そのなかで調教だけでなく、新しいことも取り入れたいなと考えていました。そのときにいいなと思ったのが酸素ルームだったんです」
国内の厩舎で初めて酸素ルームを導入
騎手時代からチャレンジを繰り返してきた倉兼さん。日本人で最初に韓国で活躍したが、調教師となり、今度は国内で初めて競走馬に酸素ルームを導入した。
「馬を助ける一般社団法人を立ち上げた妻が、自分自身で酸素ルームを使うようになり、悩まされていた蕁麻疹が出なくなるなど体調が良くなったんです。人間にいいなら馬にも好影響があるのではないのか!?陸上競技の強豪チームも使用していることを知り、馬用があるのかを調べたのがきっかけでした」
そこでたどり着いたのが日本気圧バルク工業株式会社の高気圧酸素ルームだった。2025年4月に同社に相談すると、天野英紀代表も「馬を助けましょう」と乗り気になった。同社でもあまり取り扱わない〝規格外〟とも言えるものだったが、初めてのプロジェクトは順調に進んだ。
「日本気圧バルク工業にたまたま競馬関係で働いたことがある方がいたので、全面的にお任せするかたちになりました。どんどん話が進んでいきましたし、他社を考えることはありませんでしたね。なんでそこまでしてくれるのかな? というくらいきめ細かく作っていただけたんです」

競走馬は月に1~2回レースに出ることが一般的だそうで、陸上競技のアスリートと類似。アスリートのコンディショニングに好評な「O2Room®」は馬用としても注目されており、倉兼厩舎が競馬界の新時代を先取りしている
日本気圧バルク工業は〝酸素ルーム業界のパイオニア〟であり、京都大学、名古屋大学、神戸大学などの研究・教育機関、各種医療機関との共同研究を重ねて、数々のエビデンスを基に製品づくりに注力。酸素に関わる事業に携わって30年間、製品に事故や大きなトラブルが一度もない〝安心・安全〟のメーカーとして高い信頼を得ている。また、静岡県内の本社および工場で自社開発・自社製造しているため、酸素ルームのタイプやサイズ、内装・外装までオーダーメイドに対応できることが大きな持ち味だ。
倉兼厩舎に納品された高気圧酸素ルームは高さ2.5m、横幅2.4m、奥行き5.5m。競走馬のストレス軽減とコンディション向上を目的に開発されたもので、厩舎環境に合わせた馬専用となっている。繊細な気圧コントロールを可能にした特別仕様で、〝耳抜き〟が苦手な馬でも安心して利用できているという。
サラブレッドも酸素パワーを実感!!〝馬に優しい〟厩舎の挑戦
特別仕様の高気圧酸素ルームを倉兼さんは、「入れようと思えば馬は4頭入ります。すごく広いですよ」と表現した。慣れるまで1頭ずつ入れており、慣れてくれば2頭ずつ入れることも考えている。
競走馬はレースに出走すると「ストレスをためやすい」という。これまでは放牧に出すことでストレス解消を促してきたが、高気圧酸素ルームというポジティブな武器ができて、馬も喜んでいるようだ。
人々が普通に生活している平地は1気圧、酸素濃度20.9%であるのに対し、日本気圧バルク工業では1.25~1.3気圧、酸素濃度35~40%の軽度高気圧環境を酸素ルーム内にもたらし、体に過度な負担がかからないかたちでリカバリー環境を作り出している。
「初めてなので、まずは1.2気圧で1時間半くらい入れています」と馬の様子を見るために倉兼さんも高気圧酸素ルームに一緒に入っている。はたして競走馬にどんな変化があるのだろうか。
「馬は狭いところを怖がるので、最初は落ち着かない馬もいたんですけど、しばらくするとおとなしくなるんです。2回目以降はバタバタしないで、常に落ち着いていますね。途中から、馬がストレスから解放されたときに見せる頭や首を下げてリラックスするしぐさを見せるなど、明らかに穏やかになっているんです。馬は基本、立って寝ることが多いんですけど、高気圧酸素ルームに入った夜は横になって寝ることも多いんです。そして、翌朝はいつも以上に食欲が出て、動きも良くなっている印象がありますね」
言葉は発しないが、競走馬も酸素パワーで〝バージョンアップ〟しているようだ。競走馬は屈腱(腕節と指骨)の炎症が多く、そのケガで引退を余儀なくされるケースも少なくない。競走馬は短ければ2~3歳、長ければ10歳、平均して5歳前後で引退を迎えるという。競走馬がケガをした場合は「休養」するしかなかっただけに、高気圧酸素ルームを活用するという選択肢ができたことを倉兼さんは喜んでいる。
「馬主さんは馬用の酸素ルームにビックリされていましたが、好成績を出して、高気圧酸素ルームをもっと知ってもらえるとうれしいですね。ストレス緩和に、ケガの予防・早期回復。競走馬の〝選手寿命〟も長くなるといいなと思っています」
高気圧酸素ルームは疲労回復の促進、筋肉・腱・靭帯コンディションの維持、 精神的ストレス軽減といった効果が期待でき、競走馬の健康管理に欠かせない設備になっている。
競馬界では25年ほど前、ドイツ製の酸素ルームで問題が生じ、業界全体で慎重な雰囲気があったという。しかし、日本だけでなく欧米やアジア各国への納品実績が多い日本気圧バルク工業製の『O2Room®』が倉兼厩舎で導入されたことを契機に、アメリカやフランスなど海外からの問い合わせがあり、競走馬にも活用しようとする動きが活発になっていきそうだ。
倉兼さんは日本気圧メディカル協会が実施している「健康気圧マスター取得講座」を昨年12月に受講して資格を取得。専門的な知識を身につけ、競走馬のコンディショニングに役立てている。また、心肺機能の向上が期待される「低圧低酸素ルーム」にも大いに興味を持っており、導入を検討しているという。
高知競馬場から世界の競馬を変える〝パイオニア〟が誕生しつつあるようだ。
※この記事は『月刊陸上競技』2026年2月号に掲載しています
波乱万丈の人生を歩む元騎手が厩舎運営
高知競馬場に厩舎を構える倉兼育康さんは波乱万丈の人生を送ってきた。1975年に大分県で生まれると、3歳のときに家族と南米のパラグアイに移住。少年時代は野球に打ち込み、リトルリーグの試合で来日したこともあるという。そのときに倉兼さんのことを気に入ってくれた高知県のコーチが仕事でパラグアイに出向くたびに声をかけてくれたことで、15歳のときに単身来日。高知県内の中学に入り、野球部に所属した。だが、小柄だった倉兼さんは中学時代の教頭先生の勧めで〝騎手〟になることを決意。日本の中学校で2年間学び、17歳で新たな挑戦を始めた。 [caption id="attachment_196413" align="alignnone" width="800"]
2年前まで騎手をしていた調教師の倉兼育康さんは、競走馬に「少しでも長く活躍してほしい」という思いが強い[/caption] 栃木県の地方競馬教養センター(2年間)を卒業後、高知競馬場所属の騎手となり、1995年10月にデビュー。1997年の全日本新人王争覇戦で4位に食い込んだ。2003年以降は常に高知競馬のリーディングジョッキー5位以内の成績を収めるようになる。 しかし、高知競馬場が廃止問題に揺れたこともあり、倉兼さんは他の競馬場での騎乗を希望したが、勝利数が概ね1000勝以上という要件を満たすことができず、「期間限定騎乗騎手制度」を利用できなかった。「当時は現在ほど他の競馬場との交流が活発ではく、県外に乗りに行くことはほとんどできなかったんです」と倉兼さん。 そんなときに韓国・ソウル競馬が外国人騎手を募集する。倉兼さんは韓国に競馬場があることも知らなかったが、「日本人が誰も行っていなかったから」と新たなチャレンジを選んだのだ。
ソウル競馬で年間100勝、地方競馬で通算2000勝を突破
2007年7月、32歳で「期間限定騎乗制度」を利用して、ソウル競馬の騎乗を開始。当初は3ヵ月の予定が延長を重ねて、釜山慶南競馬でも騎乗した。2007年は282戦22勝、2008年は583戦44勝、2009年は191戦40勝という成績を挙げた。 2009年5月、2年ぶりに高知競馬での騎乗を再開する。2010年2月に7642戦目にして地方競馬通算1000勝を達成した。2014年10月、期間限定騎乗中の韓国でKRAカップクラシック優勝。この年、ソウル競馬で101勝を挙げ、外国人騎手として初めて年間100勝を突破してソウル競馬場最優秀騎手に輝いた。 2015年8月からの3ヵ月間は釜山慶南競馬で騎乗。9月半ばに韓国競馬では外国人騎手として初の通算300勝を達成した。2021年9月に13986戦目で地方通算2000勝を成し遂げた。〝追い込みのイク〟が47歳で調教師に転身
高知競馬だけでなく韓国でも活躍した倉兼さん。「地方競馬は直線が短いので、先に行く馬が多いんですけど、僕は最後に追い込むことが多かったんです」と、かつては〝追い込みのイク〟と呼ばれるほど、バックストレッチでの鮮やかなまくりや直線での差しを得意にしていた。 [caption id="attachment_196415" align="alignnone" width="800"]
騎手時代の倉兼さん。後半追い上げるレース展開を得意としており、「追い込みのイク」の異名をとった[/caption]
一方で「技術のあるタイプではなかったので、2000勝したら調教師になると決めていたんです」と倉兼さん。2000勝すると、調教師の試験が一部免除されることもあり、新たなキャリアに挑む。2023年8月、第1回地方競馬の調教師試験に合格。約28年間のジョッキー人生にピリオドを打ち、8月より調教師に転身した。
そして、高知競馬場のなかにある厩舎で〝第二の人生〟がスタートした。競走馬は馬主からの委託されるかたちで、馬房数は1年目が10頭、2年目が15頭、3年目が20頭まで預かることができる。
3年目を迎えた現在は20頭のサラブレッドを調教。そのなかで倉兼さんは、「馬を無駄使いしない」ことを大切にしているという。それは騎手時代から変わらない。日頃から馬への深い愛情を注ぎ、心身両面のケアに強いこだわりを持っているのだ。
「高知競馬では月2回くらいレースに走らせるのがスタンダードだと思います。でも私は、状態が良くなければ無理して使いません。出馬は月に1回に減らしたり、ときには休養に充てるなど、馬の状態を見て決めています」
2023年11月下旬に高知競馬で管理馬のダンスショウが初出走すると、翌日はバリチュローが初勝利を飾る。2024年10月のゴールド争覇をバリチュローが勝利して、名古屋競馬で管理馬の重賞初制覇を果たした。
調教師として順調な滑り出しを見せたが、倉兼さんは「課題ばかりです」と決して満足はしていない。
「私も始めたばかりですし、スタッフ4名もあまり経験がありません。試行錯誤を繰り返しながらやっています。そのなかで調教だけでなく、新しいことも取り入れたいなと考えていました。そのときにいいなと思ったのが酸素ルームだったんです」
[caption id="attachment_196418" align="alignnone" width="800"]
倉兼厩舎のある高知競馬場は土・日を中心に年間100数日(令和7年度は107日)開催しており、1日に11〜12レースを実施している[/caption]
国内の厩舎で初めて酸素ルームを導入
騎手時代からチャレンジを繰り返してきた倉兼さん。日本人で最初に韓国で活躍したが、調教師となり、今度は国内で初めて競走馬に酸素ルームを導入した。 「馬を助ける一般社団法人を立ち上げた妻が、自分自身で酸素ルームを使うようになり、悩まされていた蕁麻疹が出なくなるなど体調が良くなったんです。人間にいいなら馬にも好影響があるのではないのか!?陸上競技の強豪チームも使用していることを知り、馬用があるのかを調べたのがきっかけでした」 そこでたどり着いたのが日本気圧バルク工業株式会社の高気圧酸素ルームだった。2025年4月に同社に相談すると、天野英紀代表も「馬を助けましょう」と乗り気になった。同社でもあまり取り扱わない〝規格外〟とも言えるものだったが、初めてのプロジェクトは順調に進んだ。 「日本気圧バルク工業にたまたま競馬関係で働いたことがある方がいたので、全面的にお任せするかたちになりました。どんどん話が進んでいきましたし、他社を考えることはありませんでしたね。なんでそこまでしてくれるのかな? というくらいきめ細かく作っていただけたんです」 [caption id="attachment_196420" align="alignnone" width="800"]
競走馬は月に1~2回レースに出ることが一般的だそうで、陸上競技のアスリートと類似。アスリートのコンディショニングに好評な「O2Room®」は馬用としても注目されており、倉兼厩舎が競馬界の新時代を先取りしている[/caption]
日本気圧バルク工業は〝酸素ルーム業界のパイオニア〟であり、京都大学、名古屋大学、神戸大学などの研究・教育機関、各種医療機関との共同研究を重ねて、数々のエビデンスを基に製品づくりに注力。酸素に関わる事業に携わって30年間、製品に事故や大きなトラブルが一度もない〝安心・安全〟のメーカーとして高い信頼を得ている。また、静岡県内の本社および工場で自社開発・自社製造しているため、酸素ルームのタイプやサイズ、内装・外装までオーダーメイドに対応できることが大きな持ち味だ。
倉兼厩舎に納品された高気圧酸素ルームは高さ2.5m、横幅2.4m、奥行き5.5m。競走馬のストレス軽減とコンディション向上を目的に開発されたもので、厩舎環境に合わせた馬専用となっている。繊細な気圧コントロールを可能にした特別仕様で、〝耳抜き〟が苦手な馬でも安心して利用できているという。
[caption id="attachment_196422" align="alignnone" width="800"]
「O2Room®」に入る馬には倉兼さんが必ず付き添っている[/caption]
[caption id="attachment_196423" align="alignnone" width="800"]
最初は中に入るのを怖がっていた馬たちも、快適さを実感したのか、慣れてくると自ら進んで「O2Room®」に入り込んでいた[/caption]
サラブレッドも酸素パワーを実感!!〝馬に優しい〟厩舎の挑戦
特別仕様の高気圧酸素ルームを倉兼さんは、「入れようと思えば馬は4頭入ります。すごく広いですよ」と表現した。慣れるまで1頭ずつ入れており、慣れてくれば2頭ずつ入れることも考えている。 競走馬はレースに出走すると「ストレスをためやすい」という。これまでは放牧に出すことでストレス解消を促してきたが、高気圧酸素ルームというポジティブな武器ができて、馬も喜んでいるようだ。 [caption id="attachment_196425" align="alignnone" width="800"]
馬は立ったままで寝ることがほとんどで、よほどリラックスした状態でないと横になって寝ないという。しかし、倉兼厩舎の馬たちは「O2Room®」を活用し出してから横になって寝るケースが増えたそうだ[/caption]
人々が普通に生活している平地は1気圧、酸素濃度20.9%であるのに対し、日本気圧バルク工業では1.25~1.3気圧、酸素濃度35~40%の軽度高気圧環境を酸素ルーム内にもたらし、体に過度な負担がかからないかたちでリカバリー環境を作り出している。
「初めてなので、まずは1.2気圧で1時間半くらい入れています」と馬の様子を見るために倉兼さんも高気圧酸素ルームに一緒に入っている。はたして競走馬にどんな変化があるのだろうか。
「馬は狭いところを怖がるので、最初は落ち着かない馬もいたんですけど、しばらくするとおとなしくなるんです。2回目以降はバタバタしないで、常に落ち着いていますね。途中から、馬がストレスから解放されたときに見せる頭や首を下げてリラックスするしぐさを見せるなど、明らかに穏やかになっているんです。馬は基本、立って寝ることが多いんですけど、高気圧酸素ルームに入った夜は横になって寝ることも多いんです。そして、翌朝はいつも以上に食欲が出て、動きも良くなっている印象がありますね」
[caption id="attachment_196427" align="alignnone" width="800"]
「O2Room®」という設備を導入し、馬に対して幅広いケアが可能になった[/caption]
言葉は発しないが、競走馬も酸素パワーで〝バージョンアップ〟しているようだ。競走馬は屈腱(腕節と指骨)の炎症が多く、そのケガで引退を余儀なくされるケースも少なくない。競走馬は短ければ2~3歳、長ければ10歳、平均して5歳前後で引退を迎えるという。競走馬がケガをした場合は「休養」するしかなかっただけに、高気圧酸素ルームを活用するという選択肢ができたことを倉兼さんは喜んでいる。
「馬主さんは馬用の酸素ルームにビックリされていましたが、好成績を出して、高気圧酸素ルームをもっと知ってもらえるとうれしいですね。ストレス緩和に、ケガの予防・早期回復。競走馬の〝選手寿命〟も長くなるといいなと思っています」
高気圧酸素ルームは疲労回復の促進、筋肉・腱・靭帯コンディションの維持、 精神的ストレス軽減といった効果が期待でき、競走馬の健康管理に欠かせない設備になっている。
競馬界では25年ほど前、ドイツ製の酸素ルームで問題が生じ、業界全体で慎重な雰囲気があったという。しかし、日本だけでなく欧米やアジア各国への納品実績が多い日本気圧バルク工業製の『O2Room®』が倉兼厩舎で導入されたことを契機に、アメリカやフランスなど海外からの問い合わせがあり、競走馬にも活用しようとする動きが活発になっていきそうだ。
倉兼さんは日本気圧メディカル協会が実施している「健康気圧マスター取得講座」を昨年12月に受講して資格を取得。専門的な知識を身につけ、競走馬のコンディショニングに役立てている。また、心肺機能の向上が期待される「低圧低酸素ルーム」にも大いに興味を持っており、導入を検討しているという。
高知競馬場から世界の競馬を変える〝パイオニア〟が誕生しつつあるようだ。
[caption id="attachment_196429" align="alignnone" width="800"]
倉兼厩舎を運営している調教師の倉兼さん(中央)と4名の厩務員。馬主さんから託された20頭の馬を丁寧に育てている[/caption]
※この記事は『月刊陸上競技』2026年2月号に掲載しています RECOMMENDED おすすめの記事
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