2024.11.03
◇第56回全日本大学駅伝(11月3日/愛知・熱田神宮~三重・伊勢神宮:8区間106.8km)
大学駅伝ナンバーワンを決める全日本大学駅伝が行われ、國學院大が5時間9分56秒で悲願の初優勝を果たした。
若き指揮官は男泣きではなく満面に笑み。前田康弘監督は「全員駅伝で素晴らしい選手とチームで監督という立場で立たせてもらって幸せ者です」と語る。
1区で嘉数純平(3年)が区間2位スタート。「初めての1区で緊張したのですが、後続も強い選手だったので安心して走れました」と安定した走りを見せた。続く青木瑠郁(3年)は区間7位で6位となるが粘りきるも「もうちょっと先頭と近い秒差で渡したかった。仲間に助けられた」と振り返る。その言葉通り、3区の辻原輝(2年)も区間3位、4区の高山豪起(3年)も区間4位と力走。トップの青学大とは1分27秒差の3位で前半を折り返す。
ここから圧巻の反撃。前田監督が「攻め駒」と信頼する5区・野中恒亨(2年)が区間賞で青学大と41秒差の2位に浮上する。区間賞を取った「出雲より良い走りができました」。続く6区では山本歩夢(4年)が「まずは区間賞を取ることが最低限の仕事」と走り出し、区間新の快走で一気に4秒差まで詰めた。さらに7区でエースの平林清澄(4年)が、青学大のエース・太田蒼生(4年)と競り合いに。長いつばぜり合いの末、中継と同じ4秒差のままだった。区間2位タイにも泣きながら「申し訳ないです」と前田監督に電話があったという。ただ、指揮官は「上原を信じて待とう」と伝えた。
その上原琉翔(3年)が大仕事。「スタートした時は青学大さんとほぼ同時スタートのようになって不安もありました」と言うが、600mで青学大に追いつくと、しばらく並走。前田監督からの「行けると思ったところで行ってこい」の言葉通り、「後ろの駒大の山川(拓馬)くんに追いつかれるのも嫌だったので残り10kmで勝負しました」とペースを上げ、勝負を決めた。
創部は1890年と古いが、本格的に駅伝の強化を進めたのはここ20年ほど。転機は駒大出身の前田監督が就任した2009年夏頃から。徐々に三大駅伝常連校として存在感を示すと、全日本大学駅伝では第50回(2018年)に初シードとなる6位。徐々に有力高校生が進学するようになると、2019年には出雲駅伝で三大駅伝初優勝を果たした。
各校がうらやむ平林を勧誘した際には「初優勝しよう」と口説いた。熱血漢の指揮官に若きランナーたちの心が動いていく。今年の出雲駅伝は2度目の制覇。そして、ついに伊勢路も制して2冠を達成した。
「まだ実感はない」と前田監督。残す箱根について「3冠はまったく考えていなくて、1戦1勝で臨んできた。箱根は別物だと思うので、山対策もして、じっくり強化して1月2、3日を迎えたい」。
前田監督は駒大時代に全日本大学駅伝初優勝メンバー。そして、2000年に主将を務めて箱根駅伝も4区を務めて箱根駅伝初優勝にも貢献している。選手として常勝軍団となる礎を築いた経験を持つ指揮官は、愛弟子たちと國學院大の新たな歴史を作り上げようとしている。
悲願の初V!出雲駅伝と2冠!國學院大の優勝メンバーと区間順位をチェック
1区 嘉数純平(3年) 区間2位 2区 青木瑠郁(3年) 区間7位 3区 辻原輝(2年) 区間3位 4区 高山豪起(3年) 区間4位 5区 野中恒亨(2年) 区間賞 6区 山本歩夢(4年) 区間賞 7区 平林清澄(4年) 区間2位タイ 8区 上原琉翔(3年) 区間9位 補員:鎌田匠馬(3年)、後村光星(2年)、田中愛睦(2年)、飯國新太(1年)、岡村享一(1年)
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