2026.10.28
長澤辰朗 Nagasawa Tatsuro 日大3年
「月陸Online」限定で大学長距離選手のインタビューをお届けする「学生長距離Close-upインタビュー」。63回目は、日大の長澤辰朗(3年)をピックアップする。
1月の箱根駅伝の出走はならなかったが、2月の日本学生ハーフマラソン選手権で1時間2分31秒の好記録をマークすると、5月の全日本大学駅伝関東地区選考会では2組で2着。9月の日体大長距離競技会5000mで初の13分台を叩き出すと、10月の出雲駅伝では5区で区間5位ながら従来の区間記録を上回る快走を見せた。
学生三大駅伝開幕戦での幸先の良い滑り出しを見せた長澤に、これまでの競技人生や今季の駅伝シーズン、将来的な目標を聞いた。
「緊張が9.5割、楽しみが0.5割」
日大は10月12日の出雲駅伝で8位入賞を果たし、3区ではトップに立つなど存在感を示した。5区で従来の区間記録を1秒上回り(17分42秒、区間5位)、2位を死守したのが長澤辰朗(3年)だった。
「正直、なんでこんなにタイムが出たんだろうと自分でもビックリしていて、うまく走れた要因はまだよくわかっていません」。出雲での自身の快走を振り返り、長澤は素直な驚きを口にした。
レースは3区のシャドラック・キップケメイ(4年)が区間新記録の爆走を見せ、8人抜きでチームを先頭に押し上げる。それをウォーミングアップ場所で聞いた長澤は、「緊張が9.5割、楽しみが0.5割。先頭や2位でもらうなんて今までなかったので、タスキをもらうまでは本当にガチガチでした」と笑うが、走りは冷静沈着だった。
2位で中継所を飛び出すと、すぐ後ろからは中大・柴田大地(4年)が猛追してきた。「絶対に追いつかれる、と思っていましたが、追いつかれてから逆に余裕を持てるようになりました。横に中継車が並んだ時は『これが駅伝の前のほうの景色なのか』と、良い経験をさせてもらっているなと感じていました」と振り返る。
レース後、新雅弘駅伝監督からは「テレビに映って気持ち良かっただろう」と声をかけられ、長澤は「その通りだな」と実感したという。個人としてもチームとしても、実りの多い出雲駅伝となった。
長澤は小学1年から続けていた「テコンドーの体力をつけるため」に、新潟・関屋中で陸上部に入部。中学2年時に県大会へ進んだことで「本格的にがんばりたい」と陸上へシフトした。
高校は県内強豪の中越高へ進む。ここで長距離選手としての土台を築いたが、苦い記憶も多い。中学、高校を通じて、全国大会には一度も手が届かなかった。
「特に高校はなかなか苦しい3年間でした。3年生の県駅伝でも自分が1区でチームに流れを呼び込めないような走りをしてしまった。タイムは伸びたけれど、肝心なところで結果が出せないことが多く、3年間を通して悔しかったというイメージしかありません」。ただ、その思いは、今の長澤の原動力になっている。
大学進学に際しては、中越高校の渡辺裕人先生と日大のコーチとのつながり、そして何より高校の先輩である鈴木孔士(現・黒崎播磨)や片桐禅太(4年)が順調に伸びている姿を見て、日大への進学を決意した。
「どの大学に行くにしろ、箱根駅伝を目指したかった。中学卒業と同時に『箱根を走りたい』と家を出て寮生活を始めたので、その思いは強かったです。ただ、中学や高校の頃は箱根駅伝をテレビで観ていても雲の上の舞台というか、自分には到底届くことがない舞台だと思っていました」
日大の長澤辰朗[/caption]
学生長距離Close-upインタビュー
長澤辰朗 Nagasawa Tatsuro 日大3年「月陸Online」限定で大学長距離選手のインタビューをお届けする「学生長距離Close-upインタビュー」。63回目は、日大の長澤辰朗(3年)をピックアップする。1月の箱根駅伝の出走はならなかったが、2月の日本学生ハーフマラソン選手権で1時間2分31秒の好記録をマークすると、5月の全日本大学駅伝関東地区選考会では2組で2着。9月の日体大長距離競技会5000mで初の13分台を叩き出すと、10月の出雲駅伝では5区で区間5位ながら従来の区間記録を上回る快走を見せた。学生三大駅伝開幕戦での幸先の良い滑り出しを見せた長澤に、これまでの競技人生や今季の駅伝シーズン、将来的な目標を聞いた。「緊張が9.5割、楽しみが0.5割」
日大は10月12日の出雲駅伝で8位入賞を果たし、3区ではトップに立つなど存在感を示した。5区で従来の区間記録を1秒上回り(17分42秒、区間5位)、2位を死守したのが長澤辰朗(3年)だった。「正直、なんでこんなにタイムが出たんだろうと自分でもビックリしていて、うまく走れた要因はまだよくわかっていません」。出雲での自身の快走を振り返り、長澤は素直な驚きを口にした。レースは3区のシャドラック・キップケメイ(4年)が区間新記録の爆走を見せ、8人抜きでチームを先頭に押し上げる。それをウォーミングアップ場所で聞いた長澤は、「緊張が9.5割、楽しみが0.5割。先頭や2位でもらうなんて今までなかったので、タスキをもらうまでは本当にガチガチでした」と笑うが、走りは冷静沈着だった。2位で中継所を飛び出すと、すぐ後ろからは中大・柴田大地(4年)が猛追してきた。「絶対に追いつかれる、と思っていましたが、追いつかれてから逆に余裕を持てるようになりました。横に中継車が並んだ時は『これが駅伝の前のほうの景色なのか』と、良い経験をさせてもらっているなと感じていました」と振り返る。レース後、新雅弘駅伝監督からは「テレビに映って気持ち良かっただろう」と声をかけられ、長澤は「その通りだな」と実感したという。個人としてもチームとしても、実りの多い出雲駅伝となった。長澤は小学1年から続けていた「テコンドーの体力をつけるため」に、新潟・関屋中で陸上部に入部。中学2年時に県大会へ進んだことで「本格的にがんばりたい」と陸上へシフトした。高校は県内強豪の中越高へ進む。ここで長距離選手としての土台を築いたが、苦い記憶も多い。中学、高校を通じて、全国大会には一度も手が届かなかった。「特に高校はなかなか苦しい3年間でした。3年生の県駅伝でも自分が1区でチームに流れを呼び込めないような走りをしてしまった。タイムは伸びたけれど、肝心なところで結果が出せないことが多く、3年間を通して悔しかったというイメージしかありません」。ただ、その思いは、今の長澤の原動力になっている。大学進学に際しては、中越高校の渡辺裕人先生と日大のコーチとのつながり、そして何より高校の先輩である鈴木孔士(現・黒崎播磨)や片桐禅太(4年)が順調に伸びている姿を見て、日大への進学を決意した。「どの大学に行くにしろ、箱根駅伝を目指したかった。中学卒業と同時に『箱根を走りたい』と家を出て寮生活を始めたので、その思いは強かったです。ただ、中学や高校の頃は箱根駅伝をテレビで観ていても雲の上の舞台というか、自分には到底届くことがない舞台だと思っていました」当日変更経て、覚悟を決めた3年目
決して鳴り物入りで入学したわけではなかったが、1年目から頭角を現す。10000mで28分台をマークし、箱根駅伝でも3区に区間エントリーされた。しかし、直前でインフルエンザに感染し、無念の当日変更を余儀なくされる。「そこまでは順調でしたが、最後の最後で走れなくなって本当に悔しい思いをしました。じゃあ2年目はがんばろうとなったけれど、今度は全体的にうまくいかなかったです」と話す。2年時は全日本大学駅伝や箱根駅伝の予選会メンバーに名を連ね、全日本では本戦も5区で学生駅伝デビューを果たしたが、区間14位と苦戦を強いられた。「大学を背負って走る覚悟が必要というか、ただ走るだけじゃダメなんだと気づかされるきっかけになりました」。ところが、箱根駅伝でも9区にエントリーされながら、またしても直前で当日変更。2年連続で本戦のスタートラインにすら立てなかった。「2年目の箱根で、何かを変えないとずっとこのまま走れずに終わってしまうと考えました。だから3年目は本当に覚悟を決めた1年にしようと」。長澤が変えたのは、1日1日をやり切ることだった。「これをやっておけば良かった、という無駄がないように。最後に1日を振り返った時に『今日はしっかりやりきれた』と思えるような生活と練習を徹底しました」と話し、その意識改革が今年の安定したパフォーマンスにつながっている。2月の日本学生ハーフで1時間2分31秒の自己ベストをマークし、5月の全日本大学駅伝関東地区選考会では2組5位と好走。「関東インカレ1部10000m(29分02秒09、19位)では他校のエースにまったく歯が立たなかった」と反省するが、夏合宿で徹底的に距離を踏んだことが、躍進の秋へと結びつく。9月に5000mで自身初の13分台(13分59秒60)に突入し、「スピードに対しても自分の中で自信がつきました」。長澤はチーム内での自身の立ち位置を「いぶし銀」と捉えている。その意図を尋ねると、職人気質とも言えるプライドが顔をのぞかせた。「日大にはインパクトのある走りができる選手が多い。シャドラックさんを始め、4年生の先輩もそうですし、1年生でも首藤海翔がそうです。自分にはみんなの印象に残るような華やかな走りはできません。でも、確実にタスキをつないでくることはできます。チームのためにやる仕事、自分の強みはそこにあると思っています」出雲駅伝での快走を経て、長澤の実力は知れ渡ったが、本人は依然として「あの結果はたまたま出たもの。まだ自分の実力には半信半疑です」と謙虚な姿勢を崩さない。だからこそ、目前に迫る全日本大学駅伝、そして箱根駅伝で、その走りが〝本物〟であることを示しにいく。「全日本は去年失敗したリベンジをしたい。去年走った5区か、最長区間の8区を走りたいです。箱根は2年間応援してくれている人の期待を裏切ってしまっています。まずは何としてでもスタートラインに立って、その中でしっかり結果を出したいです。自分の持ち味を出しやすいのは9区。どんな位置でタスキを渡されても、チームを勢いづける走りをします」出雲はたまたま走れたわけじゃない――。それを証明するために、長澤は伊勢路と箱根路で真骨頂の“いぶし銀”を煌めかせる。[caption id="attachment_131366" align="alignnone" width="800"]
出雲駅伝5区で従来の区間記録を上回った長澤[/caption]◎ながさわ・たつろう/2005年6月15日生まれ、新潟県出身。関屋中→中越高→日大。自己記録5000m13分59秒60、10000m28分43秒42、ハーフマラソン1時間2分31秒文/小野哲史RECOMMENDED おすすめの記事
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