2026.06.15
6月14日に愛知県名古屋市のパロマ瑞穂スタジアムで行われた第110回日本選手権の男子5000m決勝は、森凪也(Honda)が13分22秒41で初優勝を優勝を飾り、アジア大会代表に内定した。2008年北京五輪5000m、10000m代表の竹澤健介さん(摂南大ヘッドコーチ)に、レースを振り返ってもらった。
◇ ◇ ◇
日本選手権決勝という大一番で、8位入賞者全員が13分30秒を切るハイレベルとなりました。予選でも、3組ともに13分30秒前後での決着。800m、1500mに負けじと、5000mでも全体のレベルが上がったということを実感させる大会になったと思います。
その中でも、やはり森選手の「強さ」が最も印象に残りました。
1人だけアジア大会派遣設定記録(13分14秒36)を突破していることで、勝てば代表に内定するという立場。記録も狙わないといけない他の選手と比べて、心理的にも優位に立っていたと思われます。
しかしそれ以上に、本当にスピードへの自信があったのでしょう。前半は学生勢がレースを動かす中で無駄な動きをせず、要所要所でいいポジションを抑えていた。自信あふれる走りが非常に印象的でした。
ラストの勝負に向けては、昨年の反省が生かされています。昨年は最後の直線で井川龍人選手(旭化成)のスパートに屈しましたが、今年は「ザ・スプリント」の勝負というよりは、残り1000m、残り400mとビルドアップしていき、残り200mで先に仕掛けるという流れがありました。
特にラスト400mをうまく使って、自分の勝ちパターンに持ち込んでいます。ラスト1000mは2分28秒、残り2周は62秒、残り1周は54秒でカバー。井川選手のスプリントをうまく削りながら、自分は最後までスプリントを維持する。この1年、「こうやって勝つ」ということを常に考えながら過ごしてきたのだろうと感じさせるレースでした。加えて、5000mのラスト1000mを2分20秒台で上がってくるというのは、力がなければできません。
アジア大会では、ガルビア・シン選手が最大のライバルとなるでしょう。しっかりと勝ち切ることが、来年の北京世界選手権、再来年のロサンゼルス五輪へとつながります。
北京世界選手権の参加標準記録が12分50秒00に設定されました。今の日本勢にとっては現実的に狙える記録かというと、残念ながらそうとは言えません。標準を切ることをあきらめずとも、現実路線はワールドランキングでの出場。そのために、アジア大会での結果は重要です。今回のレースは、シン選手に勝つためのイメージも持っていたように感じました。アジアを制し、その後の冬季でさらに力をつけ、世界に挑んでほしいと思います。
2位の中野翔太選手(Honda)は森選手、3000m障害2連覇の青木涼真選手と同じチームで練習していることが、「戦える」という自信につながり、自己記録更新、着順につながったのではないかと感じます。常に森選手を視界に捉えるレース展開も非常に上手でした。井川選手もまた、今回の反省を生かして立て直しを図ってくるはずです。
予選では学生が3組とも1着を占めるなど、非常に勢いがありました。しかし、決勝の後半は実業団が存在感を示しています。予選、決勝の2本をそろえる経験、気象コンディションへの対応なども含めて、一枚上回った。実業団選手としての意地が垣間見えました。
とはいえ、学生に勢いがあることも確かです。決勝は18人中8人が学生で、早大の2年生・鈴木琉胤選手が4位、1年生の増子陽太選手が7位と下級生が上位に食い込んだことは、今後が非常に楽しみになりました。6人が出場した中大勢など、学生のスピード化がさらに進んでいる印象を持ちました。
◎竹澤健介(たけざわ・けんすけ)
摂南大陸上競技部ヘッドコーチ。早大3年時の2007年に大阪世界選手権10000m、同4年時の08年北京五輪5000m、10000mに出場。箱根駅伝では2年時から3年連続区間賞を獲得した。日本選手権はエスビー食品時代の10年に10000mで優勝している。自己ベストは500m13分19秒00、10000m27分45秒59。
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