
◇第40回大阪国際女子マラソン(1月31日/大阪・長居公園内周回コース)
東京五輪マラソン代表の前田穂南(天満屋)と一山麻緒(ワコール)による、「日本記録更新ペース対決」に注目が集まった一戦。大阪国際女子マラソンは代表選考会ではないこともあり、野口みずきが2005年に樹立した日本記録2時間19分12秒の更新を狙う目的で1km3分18秒設定の男子ペースメーカーを起用し、コロナ禍により急遽、長居公園内の2.8km周回コースに変更となった。
異例ずくめの大会を制したのは一山。自己2番目となる2時間21分11秒の好記録だが、フィニッシュ後の場内インタビューでは涙を浮かべ悔しがる。「日本記録だけを目指して練習してきたので、ゴールした時は正直、うれしいという気持ちではなかったです」。
一山と前田は、川内優輝(あいおいニッセイ同和損保)らのペースメイクで5km16分32秒、10km33分00秒で通過。だが、徐々に前田遅れ、一山だけが日本記録ペースで淡々と進む。20km通過は1時間5分58秒。「周回コースというのも気にならず、タイムだけを考えて1周、1周走りました」。時折、ペースメーカーから激励を受けながら、ただひたすらに日本記録を追った。
だが、「25km過ぎに身体というより呼吸がきつくなりました」と言うように、25~30kmでは17分02秒かかるなど、ペースが落ちる。「きついところを乗り越えて落ち着いて。そういう山場が3回くらいありました」。本来は「30kmくらいまでゆとりを持って走りたかった」とプランを描いていたが、実際に日本新ペースは「きついと思いました」と振り返る。
それでも、35km以降は再びペースを上げ、競技場に入るギリギリでペースメーカーが退き、「競技場に入って記録を見ると日本記録はダメだったかぁ」と思いつつ、最後まで攻めた。男女混合レースのため「更新」とはならないが、野口みずきが2003年に作った2時間21分18秒の大会記録を上回る快走。昨年3月の名古屋ウィメンズでマークした日本歴代4位(国内日本最高)の2時間20分29秒に次ぐ自己2番目の記録は、パフォーマンス日本歴代5番目で、セカンド記録としては日本最高となる。つまり、国内のレースでの記録は一山の記録が1番、2番を占めているのだ。
高速レースを見せてもなお、涙の理由は「この大会に向けてワコールのスタッフのみなさんが最高のサポートをしてくれていたので、みんなと一緒に喜びたかった」と言う。そして、「正直、順調ではなくて…」と打ち明けた。
昨年3月の名古屋ウィメンズで、東京五輪代表最後の1枠を手にした一山。その後はコロナ禍の競技会中断を経て、トラックで好記録を連発する。7月に5000mで15分06秒66(日本歴代9位)、12月の日本選手権10000mでは31分11秒56(日本歴代6位)をたたき出した。スピードを意識してきた成果に加え、「コロナ禍もあって我慢強さがついた」と精神面でも強くなったという。日本選手権後の山陽女子ロード(ハーフマラソン/12月20日)では1時間10分17秒で日本人トップと、順調に過ごした。
だが、その直後に体調を崩してしまう。「その時期にポイントになる練習が入っていたが、5日間静養しなくてはいけなくて、走るのも歩くのもできず。食事も流動食だけだった」と永山忠幸監督が明かす。12月31日にようやくジョグを再開。そこから驚異の調整力を見せ、「最後の3週間はすごい練習ができていました。1ヵ月の短期間でよくここまで頑張ったと思います」と永山監督は称え、「想定外のことがあり、自信を持って送り出せなかったのは申し訳なかった」と話す。
一山は「どんな状態でも日本記録を出せると(チームスタッフは)一緒に頑張ってくれていた」と支えを励みに調子を上げてきた。いつも通り言い訳はせず、「やり残したことはない。自分の力が足りなかったというのが正直な気持ち」と言う。
東京五輪まであと半年。「冬にやっても夏にやっても、条件は同じなので気にしていません」と一山は堂々と話す。これまでと同じように、「監督のメニューをしっかりやっていきたい」とスタンスは変わらない。
鹿児島県出水市出身の23歳で、男子に逸材がそろう“97年世代”と同学年。出水中央高ではインターハイ予選落ち、全国高校駅伝出場歴もない。高校卒業後にワコールへ入社し、福士加代子の背中を追って成長。今では女子マラソン界を背負う一人となった。
「オリンピックが開催されると信じて、最高の走りができるように、最高の準備をして、スタートラインに立てるように頑張りたいと思います」
大阪で流した悔し涙を、夏の札幌での歓喜に変える。
■一山麻緒のマラソン全成績
東京 7位2.24.33/2019.3.3
ロンドン 15位2.27.15/2019.4.28
MGC 6位2.32.30/2019.9.15
名古屋 優勝2.20.29/2020.3.8
大阪国際女子 優勝2.21.11/2021.1.31
■自己記録
5000m15分06秒66(日本歴代9位)
10000m31分11秒56(日本歴代6位)
マラソン2時間20分29秒(日本歴代4位)
■女子マラソン日本歴代10傑
2.19.12 野口みずき(グローバリー) 2005. 9.25
2.19.41 渋井 陽子(三井住友海上) 2004. 9.26
2.19.46 高橋 尚子(積水化学) 2001. 9.30
2.20.29 一山 麻緒(ワコール) 2020. 3. 8
2.21.11 一山2 21年
2.21.18 野口2 03年
2.21.22 渋井2 02年
2.21.36 安藤 友香(スズキ浜松AC) 2017. 3.12
2.21.37 野口3 07年
2.21.45 千葉 真子(豊田自動織機) 2003. 1.26
2.21.47 松田 瑞生(ダイハツ) 2020. 1.26
2.21.49 高橋2 02年
2.21.51 坂本 直子(天満屋) 2003. 1.26
2.22.12 山口 衛里(天満屋) 1999.11.21
2.22.17 福士加代子(ワコール) 2016. 1.31
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東京五輪マラソン代表の前田穂南(天満屋)と一山麻緒(ワコール)による、「日本記録更新ペース対決」に注目が集まった一戦。大阪国際女子マラソンは代表選考会ではないこともあり、野口みずきが2005年に樹立した日本記録2時間19分12秒の更新を狙う目的で1km3分18秒設定の男子ペースメーカーを起用し、コロナ禍により急遽、長居公園内の2.8km周回コースに変更となった。
異例ずくめの大会を制したのは一山。自己2番目となる2時間21分11秒の好記録だが、フィニッシュ後の場内インタビューでは涙を浮かべ悔しがる。「日本記録だけを目指して練習してきたので、ゴールした時は正直、うれしいという気持ちではなかったです」。
一山と前田は、川内優輝(あいおいニッセイ同和損保)らのペースメイクで5km16分32秒、10km33分00秒で通過。だが、徐々に前田遅れ、一山だけが日本記録ペースで淡々と進む。20km通過は1時間5分58秒。「周回コースというのも気にならず、タイムだけを考えて1周、1周走りました」。時折、ペースメーカーから激励を受けながら、ただひたすらに日本記録を追った。
だが、「25km過ぎに身体というより呼吸がきつくなりました」と言うように、25~30kmでは17分02秒かかるなど、ペースが落ちる。「きついところを乗り越えて落ち着いて。そういう山場が3回くらいありました」。本来は「30kmくらいまでゆとりを持って走りたかった」とプランを描いていたが、実際に日本新ペースは「きついと思いました」と振り返る。
それでも、35km以降は再びペースを上げ、競技場に入るギリギリでペースメーカーが退き、「競技場に入って記録を見ると日本記録はダメだったかぁ」と思いつつ、最後まで攻めた。男女混合レースのため「更新」とはならないが、野口みずきが2003年に作った2時間21分18秒の大会記録を上回る快走。昨年3月の名古屋ウィメンズでマークした日本歴代4位(国内日本最高)の2時間20分29秒に次ぐ自己2番目の記録は、パフォーマンス日本歴代5番目で、セカンド記録としては日本最高となる。つまり、国内のレースでの記録は一山の記録が1番、2番を占めているのだ。
高速レースを見せてもなお、涙の理由は「この大会に向けてワコールのスタッフのみなさんが最高のサポートをしてくれていたので、みんなと一緒に喜びたかった」と言う。そして、「正直、順調ではなくて…」と打ち明けた。
昨年3月の名古屋ウィメンズで、東京五輪代表最後の1枠を手にした一山。その後はコロナ禍の競技会中断を経て、トラックで好記録を連発する。7月に5000mで15分06秒66(日本歴代9位)、12月の日本選手権10000mでは31分11秒56(日本歴代6位)をたたき出した。スピードを意識してきた成果に加え、「コロナ禍もあって我慢強さがついた」と精神面でも強くなったという。日本選手権後の山陽女子ロード(ハーフマラソン/12月20日)では1時間10分17秒で日本人トップと、順調に過ごした。
だが、その直後に体調を崩してしまう。「その時期にポイントになる練習が入っていたが、5日間静養しなくてはいけなくて、走るのも歩くのもできず。食事も流動食だけだった」と永山忠幸監督が明かす。12月31日にようやくジョグを再開。そこから驚異の調整力を見せ、「最後の3週間はすごい練習ができていました。1ヵ月の短期間でよくここまで頑張ったと思います」と永山監督は称え、「想定外のことがあり、自信を持って送り出せなかったのは申し訳なかった」と話す。
一山は「どんな状態でも日本記録を出せると(チームスタッフは)一緒に頑張ってくれていた」と支えを励みに調子を上げてきた。いつも通り言い訳はせず、「やり残したことはない。自分の力が足りなかったというのが正直な気持ち」と言う。
東京五輪まであと半年。「冬にやっても夏にやっても、条件は同じなので気にしていません」と一山は堂々と話す。これまでと同じように、「監督のメニューをしっかりやっていきたい」とスタンスは変わらない。
鹿児島県出水市出身の23歳で、男子に逸材がそろう“97年世代”と同学年。出水中央高ではインターハイ予選落ち、全国高校駅伝出場歴もない。高校卒業後にワコールへ入社し、福士加代子の背中を追って成長。今では女子マラソン界を背負う一人となった。
「オリンピックが開催されると信じて、最高の走りができるように、最高の準備をして、スタートラインに立てるように頑張りたいと思います」
大阪で流した悔し涙を、夏の札幌での歓喜に変える。
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東京 7位2.24.33/2019.3.3
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■自己記録
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■女子マラソン日本歴代10傑
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2.19.41 渋井 陽子(三井住友海上) 2004. 9.26
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2.20.29 一山 麻緒(ワコール) 2020. 3. 8
2.21.11 一山2 21年
2.21.18 野口2 03年
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