2024.11.18
山口県下関市の総合病院、超高齢化社会のニーズに合わせ新たな特色を持った施設に変革
山口県下関市にある王司病院がスポーツ界で注目を浴びている。以前は地域の頼れる総合病院だったが、超高齢化問題のニーズに応えようと6年前から変革を掲げ、グループ法人でシニア向けフィットネススクールを展開。高齢者だけでなくスポーツ選手もターゲットにして、今年8月には病院のリハビリテーション科に「外来スポーツリハビリテーション」を新設した。そのタイミングで6台の高気圧酸素ルームを設置して大きな反響を呼んでいる。〝安心・安全〟をモットーにする酸素ルームのトップメーカー、日本気圧バルク工業(本社:静岡県静岡市)の『O2Room®』だ。治すだけの医療から、予防も含めた医療へ――。王司病院の新たな取り組みに迫った。
グループ法人でフィットネススクールをオープン
1981年(昭和56年)に開設した王司病院は、内科、消化器内科、循環器科、皮膚科、泌尿器科 、リハビリテーション科 、精神科、整形外科 、歯科を持つ総合病院だ。回復期リハビリテーション病棟、医療療養病棟、認知症治療病棟があり、「昔ながらの病院で、慢性期の高齢者の方が利用するイメージでした」と同院事務長の三原弘氏は話す。
頼りになる総合病院として山口県下関市で根付いていたが、6年前に医療法人社団 季朋会の新理事長に麻上季子氏が就任。「我が国は超高齢化社会に突入しました。地域の皆様のニーズに合わせ、患者さんのために尽力しながら、新たな特色を作っていきたい」(麻上理事長)と、グループ法人の事業として6年前にシニア向けのフィットネススクール『ロコモK.O』をオープンさせた。そこには長年、医療現場を見続けてきた中での切実な理由があった。
「せっかく退院しても、半年ぐらいで戻ってきてしまう患者さんが多くいらっしゃいました。なかでも60~70代の男性の率がすごく高かった。その理由を考えると、女性は退院したら外に出かける方が多いのですが、定年後の男性は友達が少なく、デイサービスも嫌がって行かない方が多い。かといって自宅でリハビリをするわけでもなく、症状が悪化して再入院していました。そこで、『退院した後も患者さんと関われるような事業をやりたい』という思いからフィットネススクールを始めました」と三原事務長。
運動器の障害のために身体能力が低下する状態である「ロコモティブシンドローム」(ロコモ)をノックアウトしよう、という願いを込めて、フィットネススクールには『ロコモK.O』という名称をつけた。
どちらかというと地方部に店舗を構えており、退院した高齢者だけでなく、若者の利用者もいる。平日の午前中はシニア層、昼間は子育て世代、夕方は若者世代と時間帯によって利用する層が異なり、地域の活性化にも役立っているという。そのフィットネススクールでは、王司病院のメディカルアドバイスを受けることができるのも好評の理由のようだ。
『ロコモK.O』は現在、地元・山口県の13店舗を含む全国で35店舗を展開している。
『ロコモK.O』ホームページ
中学軟式野球チームもサポート、地元ホープの活動拠点に
王司病院は2022年4月に設立された中学軟式野球チーム『下関ロコモK.O HAWKS』もサポートしている。地元・山口県下関市出身の元プロ野球選手である児玉龍也氏が監督を務め、福岡ソフトバンクスホークス時代にベストナインを2回、ゴールデングラブ賞を3回受賞している柴原洋氏が技術コーチを務めるチームだ。
「東京や大阪には中学軟式野球のリーグがありますが、山口は硬式野球のリーグしかありません。下関市には軟式野球のチームすら少ないので、上手な選手は都会に行ってしまう。野球をやりたくてもできる環境がなかったのですが、下関市にも中学軟式野球チームが誕生しました。そのなかで肘や肩など、野球少年は故障が少なくありません。彼らが高校・大学で活躍できるように、王司病院が選手たちの故障予防と治療を受け持つようになったのです」(三原事務長)
「外来スポーツリハビリ」が大好評、新設から2ヵ月で診療枠を拡大
王司病院は今年8月、リハビリテーション科の中に「外来スポーツリハビリテーション」を新設した。スポーツ全般の障害を対象としており、オスグッド・シュラッター病(成長痛)、捻挫、靭帯損傷という日常的に起こりやすい症状から、ランナー膝、ジャンパー膝、野球肩、野球肘、テニス肘、ゴルフ肘といったスポーツ特有の故障まで幅広く対応している。それから五十肩などの肩こり、スマホ首ともいわれるストレートネック(首の可動域が制限され、動かすと痛みが出る)などアスリート以外の来院もある。
そして、患者のリハビリテーションを「野球班」、「バスケットボール班」、「日常生活班」など競技別の理学療法士、作業療法士が担当するのも特徴だ。早期に治療と専門的なリハビリテーションを開始することで回復・復帰時期が早くなる可能性が高く、来院者のハートをつかんでいる。
当初は木曜日のみの外来診療だったが、「地域の皆様から好評をいただき、診療枠をどんどん増やしています」と三原事務長。10月からは水曜日、木曜日、金曜日の週3日(いずれも診察時間は14~19時)に拡大した。水曜日と金曜日は整形外科医、木曜日はリハビリテーション医が診療を担当。リハビリテーション前後に酸素ルームの使用が可能で、これも大きな反響を呼んでいる。
酸素ルーム6台は圧巻の光景、「想像を超える」環境で特色アピール
外来スポーツリハビリテーションの新設に合わせて、王司病院は50㎡もの広さがあるプレハブ内に「酸素ルーム」を設営。「想像を超えることをしたいと思っていました」(三原事務長)と高気圧酸素ルーム(O2Room®)を6台も導入した施設には〝圧巻の光景〟が広がっており、訪れた人がびっくりするという。高気圧酸素ルームを導入している全国各地の総合病院、整形外科、整骨院などにおいて、複数台あるとしても2台か3台。それをはるかに凌ぐ台数なのだから驚くのも無理はない。
「外来スポーツリハビリテーションはスポーツをやっている方だけでなく、一般の方も受診されます。酸素ルームにはフィットネススクール『ロコモK.O』に通う方や、職員が休憩時間に来ることもあります。高気圧酸素ルームが1台、2台では順番待ちができてしまいます。それではインパクトもありません。想像を超えることをしないと世間に認知されないと思いましたので、一気に6台入れました」(三原事務長)
主な使用者は外来スポーツリハビリの患者さんだ。では、なぜ高気圧酸素ルームを導入したのだろうか。
「中学軟式野球チーム『下関ロコモK.O HAWKS』をサポートするようになり、選手が肩や肘を痛めた場合、一般的な整形外科ではレントゲンを撮って特に異常が見つからなければ、『しばらく安静して様子を見てください』と言われて終わりです。当院では、外来スポーツリハビリテーションをオープンしたからには、早期回復の可能性を高めるために高気圧酸素ルームの使用が有効だと感じました。また、ケガをする前の予防医療としても高気圧酸素ルームを活用しています。そうすることでケガへの意識も高まりますし、一般の方は疲労回復やリラクゼーションなど健康増進を求めて使用される方が多いですね」(三原事務長)
高気圧酸素ルームの使用で来た方に気になる箇所があれば診察するという想定の〝逆パターン〟の方もいて、結果的に予防医療につながっている。また、常圧酸素の状態では運動がままならない方でも、高気圧酸素ルームのなかで軽い運動をこなすことで筋肉量が増えたというエビデンスもある。今後は高齢者の利用も増える可能性がありそうだ。
そんななか、高気圧酸素ルームを販売するいくつかの会社のなかで日本気圧バルク工業の製品『O2Room®』を選択した理由はどこにあったのだろうか。今年4月に、他社製の低圧低酸素ルームで競輪選手が死亡する事故が起きたこともあり、三原事務長は慎重に製品を選んだという。
「日本気圧バルク工業の高気圧酸素ルームは『ロコモK.O』の河内長野店で先行導入して、展示会では他社の製品とも見比べました。日本気圧バルク工業は自社開発・自社製造しているのが大きな特徴で、複数の大学や病院と共同研究していて、エビデンスも多い。信頼できると感じました」
日本気圧バルク工業は酸素に関わる製品を発売してから30年間、事故や大きな故障は一度もない。会社として、また販売スタッフ自身も日本体力医学会に所属して大学や病院の先生方と共同研究を重ね、安心・安全な製品を世に出すことをモットーとしており、「気圧マスター」の資格も取得している販売スタッフがお客様のニーズに対して親身に対応。アフターケアが充実していることも喜ばれている点であり、王司病院ではそのようなことを総合して『O2Room®』を選んだという。
また、6台ある高気圧酸素ルームすべてにテレビとエアコンが完備されており、Wi-Fiも飛んでいるため、さまざまなシーンで利用されているようだ。
「診療の空き時間に職員が利用することもあり、『疲れが取れる』、『二日酔いのときに入るとスッキリする』など好評で、私自身はオンライン会議の時によく利用しています。防音ですし、誰にも邪魔されない空間であることがいいですね」と三原事務長もお気に入りだ。
スポーツ少年に最高な病院、チーム一括での受け入れも可能
日本では、スポーツ庁と文化庁が策定したガイドラインに基づき、昨年度から3年間かけて、公立中学校における休日の運動部活動を段階的に地域のクラブ・団体に移行している。王司病院が高気圧酸素ルームを一気に6台も導入したのは、日本のスポーツ界の近未来を見越したものでもあった。
「現在も月曜日の18時からは『下関ロコモK.O HAWKS』に所属している子供や親御さんが使えるかたちにしています。なかには母親も一緒に入って、子供が宿題をしているケースもあります。今後はクラブチームごとに開放していく予定です。中学生なら1台の高気圧酸素ルームに2~3人入ることができますので、チームで来ていただいてもしっかり対応できると思います」(三原事務長)
酸素ルームは1回(50分間程度)で3000~5000円に設定している施設が多いなか、王司病院は10回券を購入すれば高気圧酸素ルームに1回(50分間)あたり1600円で入ることができる。かなりリーズナブルだ。
スポーツをしている小中学生はもちろん、マラソン等の運動をしている大人や日常生活での歩行や活動に不安を持つ高齢者まで幅広い年代の方に、大きなケガをする前に親身に診察してもらえる病院は非常に心強い存在と言える。
新設した外来スポーツリハビリテーションをさらに認知してもらうためテレビCMも準備しているそうで、「スポーツといえば王司病院、予防医療といえば王司病院、というイメージを作っていきたい。そこに酸素ルームというソフトは絶対に必要だと思っています」(三原事務長)
今後ますます注目を浴びることになる王司病院。その〝新たなアクション〟が下関市のスポーツをもっと強く、もっと楽しいものにするだろう。
文/酒井政人
※この記事は『月刊陸上競技』2024年12月号にも掲載しています
山口県下関市の総合病院、超高齢化社会のニーズに合わせ新たな特色を持った施設に変革
山口県下関市にある王司病院がスポーツ界で注目を浴びている。以前は地域の頼れる総合病院だったが、超高齢化問題のニーズに応えようと6年前から変革を掲げ、グループ法人でシニア向けフィットネススクールを展開。高齢者だけでなくスポーツ選手もターゲットにして、今年8月には病院のリハビリテーション科に「外来スポーツリハビリテーション」を新設した。そのタイミングで6台の高気圧酸素ルームを設置して大きな反響を呼んでいる。〝安心・安全〟をモットーにする酸素ルームのトップメーカー、日本気圧バルク工業(本社:静岡県静岡市)の『O2Room®』だ。治すだけの医療から、予防も含めた医療へ――。王司病院の新たな取り組みに迫った。グループ法人でフィットネススクールをオープン
1981年(昭和56年)に開設した王司病院は、内科、消化器内科、循環器科、皮膚科、泌尿器科 、リハビリテーション科 、精神科、整形外科 、歯科を持つ総合病院だ。回復期リハビリテーション病棟、医療療養病棟、認知症治療病棟があり、「昔ながらの病院で、慢性期の高齢者の方が利用するイメージでした」と同院事務長の三原弘氏は話す。 [caption id="attachment_151792" align="alignnone" width="800"] 昔ながらの地域の総合病院から新たな特色を持った診療施設へと変革を遂げた王司病院[/caption] 頼りになる総合病院として山口県下関市で根付いていたが、6年前に医療法人社団 季朋会の新理事長に麻上季子氏が就任。「我が国は超高齢化社会に突入しました。地域の皆様のニーズに合わせ、患者さんのために尽力しながら、新たな特色を作っていきたい」(麻上理事長)と、グループ法人の事業として6年前にシニア向けのフィットネススクール『ロコモK.O』をオープンさせた。そこには長年、医療現場を見続けてきた中での切実な理由があった。 「せっかく退院しても、半年ぐらいで戻ってきてしまう患者さんが多くいらっしゃいました。なかでも60~70代の男性の率がすごく高かった。その理由を考えると、女性は退院したら外に出かける方が多いのですが、定年後の男性は友達が少なく、デイサービスも嫌がって行かない方が多い。かといって自宅でリハビリをするわけでもなく、症状が悪化して再入院していました。そこで、『退院した後も患者さんと関われるような事業をやりたい』という思いからフィットネススクールを始めました」と三原事務長。 運動器の障害のために身体能力が低下する状態である「ロコモティブシンドローム」(ロコモ)をノックアウトしよう、という願いを込めて、フィットネススクールには『ロコモK.O』という名称をつけた。 どちらかというと地方部に店舗を構えており、退院した高齢者だけでなく、若者の利用者もいる。平日の午前中はシニア層、昼間は子育て世代、夕方は若者世代と時間帯によって利用する層が異なり、地域の活性化にも役立っているという。そのフィットネススクールでは、王司病院のメディカルアドバイスを受けることができるのも好評の理由のようだ。 『ロコモK.O』は現在、地元・山口県の13店舗を含む全国で35店舗を展開している。 『ロコモK.O』ホームページ中学軟式野球チームもサポート、地元ホープの活動拠点に
王司病院は2022年4月に設立された中学軟式野球チーム『下関ロコモK.O HAWKS』もサポートしている。地元・山口県下関市出身の元プロ野球選手である児玉龍也氏が監督を務め、福岡ソフトバンクスホークス時代にベストナインを2回、ゴールデングラブ賞を3回受賞している柴原洋氏が技術コーチを務めるチームだ。 「東京や大阪には中学軟式野球のリーグがありますが、山口は硬式野球のリーグしかありません。下関市には軟式野球のチームすら少ないので、上手な選手は都会に行ってしまう。野球をやりたくてもできる環境がなかったのですが、下関市にも中学軟式野球チームが誕生しました。そのなかで肘や肩など、野球少年は故障が少なくありません。彼らが高校・大学で活躍できるように、王司病院が選手たちの故障予防と治療を受け持つようになったのです」(三原事務長) [caption id="attachment_152369" align="alignnone" width="800"] 王司病院がサポートしている中学軟式野球チーム『下関ロコモK.O HAWKS』は2022年4月に設立された[/caption]「外来スポーツリハビリ」が大好評、新設から2ヵ月で診療枠を拡大
王司病院は今年8月、リハビリテーション科の中に「外来スポーツリハビリテーション」を新設した。スポーツ全般の障害を対象としており、オスグッド・シュラッター病(成長痛)、捻挫、靭帯損傷という日常的に起こりやすい症状から、ランナー膝、ジャンパー膝、野球肩、野球肘、テニス肘、ゴルフ肘といったスポーツ特有の故障まで幅広く対応している。それから五十肩などの肩こり、スマホ首ともいわれるストレートネック(首の可動域が制限され、動かすと痛みが出る)などアスリート以外の来院もある。 そして、患者のリハビリテーションを「野球班」、「バスケットボール班」、「日常生活班」など競技別の理学療法士、作業療法士が担当するのも特徴だ。早期に治療と専門的なリハビリテーションを開始することで回復・復帰時期が早くなる可能性が高く、来院者のハートをつかんでいる。 当初は木曜日のみの外来診療だったが、「地域の皆様から好評をいただき、診療枠をどんどん増やしています」と三原事務長。10月からは水曜日、木曜日、金曜日の週3日(いずれも診察時間は14~19時)に拡大した。水曜日と金曜日は整形外科医、木曜日はリハビリテーション医が診療を担当。リハビリテーション前後に酸素ルームの使用が可能で、これも大きな反響を呼んでいる。 [caption id="attachment_151803" align="alignnone" width="800"] 王司病院の外来スポーツリハビリテーションでは一般的な診療や施術と高気圧酸素ルームのセットが人気を呼んでいる[/caption]酸素ルーム6台は圧巻の光景、「想像を超える」環境で特色アピール
外来スポーツリハビリテーションの新設に合わせて、王司病院は50㎡もの広さがあるプレハブ内に「酸素ルーム」を設営。「想像を超えることをしたいと思っていました」(三原事務長)と高気圧酸素ルーム(O2Room®)を6台も導入した施設には〝圧巻の光景〟が広がっており、訪れた人がびっくりするという。高気圧酸素ルームを導入している全国各地の総合病院、整形外科、整骨院などにおいて、複数台あるとしても2台か3台。それをはるかに凌ぐ台数なのだから驚くのも無理はない。 「外来スポーツリハビリテーションはスポーツをやっている方だけでなく、一般の方も受診されます。酸素ルームにはフィットネススクール『ロコモK.O』に通う方や、職員が休憩時間に来ることもあります。高気圧酸素ルームが1台、2台では順番待ちができてしまいます。それではインパクトもありません。想像を超えることをしないと世間に認知されないと思いましたので、一気に6台入れました」(三原事務長) [caption id="attachment_151805" align="alignnone" width="800"] 6台もの高気圧酸素ルーム『O2Room®』が並んでいる様子は圧巻。左側の4台が幅120cm、高さ150cm、奥行き225cmの「スクエアタイプ」(2 ~ 4名用)、右側の2台が幅100cm、高さ150cm、奥行き220cmの「ブレッドタイプレギュラー」(2~4名用)[/caption] 主な使用者は外来スポーツリハビリの患者さんだ。では、なぜ高気圧酸素ルームを導入したのだろうか。 「中学軟式野球チーム『下関ロコモK.O HAWKS』をサポートするようになり、選手が肩や肘を痛めた場合、一般的な整形外科ではレントゲンを撮って特に異常が見つからなければ、『しばらく安静して様子を見てください』と言われて終わりです。当院では、外来スポーツリハビリテーションをオープンしたからには、早期回復の可能性を高めるために高気圧酸素ルームの使用が有効だと感じました。また、ケガをする前の予防医療としても高気圧酸素ルームを活用しています。そうすることでケガへの意識も高まりますし、一般の方は疲労回復やリラクゼーションなど健康増進を求めて使用される方が多いですね」(三原事務長) 高気圧酸素ルームの使用で来た方に気になる箇所があれば診察するという想定の〝逆パターン〟の方もいて、結果的に予防医療につながっている。また、常圧酸素の状態では運動がままならない方でも、高気圧酸素ルームのなかで軽い運動をこなすことで筋肉量が増えたというエビデンスもある。今後は高齢者の利用も増える可能性がありそうだ。 そんななか、高気圧酸素ルームを販売するいくつかの会社のなかで日本気圧バルク工業の製品『O2Room®』を選択した理由はどこにあったのだろうか。今年4月に、他社製の低圧低酸素ルームで競輪選手が死亡する事故が起きたこともあり、三原事務長は慎重に製品を選んだという。 「日本気圧バルク工業の高気圧酸素ルームは『ロコモK.O』の河内長野店で先行導入して、展示会では他社の製品とも見比べました。日本気圧バルク工業は自社開発・自社製造しているのが大きな特徴で、複数の大学や病院と共同研究していて、エビデンスも多い。信頼できると感じました」 日本気圧バルク工業は酸素に関わる製品を発売してから30年間、事故や大きな故障は一度もない。会社として、また販売スタッフ自身も日本体力医学会に所属して大学や病院の先生方と共同研究を重ね、安心・安全な製品を世に出すことをモットーとしており、「気圧マスター」の資格も取得している販売スタッフがお客様のニーズに対して親身に対応。アフターケアが充実していることも喜ばれている点であり、王司病院ではそのようなことを総合して『O2Room®』を選んだという。 また、6台ある高気圧酸素ルームすべてにテレビとエアコンが完備されており、Wi-Fiも飛んでいるため、さまざまなシーンで利用されているようだ。 「診療の空き時間に職員が利用することもあり、『疲れが取れる』、『二日酔いのときに入るとスッキリする』など好評で、私自身はオンライン会議の時によく利用しています。防音ですし、誰にも邪魔されない空間であることがいいですね」と三原事務長もお気に入りだ。スポーツ少年に最高な病院、チーム一括での受け入れも可能
日本では、スポーツ庁と文化庁が策定したガイドラインに基づき、昨年度から3年間かけて、公立中学校における休日の運動部活動を段階的に地域のクラブ・団体に移行している。王司病院が高気圧酸素ルームを一気に6台も導入したのは、日本のスポーツ界の近未来を見越したものでもあった。 「現在も月曜日の18時からは『下関ロコモK.O HAWKS』に所属している子供や親御さんが使えるかたちにしています。なかには母親も一緒に入って、子供が宿題をしているケースもあります。今後はクラブチームごとに開放していく予定です。中学生なら1台の高気圧酸素ルームに2~3人入ることができますので、チームで来ていただいてもしっかり対応できると思います」(三原事務長) [caption id="attachment_151806" align="alignnone" width="800"] 地元の部活生や野球少年らは複数人で『O2Room®』を活用。テレビもエアコンも完備されて快適な環境が好評だ[/caption] 酸素ルームは1回(50分間程度)で3000~5000円に設定している施設が多いなか、王司病院は10回券を購入すれば高気圧酸素ルームに1回(50分間)あたり1600円で入ることができる。かなりリーズナブルだ。 スポーツをしている小中学生はもちろん、マラソン等の運動をしている大人や日常生活での歩行や活動に不安を持つ高齢者まで幅広い年代の方に、大きなケガをする前に親身に診察してもらえる病院は非常に心強い存在と言える。 新設した外来スポーツリハビリテーションをさらに認知してもらうためテレビCMも準備しているそうで、「スポーツといえば王司病院、予防医療といえば王司病院、というイメージを作っていきたい。そこに酸素ルームというソフトは絶対に必要だと思っています」(三原事務長) 今後ますます注目を浴びることになる王司病院。その〝新たなアクション〟が下関市のスポーツをもっと強く、もっと楽しいものにするだろう。 [caption id="attachment_151807" align="alignnone" width="800"] 日本気圧バルク工業の高気圧酸素ルーム『O2Room®』は王司病院の診療に大きな効果をもたらしている[/caption] 王司病院 ホームページ 王司病院 Instagram 文/酒井政人 ※この記事は『月刊陸上競技』2024年12月号にも掲載していますRECOMMENDED おすすめの記事
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