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【競歩】ALL for TOKYO2020+1 山西利和 秀才ウォーカーが考える 東京五輪、その先への道筋/誌面転載

ALL for TOKYO2020+1
山西利和(愛知製鋼)

秀才ウォーカーが考える
東京五輪、その先への道筋

身長164㎝、体重53㎏。小柄な日本人が国際舞台で大きな存在感を放った。昨年のドーハ世界選手権・男子20㎞競歩で、山西利和(愛知製鋼)が金メダル。これは五輪・世界選手権において同種目日本勢初の快挙だった。京大工学部を卒業した男は競技中もメガネ姿を貫き、インテリジェンスを感じさせる風貌。常に計算を働かせ、攻める時には一気に攻め落とす。そんな大胆さも持ち合わせている。山西が目指すアスリート像は、「他の追随を許さないくらい」の〝圧倒的な存在〟だ。東京五輪の活躍が期待される秀才ウォーカーは、どのようにして金メダルを狙いにいくのか。

●文/酒井政人

日本勢初の金メダルも笑顔なし

ドーハ世界選手権。灼熱の地で男子20㎞競歩に出場した山西利和(愛知製鋼)が快挙を達成した。五輪・世界選手権を通じて、この種目初の金メダル。先に行われた50㎞競歩で鈴木雄介(富士通)も優勝しており、世界選手権の男子競歩種目は日本が制圧した。最後は両手を広げてフィニッシュ。その時、ほとんど笑顔を見せなかった。

「金メダルはうれしい気持ちとホッとする気持ちと……。う~ん、まだやり切れないという感じですね」とレース後は話していたが、1年経っても、その感想は変わらない。

「まずはきちんと勝ち切れたということが一番の収穫だったのかなと思います。結果がついてきたことで取り組みの方向性が確認できたところは良かったです。ただレース中も、もっとこうだったら、良いパフォーマンスができるんじゃないかなと思うことがありました。それが見えたのは課題でもあり、収穫でもあったのかなと思います」

物事を冷静に見極め、さらに上を目指すのが山西の変わらないスタイルだ。高校で競歩を始め、世界ユース選手権10000m競歩で日本勢初の金メダル、インターハイは大会新(当時)で優勝、京大でもユニバーシアード優勝など次々と実績を残した山西。ドーハ世界選手権を制したことで、いち早く東京五輪の日本代表に内定した。

2020年夏に向けては、「10 ヵ月くらい強化を図れるので、地力を高めていくことが大きな方針」だったという。しかし、好調のまま突き進んだ2019年シーズンの疲労は体内に蓄積されていた。11月末から12月前半にかけて股関節に違和感が出て、練習の強度を下げざるを得なかったのだ。

それでも2月16日の日本選手権20㎞競歩は1時間17分36秒で優勝。2位の池田向希(東洋大)に1分31秒差をつける完勝レースで強さを見せつけた。

「できることはやってきたんですけど、今振り返ると、ケガの影響もあり、状態や技術の水準は足りていなかったのかなと感じる部分はあります。その中でも1時間17分台できちんと勝ち切れたのは、この数年間でやってきたことが結果として出たと感じています」

その後、3月は身体の状態を見ながらトレーニングを積み上げてきた。東京五輪の延期が決まったのは、まさに「五輪への見通しが立ってきた」というタイミングだった。

身体をオーバーホール

9月の全日本実業団5000m競歩で自身初の“日本新”。20kmへの手応えをつかんだレースとなった

夢舞台を目指す多くのアスリートは虚無感に苛まれたことだろう。山西もまた例外ではなく、「少しモチベーションが下がったといいますか……。まぁそうですね……」と当時の複雑な心境を思い返す。だが、状況を鑑みれば「仕方ない」という思いだった。それよりも、本番までの筋書きを大きく書き換える必要があることのほうが大きかった。

「3月末の段階で本番まで4ヵ月でした。心身ともにコンディションを作っていく時に、4ヵ月後に波を合わせていく作業と、1年4カ月先に合わせていく作業は全然違うものになります。周期が長い波に対してアプローチをするのは難しいので、そのギャップに戸惑う部分は正直ありました」

さすがの山西もそう振り返るが、「1年あればいろんなことができる」と気持ちを切り替えて、自分の身体と向き合った。3月から5月までは主にコンディションを整えることに費やしたという。

前年の蓄積疲労を取り除くことから始まり、「次に自分のクセを抜いていくような期間」にした。「例えば、膝を伸ばす時にどの筋肉を動かすべきなのか。練習を積み重ねていくと、代替的に別の筋肉を使って行動する現象が起きるんです。それを元の正常な状態に戻していく」。それは補強やトレーニングというよりは「イメージとしてはリハビリテーションに近い」。

歩型を修正するのではなく、理学療法士のサポートで、自身の動きを一つひとつ確認。人間本来が持つ〝理想的な動き〟を整えていった。

この続きは2020年10月14日発売の『月刊陸上競技11月号』をご覧ください。

 

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