2025.11.26

志學館大の中村晃斗
中村 晃斗 Nakamura Akito 志學館大3年
「月陸Online」限定で大学長距離選手のインタビューをお届けする「学生長距離Close-upインタビュー」。54回目は、志學館大の中村晃斗(3年)をピックアップする。
学生三大駅伝初出場となった志學館大で、エースとして出雲駅伝と全日本大学駅伝ともに1区で出走。出雲は区間13位にとどまったが、全日本では熾烈なラスト勝負を繰り広げて区間賞に輝いている。
トラックでも日本インカレで1500mと5000mの2種目で入賞するなど大きく飛躍した。これまでの競技生活や地元の大学を選んだ理由、今後の競技人生での目標などを聞いた。
中学・高校はケガに苦しむ
11月2日に行われた全日本大学駅伝で、初出場だった志學館大のエース・中村晃斗(3年)が終盤まで大混戦となった9.5kmの1区で鋭いラストスパートを繰り出す。27分20秒で区間賞に輝いた。
「ずっと先頭集団について、最後の坂を下ってからが勝負と考えていました」とプラン通りのレースに持ち込み、強者ぞろいの関東勢を置き去りにした。九州勢の日本人による1区区間賞は、1999年から2年連続で獲得した永田宏一郎(鹿屋体大)以来という快挙だった。
その反響は大きく、中村のもとには多くの祝福メッセージが届いたという。「自分の努力を一番近くで見ていた家族がすごく喜んでくれたので、頑張っていて良かったです」
志學館大は2区以降を担った下級生が苦戦を強いられ、22位でのフィニッシュとなった。しかし、「チームとしてはここがスタートライン。今回の結果を受けて、来年に向けてどうしていくかを考えようとなったので、悲観はしていません」と前向きに捉えている。
小学4年で姉を追うように地元の陸上クラブに入り、鹿児島・鷹巣中の陸上部で中距離種目を始めた。ただ、中学時代は、小学校高学年の頃に並行して取り組んでいた「サッカーのケガを引きずって、陸上の実績はほとんどありませんでした」。
そうした状況は出水中央高に進んでからも変わらなかった。高校では「ケガをしても治り切らないまま練習をして、別のところを痛めるという繰り返しだった」からだ。
2年時にチームは全国高校駅伝初出場を果たしたが、それもケガでメンバー外。3年目は故障を抱えながら1500mでインターハイ路線を勝ち進み、全国の舞台に立ちながらも万全の状態で戦えるほど甘くなかった。
その後、秋からの駅伝シーズンを前に中村は陸上部を去る。「中学や高校では万全で臨めたレースは1回もないくらい。陸上が嫌いでした」と当時を振り返るが、「しっかり練習できれば勝てるという思いは自分の中にありました。そこだけを信じて続けてきました」と競技をやめることはなかった。
高校3年の秋からは〝自分流〟で競技力を磨いていく。「自分でやっていくためにはまず知識が必要。いろいろな本を読んだり、YouTubeを見たり勉強しながら、基礎的なところから始めていきました」
志學館大の中村晃斗[/caption]
学生長距離Close-upインタビュー
中村 晃斗 Nakamura Akito 志學館大3年
「月陸Online」限定で大学長距離選手のインタビューをお届けする「学生長距離Close-upインタビュー」。54回目は、志學館大の中村晃斗(3年)をピックアップする。
学生三大駅伝初出場となった志學館大で、エースとして出雲駅伝と全日本大学駅伝ともに1区で出走。出雲は区間13位にとどまったが、全日本では熾烈なラスト勝負を繰り広げて区間賞に輝いている。
トラックでも日本インカレで1500mと5000mの2種目で入賞するなど大きく飛躍した。これまでの競技生活や地元の大学を選んだ理由、今後の競技人生での目標などを聞いた。
中学・高校はケガに苦しむ
11月2日に行われた全日本大学駅伝で、初出場だった志學館大のエース・中村晃斗(3年)が終盤まで大混戦となった9.5kmの1区で鋭いラストスパートを繰り出す。27分20秒で区間賞に輝いた。 「ずっと先頭集団について、最後の坂を下ってからが勝負と考えていました」とプラン通りのレースに持ち込み、強者ぞろいの関東勢を置き去りにした。九州勢の日本人による1区区間賞は、1999年から2年連続で獲得した永田宏一郎(鹿屋体大)以来という快挙だった。 その反響は大きく、中村のもとには多くの祝福メッセージが届いたという。「自分の努力を一番近くで見ていた家族がすごく喜んでくれたので、頑張っていて良かったです」 志學館大は2区以降を担った下級生が苦戦を強いられ、22位でのフィニッシュとなった。しかし、「チームとしてはここがスタートライン。今回の結果を受けて、来年に向けてどうしていくかを考えようとなったので、悲観はしていません」と前向きに捉えている。 小学4年で姉を追うように地元の陸上クラブに入り、鹿児島・鷹巣中の陸上部で中距離種目を始めた。ただ、中学時代は、小学校高学年の頃に並行して取り組んでいた「サッカーのケガを引きずって、陸上の実績はほとんどありませんでした」。 そうした状況は出水中央高に進んでからも変わらなかった。高校では「ケガをしても治り切らないまま練習をして、別のところを痛めるという繰り返しだった」からだ。 2年時にチームは全国高校駅伝初出場を果たしたが、それもケガでメンバー外。3年目は故障を抱えながら1500mでインターハイ路線を勝ち進み、全国の舞台に立ちながらも万全の状態で戦えるほど甘くなかった。 その後、秋からの駅伝シーズンを前に中村は陸上部を去る。「中学や高校では万全で臨めたレースは1回もないくらい。陸上が嫌いでした」と当時を振り返るが、「しっかり練習できれば勝てるという思いは自分の中にありました。そこだけを信じて続けてきました」と競技をやめることはなかった。 高校3年の秋からは〝自分流〟で競技力を磨いていく。「自分でやっていくためにはまず知識が必要。いろいろな本を読んだり、YouTubeを見たり勉強しながら、基礎的なところから始めていきました」“地元残留”でトラックを突き詰める
23年春、大学は地元の志學館大へ。当初は関東の大学に進む予定だったが、「このまま行っても高校時代の繰り返しになります。勉強して自分1人でもやっていけると思ったので、ここに残って1500mと5000mを突き詰めよう」と“地元残留”を決意した。 九州にも強豪校はあるが、「駅伝に力を入れている大学はチームとして動かないといけません。そうなると自分のやりたいことや目指すところがブレてきます」。そう考えた中村は「あまり強くなくても、部員が少なく、1人でも練習できる大学」として、過去には島原駅伝3位入賞があるもののコロナ禍等で活動が縮小していた志學館大を選んだ。 1年目はU20日本選手権や日本インカレ出場を見据えつつ、「2年目までは土台作りのつもりで、結果にはこだわらなかった」。ただ、1500mで九州インカレ2位、U20日本選手権9位、西日本インカレ優勝といった実績を徐々に残し始めたことで、2年目で一気に8人の1年生が加入する。 「それまでは人数的にもレベル的にも駅伝に出られませんでしたが、一気に九州トップレベルになりました。あくまでもメインは個人ですが、その中でチームとして駅伝もやっていこうとなっていきました」 昨年12月の九州学生駅伝(島原駅伝)では、5年ぶりの出場で初優勝を飾り、2025年度出雲駅伝の出場権を初めて獲得した。 今季は3年生となった中村が個人でも飛躍し、5月の九州インカレで1500mと5000mの2冠。6月の日本インカレでは1500mで5位、5000mで4位を占めた。さらに2週間後の全日本大学駅伝九州地区選考会では、最終組で大逆転して1枚しかない伊勢路行きの切符をつかんだ。 「2組目終了時点で1位とは約6分差があって、通過はもう無理だろうという雰囲気でした。でも、自分を含めて4人が走った最終組で、後輩3人があきらめずに先頭集団でがんばってくれたのが通過できた要因です」 夏の鍛錬期を経て迎えた駅伝シーズンで、出雲は1区を担った中村が振るわず区間13位。「みんな初めての経験だったので、気負ったり緊張で固くなったりして、うまくいきませんでした」とチームも15位に沈み、厳しい初陣となった。それでも全日本を終えた後、チームがポジティブでいることができている。 3年目の主要大会を終えた中村は、大学最終学年を迎える来季を見据え、「結果にこだわっていきたい」と意気込む。「あと2年は1500mをメインにしていくつもりなので、冬季はもう一回、土台作りから始めて、来年は日本選手権の表彰台を狙っていきます。また、日本インカレや夏場のホクレンには5000mにも出たいと思っています」 自己記録も今季マークした1500mと5000mで、それぞれ「3分37秒、13分20秒を目指す」とさらなる短縮を公言。「この2つのタイムを出さないと日本選手権では戦えません」と考えている。 視線の先にあるのは、28年のロサンゼルス五輪だ。「1500mでスピードをバリバリ磨いて、それを5000mにつなげていきたいです」。全国的には知られていない大学から全日本大学駅伝の舞台で一挙にブレークしたスピードスター、中村の今後の走りに注目だ。 [caption id="attachment_131366" align="alignnone" width="800"]
全日本大学駅伝1区で区間賞に輝いた中村[/caption]
◎なかむら・あきと/2004年5月4日生まれ、鹿児島県長島町出身。鷹巣中→出水中央高→志學館大。自己記録1500m3分42秒53、5000m13分45秒74。
文/小野哲史 RECOMMENDED おすすめの記事
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