HOME 学生長距離

2021.12.26

箱根駅伝Stories/トラックで世界を沸かせた順大・三浦龍司「チームを押し上げる走りができれば」
箱根駅伝Stories/トラックで世界を沸かせた順大・三浦龍司「チームを押し上げる走りができれば」

箱根駅伝Stories

三浦龍司
Miura Ryuji(順大2年)

広告の下にコンテンツが続きます

12月29日の区間エントリーを直前に控え、箱根駅伝ムードが徐々に高まっている。「箱根駅伝Stories」と題し、12月下旬から本番まで計19本の特集記事を掲載していく。

第13回目は、東京五輪3000m障害で7位入賞を果たし、世界にその名をアピールした順大の三浦龍司(2年)をピックアップ。

全日本大学駅伝でも2区区間賞と、ロードでもその実力を発揮した逸材は2度目の箱根路でどんな走りを見せるのか。

広告の下にコンテンツが続きます

全日本2区では9人抜きの快走

11月の全日本大学駅伝。順大の三浦龍司(2年)が駅伝で新境地を見せた。

出番は2区(11.1km)。学生三大駅伝では自身初の中間区間に配置された三浦がどんな走りを見せるかが注目された。

「(長門俊介駅伝)監督からは2つの選択肢を用意されて、去年と同じ1区ならラスト勝負に徹するというよりはどこかでレースを引っ張る展開に持ち込むこと。そして2区なら後続に10~20秒くらい差をつけてトップでタスキをつなぐこと。個人的には1区の方が不安はありませんでしたが、駅伝での引き出しを増やすには新しい経験が必要かなと思って2区を選びました」

レースは1区の平駿介(3年)から、トップと20秒差の10位で受け取ったタスキを先頭に押し上げる走りを9人抜きの快走見せた。なかでもラスト1kmだけで後続を10秒引き離すロングスパートは健在。伊藤達彦(東京国際大/現・HONDA)の区間記録には13秒届かなかったが、区間2位の井川龍人(早大2年)に18秒差をつけ、同大会では2年連続の区間賞を獲得した。

三浦の走りで勢いに乗ったチームは6区で主将の牧瀬圭斗(4年)が一時先頭に立ち、さらにはアンカーの四釜峻祐(3年)が区間2位の好走を見せるなど、最後まで上位争いを繰り広げて、伊勢路では優勝した2001年以来、20年ぶりのトップ3入りを果たした。

全日本大学駅伝では2区で区間賞を獲得してチームを首位に押し上げた

だが、三浦自身がつけた採点は「70点」。一定の手ごたえを感じる一方、「できればもう少し差をつけたかった。(長門監督やチームメイトは)60点もくれないかなと」と反省も口にする。

ただ長門監督は、「本人の言う通り、できればもう少しという気持ちもありますが、駅伝はサンショー(3000m障害の略称)と違って、1つひとつ階段を上がっているところ。ロードや駅伝の苦手意識というものを払拭する走りという点では十分役割は果たしてくれたと思います」と流れを作ったエースを労う。

なにより昨年はスターター専門だった三浦を別区間にも起用できるというバリエーションは、チームにとって大きなプラス要素と感じている。

「区間賞でチームを押し上げる走りをしたい」

本職の3000m障害では、今季5度のレースで日本記録を3回更新。その3度目が7位入賞を果たした東京五輪の予選でマークした8分09秒92で、三浦自身も「正直、こんなに早く8分ひとケタが出るとは思わなかった」と振り返るほどだ。

6月の日本選手権で自身3度目の日本新記録となる8分15秒89をマーク。東京五輪の予選で8分09秒92まで縮めた

さらに1500m3分46秒29、3000m7分48秒07、5000m13分26秒78とフラット種目でも自己新を連発。10月の順大記録会では自身初の10000mで28分32秒28をマークしたが、「27分40秒くらいは軽く出ると思う」(長門監督)というほど、持ち味のスピードにも磨きがかかっている。

箱根駅伝が迫る今月、三浦は東京五輪での活躍などが評価され、日本学連栄章、日本陸連優秀選手賞を受賞し、2021年度第2期強化競技者にも選出された。本人も今後の目標を2024年のパリ五輪での金メダルに定め、来年の米国・オレゴンでの世界選手権など、今後も「トラックメイン」で世界と戦うために取り組む気持ちに変わりはない。

だが、順大入学後に「唯一、手ごたえがなかった」と感じている前回の箱根駅伝での雪辱にも意欲を燃やす。

前回は11月下旬に脚を負傷したことで、「もう少しスタミナを作りたかったけど、時間が足りなかった。20kmを超えるレースを戦う準備ができていなかった」が、今季は全日本以降も順調に練習を消化しており、不安はない。むしろ、「全日本も仕上げ切ったわけではないので、ここから上げていけると思っています」と自信をのぞかせる。

2度目の箱根では持ち味を生かせる1区か3区起用が有力だ。

「どこを走っても区間賞を取ること。内容的にも前回よりも成長した姿を見せて、チームを押し上げる走りができればと考えています」

自らの走りでチームを上昇気流へ乗せていく。それが15年ぶりの総合優勝へ近づく道だと信じている。

◎みうら・りゅうじ/2002年2月11日生まれ。168cm、56kg。島根県出身。浜田東中(島根)→洛南高(京都)→順大。5000m13分26秒78、10000m28分32秒28。3000mSC 8分09秒92

文/田中 葵

箱根駅伝Stories 三浦龍司 Miura Ryuji(順大2年) 12月29日の区間エントリーを直前に控え、箱根駅伝ムードが徐々に高まっている。「箱根駅伝Stories」と題し、12月下旬から本番まで計19本の特集記事を掲載していく。 第13回目は、東京五輪3000m障害で7位入賞を果たし、世界にその名をアピールした順大の三浦龍司(2年)をピックアップ。 全日本大学駅伝でも2区区間賞と、ロードでもその実力を発揮した逸材は2度目の箱根路でどんな走りを見せるのか。

全日本2区では9人抜きの快走

11月の全日本大学駅伝。順大の三浦龍司(2年)が駅伝で新境地を見せた。 出番は2区(11.1km)。学生三大駅伝では自身初の中間区間に配置された三浦がどんな走りを見せるかが注目された。 「(長門俊介駅伝)監督からは2つの選択肢を用意されて、去年と同じ1区ならラスト勝負に徹するというよりはどこかでレースを引っ張る展開に持ち込むこと。そして2区なら後続に10~20秒くらい差をつけてトップでタスキをつなぐこと。個人的には1区の方が不安はありませんでしたが、駅伝での引き出しを増やすには新しい経験が必要かなと思って2区を選びました」 レースは1区の平駿介(3年)から、トップと20秒差の10位で受け取ったタスキを先頭に押し上げる走りを9人抜きの快走見せた。なかでもラスト1kmだけで後続を10秒引き離すロングスパートは健在。伊藤達彦(東京国際大/現・HONDA)の区間記録には13秒届かなかったが、区間2位の井川龍人(早大2年)に18秒差をつけ、同大会では2年連続の区間賞を獲得した。 三浦の走りで勢いに乗ったチームは6区で主将の牧瀬圭斗(4年)が一時先頭に立ち、さらにはアンカーの四釜峻祐(3年)が区間2位の好走を見せるなど、最後まで上位争いを繰り広げて、伊勢路では優勝した2001年以来、20年ぶりのトップ3入りを果たした。 全日本大学駅伝では2区で区間賞を獲得してチームを首位に押し上げた だが、三浦自身がつけた採点は「70点」。一定の手ごたえを感じる一方、「できればもう少し差をつけたかった。(長門監督やチームメイトは)60点もくれないかなと」と反省も口にする。 ただ長門監督は、「本人の言う通り、できればもう少しという気持ちもありますが、駅伝はサンショー(3000m障害の略称)と違って、1つひとつ階段を上がっているところ。ロードや駅伝の苦手意識というものを払拭する走りという点では十分役割は果たしてくれたと思います」と流れを作ったエースを労う。 なにより昨年はスターター専門だった三浦を別区間にも起用できるというバリエーションは、チームにとって大きなプラス要素と感じている。

「区間賞でチームを押し上げる走りをしたい」

本職の3000m障害では、今季5度のレースで日本記録を3回更新。その3度目が7位入賞を果たした東京五輪の予選でマークした8分09秒92で、三浦自身も「正直、こんなに早く8分ひとケタが出るとは思わなかった」と振り返るほどだ。 6月の日本選手権で自身3度目の日本新記録となる8分15秒89をマーク。東京五輪の予選で8分09秒92まで縮めた さらに1500m3分46秒29、3000m7分48秒07、5000m13分26秒78とフラット種目でも自己新を連発。10月の順大記録会では自身初の10000mで28分32秒28をマークしたが、「27分40秒くらいは軽く出ると思う」(長門監督)というほど、持ち味のスピードにも磨きがかかっている。 箱根駅伝が迫る今月、三浦は東京五輪での活躍などが評価され、日本学連栄章、日本陸連優秀選手賞を受賞し、2021年度第2期強化競技者にも選出された。本人も今後の目標を2024年のパリ五輪での金メダルに定め、来年の米国・オレゴンでの世界選手権など、今後も「トラックメイン」で世界と戦うために取り組む気持ちに変わりはない。 だが、順大入学後に「唯一、手ごたえがなかった」と感じている前回の箱根駅伝での雪辱にも意欲を燃やす。 前回は11月下旬に脚を負傷したことで、「もう少しスタミナを作りたかったけど、時間が足りなかった。20kmを超えるレースを戦う準備ができていなかった」が、今季は全日本以降も順調に練習を消化しており、不安はない。むしろ、「全日本も仕上げ切ったわけではないので、ここから上げていけると思っています」と自信をのぞかせる。 2度目の箱根では持ち味を生かせる1区か3区起用が有力だ。 「どこを走っても区間賞を取ること。内容的にも前回よりも成長した姿を見せて、チームを押し上げる走りができればと考えています」 自らの走りでチームを上昇気流へ乗せていく。それが15年ぶりの総合優勝へ近づく道だと信じている。 ◎みうら・りゅうじ/2002年2月11日生まれ。168cm、56kg。島根県出身。浜田東中(島根)→洛南高(京都)→順大。5000m13分26秒78、10000m28分32秒28。3000mSC 8分09秒92 文/田中 葵

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.09.07

円盤投五輪連覇のオールマン 悲願の初Vへ「大会記録は可能」/東京世界陸上

女子円盤投で五輪2連覇を果たしているヴァレリー・オールマン(米国)が9月7日、都内で練習を公開し、本誌の単独取材に応じた。 五輪連覇の偉業を果たし、ダイヤモンドリーグでも圧倒的な強さを見せているオールマン。だが、意外にも […]

NEWS 400m参戦のマクローリン「違うアプローチで自分に挑戦したかった」ライバル多く激戦も「集中」/東京世界陸上

2025.09.07

400m参戦のマクローリン「違うアプローチで自分に挑戦したかった」ライバル多く激戦も「集中」/東京世界陸上

女子400mハードル世界記録保持者で、東京世界選手権では400mに出場するシドニー・マクローリン・レヴロン(米国)が9月7日、都内で練習を公開しメディアの取材に応じた。 この日が来日して最初のトレーニングだったというマク […]

NEWS 【男子1500m】近藤潤(BEAT AC/中3)3分55秒44=中学歴代10位タイ

2025.09.07

【男子1500m】近藤潤(BEAT AC/中3)3分55秒44=中学歴代10位タイ

第3回亀岡陸協ナイター記録会が9月6日、京都府亀岡市の亀岡運動公園陸上競技場で行われ、男子1500mでは近藤潤(BEAT AC/中3)が中学歴代10位タイの3分55秒44をマークした。 これまでの自己ベストは、8月上旬の […]

NEWS 女子ハンマー投・河戸咲希(名古屋大谷高2)が55m56 自身の持つ高2歴代3位を更新

2025.09.07

女子ハンマー投・河戸咲希(名古屋大谷高2)が55m56 自身の持つ高2歴代3位を更新

9月6日に行われた愛知県高校新人対校大会名古屋南北支部予選南女子ハンマー投で、河戸咲希(名古屋大谷2)が55m56を放った。自身が7月のインターハイで出した高2歴代3位(54m56)を更新した。 河戸は1投目に53m67 […]

NEWS 七種競技アナ・ホール「表彰台の頂点に立ちたい」世界記録は「最も難しいものの一つ」/東京世界陸上

2025.09.06

七種競技アナ・ホール「表彰台の頂点に立ちたい」世界記録は「最も難しいものの一つ」/東京世界陸上

女子七種競技で世界歴代2位タイの7032点を持つアナ・ホール(米国)が9月6日、都内で練習を公開し、本誌の単独取材に応じた。 早くから期待を集めてきたが、21年の東京五輪トライアルだった全米選手権で足首を痛めて途中棄権。 […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年9月号 (8月12日発売)

2025年9月号 (8月12日発売)

衝撃の5日間
広島インターハイ特集!
桐生祥秀 9秒99

page top