広島で行われているインターハイの男子100mで、高校2年生の清水空跳(星稜・石川)が桐生祥秀(洛南高、現・日本生命)の高校記録を0.01秒塗り替える10秒00(+1.7)をマークして優勝した。
しばらく破られないのではないかと思われていた桐生の高校記録は2013年の織田記念、同じ広島広域公園競技場で出されたものだった。桐生は同年のモスクワ世界選手権にも出場し、高校生ながら一躍トップスプリンターとして名を馳せた。その後は常に日本人初の9秒台という重圧を背負ったが、東洋大4年時に、見事に日本人初の10秒切りとなる9秒98を刻んでいる。
過去にも『超高校級スプリンター』が日本陸上界を賑わせてきた。
日本陸連は1984年に電動計時の日本記録を定めたが、それ以前の日本記録として残っていたのが飯島秀雄の10秒34(1968年)だった。
そこに並んだのが『スーパー高校生』の不破弘樹だった。群馬・東農大二高3年の1984年に日本タイ記録の10秒34をマークし、同年のロサンゼルス五輪に出場した。
1987年には、ラグビー選手だった中道貴之(木本高・三重)が手動ながら三重県選手権で10秒1を出して衝撃が走った。同年のローマ世界選手権の代表入りの話もあったが、ラグビーを理由に辞退。日大進学後は陸上に進んだ。
青戸慎司(中京大)が1988年に日本記録を10秒28に短縮したが、2年後、この日本記録を破ったのも高校生だった。不破の後輩にあたる東農大二高3年の宮田英明が、国体で日本新となる10秒27をマークした。
さらに次の年の1991年には、当時・宇都宮東高2年だった荒川岳士が、2冠したインターハイの100mで高校歴代2位、日本歴代3位、翌年のバルセロナ五輪A標準記録突破となる10秒30をマークした。3年時はケガに泣き五輪には届かなかった。
1994年に伝説を作ったのが名門・添上高(奈良)の髙橋和裕だ。高3時に日本選手権200mで伊東浩司を抑えて優勝すると、インターハイ近畿大会の200mで20秒57という日本新を打ち立てた。夏の富山インターハイでは100m、200m、両リレーの4冠。100mで10秒24をマークして、宮田の高校記録を塗り替えた。
この高校記録も『不滅』と言われ、宮﨑久(八女工高・福岡)ら数々の高校生スプリンターが挑んだがなかなか破れなかった。今もなお高校歴代9位に残る。
ついに破ったのは18年後、髙橋の記録が作られた1994年に生まれた大瀨戸一馬(小倉東高・福岡)だった。織田記念で10秒23をマークし、同年のロンドン五輪のB標準記録を突破する快走だった。夏のインターハイも制したが、その背中を追いかけたのが桐生だった。
桐生は同年、高2の秋に10秒21、10秒19と次々に高校記録を塗り替えると、2013年の織田記念で10秒01を叩き出して伝説となった。夏の大分インターハイもスプリント3冠を果たしたが、それをスタンドから観ていたのが当時中3だったサニブラウン・アブデル・ハキーム(現・東レ)だ。
サニブラウンは城西高(東京)2年時の15年に世界ユース選手権で100m、200m2冠の快挙。同年の北京世界選手権では史上最年少の16歳で200m準決勝進出を果たした。高校時代の記録は100mは10秒22で、200m20秒34は今も高校記録として残る。その後の活躍は周知の通り、世界選手権100mファイナリストなど世界トップスプリンターになった。
19年の沖縄インターハイで荒川以来となる高2での2冠をした鵜澤飛羽(築館高・宮城、現・JAL)は、追い風参考ながら、100m10秒19(+2.9)、200m20秒36(+2.1)というシニア級のパフォーマンスだった。
2020、21年の日本選手権100mで決勝に進んだ高校生が、不破、宮田と同じ東農大二高の栁田大輝(現・東洋大)だ。東京五輪では4×100mリレーの補欠に入っている。
日本陸上短距離の歴史を彩ってきた高校生スプリンターに、清水空跳の名が新たに刻まれた。その後、重圧に苦しみながらも、打ち勝つ姿を見せてきた先輩たちもいる。この先も伸び伸びと挑戦し、壁を突き破っていってほしい。
男子100m高校記録変遷
●100m ※手動計時 11.2 今沢啓(中津一・大分) 1948.10.31 11.1 児玉一夫(宮崎大宮・宮崎) 1949.6.10 11.1 児玉一夫(宮崎大宮・宮崎) 1949.10.31 11.0 児玉一夫(宮崎大宮・宮崎) 1949.10.31 11.0 古谷剛(入善・富山) 1950.6.25 10.9 清藤亨(九州学院・熊本) 1950.10.29 10.9 高頭時夫(長岡商・新潟) 1951.9.15 10.9 高谷美城(戸畑・福岡) 1951.10.28 10.8 小林満(宮古・岩手) 1953.10.4 10.7 久保宣彦(烏栖・佐賀) 1954.7.31 10.6 蒲田勝(田辺・和歌山) 1957.10.29 10.5 蒲田勝(田辺・和歌山) 1957.11.24 10.5 飯島秀雄(目黒・東京) 1962.7.14 10.5 飯島秀雄(目黒・東京) 1962.8.25 10.5 石川準司(浜松西・静岡) 1963.6.8 10.5 石川準司(浜松西・静岡) 1963.9.8 10.5 石川準司(浜松西・静岡) 1963.10.10 10.5 村田広光(延岡工・宮崎) 1965.9.26 10.5 山下雅也(静岡市立・静岡) 1969.5.24 10.5 稼勢恵一郎(徳島市立・徳島)1974.6.15 10.5 池田秀樹(日南振徳商・宮崎)1976.11.7 10.5 都筑政則(水戸工・茨城) 1978.5.5 10.5 山崎真良(川口・埼玉) 1978.5.13 10.5 都筑政則(水戸工・茨城) 1978.6.4 10.5 林裕也(初芝・大阪) 1978.9.16 10.5 勝見雅宏(成田・千葉) 1978.10.8 10.4 都筑政則(水戸工・茨城) 1979.11.11 10.4 原宣之(滝川・兵庫) 1981.8.16 10.4 山内健次(赤塚山・兵庫) 1982.6.6 10.4 原宣之(滝川・兵庫) 1982.6.6 10.4 米内聡(青森南・青森) 1982.8.22 10.4 丹羽利彰(添上・奈良) 1983.8.14 10.4 丹羽利彰(添上・奈良) 1983.8.14 10.4 青戸慎司(和歌山工・和歌山)1984.8.12 10.3 大沢知宏(松山・埼玉) 1987.5.3 10.2 中道貴之(木本・三重) 1987.5.9 10.1 中道貴之(木本・三重) 1987.7.12 ※電動計時 10.71 稼勢恵一郎(徳島市立・徳島)1975.8.2 10.68 都筑政則(水戸工・茨城) 1978.8.3 10.57 都筑政則(水戸工・茨城) 1979.8.3 10.57 米内聡(青森南・青森) 1982.8.3 10.49 米内聡(青森南・青森) 1982.8.3 10.46 不破弘樹(東農大二・群馬) 1983.8.3 10.34 不破弘樹(東農大二・群馬) 1984.5.6 10.34 不破弘樹(束農大二・群馬) 1984.6.2 10.27 宮田英明(東農大二・群馬) 1990.10.22 10.27 髙橋和裕(添上・奈良) 1994.8.2 10.24 髙橋和裕(添上・奈良) 1994.8.2 10.23 大瀨戸一馬(小倉東・福岡) 2012.4.29 10.21 桐生祥秀(洛南・京都) 2012.10.5 10.19 桐生祥秀(洛南・京都) 2012.11.3 10.01 桐生祥秀(洛南・京都) 2013.4.29 10.00 清水空跳(星稜・石川) 2025.7.26RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
2026.03.11
埼玉医大グループに小澤心羽が加入 「応援よろしくお願いいたします」
2026.03.09
日本インカレの大会要項が発表 標準記録は前回と同じ フィールド種目にも最大出場人数を設定
-
2026.03.08
-
2026.03.08
2026.03.07
日体大陸上部100周年式典が開催!日本陸連・有森会長ら名選手数多く、箱根駅伝10度優勝
-
2026.03.07
2026.02.15
【大会結果】第6回全国大学対校男女混合駅伝(2026年2月15日)
-
2026.02.27
-
2026.03.07
-
2026.03.01
Latest articles 最新の記事
2026.03.11
廣中璃梨佳が日本郵政Gを「卒業」昨年の東京世界陸上10000m入賞「新たな環境でチャレンジ」
日本郵政グループと、同チームに所属する女子長距離の廣中璃梨佳が共同投稿するかたちでSNSを更新し、廣中が3月末で退部すると発表した。 廣中は長崎商高時代から駅伝やトラックで世代トップ選手として活躍。高校を卒業して2019 […]
2026.03.11
埼玉医大グループに小澤心羽が加入 「応援よろしくお願いいたします」
埼玉医大クループの女子駅伝部は3月11日、同日付で小澤心羽が加入したことを発表した。 小澤は2004年生まれの21歳。静岡・日大三島高時代の22年に全国高校駅伝に出場した。23年春からルートインホテルズで競技を続け、24 […]
2026.03.09
日本インカレの大会要項が発表 標準記録は前回と同じ フィールド種目にも最大出場人数を設定
日本学生陸上競技連合は3月9日、第95回日本インカレ(9月5日~7日/神奈川・日産スタジアム)の大会要項を発表した。 前回大会からは参加資格にいくつか変更が加えられ、フィールド種目にもトラック種目と同様に最大出場人数が設 […]
2026.03.09
カールストレームがハーフ競歩で1時間24分58秒 女子はインガがガルシア・レオンに先着/WA競歩ツアー
世界陸連(WA)競歩ツアー・ゴールドのドゥンディスカ50が、3月7日にスロバキアで開催され、男子ハーフマラソン競歩ではブダペスト世界選手権20km競歩銀メダルのP.カールストレーム(スウェーデン)が1時間24分58秒で優 […]
2026.03.09
シマンスキが60mH7秒37の今季世界最高タイ 女子砲丸投スキルダー20m69の自己タイV/WA室内ツアー
3月6日、世界陸連(WA)室内ツアー・シルバーのISTAF室内がドイツ・ベルリンで開催され、男子60mハードルではJ.シマンスキ(ポーランド)が今季世界最高タイの7秒37で優勝した。シマンスキは。24年世界室内選手権のこ […]
Latest Issue
最新号
2026年3月号 (2月14日発売)
別府大分毎日マラソン
大阪国際女子マラソン
矢田みくにインタビュー
追跡箱根駅伝