◇日本インカレ(京都・たけびしスタジアム京都:西京極)1日目
学生ナンバーワンを決める第91回日本インカレの1日目が行われ、女子走幅跳の髙良彩花(筑波大)が、長く止まっていた大会記録、そして過去の自分という2つの壁を打ち破った。
その時は4回目に訪れる。「考えずに勢いのままいけた」。これまで考えすぎてしまっていた助走。今回は無心でスタートして、無心で走った。髙良らしい、美しく、力強い跳躍。大会記録を示す印を超えて着地し、3年ぶり有観客のスタンドから大きな拍手が沸いた。
記録は6m50(+0.7)。さらに大きな拍手が起こる。1987年に磯貝美奈子(群馬大)が作った6m46の大会記録を35年ぶりに更新。それだけではなく、高3のアジア・ジュニア選手権で出した6m44の高校記録であり、止まっていた自己記録を4年ぶりに塗り替えた。珍しく両手を高く上げて喜びを表現する。日本歴代9位、学生歴代5位にランクインする大記録だった。
「4年間自己ベストが出なくて悔しい思いをしてきました。最後の日本インカレで、仲間の前で出せて本当にうれしいです」。この4年間のことを聞かれると、言葉に詰まった。
中学時代からトップジャンパーとして日本一になると、高校時代はインターハイ3連覇。2、3年と日本選手権まで連覇した。高校記録を作ったアジア・ジュニアで優勝。U20世界選手権では日本初の銀メダルを獲得するなど、数々の歴史を作ってきた。
筑波大に入ってからも関東インカレ4連覇などしてきたが、自己記録は長く更新できず。「いろんな思いがありました。周囲の自己ベストに嫉妬したこともあります。高校時代に跳んでしまった。もう跳べないんじゃないか」。それでも、仲間やコーチたちが「大丈夫」「跳べるよ」と声をかけつづけてくれた。その声に背中を押されて、ここまで続けてこられた。
「成長しているのは実感しても、記録が出ないと感じられなかった。でもこうして更新できました。あきらめずに続けてこられたのは自分の強みだと思っています」。何度も試行錯誤しては崩して、また作って。その過程は決して無駄ではなかった。
卒業後も社会人として続けていく予定で、「やっと世界に行きたいといえるところまできた。スタートラインに立てました」。最後のインカレで見せた意地とプライドと勝負強さ。やっぱり、千両役者はひと味違う。再び世界と戦うために。稀代のジャンパー・高良彩花の第二章がここから始まる。
■女子走幅跳学生歴代5傑
6.78(0.8) 池田久美子(福島大3) 2001年
6.58(1.0) 磯貝美奈子(群馬大) 1987年
6.53(1.4) 桝見咲智子(福岡大4) 2006年
6.52(0.7) 高松 仁美(埼玉大4) 1998年
6.50(0.7) 髙良 彩花(筑波大4) 2022年

|
|
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
2025.05.02
九電工にケニア出身の18歳キプンゲノ・ニアマイアが加入
2025.05.02
ケニア、インド、中国の長距離選手がドーピング違反により出場資格停止
-
2025.05.01
-
2025.05.01
-
2025.05.01
2025.04.29
100mH田中佑美が予選トップ通過も決勝棄権「故障ではない」昨年の結婚も明かす/織田記念
-
2025.04.28
-
2025.04.26
2025.04.12
3位の吉居大和は涙「想像していなかったくらい悔しい」/日本選手権10000m
-
2025.04.12
-
2025.04.12
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2022.12.20
-
2023.04.01
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.05.02
九電工にケニア出身の18歳キプンゲノ・ニアマイアが加入
九電工は5月1日、ケニア出身のキプンゲノ・ニアマイアが同日付で加入したと発表した。 ニアマイアはケリンゲット高出身の18歳。5000mで13分49秒7の自己記録を持ち、今年2月の世界陸連(WA)クロスカントリーツアー・ゴ […]
2025.05.02
セイコーGGP海外選手発表 男子走高跳東京五輪5位スターク参戦 女子やり投に北口榛花の練習パートナー・シチャコヴァ
日本陸連は5月2日、セイコーゴールデングランプリ(5月18日/東京・国立競技場)の出場選手第11弾を発表した。 新たに発表されたのは男女の走高跳とやり投の海外勢6名。男子走高跳では2021年東京五輪5位や、世界選手権で1 […]
2025.05.02
ケニア、インド、中国の長距離選手がドーピング違反により出場資格停止
アスリート・インテグリティー・ユニット(AIU、世界陸連の独立不正監査機関)は、4月中に複数の長距離選手に対し資格停止処分を科すことを発表した。いずれも禁止物質の使用が認められたため。 女子長距離の郭利亜(中国)はメチル […]
2025.05.01
KIPRUNが環境に優しい新たなシューズを発表 接着剤不使用の「KIPX」はリサイクル可能な次世代アイテム
KIPRUNは4月上旬、フランス・パリで発表会を行い、新たなブランドロゴを発表するとともに、今後日本国内でも発売を予定している新モデルシューズを発表した。 競歩世界チャンピオンも愛用したシューズ 2021年にブランド初の […]
2025.05.01
セイコーGGPトラック種目の海外選手を発表! 100mにパリ五輪4継金メダルブレーク、110mHに同7位ベネットら
日本陸連は5月1日、セイコーゴールデングランプリ2025(5月18日/東京・国立競技場)の出場選手第10弾としてトラック種目の海外選手を発表した。 男子100mには昨年のパリ五輪男子4×100mリレーで金メダルのジェロー […]
Latest Issue
最新号

2025年4月号 (3月14日発売)
東京世界選手権シーズン開幕特集
Re:Tokyo25―東京世界陸上への道―
北口榛花(JAL)
三浦龍司(SUBARU)
赤松諒一×真野友博
豊田 兼(トヨタ自動車)×高野大樹コーチ
Revenge
泉谷駿介(住友電工)