HOME バックナンバー
Road to OREGON22 橋岡優輝 「血眼になって、がむしゃらに」
Road to OREGON22 橋岡優輝 「血眼になって、がむしゃらに」

長く待たされた東京五輪も始まってしまえばあっという間に幕を閉じた。アスリートたちはすでに2022年オレゴン世界選手権、そして3年後のパリ五輪に向けて歩みを進めている。男
子走幅跳で6位入賞を果たした橋岡優輝(富士通)もその一人。すでに冬季練習も本格化し、苦しい練習の日々を送っている。届かなかったものを手にするために。日本陸上界を背負っ
て立つ男の瞳は、飢えた獣のようだった。
構成/向永拓史 撮影/小川和行

出力が上がったからこその難しさ

6位入賞を果たした東京五輪を終えた直後は、悔しさのあまりすぐに選手村を離れた。その後の2週間は何も手につかず、テレビも見ずに情報をシャットアウト。「悔しいだけだった」。トップアスリートとして迎えた初めてのオリンピックイヤーをどう振り返るのか。

広告の下にコンテンツが続きます

――2021年はどんなシーズンだったと総括していますか。

橋岡 順調と言えば順調だったと思いますが、いまいち「つかみきれない」シーズンだったと思います。技術的、感覚的な部分もそうですし、アベレージを考えれば日本記録(8m40)も更新できたと思います。そういった部分で、目標を達成しきれなかった。あと少し、という感じです。

―― 毎年、「あと少し」という言葉が出ますね。

橋岡 全部達成するより、それくらいの感じがちょうどいいのかなって思います。

――初戦となった3月の日本選手権室内で、室内日本記録の8m19を跳びました。

橋岡 室内では助走路や助走距離も(屋外とは)違うので感覚的には少し違うのですが、あの時期の室内であれだけ跳べたというのは自信がつきました。

―― 屋外初戦だった4月の織田記念を振り返ると?

橋岡 21年に関しては織田記念が一番調子は良かったですね。ほとんどファウルでしたが、1本は実測で8m50くらい出ていました。感覚的にもそれが一番良かったと思います。

――6本ともすごい飛距離でした。初戦から調子が良かったのは、何か冬季、室内とつながった部分があったのでしょうか。

橋岡 普段より少し早いシーズンインだったので、例年以上に4月から身体が動いたのかもしれません。もしくは、4月で身体が動ききらないがゆえに何かがうまく噛み合ったか。それともコントロールできなかったからこそ、素直な跳躍になったのか。なぜ調子が良かったのかは今ひとつわかっていないのですが……。

―― 今シーズンはファウルが多かったです。その原因はどう分析されたのでしょう。

橋岡 まず身体がすごく動くようになったことです。今までは自分がコントロールできる範囲で踏み切りまで持っていけていました。今季はそれよりももう一段階出力が上がるようになって、身体が動くところでコントロールできない部分がありました。動きはいいけどファウルになる。

――5月のREADY STEADY TOKYOでは8m07(+1.8)で優勝しましたが4回ファウル。6月の日本GP新潟大会では8m23(+1.3)も2回ファウルでした。日本選手権も最初の2回失敗(8m36 /+0.6の自己新で優勝)。橋岡選手をもってしても修正が難しかったですか。

橋岡 東京五輪まで、結構大きな出力を出したまま跳んでいました。だから、ファウルはするけどある程度記録が出る。そこはなかなか修正できませんでした。
――課題だった空中姿勢から着地はどうですか?

橋岡 だいぶうまくなってきたと思いますが、相変わらずへたくそです(笑)。なるべく脚を前に出してキープすることしか考えていない。シザースは本当に〝バカ難しい〟ですね。

――一方で、シーズン通して不調だった時期というのはないように思いました。

橋岡 そうですね。調整がうまくいかない、という感じはありませんでした。さすがにオリンピックはもう少し跳びたかったなと思っていますが。

この冬、さらなるベースアップを目指す

ベースアップが進み手応えをつかんだシーズンだったが、やはり東京五輪の悔しさが消えることはない。2022年にはオレゴン世界選手権を控える。3年後のパリ五輪は「待ち遠しくない」。やることは山積み。だからこそ前を向き、突き進んでいる。

この続きは2021年12月14日発売の『月刊陸上競技1月号』をご覧ください。

 

※インターネットショップ「BASE」のサイトに移動します
郵便振替で購入する
定期購読はこちらから

長く待たされた東京五輪も始まってしまえばあっという間に幕を閉じた。アスリートたちはすでに2022年オレゴン世界選手権、そして3年後のパリ五輪に向けて歩みを進めている。男 子走幅跳で6位入賞を果たした橋岡優輝(富士通)もその一人。すでに冬季練習も本格化し、苦しい練習の日々を送っている。届かなかったものを手にするために。日本陸上界を背負っ て立つ男の瞳は、飢えた獣のようだった。 構成/向永拓史 撮影/小川和行

出力が上がったからこその難しさ

6位入賞を果たした東京五輪を終えた直後は、悔しさのあまりすぐに選手村を離れた。その後の2週間は何も手につかず、テレビも見ずに情報をシャットアウト。「悔しいだけだった」。トップアスリートとして迎えた初めてのオリンピックイヤーをどう振り返るのか。 ――2021年はどんなシーズンだったと総括していますか。 橋岡 順調と言えば順調だったと思いますが、いまいち「つかみきれない」シーズンだったと思います。技術的、感覚的な部分もそうですし、アベレージを考えれば日本記録(8m40)も更新できたと思います。そういった部分で、目標を達成しきれなかった。あと少し、という感じです。 ―― 毎年、「あと少し」という言葉が出ますね。 橋岡 全部達成するより、それくらいの感じがちょうどいいのかなって思います。 ――初戦となった3月の日本選手権室内で、室内日本記録の8m19を跳びました。 橋岡 室内では助走路や助走距離も(屋外とは)違うので感覚的には少し違うのですが、あの時期の室内であれだけ跳べたというのは自信がつきました。 ―― 屋外初戦だった4月の織田記念を振り返ると? 橋岡 21年に関しては織田記念が一番調子は良かったですね。ほとんどファウルでしたが、1本は実測で8m50くらい出ていました。感覚的にもそれが一番良かったと思います。 ――6本ともすごい飛距離でした。初戦から調子が良かったのは、何か冬季、室内とつながった部分があったのでしょうか。 橋岡 普段より少し早いシーズンインだったので、例年以上に4月から身体が動いたのかもしれません。もしくは、4月で身体が動ききらないがゆえに何かがうまく噛み合ったか。それともコントロールできなかったからこそ、素直な跳躍になったのか。なぜ調子が良かったのかは今ひとつわかっていないのですが……。 ―― 今シーズンはファウルが多かったです。その原因はどう分析されたのでしょう。 橋岡 まず身体がすごく動くようになったことです。今までは自分がコントロールできる範囲で踏み切りまで持っていけていました。今季はそれよりももう一段階出力が上がるようになって、身体が動くところでコントロールできない部分がありました。動きはいいけどファウルになる。 ――5月のREADY STEADY TOKYOでは8m07(+1.8)で優勝しましたが4回ファウル。6月の日本GP新潟大会では8m23(+1.3)も2回ファウルでした。日本選手権も最初の2回失敗(8m36 /+0.6の自己新で優勝)。橋岡選手をもってしても修正が難しかったですか。 橋岡 東京五輪まで、結構大きな出力を出したまま跳んでいました。だから、ファウルはするけどある程度記録が出る。そこはなかなか修正できませんでした。 ――課題だった空中姿勢から着地はどうですか? 橋岡 だいぶうまくなってきたと思いますが、相変わらずへたくそです(笑)。なるべく脚を前に出してキープすることしか考えていない。シザースは本当に〝バカ難しい〟ですね。 ――一方で、シーズン通して不調だった時期というのはないように思いました。 橋岡 そうですね。調整がうまくいかない、という感じはありませんでした。さすがにオリンピックはもう少し跳びたかったなと思っていますが。

この冬、さらなるベースアップを目指す

ベースアップが進み手応えをつかんだシーズンだったが、やはり東京五輪の悔しさが消えることはない。2022年にはオレゴン世界選手権を控える。3年後のパリ五輪は「待ち遠しくない」。やることは山積み。だからこそ前を向き、突き進んでいる。 この続きは2021年12月14日発売の『月刊陸上競技1月号』をご覧ください。  
※インターネットショップ「BASE」のサイトに移動します
郵便振替で購入する 定期購読はこちらから

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.12.04

パリ五輪競歩代表・濱西諒がサンベルクス退社 「再び日の丸を背負って戦うために」

24年パリ五輪男子20km競歩代表の濱西諒が12月1日に自身のSNSを更新し、所属していたサンベルクスを11月末で退社したことを発表した。 濱西は大阪府出身で、履正社高から競歩に取り組み、国体優勝など早くから頭角を現した […]

NEWS 飯塚翔太がラオスで陸上競技指導 「飯塚翔太リレーカーニバル」も開催

2025.12.04

飯塚翔太がラオスで陸上競技指導 「飯塚翔太リレーカーニバル」も開催

東京世界選手権男子200m代表の飯塚翔大(ミズノ)が11月30日から12月3日まで、ラオスを訪問。4日にリモートで現地で行った活動について報告会見を行った。 飯塚はJICA(国際協力機構)が進める「スポーツを通じて世界平 […]

NEWS 世界クロカンU20日本代表が決定!新妻遼己、本田桜二郎、宇都宮桃奈ら男女各6名で世界に挑戦

2025.12.04

世界クロカンU20日本代表が決定!新妻遼己、本田桜二郎、宇都宮桃奈ら男女各6名で世界に挑戦

日本陸連は12月4日、米国・タラハシーで開催される世界クロスカントリー選手権(2026年1月10日)のU20日本代表を発表した。 11月30日の京都陸協記録会内で行われた選考会の上位選手を中心に選考され、男子は今季のイン […]

NEWS 世界陸連が走幅跳のルール変更を断念 「テイクオフゾーン」提案も選手からの反発強く

2025.12.04

世界陸連が走幅跳のルール変更を断念 「テイクオフゾーン」提案も選手からの反発強く

世界陸連(WA)が検討していた走幅跳のルール変更案について、選手からの反発などを受けて撤回されたことを英ガーディアン紙が報じた。 走幅跳では、20cmの踏み切り板とその先に10cmの粘土板が敷かれ、踏み切り板と粘土板の境 […]

NEWS 北口榛花、村竹ラシッド、鵜澤飛羽のJALトリオ参戦!1/2放送「木梨憲武のスポーツKING」自転車、プロ野球、バド世界王者と対決

2025.12.04

北口榛花、村竹ラシッド、鵜澤飛羽のJALトリオ参戦!1/2放送「木梨憲武のスポーツKING」自転車、プロ野球、バド世界王者と対決

2026年1月2日放送の「木梨憲武のスポーツKING!」に、JALの北口榛花、村竹ラシッド、鵜澤飛羽が参戦することがわかった。 現役トップアスリートやレジェンドが、木梨憲武らと異種競技バトルを繰り広げる正月恒例の特別番組 […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年12月号 (11月14日発売)

2025年12月号 (11月14日発売)

EKIDEN REVIEW
全日本大学駅伝
箱根駅伝予選会
高校駅伝&実業団駅伝予選

Follow-up Tokyo 2025

page top