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【アイテムレポ】センサー1つでランニングフォームを分析 アシックス「Runmetrix」を使ってみた!
【アイテムレポ】センサー1つでランニングフォームを分析 アシックス「Runmetrix」を使ってみた!

【アイテム】センサー1つでランニングフォームを分析
「Runmetrix」を使ってみた!


アシックスがカシオと共同開発した「Runmetrix(ランメトリックス)」のモーションセンサー

 あらゆるスポーツの“原点”とも言える陸上競技の世界では、0.01秒を短縮するためにさまざまな試行錯誤がなされている。その中でも特に高速化が著しい長距離種目では、シューズやトレーニング方法のほかに、速く走るための「ランニングフォーム」が世界との差を縮める手段の一つとして注目を集めている。
 そんな潮流を察知してか、近年はランニングフォームを分析できるデジタルデバイスが次々に登場。なかでもアシックスがカシオと共同開発した「Runmetrix(ランメトリックス)」はトップアスリートの使用実績もあり、小型のモーションセンサー1つでフォーム分析ができる手軽さが特徴だ。そこで、今も市民ランナーとして走り続ける月陸編集者(マラソンの自己ベストは2時間43分)が、ランメトリックスを実際に使ってみた。

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専門家の領域をデジタルデバイスが代行

 速く走るというのはシンプルで、とても難しい。そのことはキャリアが長くなればなるほど実感できるかもしれない。最初はちょっと練習をしただけですぐ記録が伸びたのに、いつしかタイムは伸び悩み、練習をしてもなかなか速くならないというフェーズが訪れる。

 このような状況を打開する方法としては、まずはトレーニングを見直すのが一般的だ。それと同時に、効率の良い走りをしているか、自身のランニングフォームを改善することも記録短縮に向けた取り組みの一つとなる。

 そこに着目して研究開発を進めているメーカーの一つがアシックスだ。2020年秋にはベンチャー企業「no new folk studio」との共同開発でランニングシューズの中にセンサーを搭載した「EVORIDE ORPHE(エボライドオルフェ)」を発売。さらに、2021年3月にはカシオとの価値共創事業として、腰に取り付けたモーションセンサーでランニングフォームを分析する「Runmetrix(ランメトリックス)」というパーソナルコーチングサービスを開始した。

 エボライド オルフェも、ランメトリックスも、どちらもセンサーによってランニングフォームが数値化されるのが特徴だ。エボライド オルフェは接地など主に脚の動きを、ランメトリックスは身体全体のフォーム改善策がスマートフォンアプリを使うことで提示され、「コーチング」の役目も担うようになっている。

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 従来であれば専門の知識を持ったコーチやトレーナーがいないと難しかったランニングフォームの改良を、デジタルデバイスだけで実践できるようになったのは大きいだろう。なかでもランメトリックスは腰に取り付けたモーションセンサー1つでランニングフォームの大部分を解析できる仕組みで、精度と利便性に強みを持つ。価格も14,080円(税込)とお手頃だ。

腰に装着したモーションセンサー1つでフォームの大部分を解析できる

 すでに大学駅伝の強豪である早稲田大学競走部の駅伝チームはランメトリックスを使用しており、5月に開催された「北海道・札幌マラソンフェスティバル」の時も出場した選手たちはモーションセンサーを装着していた。デジタル技術とスポーツの融合は着実に広まっている。

モーションセンサー1つで使用可能

 準備としてはまずスマートフォンでランメトリックスのアプリ(無料)をダウンロードするところから始まる。アプリはGPSウォッチとしても使用できるが、肝心のフォーム分析をするには前述のモーションセンサーが必要だ。センサーはアシックスとカシオのオンラインストアのどちらでも購入できる。

 モーションセンサーには衝撃保護のための本体カバーを取り付け、カバーを含めたサイズは幅43.7mm×高さ63.6mm×奥行き19.6mm。手の平で握りしめられる大きさだ。重さもカバーを含めて約40gと、邪魔に感じるレベルではない。

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 センサーは基本的にズボンの腰部分(背中側)に装着し、骨盤の動きを計測することでフォームの全体像を認識する。競技会で履くランパンやハーフタイツにセンサーを取り付けた際は少し重さが気になるかもしれないが、クリップで固定できることもあり、パフォーマンスへの影響はないに等しいだろう。

 使い方を簡単に説明すると、モーションセンサーのボタンは1つだけ。基本的な設定などはスマートフォンのアプリを通じて行い、Bluetoothで接続する。

 ボタンを長押しして電源を入れるとセンサーがGPSを捕捉する。ランプの色が緑に変わったら準備完了で、ボタンを押してランプが点滅したら計測開始。ランプを見て計測が始まっていることを確認してからセンサーを腰に装着すれば問題ない。

 センサーは「止まっている間は計測しない」という設定にもできるので、「スタートボタンを押したらすぐに走り出さなければいけない」ということはない。大会の時などはスタート前にボタンを押して計測モードにしておけば、センサーはレースが始まってから自動的に計測をしてくれる。

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 ちなみにランメトリックスは「GSR-H1000AS-SET」というG-SHOCK(腕時計)とモーションセンサーのセット(税込57,200円)も発売されたが、フォーム分析自体はモーションセンサーがあれば可能。必要なのはあくまでもセンサー1つだけだ。他のデバイスとの併用を干渉しない点もランナーにとっては使い勝手が良く、継続的なデータ収集に適していると言えるだろう。

G-Shockとモーションセンサーがセットになった「GSR-H1000AS-SET」〔写真提供/アシックスジャパン〕

詳細で充実した数値データ

 計測が終了したらBluetoothでセンサーからスマホにデータが送られる。詳細はアプリで確認できる。

 まずは総合評価が100点満点で表示。採点にはアシックススポーツ工学研究所の知見が反映されており、目安としては80点以上が「アスリートレベル」、70点以上が「記録に挑戦するシリアスランナー」、それ以下が「ランニングを習慣にしている市民ランナー」となっている。

 筆者は2021年の5000m最高タイムが18分25秒32なので、現時点の走力としては陸上部で中長距離を専門とする男子中学生か高校女子の標準レベル。ランメトリックスで計測すると採点は75点から80点に収まることがほとんどだ。1km5分から4分半程度のジョギングであれば75点前後になり、インターバルやレースなど全力に近いスピードを出した時はなんとか80点に届く(一応アスリートとして認められているのがうれしい)。しかし、何度挑戦しても85点や90点にはならないため、精度はかなり高いと感じた。


筆者が5000mを18分25秒で走った時のログ。100点満点で80点以上が「アスリートレベル」とされる

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 総合評価は6つの分野が100点満点で採点される、アプリ上に表示される六角形のチャートをバランスよく大きくしていくことが成長のポイントだ。評価項目は以下の通り。

・骨盤を軸とした全身の連動
・動きの力強さ
・スムーズな重心移動
・左右対称性
・安定した姿勢
・負担の少ない接地

 総合評価では分析に基づいたワンポイントアドバイスもあり、「『地面を蹴る』のではなく、『地面を押す』イメージを持ってみましょう」など走行時に何を意識すべきかを具体的に示してくれる。どんなフォームが理想なのか感覚的にはわかっていても、実際に自分がどんなフォームで走っていて、レベルアップのために何を修正すればいいのか第三者の目を使うことなく的確に理解できるランナーはほとんどいないのではないだろうか。これはまさにデジタルデバイスを使った「コーチング」だと感じた。

 驚くべきことは、この総合評価を算出するにあたっては想像以上に詳細なデータが集積されているということだ。ピッチやストライドはもちろんのこと、

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・体幹の後傾
・上下動
・腰の沈み込み
・骨盤の左右傾き
・骨盤回転タイミング
・左右方向衝撃
・接地時間

といったデータがすべて数値化され、250m~1kmまで設定した距離ごとにログとして残される。つまり、走行後にアプリを見ることで自分のフォームがどう変化していったかという経過まで把握できるのだ。もちろん、各項目の数値が何を意味するかの説明もされており、どう改善すべきかという方向性もわかりやすい。

横にスクロールして数値を確認できる(※クリックで拡大)

各項目が何を意味しているかの注釈もある

フォームの「正誤」を判定可能

 そもそもランニングフォームとは個人差が大きく、理想とする“お手本”はあったとしても、自分がそれを真似したところで速く走れるかどうかはわからない、という未知数な分野でもあった。アシックスが長年の研究で蓄積したデータをもとにパフォーマンスを上げるために必要な要素を体系化し、その知見を盛り込んだランメトリックスとは、ある面では陸上競技への“挑戦”とも言える試みだ。

 筆者がランメトリックスを使っていて一番のメリットだと感じたのは、リアルタイムな分析によってフォームの「正解」と「不正解」が切り分けられるようになったことだ。たとえば、1kmごとにフォームの意識するポイント(筋肉、動きなど)を変えてみると、それを意識したことで数値がどう変化したのかが一目瞭然。通常であれば「良いフォーム」「悪いフォーム」の判断はフィーリングに頼るか、専門的な知識を有する第三者の目を借りる必要があったが、ランメトリックスがあればバイオメカニクス(生体力学)の観点から自身のフォームをブラッシュアップできる。パーソナルコーチング機能を使えばフォームを改善するためにどんな筋力トレーニングが必要かも示してくれるため、「分析して終わり」ではなく、長く使えるアイテムになるだろう。

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 そして、この「パーソナルコーチング」も筆者が可能性を感じる機能でもある。アプリで自身の目標を設定すると、それに応じたトレーニングメニューやフォーム改良の指針が提示されるのだが、フォームの詳細分析では自分のランニングフォームをアニメーションで表示してくれるのだ。センサー1つで体幹の傾きから脚の運び、さらには腕振りのクセまで忠実に再現しているので驚いた。

体幹や脚の動きはもちろん、腕や手の向きまで再現されている

練習メニューのプランも作成してくれる

 しかも、データが集まってくると「速く走っている時の傾向」など実践的なアドバイスを受けられるようになる。ランメトリックスで計測するたびにその分析データがフィードバックされるため、さらに「練習をがんばろう」というモチベーションにもなりやすい。

コーチングはきわめて的確

 アシックスはデジタル技術を生かした「新しいランニング体験」を長期戦略のテーマにしており、現在提供しているサービスも随時アップデートされる予定だ。パフォーマンスの追求というシビアな取り組みを、デジタルの力で“楽しさ”に変換できるのは、テクノロジーが進歩した令和の時代らしさだと感じた。

文/山本慎一郎

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<関連リンク>
ASICS×CASIO MOTION SENSOR(アシックス公式サイト)
Runmetrix(カシオ公式サイト)

<関連記事>
【アイテムレポ】開発者に聞いたアシックス「Runmetrix」の活用法 フォーム分析からコーチングまでカバー

【アイテム】センサー1つでランニングフォームを分析 「Runmetrix」を使ってみた!

アシックスがカシオと共同開発した「Runmetrix(ランメトリックス)」のモーションセンサー  あらゆるスポーツの“原点”とも言える陸上競技の世界では、0.01秒を短縮するためにさまざまな試行錯誤がなされている。その中でも特に高速化が著しい長距離種目では、シューズやトレーニング方法のほかに、速く走るための「ランニングフォーム」が世界との差を縮める手段の一つとして注目を集めている。  そんな潮流を察知してか、近年はランニングフォームを分析できるデジタルデバイスが次々に登場。なかでもアシックスがカシオと共同開発した「Runmetrix(ランメトリックス)」はトップアスリートの使用実績もあり、小型のモーションセンサー1つでフォーム分析ができる手軽さが特徴だ。そこで、今も市民ランナーとして走り続ける月陸編集者(マラソンの自己ベストは2時間43分)が、ランメトリックスを実際に使ってみた。

専門家の領域をデジタルデバイスが代行

 速く走るというのはシンプルで、とても難しい。そのことはキャリアが長くなればなるほど実感できるかもしれない。最初はちょっと練習をしただけですぐ記録が伸びたのに、いつしかタイムは伸び悩み、練習をしてもなかなか速くならないというフェーズが訪れる。  このような状況を打開する方法としては、まずはトレーニングを見直すのが一般的だ。それと同時に、効率の良い走りをしているか、自身のランニングフォームを改善することも記録短縮に向けた取り組みの一つとなる。  そこに着目して研究開発を進めているメーカーの一つがアシックスだ。2020年秋にはベンチャー企業「no new folk studio」との共同開発でランニングシューズの中にセンサーを搭載した「EVORIDE ORPHE(エボライドオルフェ)」を発売。さらに、2021年3月にはカシオとの価値共創事業として、腰に取り付けたモーションセンサーでランニングフォームを分析する「Runmetrix(ランメトリックス)」というパーソナルコーチングサービスを開始した。  エボライド オルフェも、ランメトリックスも、どちらもセンサーによってランニングフォームが数値化されるのが特徴だ。エボライド オルフェは接地など主に脚の動きを、ランメトリックスは身体全体のフォーム改善策がスマートフォンアプリを使うことで提示され、「コーチング」の役目も担うようになっている。  従来であれば専門の知識を持ったコーチやトレーナーがいないと難しかったランニングフォームの改良を、デジタルデバイスだけで実践できるようになったのは大きいだろう。なかでもランメトリックスは腰に取り付けたモーションセンサー1つでランニングフォームの大部分を解析できる仕組みで、精度と利便性に強みを持つ。価格も14,080円(税込)とお手頃だ。 腰に装着したモーションセンサー1つでフォームの大部分を解析できる  すでに大学駅伝の強豪である早稲田大学競走部の駅伝チームはランメトリックスを使用しており、5月に開催された「北海道・札幌マラソンフェスティバル」の時も出場した選手たちはモーションセンサーを装着していた。デジタル技術とスポーツの融合は着実に広まっている。

モーションセンサー1つで使用可能

 準備としてはまずスマートフォンでランメトリックスのアプリ(無料)をダウンロードするところから始まる。アプリはGPSウォッチとしても使用できるが、肝心のフォーム分析をするには前述のモーションセンサーが必要だ。センサーはアシックスとカシオのオンラインストアのどちらでも購入できる。  モーションセンサーには衝撃保護のための本体カバーを取り付け、カバーを含めたサイズは幅43.7mm×高さ63.6mm×奥行き19.6mm。手の平で握りしめられる大きさだ。重さもカバーを含めて約40gと、邪魔に感じるレベルではない。  センサーは基本的にズボンの腰部分(背中側)に装着し、骨盤の動きを計測することでフォームの全体像を認識する。競技会で履くランパンやハーフタイツにセンサーを取り付けた際は少し重さが気になるかもしれないが、クリップで固定できることもあり、パフォーマンスへの影響はないに等しいだろう。  使い方を簡単に説明すると、モーションセンサーのボタンは1つだけ。基本的な設定などはスマートフォンのアプリを通じて行い、Bluetoothで接続する。  ボタンを長押しして電源を入れるとセンサーがGPSを捕捉する。ランプの色が緑に変わったら準備完了で、ボタンを押してランプが点滅したら計測開始。ランプを見て計測が始まっていることを確認してからセンサーを腰に装着すれば問題ない。  センサーは「止まっている間は計測しない」という設定にもできるので、「スタートボタンを押したらすぐに走り出さなければいけない」ということはない。大会の時などはスタート前にボタンを押して計測モードにしておけば、センサーはレースが始まってから自動的に計測をしてくれる。  ちなみにランメトリックスは「GSR-H1000AS-SET」というG-SHOCK(腕時計)とモーションセンサーのセット(税込57,200円)も発売されたが、フォーム分析自体はモーションセンサーがあれば可能。必要なのはあくまでもセンサー1つだけだ。他のデバイスとの併用を干渉しない点もランナーにとっては使い勝手が良く、継続的なデータ収集に適していると言えるだろう。 G-Shockとモーションセンサーがセットになった「GSR-H1000AS-SET」〔写真提供/アシックスジャパン〕

詳細で充実した数値データ

 計測が終了したらBluetoothでセンサーからスマホにデータが送られる。詳細はアプリで確認できる。  まずは総合評価が100点満点で表示。採点にはアシックススポーツ工学研究所の知見が反映されており、目安としては80点以上が「アスリートレベル」、70点以上が「記録に挑戦するシリアスランナー」、それ以下が「ランニングを習慣にしている市民ランナー」となっている。  筆者は2021年の5000m最高タイムが18分25秒32なので、現時点の走力としては陸上部で中長距離を専門とする男子中学生か高校女子の標準レベル。ランメトリックスで計測すると採点は75点から80点に収まることがほとんどだ。1km5分から4分半程度のジョギングであれば75点前後になり、インターバルやレースなど全力に近いスピードを出した時はなんとか80点に届く(一応アスリートとして認められているのがうれしい)。しかし、何度挑戦しても85点や90点にはならないため、精度はかなり高いと感じた。 筆者が5000mを18分25秒で走った時のログ。100点満点で80点以上が「アスリートレベル」とされる  総合評価は6つの分野が100点満点で採点される、アプリ上に表示される六角形のチャートをバランスよく大きくしていくことが成長のポイントだ。評価項目は以下の通り。 ・骨盤を軸とした全身の連動 ・動きの力強さ ・スムーズな重心移動 ・左右対称性 ・安定した姿勢 ・負担の少ない接地  総合評価では分析に基づいたワンポイントアドバイスもあり、「『地面を蹴る』のではなく、『地面を押す』イメージを持ってみましょう」など走行時に何を意識すべきかを具体的に示してくれる。どんなフォームが理想なのか感覚的にはわかっていても、実際に自分がどんなフォームで走っていて、レベルアップのために何を修正すればいいのか第三者の目を使うことなく的確に理解できるランナーはほとんどいないのではないだろうか。これはまさにデジタルデバイスを使った「コーチング」だと感じた。  驚くべきことは、この総合評価を算出するにあたっては想像以上に詳細なデータが集積されているということだ。ピッチやストライドはもちろんのこと、 ・体幹の後傾 ・上下動 ・腰の沈み込み ・骨盤の左右傾き ・骨盤回転タイミング ・左右方向衝撃 ・接地時間 といったデータがすべて数値化され、250m~1kmまで設定した距離ごとにログとして残される。つまり、走行後にアプリを見ることで自分のフォームがどう変化していったかという経過まで把握できるのだ。もちろん、各項目の数値が何を意味するかの説明もされており、どう改善すべきかという方向性もわかりやすい。 横にスクロールして数値を確認できる(※クリックで拡大) 各項目が何を意味しているかの注釈もある

フォームの「正誤」を判定可能

 そもそもランニングフォームとは個人差が大きく、理想とする“お手本”はあったとしても、自分がそれを真似したところで速く走れるかどうかはわからない、という未知数な分野でもあった。アシックスが長年の研究で蓄積したデータをもとにパフォーマンスを上げるために必要な要素を体系化し、その知見を盛り込んだランメトリックスとは、ある面では陸上競技への“挑戦”とも言える試みだ。  筆者がランメトリックスを使っていて一番のメリットだと感じたのは、リアルタイムな分析によってフォームの「正解」と「不正解」が切り分けられるようになったことだ。たとえば、1kmごとにフォームの意識するポイント(筋肉、動きなど)を変えてみると、それを意識したことで数値がどう変化したのかが一目瞭然。通常であれば「良いフォーム」「悪いフォーム」の判断はフィーリングに頼るか、専門的な知識を有する第三者の目を借りる必要があったが、ランメトリックスがあればバイオメカニクス(生体力学)の観点から自身のフォームをブラッシュアップできる。パーソナルコーチング機能を使えばフォームを改善するためにどんな筋力トレーニングが必要かも示してくれるため、「分析して終わり」ではなく、長く使えるアイテムになるだろう。  そして、この「パーソナルコーチング」も筆者が可能性を感じる機能でもある。アプリで自身の目標を設定すると、それに応じたトレーニングメニューやフォーム改良の指針が提示されるのだが、フォームの詳細分析では自分のランニングフォームをアニメーションで表示してくれるのだ。センサー1つで体幹の傾きから脚の運び、さらには腕振りのクセまで忠実に再現しているので驚いた。 体幹や脚の動きはもちろん、腕や手の向きまで再現されている 練習メニューのプランも作成してくれる  しかも、データが集まってくると「速く走っている時の傾向」など実践的なアドバイスを受けられるようになる。ランメトリックスで計測するたびにその分析データがフィードバックされるため、さらに「練習をがんばろう」というモチベーションにもなりやすい。 コーチングはきわめて的確  アシックスはデジタル技術を生かした「新しいランニング体験」を長期戦略のテーマにしており、現在提供しているサービスも随時アップデートされる予定だ。パフォーマンスの追求というシビアな取り組みを、デジタルの力で“楽しさ”に変換できるのは、テクノロジーが進歩した令和の時代らしさだと感じた。 文/山本慎一郎 <関連リンク> ASICS×CASIO MOTION SENSOR(アシックス公式サイト) Runmetrix(カシオ公式サイト) <関連記事> 【アイテムレポ】開発者に聞いたアシックス「Runmetrix」の活用法 フォーム分析からコーチングまでカバー

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