HOME 学生長距離

2023.02.28

【学生長距離Close-upインタビュー】早大の次世代エース伊藤大志「山へのこだわりはほとんどない」今年はトラックで勝負
【学生長距離Close-upインタビュー】早大の次世代エース伊藤大志「山へのこだわりはほとんどない」今年はトラックで勝負

伊藤大志(早大)

5000mでのユニバ出場がターゲット

高校2年時(2019年)の国体少年A5000mでは3位と好成績を挙げた伊藤

これまで主要大会の個人タイトルを取った経験はないが、中学時代から全中3000m5位、ジュニア五輪A3000m2位、高校2年時の国体少年A3位など、常に世代の最前線で戦ってきた。だからこそ、駅伝だけの選手で終わるつもりはない。

広告の下にコンテンツが続きます

新年度はエース候補の1人として、個人の結果にもこだわりながら、さらなるレベルアップを誓う。今後は3月の日本学生ハーフマラソン選手権には出場せず、トラックの5000mで夏のワールドユニバーシティゲームズ(中国・成都)出場がターゲットだ。

「花田さんが、“攻める練習が全然できていなかった”とおっしゃっているように、今季の結果は最低限の走りに過ぎません。他のメンバーにも言えることですが、練習の内容からいっても、伸びしろは十二分にあると思います」

着実にステップを重ねてきた伊藤。大学3年目は、これまで以上の活躍を見せるつもりでいる。

◎いとう・たいし/2003年2月2日生まれ。長野県駒ケ根市出身。赤穂中→佐久長聖高→早大。自己記録5000m13分35秒70、10000m29分42秒24、ハーフマラソン1時間1分50秒。同期の石塚陽士とともに入学時からチームの主力としてフル回転。箱根駅伝では2年連続で山上りの5区に出頭して区間11位、区間6位。3年生となる今年はトラックでユニバーシティゲームズ出場を目標に掲げる。

広告の下にコンテンツが続きます

文/和田悟志

学生長距離Close-upインタビュー 伊藤 大志 Ito Daishi 早稲田大学2年 「月陸Online」限定で大学長距離選手のインタビューをお届けする「学生長距離Close-upインタビュー」。26回目は、早大の“山上り”を2年続けて任された伊藤大志(2年)をピックアップする。 長野・佐久長聖高時代は、5000mで当時・高校歴代2位の13分36秒57をマークしたほどのスピードランナー。早大に進学してからは、長らくその自己記録を更新できずにいたが、昨年5月に1年半ぶり自己新となる13分35秒70をマークして殻を破った。駅伝でエース区間での好走が期待される存在だが、自身は「トラックで勝負したい」という気持ちを強く抱いている。

箱根駅伝後も好調をキープ

屈辱のシード落ちから1年、早大は今年の箱根駅伝で総合6位と巻き返した。そして、箱根後も好調をキープし、選手たちは各大会で好走を見せている。2年生の伊藤大志もその1人だ。 1月22日の全国都道府県対抗男子駅伝には長野県チームの一員として出場し、3区区間8位と好走して優勝に貢献。さらに、2月5日の香川丸亀国際ハーフマラソンでは、大迫傑(Nike)の持つ早大記録にあと3秒と迫る1時間1分50秒の自己ベストをマークした(17位)。 「都道府県駅伝からうまく疲労が抜けなくて、花田さん(勝彦、駅伝監督)からは、100%出し切らなくてもいい、数%力を残すぐらいでいいから、と言われていました。前半で力を使い過ぎて、残り5、6kmでかなりペースが落ちてしまい、若林(宏樹、青学大)や山本さん(唯翔、城西大)に抜かれるなど他校のエースとの差を感じました」 こう反省を口にするように、15km以降に大きく順位を落としたのは事実。それでも、「1時間3分を切るぐらいから、良ければ1時間1分台」と幅広く目標を掲げていたなか、見事に上限のほうの目標をクリアした。 また、スピードに不安を残したなか、前半から積極的にハイペースを刻んだのも、伊藤にとっては大きなチャレンジだった。 「折り返しまでは、トヨタ自動車の大石(港与)さん、西山(和弥)さんがかなり良いペースで走っていたので、うまく集団走をしながら、引っ張ってもらったり、引っ張ったりして、うまくリズムを作っていけたかなと思います」 そのペースを最後までキープできなかったのは次回への課題だが、それ以上に収穫も多かった。 次ページ 箱根駅伝は2年連続で5区に出走

箱根駅伝は2年連続で5区に出走

今年の箱根駅伝は2年連続となる5区に登場。花田監督に言い渡された設定タイムを11秒クリアし、1時間11分49秒で走り切った。 「71分台に乗せられたのはかなり自信になりました。去年も自分の中ではベストの走りをして73分24秒だったので、そこから1分半縮めることができたのは、この1年間で成長できたということ。それが目に見えてわかったのは良かったです」 [caption id="attachment_94493" align="alignnone" width="800"] 2023年箱根駅伝では5区区間6位だった伊藤[/caption] 早大は5区で区間ふたケタ順位が4大会連続で続いていただけに、伊藤が区間6位でしのいだことは、チームにとっても明るい材料になった。 ただし、「満足のいく練習をして、満足のいく走りをしても区間6位だったことについては、走力の足りなさも感じました」とさらに上を向く。 ともあれ、6区で区間3位と好走した北村光(3年)と合わせて、箱根の山経験者が2人とも残るのは、早大にとって、次回の箱根駅伝を見据えれば大きなアドバンテージといえる。 だが、もともと伊藤は5000mで高校歴代2位(当時)の13分36秒57というタイムを引っ提げて、将来のエース候補として入学した選手だ。他に5区を務められる選手が台頭し、伊藤をエース区間に回したほうが、大きなアドバンテージが得られる可能性もある。 実際に、昨年の全日本大学駅伝、そして、箱根後の都道府県対抗駅伝、丸亀ハーフと、平地でも走れることは実証済み。「山へのこだわりはほとんどありません。僕が平地を走れれば、(チームは)一番強いと思います。もちろん花田さんから(5区に)行ってくれと言われたら、僕は確実に仕事をするだけですが……」と本人も平地区間に意欲を示している。 「一番は僕以外にも5区を走れる選手を作るのが大事。“作る”というか、“発掘する”という表現が正しいのかもしれません。経験者の僕にもできることは確実にあると思うので、花田さんと相談しながら着手していけたらと思います」 昨夏は早い段階から箱根5区を意識してトレーニングを積んでいたが、新年度は平地の主要区間を視野に入れながら取り組んでいくことになりそうだ。 次ページ 5000mでのユニバ出場がターゲット

5000mでのユニバ出場がターゲット

[caption id="attachment_94495" align="alignnone" width="800"] 高校2年時(2019年)の国体少年A5000mでは3位と好成績を挙げた伊藤[/caption] これまで主要大会の個人タイトルを取った経験はないが、中学時代から全中3000m5位、ジュニア五輪A3000m2位、高校2年時の国体少年A3位など、常に世代の最前線で戦ってきた。だからこそ、駅伝だけの選手で終わるつもりはない。 新年度はエース候補の1人として、個人の結果にもこだわりながら、さらなるレベルアップを誓う。今後は3月の日本学生ハーフマラソン選手権には出場せず、トラックの5000mで夏のワールドユニバーシティゲームズ(中国・成都)出場がターゲットだ。 「花田さんが、“攻める練習が全然できていなかった”とおっしゃっているように、今季の結果は最低限の走りに過ぎません。他のメンバーにも言えることですが、練習の内容からいっても、伸びしろは十二分にあると思います」 着実にステップを重ねてきた伊藤。大学3年目は、これまで以上の活躍を見せるつもりでいる。 ◎いとう・たいし/2003年2月2日生まれ。長野県駒ケ根市出身。赤穂中→佐久長聖高→早大。自己記録5000m13分35秒70、10000m29分42秒24、ハーフマラソン1時間1分50秒。同期の石塚陽士とともに入学時からチームの主力としてフル回転。箱根駅伝では2年連続で山上りの5区に出頭して区間11位、区間6位。3年生となる今年はトラックでユニバーシティゲームズ出場を目標に掲げる。 文/和田悟志

次ページ:

ページ: 1 2 3

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.06.30

【高校生FOCUS】男子棒高跳・井上直哉(阿南光高)「全国3冠取りたい」と意気込むボウルターは柔道黒帯

井上直哉選手のプロフィールをチェック! ◎いのうえ・なおや/2007年6月21日生まれ。徳島県阿南市出身。徳島・羽ノ浦中→阿南光高。中学から陸上を始め、3年時の全中・男子棒高跳で5位。秋のU16大会では4m30をクリアし […]

NEWS 【学生長距離Close-upインタビュー】急成長を続ける大東大・大濱逞真 「自信を持ってエースと言えるように」

2025.06.30

【学生長距離Close-upインタビュー】急成長を続ける大東大・大濱逞真 「自信を持ってエースと言えるように」

真名子監督のスカウトきっかけに「挑戦」 大濱の才能は高校時代から際立っていた。宮城・仙台育英高3年時に、インターハイで5000m日本人2位。10000mでは現在も高校歴代6位となる28分33秒58をマークした。「高1では […]

NEWS 日本陸連・有森裕子新会長が小池百合子都知事訪問 東京世界陸上の成功誓う「素晴らしさと感動ふんだんに味わえるように」

2025.06.30

日本陸連・有森裕子新会長が小池百合子都知事訪問 東京世界陸上の成功誓う「素晴らしさと感動ふんだんに味わえるように」

日本陸連の新会長に就任した有森裕子会長と、同前会長で東京2025世界陸上財団の尾縣貢会長が6月30日に東京都庁を訪問し、小池百合子都知事と面会した。 冒頭で小池都知事は、有森氏が女性初の会長に就任したことに際し祝福し、「 […]

NEWS 64年東京五輪5000m銅のデリンジャー氏が死去 91歳 米国代表やオレゴン大コーチも務める

2025.06.30

64年東京五輪5000m銅のデリンジャー氏が死去 91歳 米国代表やオレゴン大コーチも務める

6月27日、米国の元長距離選手で、後にコーチとしても活躍したビル・デリンジャー氏が逝去した。91歳だった。 デリンジャー氏は5000mで3大会連続してオリンピックに出場(1956年メルボルン、1960年ローマ、1964年 […]

NEWS 100mトンプソンが世界歴代6位の9秒75!! シェリー・アンも最後の国内選手権で3位/ジャマイカ選手権

2025.06.30

100mトンプソンが世界歴代6位の9秒75!! シェリー・アンも最後の国内選手権で3位/ジャマイカ選手権

9秒75の壁!?男子100mの世界歴代10傑をチェック! 9.58 0.9 U.ボルト(ジャマイカ) 2009年 9.69 2.0 T.ゲイ(米国)     2009年 9.69 -0.1 Y.ブレイク(ジャマイカ)20 […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年7月号 (6月13日発売)

2025年7月号 (6月13日発売)

詳報!アジア選手権
日本インカレ
IH都府県大会

page top