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2026.10.11

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不屈の女王・ヘンプヒルが5698点 3度目の手術乗り越え「まだ選手として死んでいない」
不屈の女王・ヘンプヒルが5698点 3度目の手術乗り越え「まだ選手として死んでいない」

女子七種競技のヘンプヒル恵(26年長野オータム・トライアル)

長野オータム・トライアル2026が10月10、11日に、長野・松本平広域公園陸上競技場で行われ、女子七種競技でヘンプヒル恵(アトレ)が今季日本リスト2位となる5698点をマークした。

2028年に国民スポーツ大会を控え、新装された陸上競技専用スタジアム。トラックとスタンドの距離が近く、国内では珍しい内水濠と内跳躍ピットを備える。

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真新しいトラック、雲一つない晴天。いろいろな思い出が残る長野で、女王が静かに大きな1歩踏み出した。

七種競技で日本歴代4位の5907点を持ち、日本選手権を4度制しているヘンプヒル。今季の日本選手権は200mで肉離れして途中棄権した。復帰戦だった9月の東広島での試合では、追い風参考ながら5588点を出している。

得意の100mハードル13秒90(−0.4)をマーク。最も表情が明るくなったのが走高跳で、1m66に成功すると1m69であとわずかという跳躍だった。2日目のやり投ではサードベスト、社会人ベストの46m17をスロー。800mで2分16秒72を出せば5700点になるところだったが「詰めが甘かった」。最後の向かい風も響いて2分16秒82だった。

それでも、今季日本リスト2位、条件こそ違うものの名古屋アジア大会でも銀メダル相当の記録となる。自己9番目で、2020年以降では3番目の記録だ。

何度這い上がるのか。京都文教高ではインターハイを当時『不滅』とも思われた5519点の高校新で連覇。今年、岡田紗和(法政二)に破られるまで12年残った。しかも、ヘンプヒルは100mハードルと2冠、4×400mリレーでも銅メダルを手にしている。

中大に進学してからもU20日本新、学生新、長野開催だった日本選手権は3連覇など、女王の階段を駆け上がった。ところが、17年に5907点のベストを出した直後、練習で左前十字靭帯を断裂。どん底へと突き落とされた。

復帰して翌年はアジア大会に出場し、日本インカレも大会タイで優勝。アトレで競技を継続した。

迎えた2020年秋の長野市での日本選手権。途中まで日本新となる6000点ペースだった。しかし、やり投で今度は右膝の前十字靭帯を断裂。両膝に傷を負ってもなお、女王は立ち上がった。「速いだけの選手ではなく、強い選手で居続けたい」と。22年には自己4番目となるの5872点で日本選手権を5年ぶり優勝した。

試練はこれだけで終わらない。新体制で復活を期して取り組んでいた昨年3月、またも膝が悲鳴を上げた。1度目と同じ左膝の前十字靭帯を断裂。心が限界を迎えてもおかしくなかった。

だが、5月に手術してからはリハビリを重ね、練習復帰までの過程はこれまでで一番順調だった。しかし、脚は戻っても感覚がなかなか戻らない。

「なかなか感覚が戻らなくて、選手としてトップでやるのはもう難しいのかなって。手術したのがつらいとかよりも、この1年くらいは難しいな、と。選手としての感覚がもう消えてしまったんじゃないかっていう時期が長かったです」

たとえ戦いの舞台から降りても、誰も責めなかっただろう。17年から止まったままの自己記録が生涯ベストになっても何ら恥ずかしくない大記録。それでも、ヘンプヒルは戻ってきた。

葛藤はあった。「私はまだやってもいいんかなって。もうやる価値もないし、やらせてもらってるだけならダメだと思っていました」。世界を目指して、日本記録を目指してやってきた。プライドもある。情けだけでやるものではない、と。

だが、新たなトレーナー態勢に加え、昨年からは十種競技日本記録を作った丸山優真(住友電工)や奥田啓祐(ウィザス)らとともに、加藤弘一コーチのもとで練習するようになり状況は上向いていく。

今年5月で30歳になった。日本選手権の後はより覚悟を決め、「ちょっとだけしか見えてない希望の光が、消えそうになりながらも、加藤先生も信じてやってくれました。私も信じて大事にしてきました」。

秋の2試合を経て「点数は全然計算していなかったけど、手術してからずっと怖かった走高跳で手応えも感じましたし、やってきたことが間違ってないと思えました」と頷く。

全体通しても「今まではドーンって出していたところから、行くところと抑えるところをしっかりできました。来年はパフォーマンスを考えられるようになります」と手応えをつかんだ。

見守った混成関係者がその精神力とポテンシャルに舌を巻き、畏怖の念を持つ。一緒に戦った高校生たちが、ここぞとばかりにアドバイスを求める。日本選手権を席巻した頃を知らずとも、同じ場所で戦った者ならその凄みが嫌と言うほどわかる。

一番からはしばらく遠ざかっている。日本人初の6000点超えも、アジアの金メダルも田中友梨(スズキ)を先を越された。同じ土俵で、全力で挑めない自分が悔しかった。

「ハードルとか走幅跳とか、まだ全然戻ってないですが、『核』の部分が見えてきたので安心しました。私はまだ選手として死んでいない。もう一度、自分を信じていいのかなって思えた」

スタジアムは違えど、3連覇した思い出も、日本記録の目の前で崩れ落ちた苦い記憶もある長野で刻んだ決して小さくない1歩。不屈の女王の瞳に、強い光が宿った。

長野オータム・トライアル2026が10月10、11日に、長野・松本平広域公園陸上競技場で行われ、女子七種競技でヘンプヒル恵(アトレ)が今季日本リスト2位となる5698点をマークした。2028年に国民スポーツ大会を控え、新装された陸上競技専用スタジアム。トラックとスタンドの距離が近く、国内では珍しい内水濠と内跳躍ピットを備える。真新しいトラック、雲一つない晴天。いろいろな思い出が残る長野で、女王が静かに大きな1歩踏み出した。七種競技で日本歴代4位の5907点を持ち、日本選手権を4度制しているヘンプヒル。今季の日本選手権は200mで肉離れして途中棄権した。復帰戦だった9月の東広島での試合では、追い風参考ながら5588点を出している。得意の100mハードル13秒90(−0.4)をマーク。最も表情が明るくなったのが走高跳で、1m66に成功すると1m69であとわずかという跳躍だった。2日目のやり投ではサードベスト、社会人ベストの46m17をスロー。800mで2分16秒72を出せば5700点になるところだったが「詰めが甘かった」。最後の向かい風も響いて2分16秒82だった。それでも、今季日本リスト2位、条件こそ違うものの名古屋アジア大会でも銀メダル相当の記録となる。自己9番目で、2020年以降では3番目の記録だ。何度這い上がるのか。京都文教高ではインターハイを当時『不滅』とも思われた5519点の高校新で連覇。今年、岡田紗和(法政二)に破られるまで12年残った。しかも、ヘンプヒルは100mハードルと2冠、4×400mリレーでも銅メダルを手にしている。中大に進学してからもU20日本新、学生新、長野開催だった日本選手権は3連覇など、女王の階段を駆け上がった。ところが、17年に5907点のベストを出した直後、練習で左前十字靭帯を断裂。どん底へと突き落とされた。復帰して翌年はアジア大会に出場し、日本インカレも大会タイで優勝。アトレで競技を継続した。迎えた2020年秋の長野市での日本選手権。途中まで日本新となる6000点ペースだった。しかし、やり投で今度は右膝の前十字靭帯を断裂。両膝に傷を負ってもなお、女王は立ち上がった。「速いだけの選手ではなく、強い選手で居続けたい」と。22年には自己4番目となるの5872点で日本選手権を5年ぶり優勝した。試練はこれだけで終わらない。新体制で復活を期して取り組んでいた昨年3月、またも膝が悲鳴を上げた。1度目と同じ左膝の前十字靭帯を断裂。心が限界を迎えてもおかしくなかった。だが、5月に手術してからはリハビリを重ね、練習復帰までの過程はこれまでで一番順調だった。しかし、脚は戻っても感覚がなかなか戻らない。「なかなか感覚が戻らなくて、選手としてトップでやるのはもう難しいのかなって。手術したのがつらいとかよりも、この1年くらいは難しいな、と。選手としての感覚がもう消えてしまったんじゃないかっていう時期が長かったです」たとえ戦いの舞台から降りても、誰も責めなかっただろう。17年から止まったままの自己記録が生涯ベストになっても何ら恥ずかしくない大記録。それでも、ヘンプヒルは戻ってきた。葛藤はあった。「私はまだやってもいいんかなって。もうやる価値もないし、やらせてもらってるだけならダメだと思っていました」。世界を目指して、日本記録を目指してやってきた。プライドもある。情けだけでやるものではない、と。だが、新たなトレーナー態勢に加え、昨年からは十種競技日本記録を作った丸山優真(住友電工)や奥田啓祐(ウィザス)らとともに、加藤弘一コーチのもとで練習するようになり状況は上向いていく。今年5月で30歳になった。日本選手権の後はより覚悟を決め、「ちょっとだけしか見えてない希望の光が、消えそうになりながらも、加藤先生も信じてやってくれました。私も信じて大事にしてきました」。秋の2試合を経て「点数は全然計算していなかったけど、手術してからずっと怖かった走高跳で手応えも感じましたし、やってきたことが間違ってないと思えました」と頷く。全体通しても「今まではドーンって出していたところから、行くところと抑えるところをしっかりできました。来年はパフォーマンスを考えられるようになります」と手応えをつかんだ。見守った混成関係者がその精神力とポテンシャルに舌を巻き、畏怖の念を持つ。一緒に戦った高校生たちが、ここぞとばかりにアドバイスを求める。日本選手権を席巻した頃を知らずとも、同じ場所で戦った者ならその凄みが嫌と言うほどわかる。一番からはしばらく遠ざかっている。日本人初の6000点超えも、アジアの金メダルも田中友梨(スズキ)を先を越された。同じ土俵で、全力で挑めない自分が悔しかった。「ハードルとか走幅跳とか、まだ全然戻ってないですが、『核』の部分が見えてきたので安心しました。私はまだ選手として死んでいない。もう一度、自分を信じていいのかなって思えた」スタジアムは違えど、3連覇した思い出も、日本記録の目の前で崩れ落ちた苦い記憶もある長野で刻んだ決して小さくない1歩。不屈の女王の瞳に、強い光が宿った。

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