2026.10.01
JALは10月1日、アスリート社員として入社した男子中距離のクレイ・アーロン竜波の会見を開いた。
男子中距離の日本の至宝が、世界を目指すチームJALの一員となった。男子800mで日本歴代2位の1分44秒32を持つクレイ。JALのポロシャツを身にまとい、緊張の面持ちで会見に登壇した。
「こういう環境で陸上を続けられるのは当たり前じゃないので、本当にうれしいですし、感謝しています。全力で競技をして応援してくださる方々に恩返しをしたい」
“当たり前じゃない”の言葉に重みがある。神奈川県出身の24歳。幼い頃からライフセービングで鍛えた心肺機能と身体能力を持ち、800mで歴史を作ってきた。
中学時代に全中で2位に入ると、名門・相洋高ではさらに飛躍を遂げる。インターハイを連覇。当時・高校記録となる1分46秒59を叩き出し、3年時には日本選手権も高校生優勝した。のちにチームメイトとなる北口榛花と同じように日本陸連ダイヤモンドアスリートにも選出されている。
「いろんな選択肢があった」なかから、高校卒業後は渡米を決意し、テキサスA&M大に進学した。そこからしばらくはどん底を味わう。すぐにコロナ禍があったことに加え、「練習環境が合わずに苦労しました」と振り返る。
「自信がなくなり、走るのが怖いくらいでした」。ただ、幸いにも仲間に恵まれ、「チームメイト、ルームメイトの励ましたがあって頑張れました」。また、家族や友人、さらに高校の恩師・銭谷満先生の名前も挙げ「たくさん連絡をくださいました」。みんなが「結果が出なくてもアーロンはアーロンだから」と言ってくれた。その言葉に励まされた。そうした支えもあり、「最後までやりきって恩返しがしたい」と覚悟を決める。
テキサスA&M大を卒業後はペンシルベニア州立大の大学院へ。それが転機となる。ライアン・フォスター・コーチのもとで復活への道が開いていく。「800mは有酸素の土台が大事。シーズン中も有酸素系のトレーニング、インターバルなども行いました」。加えて、持ち味だった400mのスピードも「週1回は必ずスピード練習を入れています」。バランス良く、効率的に強化が進められたという。
学生ラストシーズンの今年は飛躍の1年に。3月には世界室内選手権で6位入賞の快挙、全米学生選手権では男子短距離のサニブラウン・アブデル・ハキーム(当時・フロリダ大)以来となる決勝進出を果たし、1分44秒98で4位に入った。その後は海外転戦すると、7月には日本歴代2位の1分44秒32をマークしている。
今季は800mだけで19レースに出場。「とにかくケガだけに気をつけながら走りました」。日々の土台に、トレーナーのケアを受けた。アベレージも高く、1分44秒台を5度マークした。
レベルの高い米国の大学陸上。そこで学んだのは“勝負”だった。
「泥臭くて、設定されたレースがない。タイムよりもただ勝つこと、競い合うレースが多かったです。2週間に1回はレースに出てその経験、レースのやり方、800mの経験が上がったと思います」
学業との両立も「大変だった」と苦笑いするが、「修士は頑張りました」とニッコリ。大学院では「物流や貿易、企業間の交渉など、顧客にサービスが行き渡るまでのネットワークを考える『サプライチェーンマネジメント』を学びました」。それが競技にも生かされているという。
JALには同学年の110mハードル・村竹ラシッドや、北口ら世界へ羽ばたく選手たちがいる。さらに、日本の800mは日本記録保持者の落合晃(駒大)を筆頭にハイレベルになった。「本当に刺激を受けています。800mはレベルが高く、うれしいし、自分も負けたくないしついていきたい」。
今後も米国を拠点にし、同じフォスター・コーチの元で練習する。「旅をしながらいろんなレースに出て行きたい」と目を輝かせた。
「来年に向けての練習は始めています。来年の北京世界選手権やロサンゼルス五輪が目。北京世界選手権の参加標準記録1分43秒00を突破するマインドセットでいます。ダイヤモンドリーグなど、世界の舞台で800mの日本代表として競技をしていきたいです」
最後に「これからもよろしくお願いします!」と一礼すると、拍手が自然と沸き起こった。自らの努力と周囲のサポートで才能に磨きをかけ、苦難を乗り越えたクレイ。その輝きはこれから世界を股にかけてどんどんと増していきそうだ。
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
2026.10.17
【女子3000m】村山玲奈(北島中1徳島) 9分19秒85=中1最高
2026.10.17
棒高跳・小林美月がSBの4m21で大会新V「風と寒さの中でよく跳べた」/あおもり国スポ
2026.10.17
2026.10.17
【大会結果】第103回箱根駅伝予選会/チーム総合(2026年10月17日)
2026.10.17
2026.10.12
2026.10.17
【大会結果】第103回箱根駅伝予選会/チーム総合(2026年10月17日)
2026.10.08
走高跳・髙橋渚がデサントとアドバイザリー契約「ともにさらなる高みを目指し、挑戦を続ける」
2026.10.05
2026.09.18
Latest articles 最新の記事
2026.10.17
【女子3000m】村山玲奈(北島中1徳島) 9分19秒85=中1最高
ナイタートライアルin屋島が10月17日に行われ、女子3000mで村山玲奈(北島中1徳島)が9分19秒85をマークし、中学1年生最高記録を更新した。従来の記録は髙松望ムセンビ(大阪・薫英女学院)が2010年に出した9分2 […]
2026.10.17
東洋大・酒井俊幸監督「ようやく監督として一通り学んだ」 通過校指揮官コメント/箱根駅伝予選会
◇第103回箱根駅伝予選会(10月17日/東京・陸上自衛隊立川駐屯地スタート、昭和記念公園フィニッシュ:21.0975km) 第103回箱根駅伝予選会が10月17日に行われ、東洋大がトップ通過を決めた。中央学大、東海大、 […]
Latest Issue
最新号

2026年11月号 (10月14日発売)
アジア大会総特集
駅伝プレビュー

