2024.12.21
高校3年の秋に急成長
長崎県長崎市生まれで、中学までは野球部だった。長距離で速い自覚はなかったが、借り出されて出場した3年時の県中学駅伝1区でいきなり区間賞。「自分って陸上でやれるのではないか」と、瓊浦高校へ進んだ。
高校の2学年上に林田洋翔(現・三菱重工)がおり、入濵はインターハイ路線で1500m、5000mとも北九州大会止まり。「高校時代はとても甘えていた印象です。練習もたいしてしておらず、今考えるともっとしていたら良かったと思います。ポイント練習はこなすけど、ジョグでは手を抜いている部分がありましたね」。
箱根を目指し高校から陸上を始めたものの、伸び悩んでいた。「自分はこれで終わる人間ではない」と、3年時のインターハイ地区大会後に気持ちを入れ替え練習に取り組むと、秋から結果が出始めた。
10月の長崎ナイター記録会で初めて5000m14分30秒を切ると、県高校駅伝1区では網本佳悟(現・東洋大3)、川内琉生(現・東京国際大3)に次ぐ区間3位。そして12月には5000m高校ベストとなる14分11秒41をマークした。
大東大前監督の馬場周太氏(現・埼玉医大ACコーチ)は素質を見出し、結果が出始める前から声をかけていた。高校の先輩も進学していたことからライトグリーンのユニフォームに袖を通すことになった。
今シーズンは、箱根後に左足腓骨を疲労骨折しトラックシーズンは出遅れた。「長い故障期間は初めてでしたが、走れるようになった時に、どうやったら変われるかを考えながら補強しました」。
復帰戦となった6月の日体大長距離競技会5000mで13分55秒22の自己ベストをマーク。7月のホクレンディスタンスチャレンジ網走大会10000mでは28分56秒68で「満足できる結果ではありませんでした」と言うが、いいかたちで夏合宿に入っていた。
エースの西川も今季の入濵について、目を見張るものがあるという。「僕らが練習でペースを上げると絶対についてきます。競争意識を持って練習に取り組んでいて、さらに強くなると思いますね」。
真名子監督も「これまでトラックのタイムとロード力が比例しませんでした。彼の殻を破るには限界打破していくようなトレーニングをやらないとロードは走れてきません。ただ、自分の中でも変わらなきゃと気づいており、今年はしっかり走ってくれるでしょう」と期待する。
この2人が言うように、駅伝で結果を出して期待に応え始めている入濵。上尾ハーフも1時間2分07秒と強さを見せた。大濱や棟方、中澤ら強い下級生が台頭してきている今季の大東大。希望区間は1区で「チームに一番最初に流れを呼び込みたいです」と入濵。次のエースは自分だと証明する箱根路になりそうだ。

11月の全日本大学駅伝では4区6位だった入濵輝大
いりはま・きひろ/2003年10月17日生まれ。長崎県長崎市出身。長崎・淵中→長崎・瓊浦高。5000m13分54秒97、10000m28分13秒80、ハーフ1時間2分07秒
文/荒井寛太
危機感からロードでも強さを
大東大の入濵輝大(3年)は10000mで現チーム内トップ、大学歴代2位の28分13秒80を持つ。ただ、トラックのスピードに比べ、駅伝での勝負強さが課題。箱根駅伝は1年時3区18位、2年時も同区間で16位と力を発揮できていなかった。 「三大駅伝すべて5位以内」を目標に掲げた今季の大東大。出雲駅伝10位、全日本大学駅伝11位といずれも届かなかった。その影に隠れてはいたものの、入濵は出雲1区5位、全日本4区6位といずれも好成績を収めている。 真名子圭監督に「結果出そうよ。区間5番以内を取ろう」と送り出されて挑んだ出雲の1区。入濵は「スローペースになって驚きましたが、ラスト勝負になると分かっていました」。 ペースの上げ下げがあったなか、冷静に集団後方でレース全体を見渡す。最後は青学大の鶴川正也(4年)、アイビーリーグ選抜のキーラン・トゥンティベイト、國學院大の青木瑠郁(3年)、帝京大の山中博生(4年)に先行されたものの、14秒差の区間5位で指揮官の期待に応えた。 全日本も「前回、前々回に比べ成長を感じた駅伝でした。突っ込んで入り、落とさず押していけました」と入濵。3区のルーキー・中澤真人から11位でタスキを受けた時点で8位とは44秒あった差を22秒まで詰める。流れを引き寄せる力強い走りを見せた。 今年の入濵は何かが違うと、周囲の誰もが感じている。「ようやく安定して駅伝を走れるように変わってきているのは心強いです」と真名子監督。そこには大濱逞真(1年)や棟方一楽(2年)ら下級生の台頭がある。 真名子監督は「入濵はいつも先輩や同級生にくっついていくタイプ。兄貴肌な人が必要でした」と語る。練習でももう少し追い込んでほしいところで力を抑えてしまう傾向があったという。 西川千青や西代雄豪ら、今季のチームをけん引する強い4年生は卒業する。「1年後にはお前たちがチームを引っ張っていくんだぞ」。真名子監督の言葉で、入濵の心に危機感が生まれた。エースの座を後輩たちに奪われるわけにはいかない……。ようやく入濵が「自分の力はこんなもんじゃない」と言わんばかりに力を発揮し始めた。高校3年の秋に急成長
長崎県長崎市生まれで、中学までは野球部だった。長距離で速い自覚はなかったが、借り出されて出場した3年時の県中学駅伝1区でいきなり区間賞。「自分って陸上でやれるのではないか」と、瓊浦高校へ進んだ。 高校の2学年上に林田洋翔(現・三菱重工)がおり、入濵はインターハイ路線で1500m、5000mとも北九州大会止まり。「高校時代はとても甘えていた印象です。練習もたいしてしておらず、今考えるともっとしていたら良かったと思います。ポイント練習はこなすけど、ジョグでは手を抜いている部分がありましたね」。 箱根を目指し高校から陸上を始めたものの、伸び悩んでいた。「自分はこれで終わる人間ではない」と、3年時のインターハイ地区大会後に気持ちを入れ替え練習に取り組むと、秋から結果が出始めた。 10月の長崎ナイター記録会で初めて5000m14分30秒を切ると、県高校駅伝1区では網本佳悟(現・東洋大3)、川内琉生(現・東京国際大3)に次ぐ区間3位。そして12月には5000m高校ベストとなる14分11秒41をマークした。 大東大前監督の馬場周太氏(現・埼玉医大ACコーチ)は素質を見出し、結果が出始める前から声をかけていた。高校の先輩も進学していたことからライトグリーンのユニフォームに袖を通すことになった。 今シーズンは、箱根後に左足腓骨を疲労骨折しトラックシーズンは出遅れた。「長い故障期間は初めてでしたが、走れるようになった時に、どうやったら変われるかを考えながら補強しました」。 復帰戦となった6月の日体大長距離競技会5000mで13分55秒22の自己ベストをマーク。7月のホクレンディスタンスチャレンジ網走大会10000mでは28分56秒68で「満足できる結果ではありませんでした」と言うが、いいかたちで夏合宿に入っていた。 エースの西川も今季の入濵について、目を見張るものがあるという。「僕らが練習でペースを上げると絶対についてきます。競争意識を持って練習に取り組んでいて、さらに強くなると思いますね」。 真名子監督も「これまでトラックのタイムとロード力が比例しませんでした。彼の殻を破るには限界打破していくようなトレーニングをやらないとロードは走れてきません。ただ、自分の中でも変わらなきゃと気づいており、今年はしっかり走ってくれるでしょう」と期待する。 この2人が言うように、駅伝で結果を出して期待に応え始めている入濵。上尾ハーフも1時間2分07秒と強さを見せた。大濱や棟方、中澤ら強い下級生が台頭してきている今季の大東大。希望区間は1区で「チームに一番最初に流れを呼び込みたいです」と入濵。次のエースは自分だと証明する箱根路になりそうだ。 [caption id="attachment_123595" align="alignnone" width="800"]
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