2026.01.27
第102回箱根駅伝で力走した選手たちがいる。優勝を手にしたり、区間賞に輝いたりした選手以外にもそれぞれの思いを胸に、タスキをつないだ。最終学年として迎えた選手たちの“最後”の奮闘を紹介する。
学年リーダーに自ら立候補
誰もやりたがらなかった学年リーダーに、1年生の春、城西大・山中達貴(現・4年)は手を挙げた。「俺がやる」。兵庫・西脇工高では全国高校駅伝2区(3km)区間賞(7分59秒、日本人歴代2位タイ)を獲得したスピードの持ち主は、城西大に入学した瞬間から「強い学年」を作る覚悟を決めていた。
後に同期15人のうち10人が箱根エントリーを経験する最強世代。ヴィクター・キムタイ、斎藤将也、桜井優我らを束ねる存在として、3年で副主将、そして最終学年で主将となった。穏やかで、誰に対しても分け隔てなく接する性格は、チームメイトから慕われた。
城西大の育成方針は、他大学とは一線を画していた。中距離と長距離の垣根をなくし、互いの強化ノウハウを取り入れ、相乗効果を狙う。中距離グループでスタートした山中は、1年時は1500mを中心に記録会に出場。スピードを生かしながら、徐々に距離を伸ばしていく。
2年では5000m14分09秒24、10000m29分37秒65、ハーフで1時間3分36秒と着実にステップアップ。長い距離への苦手意識も徐々に払拭させてきた。1500mでも3分46秒02とスピードにも磨きがかかり、3年で5000m13分50秒80、10000m28分47秒03、ハーフ1時間2分52秒と、1500mからハーフまで対応できる選手へと成長した。
しかし、この過程は順風満帆ではなかった。高校時代は中距離主体に取り組んできた身体に、箱根を目指したトレーニングは重くのしかかった。故障も多く、持病の喘息にも苦しんだ。3年時はあと一歩で箱根メンバー入りを逃している。
迎えた最終学年。主将になった山中は、『結〜まだ見ぬ景色の開拓〜』をスローガンに掲げ、箱根駅伝で総合3位以上を目標に据えた。4月の金栗記念5000mでセカンドベストとなる13分51秒58をマークしたものの、その後に腰痛が襲う。5月の関東インカレ1部10000mでは、出場者全員から周回遅れとなる最下位(32分04秒35)に沈んだ。
夏合宿は好調さを取り戻していたものの、9月半ばの三次合宿で再び故障。「点数をつけるなら限りなく0点に近い。今年1年、一番苦労したシーズンでした」。シード権を逃した全日本大学駅伝後に涙する下級生たちを見て、最上級生として何度も箱根に向けた話し合いを重ねる。
「走れないなりにチームをまとめないといけない」。そんな姿勢は、故障時でもブレなかった。エースの斎藤は「個性が強めな学年ですが、自分たちで考え、同期のおかげでレベルを高めていけました」。今季2度の疲労骨折に見舞われながら努力を怠らなかった桜井は「4年生が100%の力を出せれば無限大」と信じていた。
「全員がリーダーをやれるぐらい自律している学年を目指したくて」。それは山中が1年生の頃から理想としていたチーム像だった。櫛部静二監督も「主将としては、何も言うことはありません」と期待や信頼を託していた。
箱根を残すのみとなった11月以降、「距離を踏めば良い状態に持っていける」と前を向いた。チームは明るさを取り戻し、下級生の成長も4年生を刺激した。山中自身、思い描いた通りにはいかなかった4年間。最後の大舞台に向け自分と仲間を信じた。
最初で最後の箱根駅伝で7区4位と力走した城西大・山中達貴[/caption]第102回箱根駅伝で力走した選手たちがいる。優勝を手にしたり、区間賞に輝いたりした選手以外にもそれぞれの思いを胸に、タスキをつないだ。最終学年として迎えた選手たちの“最後”の奮闘を紹介する。学年リーダーに自ら立候補
誰もやりたがらなかった学年リーダーに、1年生の春、城西大・山中達貴(現・4年)は手を挙げた。「俺がやる」。兵庫・西脇工高では全国高校駅伝2区(3km)区間賞(7分59秒、日本人歴代2位タイ)を獲得したスピードの持ち主は、城西大に入学した瞬間から「強い学年」を作る覚悟を決めていた。後に同期15人のうち10人が箱根エントリーを経験する最強世代。ヴィクター・キムタイ、斎藤将也、桜井優我らを束ねる存在として、3年で副主将、そして最終学年で主将となった。穏やかで、誰に対しても分け隔てなく接する性格は、チームメイトから慕われた。城西大の育成方針は、他大学とは一線を画していた。中距離と長距離の垣根をなくし、互いの強化ノウハウを取り入れ、相乗効果を狙う。中距離グループでスタートした山中は、1年時は1500mを中心に記録会に出場。スピードを生かしながら、徐々に距離を伸ばしていく。2年では5000m14分09秒24、10000m29分37秒65、ハーフで1時間3分36秒と着実にステップアップ。長い距離への苦手意識も徐々に払拭させてきた。1500mでも3分46秒02とスピードにも磨きがかかり、3年で5000m13分50秒80、10000m28分47秒03、ハーフ1時間2分52秒と、1500mからハーフまで対応できる選手へと成長した。しかし、この過程は順風満帆ではなかった。高校時代は中距離主体に取り組んできた身体に、箱根を目指したトレーニングは重くのしかかった。故障も多く、持病の喘息にも苦しんだ。3年時はあと一歩で箱根メンバー入りを逃している。迎えた最終学年。主将になった山中は、『結〜まだ見ぬ景色の開拓〜』をスローガンに掲げ、箱根駅伝で総合3位以上を目標に据えた。4月の金栗記念5000mでセカンドベストとなる13分51秒58をマークしたものの、その後に腰痛が襲う。5月の関東インカレ1部10000mでは、出場者全員から周回遅れとなる最下位(32分04秒35)に沈んだ。夏合宿は好調さを取り戻していたものの、9月半ばの三次合宿で再び故障。「点数をつけるなら限りなく0点に近い。今年1年、一番苦労したシーズンでした」。シード権を逃した全日本大学駅伝後に涙する下級生たちを見て、最上級生として何度も箱根に向けた話し合いを重ねる。「走れないなりにチームをまとめないといけない」。そんな姿勢は、故障時でもブレなかった。エースの斎藤は「個性が強めな学年ですが、自分たちで考え、同期のおかげでレベルを高めていけました」。今季2度の疲労骨折に見舞われながら努力を怠らなかった桜井は「4年生が100%の力を出せれば無限大」と信じていた。「全員がリーダーをやれるぐらい自律している学年を目指したくて」。それは山中が1年生の頃から理想としていたチーム像だった。櫛部静二監督も「主将としては、何も言うことはありません」と期待や信頼を託していた。箱根を残すのみとなった11月以降、「距離を踏めば良い状態に持っていける」と前を向いた。チームは明るさを取り戻し、下級生の成長も4年生を刺激した。山中自身、思い描いた通りにはいかなかった4年間。最後の大舞台に向け自分と仲間を信じた。キャプテンシーで最強世代を一つに
迎えた第102回箱根駅伝。2区キムタイの区間新により一時先頭に立ち、往路を5位で折り返していた。6区は大沼良太郎(4年)。3000mSC高校歴代10位(当時)の記録で入学したが、4年間苦労した。「良太郎、ラストファイト!」。タスキを受け取り、山中は7区へ駆け出す。26秒前の4位・國學院大の高山豪起(4年)は5kmを13分58秒とハイペースで入り、あっという間に見えなくなった。「落ち着いて入って、後半上げていこう」と自分に言い聞かせる。中盤、後ろから順大の玉目陸(2年)に一時30秒差まで迫られたものの、後半でギアを上げる。「1時間2分台で行ける! 後ろと1分差がついた」。櫛部監督から最後の檄が飛ぶ。霊峰富士に背中を押され、4年間で蓄えた力を存分に発揮。平塚中継所で順大とは逆に58秒差まで広げた。区間4位、1時間2分58秒のタイムは城西大新記録だった。「達貴ありがとう。頑張った!」。西脇工高の後輩でもある小田伊織(3年)とのタスキリレーを終えると、櫛部監督からの労いの言葉に、山中は運営管理車へ右手を突き上げた。チームは総合7位、10時間46分17秒。大学史上最速タイムで10区の岩田真之(4年)がフィニッシュ。4年連続シードを獲得した。レース後、山中は「総合成績は大学記録より6分速く、間違いなく成長しています」と誇らしげに語った。同期は6人が出走し、「走れなかった(鈴木)健真を含め、最後まで一つになって戦えました。本当に良い学年でした」と振り返った。1年時から学年リーダーを務め、葛藤を抱えながらチームを率いた4年間。そのキャプテンシーが、最強世代を一つにし、城西大の歴史を塗り替えた。卒業後はスピードランナーの揃うトーエネックへ進み競技を続ける。これからも山中のペースで、楽しんで走り続けてほしい。[caption id="attachment_127554" align="alignnone" width="800"]
卒業後はトーエネックで競技を続ける山中[/caption]山中達貴(やまなか・たつき:城西大)/2003年11月6日生まれ。兵庫県小野市出身。兵庫・西脇工高卒。自己ベストは5000m13分50秒80、10000m28分47秒03、ハーフ1時間2分52秒。文/荒井寛太RECOMMENDED おすすめの記事
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