HOME バックナンバー
【誌面転載】全日本実業団対抗選手権 山縣亮太
【誌面転載】全日本実業団対抗選手権 山縣亮太

山縣 秋も圧巻のスプリント サードベスト10秒01で3連覇!!

100mのレースプランに自信

 一昨年は10秒03、昨年は10秒00と2年続けてこの大会で自己ベストをマークし、男子100mで優勝を飾っている山縣亮太(セイコー)。大阪・長居の競技場と相性がいいのか、あるいは大会の雰囲気や時期がマッチするのか。今年もヒーロー役を大物新人の桐生祥秀(日本生命)に譲らず、自己3番目の10秒01(±0)で3連覇のフィニッシュに飛び込んだ。
「また10秒00じゃ悔しいので……」と、ゴールで気持ちだけ身体を前傾させた。8月末のジャカルタ・アジア大会が、自己タイの10秒00(+0.8)。2位と同タイムの3位だった。慶大の後輩に当たる小池祐貴(ANA)は、男子200mで2位と同タイムながら金メダルをもぎとった。倒れ込みながらフィニッシュする小池を見て、「あ、俺はこの差で負けたんだな」と思った。だから今回は「ちょっとだけやってみたんです」と、山縣にしては珍しく前傾した場面を笑顔で説明した。「100mのフィニッシュは難しいんですけどね」と言いながら……。
 アジア大会は日本選手団全体の主将を務めたこともあり、帰国後は「任を解かれた安堵」からか心身共に疲労感が濃かった。大会後の完全休養は「いつも2日なんですけど、今回は3日入れました」と山縣。その後、今大会に向けては「負荷の高い練習を入れておこう」と、Maxに近いタイム設定で何回か。「1週間前の感覚はアジア大会前よりずっと良かった」と話し、ライバル不在だった昨年と違って今年は桐生がいたが、「100mのレースプランに対しては自信を持っていた」と明かす。
 1日のうちに予選、準決勝、決勝と3本のレースで、「チャンスは2本」と思っていた。昨年の秋、桐生が9秒98を出して先んじた記録を狙うのに、朝一番に行われる予選は「記録を出すモチベーションではない」。最終8組だった山縣は、前の組でフライングによる失格者が出て進行に手間取り、数十分待たされる不運もあって10秒34(-0.4)だった。
 予選を2組で走った桐生より準決勝までの時間がだいぶ短くなったが、今季の山縣はラウンドの進め方が実にうまい。1本ごとに修正を重ね、準決勝では10秒14(-0.4)と記録を上げてきた。「スタートでもたついた感じ」はあったものの、終盤はスーッと流した。「これならチャンスがないわけじゃない」。山縣は2時間20分後の決勝に向け、対桐生というより記録へのイメージをふくらませた。「桐生君を意識し過ぎない」という山縣の心の持ちようが反映されたのかもしれない。

今季は日本人ランナーに負けなし

 メインスタンドがほぼ埋まり、今大会一番の盛り上がりを見せた男子100m決勝。風はほとんどない。5レーンに準決勝が10秒21(+1.1)の桐生、7レーンに山縣。今大会、直線で行われる種目はスタートのやり直しが何度も見られ、この時も1度。「よくあること」と山縣はやり過ごしたが、いったん集中力が途切れるのは確かだ。
 2度目の号砲で、2人の間のレーンに入った中大卒のルーキー・川上拓也(大阪ガス)が、山縣に引けをとらないような良いスタートを切った。桐生は、1度目より遅れる。
 早くも先頭に立った山縣は「出し切る」ことをイメージして、「最初からスピードを出す」ようにしっかり地面を捕らえていった。今は「中盤から抜け出すところに地力を感じる」と自分で話すように、トップスピードに入ると他をまったく寄せ付けずに圧勝。無風の中での10秒01は「地力が一番わかる風ではないでしょうか」と、力がついたことを実感できる結果となった。桐生は持ち前の中盤から伸びず、川上をかわして2位に上がるのがやっとだった。
 山縣のレース内容の自己採点は「80~90点」。「スタートでちょっと浮いた」のが、減点ポイントだという。それでも抜群の安定感を示し、今季は日本人選手に負けていない。山縣はその安定感について、「どの試合も全力を尽くし、目の前の試合にきちんと向き合うこと」と話した。
 ここまで来たら、いつ9秒台が出てもおかしくない状況。「記録は、神様が〝いいよ〟と言うまで待ちます」と山縣は笑うが、もはや9秒台というより、本人の意思は「9秒98を超えたい」という域に達している。
 今季最終戦となる福井国体の成年100mが、10月6日。ここ2年はこの大会で素晴らしいレースをしながら、国体で結果を残せていない。昨年は直前に故障して、欠場している。秋冷の季節でケガには細心の注意を払うとして、インタビューの最後に「次戦は9.98スタジアム(福井陸上競技場の愛称)ですが?」と問われた山縣は、照れながら「桐生君が記録を出したスタジアムで9秒97を目指します」と記者が一番欲しい言葉を残した。

広告の下にコンテンツが続きます

※2018年10月12日発売の『月刊陸上競技』11月号には山縣選手の今季最終戦となった福井国体の記事も掲載しています

山縣 秋も圧巻のスプリント サードベスト10秒01で3連覇!!

100mのレースプランに自信

 一昨年は10秒03、昨年は10秒00と2年続けてこの大会で自己ベストをマークし、男子100mで優勝を飾っている山縣亮太(セイコー)。大阪・長居の競技場と相性がいいのか、あるいは大会の雰囲気や時期がマッチするのか。今年もヒーロー役を大物新人の桐生祥秀(日本生命)に譲らず、自己3番目の10秒01(±0)で3連覇のフィニッシュに飛び込んだ。 「また10秒00じゃ悔しいので……」と、ゴールで気持ちだけ身体を前傾させた。8月末のジャカルタ・アジア大会が、自己タイの10秒00(+0.8)。2位と同タイムの3位だった。慶大の後輩に当たる小池祐貴(ANA)は、男子200mで2位と同タイムながら金メダルをもぎとった。倒れ込みながらフィニッシュする小池を見て、「あ、俺はこの差で負けたんだな」と思った。だから今回は「ちょっとだけやってみたんです」と、山縣にしては珍しく前傾した場面を笑顔で説明した。「100mのフィニッシュは難しいんですけどね」と言いながら……。  アジア大会は日本選手団全体の主将を務めたこともあり、帰国後は「任を解かれた安堵」からか心身共に疲労感が濃かった。大会後の完全休養は「いつも2日なんですけど、今回は3日入れました」と山縣。その後、今大会に向けては「負荷の高い練習を入れておこう」と、Maxに近いタイム設定で何回か。「1週間前の感覚はアジア大会前よりずっと良かった」と話し、ライバル不在だった昨年と違って今年は桐生がいたが、「100mのレースプランに対しては自信を持っていた」と明かす。  1日のうちに予選、準決勝、決勝と3本のレースで、「チャンスは2本」と思っていた。昨年の秋、桐生が9秒98を出して先んじた記録を狙うのに、朝一番に行われる予選は「記録を出すモチベーションではない」。最終8組だった山縣は、前の組でフライングによる失格者が出て進行に手間取り、数十分待たされる不運もあって10秒34(-0.4)だった。  予選を2組で走った桐生より準決勝までの時間がだいぶ短くなったが、今季の山縣はラウンドの進め方が実にうまい。1本ごとに修正を重ね、準決勝では10秒14(-0.4)と記録を上げてきた。「スタートでもたついた感じ」はあったものの、終盤はスーッと流した。「これならチャンスがないわけじゃない」。山縣は2時間20分後の決勝に向け、対桐生というより記録へのイメージをふくらませた。「桐生君を意識し過ぎない」という山縣の心の持ちようが反映されたのかもしれない。

今季は日本人ランナーに負けなし

 メインスタンドがほぼ埋まり、今大会一番の盛り上がりを見せた男子100m決勝。風はほとんどない。5レーンに準決勝が10秒21(+1.1)の桐生、7レーンに山縣。今大会、直線で行われる種目はスタートのやり直しが何度も見られ、この時も1度。「よくあること」と山縣はやり過ごしたが、いったん集中力が途切れるのは確かだ。  2度目の号砲で、2人の間のレーンに入った中大卒のルーキー・川上拓也(大阪ガス)が、山縣に引けをとらないような良いスタートを切った。桐生は、1度目より遅れる。  早くも先頭に立った山縣は「出し切る」ことをイメージして、「最初からスピードを出す」ようにしっかり地面を捕らえていった。今は「中盤から抜け出すところに地力を感じる」と自分で話すように、トップスピードに入ると他をまったく寄せ付けずに圧勝。無風の中での10秒01は「地力が一番わかる風ではないでしょうか」と、力がついたことを実感できる結果となった。桐生は持ち前の中盤から伸びず、川上をかわして2位に上がるのがやっとだった。  山縣のレース内容の自己採点は「80~90点」。「スタートでちょっと浮いた」のが、減点ポイントだという。それでも抜群の安定感を示し、今季は日本人選手に負けていない。山縣はその安定感について、「どの試合も全力を尽くし、目の前の試合にきちんと向き合うこと」と話した。  ここまで来たら、いつ9秒台が出てもおかしくない状況。「記録は、神様が〝いいよ〟と言うまで待ちます」と山縣は笑うが、もはや9秒台というより、本人の意思は「9秒98を超えたい」という域に達している。  今季最終戦となる福井国体の成年100mが、10月6日。ここ2年はこの大会で素晴らしいレースをしながら、国体で結果を残せていない。昨年は直前に故障して、欠場している。秋冷の季節でケガには細心の注意を払うとして、インタビューの最後に「次戦は9.98スタジアム(福井陸上競技場の愛称)ですが?」と問われた山縣は、照れながら「桐生君が記録を出したスタジアムで9秒97を目指します」と記者が一番欲しい言葉を残した。 ※2018年10月12日発売の『月刊陸上競技』11月号には山縣選手の今季最終戦となった福井国体の記事も掲載しています

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.12.06

マラソン・川内優輝が第二子誕生を報告!「ソワソワしていました」15回目防府読売前日に吉報

男子マラソンプロランナーの川内優輝(あいおいニッセイ同和損保)が12月6日に自身のSNSを更新し、第二子の誕生を報告した。 川内は17時前に投稿し「先ほど次男の夢翔が生まれました」と名前も明かした。元実業団ランナーでもあ […]

NEWS 高3・吉田彩心が1万m32分38秒74の高校歴代2位 11月下旬の5000mに続き、2週連続の快走/エディオンDC

2025.12.06

高3・吉田彩心が1万m32分38秒74の高校歴代2位 11月下旬の5000mに続き、2週連続の快走/エディオンDC

◇エディオンディスタンスチャレンジin大阪2025(12月6日/ヤンマースタジアム長居) 長距離特化の記録会エディオンディスタンスチャレンジが行われ、女子10000m(C組)はカリバ・カロライン(日本郵政グループ)が30 […]

NEWS 田中希実3年8ヵ月ぶり10000m激走!日本歴代7位の30分54秒40に「驚いています」/エディオンDC

2025.12.06

田中希実3年8ヵ月ぶり10000m激走!日本歴代7位の30分54秒40に「驚いています」/エディオンDC

◇エディオンディスタンスチャレンジin大阪2025(12月6日/ヤンマースタジアム長居) 長距離特化の記録会エディオンディスタンスチャレンジが行われ、女子10000m(C組)はカリバ・カロライン(日本郵政グループ)が30 […]

NEWS 第一工科大が最終区での逆転で3年ぶり栄冠! 初V目指した鹿児島大は13秒差で涙/島原学生駅伝

2025.12.06

第一工科大が最終区での逆転で3年ぶり栄冠! 初V目指した鹿児島大は13秒差で涙/島原学生駅伝

12月6日、第43回九州学生駅伝が長崎県島原市の市営競技場をスタートし、島原文化会館にフィニッシュする7区間57.75kmのコースで行われ、第一工科大が3時間3分10秒で3年ぶり21回目の優勝を飾った。 第一工科大は1区 […]

NEWS 全日本入賞の福岡大が全区間トップで圧勝 九大5年連続2位 佐賀大は過去最高3位/九州学生女子駅伝

2025.12.06

全日本入賞の福岡大が全区間トップで圧勝 九大5年連続2位 佐賀大は過去最高3位/九州学生女子駅伝

12月6日、第25回九州学生女子駅伝(5区間22.8km)が長崎県島原市で行われ、福岡大が1時間17分31秒で14回目の優勝を果たした。 10月の全日本大学女子駅伝で8位に入賞している福岡大は1区から他校を圧倒。前回に続 […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年12月号 (11月14日発売)

2025年12月号 (11月14日発売)

EKIDEN REVIEW
全日本大学駅伝
箱根駅伝予選会
高校駅伝&実業団駅伝予選

Follow-up Tokyo 2025

page top