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【誌面転載】ALL for TOKYO 2020/ゼンリン日本記録保持者コンビ。自然体で挑むオリンピックイヤー

ゼンリン日本記録保持者コンビ
自然体で挑むオリンピックイヤー

2019年はゼンリン所属の2人が破竹の勢いを見せた。男子110mハードルの高山峻野は6月から4試合連続の日本記録樹立。ついに13秒2台へと突入した。同走幅跳の城山正太郎は、8月に8m40の日本新。驚異的なパフォーマンスを見せた。

そろって世界選手権に出場すると、高山は準決勝進出。予選では13秒32と国外日本人最高記録を更新した。一方、城山も予選に7m94を跳んで通過。初の世界選手権で決勝進出を果たした。

日本記録保持者として迎えた2020年。どれだけ実績を残し、称号を手にしようと、気負いなく自然体で毎日を過ごしているようだ。

文/奥村 崇、向永拓史
撮影/船越陽一郎

同一大会でそろって日本新

昨年8月に8m40の特大日本新を打ち立てた男子走幅跳の城山正太郎(ゼンリン)。秋のドーハ世界選手権では決勝進出を果たしながら11位で入賞を逃した

日本記録保持者となっても2人の雰囲気は変わらない。110mハードルの高山峻野と走幅跳の城山正太郎のゼンリン・コンビ。声のボリュームが上がることもなく、カメラマンからの「もう少し笑顔で」というリクエストには少しおどけて照れ隠しする。一緒に練習を終えた同学年の青木益未(七十七銀行)が冷やかしても動じない。シャッターが切られ、仕上がりを見る。2人ともひと回り、いや、ふた回りほど大きくなったように映る。この冬のトレーニングの成果に加え、日本記録保持者として世界を経験したことによる貫禄がそうさせているのかもしれない。

高山に城山の印象を聞いた。

「変わっていますね。自分のペースで過ごしても結果を出せる。天才タイプですよ」

逆も聞いてみた。

「ちょっと変な奴ですけど、努力もしっかりしていて、取り組み方もすごく考えています」

同学年の2人だが、交流するようになったのは実業団1年目の春の織田記念。最初のお互いの印象は「暗そう」と笑い合う。波長が合うタイプ。そして、競技者として互いに尊敬している。

2019年8月17日。Athlete Night Gamesin Fukuiで、走幅跳の城山が8m40、110mハードルの高山が13秒25と、同一大会で同所属2人が日本新記録を樹立。そろってドーハ世界選手権に出場すると、先に行われた走幅跳で城山が決勝進出、そして高山も準決勝に駒を進めた。激動のシーズンを終えた2人は、どのように〝オリンピックイヤー〟を見据えているのだろうか。

高山峻野
〝目標達成〟の世界選手権

昨年は2度の日本タイ(13秒36)、2度の日本新(13秒30、13秒25)と存在感を発揮した男子110mHの高山峻野(ゼンリン)。ドーハ世界選手権では準決勝に進出

「スタートから力を使わずに走れていたんです。これまで感じたことのないスピード感でギアが違っていて、まだ余力がありました。そこでギアをさらに上げようと思ってしまったんです」

世界選手権の男子110mハードル。予選を13秒32(+0. 4)で難なく通過した高山は、準決勝に向けて集中力を高めていた。指導する金子公宏コーチによれば「ウォーミングアップがとにかく速くて、海外のトップ選手と比べても遜色ないくらい」。究極に研ぎ澄まされた状態。高山自身も「その時100mを走れば10秒1から2くらいで走れそうなくらいの感覚だった」と言う。おそらく〝普通〟に走れば、日本人初の決勝は見えていた。

スタートから鋭く飛び出す。「横に誰もいない」。1台目、2台目、3台目。他を圧倒する加速でトップに立つ。手元に残るインターバルタイムは1.03秒、1.00秒、1.02秒。「3台目までに自分のレースに持ってくる」という、ずっと取り組んでいたことができた――はずだった。

「このまま行けば、速いタイムが出る、そう思ってギアチェンジしようと欲が出たのがいけなかった。たぶん、半足長くらい詰まってしまったんです」

4台目を越えてグッと踏み込んだら、もう目の前に次のハードルがあった。抜き脚をぶつけてバランスを崩す。「まだ行ける」と立て直したが、6台目にリード脚をぶつけて浮き上がってしまった。「あ、終わったな」。転倒してもおかしくないレースだったが、最後は追い上げて13秒58(+0.6)で組6着。たった半足長、たった十数センチ狂っただけ。自身2度目の世界選手権が幕を閉じた。

「ドーハでの目標は予選突破でしたから、それを達成できたことで1回リセットできていたんです。緊張もしないタイプなので、力みはありませんでした。調子が良すぎてスピードが出て、それをコントロールできず刻み切れなかった。強い選手が予選落ちしていたこともあったので、総合的に見ればまだまだ。でも、目標も達成できて、いい感覚も〝おまけ〟としてついてきました。だから、次がんばればいいや、って」

悔しさを押し殺したりしている様子ではなく、冷静に振り返る。それはずっと変わらない高山のスタンスだ。金子コーチも「あれだけの舞台で集中して力を発揮できる選手はこれまでいなかった。準決勝は13秒1台の走り。もう少しリラックスできればよかったかもしれませんが、あの場で挑戦できたことを評価したい」と言う。

昨シーズンの高山の活躍は、まさに「快進撃」だった。

※この続きは2020年2月14日発売の『月刊陸上競技3月号』をご覧ください。

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