2020.12.18
2020年、女子400mハードル界に彗星のごとく現れたイブラヒム愛紗(札幌国際大)。学生ラストシーズンに飛躍を遂げ、日本インカレのタイトルにとどまらず日本選手権も初優勝を飾った。〝ヨンパー歴〟はわずか2年。しかも、高校卒業後は陸上から離れアルバイト生活を過ごしていたという。日本一になってからも飾らず、自分のペースで競技と向き合っているイブラヒム。その秘める可能性は、無限に広がっている。
文/向永拓史 写真/船越陽一郎
衝撃の連発だった2020年
2020年の女子400mハードルで、一人の新星が衝撃のパフォーマンスを見せた。札幌国際大4年のイブラヒム愛紗は、8月のセイコーゴールデングランプリ東京(GGP)で58秒11をマーク。続く9月の日本インカレではさらにタイムを短縮して57秒50で初優勝を飾った。そして、10月の日本選手権では56秒台(日本歴代6位の56秒50)に突入。勢いそのままに日本一の座に就いた。
もちろん、これだけなら過去にいた多くのトップ選手たちと肩を並べたに過ぎない。だが、彼女が400mハードルを始めたのが大学2年時だったという事実、そして昨季初めて全国大会に出たばかりという事実、それらを踏まえた場合はどうだろうか。やはり〝衝撃〟と言える驚きの成長だった。
「自分でもビックリです。まだどこか他人事のような感じ。でも、学校の方々や地元の神奈川の人たち、友達からお祝いのメッセージをもらえてうれしいです」
札幌国際大にとって日本インカレ優勝は初めてのこと。「いつも応援してくださる」という学長への挨拶もあった。
今シーズンのタイム面の目標は57秒台。GGPで「昨シーズンよりも後半に余裕がある走りだと感じました」。特に走力アップは実感しているようで、それが歩数に表れる。昨シーズンまでは8台目まで15歩で押し切って残りを16歩だった。「そこでオーバーストライド気味になって差を詰められてしまっていた」ため、今季のGGPと日本インカレでは、15歩を7台目までにしてラスト3台を16歩にしたという。しかし、「スピードがついたことで楽に15歩で押せるようになって逆に詰まってしまったんです」。そこで、日本選手権ではもう一度、昨シーズンと同じ歩数に戻したところ、それがバチッと決まった。
「勝った喜びももちろんあったのですが、レース展開がうまくいったのがすごくうれしくて。今まで課題が多かったのですが、日本選手権ではそれを修正できました」
実は昨季最終戦となったDenka AthleticsChallenge Cupでは「歩数がわからなくなって」転倒して失格に終わっている。同じ舞台、新潟で見せた日本インカレ・日本選手権の快走。「リベンジができてよかったです」と笑顔を見せた。シーズンこそ短かったものの、これまでにないレベルでのパフォーマンスやコロナ禍ということもあり、心身ともに疲労も。その影響から日本選手権後の2試合は見送ったが、ケガもなく順調で、すでに冬季練習に入っている。
ケガが重なった高校時代
イブラヒムに注目が集まったのは2019年シーズン。木南道孝記念で58秒09をマークして全体3位になり、初めての全国大会となった日本選手権で7位入賞を果たす。さらに日本インカレでは2位に入って、早大勢による表彰台独占を阻んだ。
最初は多くの人が「あれは誰?」という感想を抱いただろう。神奈川県出身。〝神奈川のイブラヒム〟と言えば、男子短距離で中学時代から活躍していたイブラヒム貞哉の名が浮かぶ。実は姉弟。「やっぱり似ていますか? 弟もクラブチームでがんばっていて、今度神奈川に帰って一緒に練習します」と笑った。
神奈川県横浜市出身。ガーナ出身の父と日本人の母の元に生まれた。陸上を始めたのは高校から。それまではピアノを習うなど「どちらかと言うと文化系」で、中学では「陸上部がなかったので消去法でソフトテニス部に入りました」。運動会が大好きで、走るのはやっぱり得意。磯子高に進学し、入部当初は「走高跳がやりたかったんです」。だが、顧問の先生は短距離を勧め、最初は100m、200mを中心に、2年時からは距離を延ばして200m、400mが主戦場となった。ちなみに1年時には部員が少なかったことから県高校駅伝にも出場(4区16位)している。
「1年の時はあまり試合に出ていなくて、100mが13秒台、200mは27秒台でした。2年で25秒27まで一気に伸びたんですが、疲労骨折とかケガが続いて、2年の終わりから3年まであまり練習ができませんでした」
この続きは2020年12月14日発売の『月刊陸上競技1月号』をご覧ください。
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2020年、女子400mハードル界に彗星のごとく現れたイブラヒム愛紗(札幌国際大)。学生ラストシーズンに飛躍を遂げ、日本インカレのタイトルにとどまらず日本選手権も初優勝を飾った。〝ヨンパー歴〟はわずか2年。しかも、高校卒業後は陸上から離れアルバイト生活を過ごしていたという。日本一になってからも飾らず、自分のペースで競技と向き合っているイブラヒム。その秘める可能性は、無限に広がっている。文/向永拓史 写真/船越陽一郎衝撃の連発だった2020年
2020年の女子400mハードルで、一人の新星が衝撃のパフォーマンスを見せた。札幌国際大4年のイブラヒム愛紗は、8月のセイコーゴールデングランプリ東京(GGP)で58秒11をマーク。続く9月の日本インカレではさらにタイムを短縮して57秒50で初優勝を飾った。そして、10月の日本選手権では56秒台(日本歴代6位の56秒50)に突入。勢いそのままに日本一の座に就いた。もちろん、これだけなら過去にいた多くのトップ選手たちと肩を並べたに過ぎない。だが、彼女が400mハードルを始めたのが大学2年時だったという事実、そして昨季初めて全国大会に出たばかりという事実、それらを踏まえた場合はどうだろうか。やはり〝衝撃〟と言える驚きの成長だった。「自分でもビックリです。まだどこか他人事のような感じ。でも、学校の方々や地元の神奈川の人たち、友達からお祝いのメッセージをもらえてうれしいです」札幌国際大にとって日本インカレ優勝は初めてのこと。「いつも応援してくださる」という学長への挨拶もあった。今シーズンのタイム面の目標は57秒台。GGPで「昨シーズンよりも後半に余裕がある走りだと感じました」。特に走力アップは実感しているようで、それが歩数に表れる。昨シーズンまでは8台目まで15歩で押し切って残りを16歩だった。「そこでオーバーストライド気味になって差を詰められてしまっていた」ため、今季のGGPと日本インカレでは、15歩を7台目までにしてラスト3台を16歩にしたという。しかし、「スピードがついたことで楽に15歩で押せるようになって逆に詰まってしまったんです」。そこで、日本選手権ではもう一度、昨シーズンと同じ歩数に戻したところ、それがバチッと決まった。「勝った喜びももちろんあったのですが、レース展開がうまくいったのがすごくうれしくて。今まで課題が多かったのですが、日本選手権ではそれを修正できました」実は昨季最終戦となったDenka AthleticsChallenge Cupでは「歩数がわからなくなって」転倒して失格に終わっている。同じ舞台、新潟で見せた日本インカレ・日本選手権の快走。「リベンジができてよかったです」と笑顔を見せた。シーズンこそ短かったものの、これまでにないレベルでのパフォーマンスやコロナ禍ということもあり、心身ともに疲労も。その影響から日本選手権後の2試合は見送ったが、ケガもなく順調で、すでに冬季練習に入っている。
ケガが重なった高校時代
イブラヒムに注目が集まったのは2019年シーズン。木南道孝記念で58秒09をマークして全体3位になり、初めての全国大会となった日本選手権で7位入賞を果たす。さらに日本インカレでは2位に入って、早大勢による表彰台独占を阻んだ。最初は多くの人が「あれは誰?」という感想を抱いただろう。神奈川県出身。〝神奈川のイブラヒム〟と言えば、男子短距離で中学時代から活躍していたイブラヒム貞哉の名が浮かぶ。実は姉弟。「やっぱり似ていますか? 弟もクラブチームでがんばっていて、今度神奈川に帰って一緒に練習します」と笑った。神奈川県横浜市出身。ガーナ出身の父と日本人の母の元に生まれた。陸上を始めたのは高校から。それまではピアノを習うなど「どちらかと言うと文化系」で、中学では「陸上部がなかったので消去法でソフトテニス部に入りました」。運動会が大好きで、走るのはやっぱり得意。磯子高に進学し、入部当初は「走高跳がやりたかったんです」。だが、顧問の先生は短距離を勧め、最初は100m、200mを中心に、2年時からは距離を延ばして200m、400mが主戦場となった。ちなみに1年時には部員が少なかったことから県高校駅伝にも出場(4区16位)している。「1年の時はあまり試合に出ていなくて、100mが13秒台、200mは27秒台でした。2年で25秒27まで一気に伸びたんですが、疲労骨折とかケガが続いて、2年の終わりから3年まであまり練習ができませんでした」この続きは2020年12月14日発売の『月刊陸上競技1月号』をご覧ください。RECOMMENDED おすすめの記事
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